オメでたい頭でなにより全国ワンマンツアー『〜今 いくね くるね 3〜』ライブレポート@EX THEATER ROPPONGI

新たなライブの形へと踏み出した全国ツアー完走。

1月8日(日)、EX THEATER ROPPONGIにてオメでたい頭でなにより(以下オメでた)のツアー『〜今 いくね くるね 3〜』のファイナル公演が行われた。本編開演前、オメコンボチケットを持つオーディエンスのみが参加できるオメコンボの時点から、会場の雰囲気は賑やかなものであった。maoと324によるM&Mズの前説に加え、赤飯、ぽにきんぐだむ、ミト充の3人ユニット、放課後ととのい倶楽部のアコースティックライブ、オメでたのコピーバンドとしておなじみのお目出たズによるライブといった内容。ときにはオーディエンスとコミュニケーションを取りながら、会場の空気を温めていた。

オメコンボの後には赤飯によるラジオ風音声「オールナイト転換」を聴きながら開演を待つ。本編開演前から既にユーモアや小ネタたっぷりで、会場は高揚感と和やかな雰囲気が漂っていた。「オールナイト転換」の最後には、ここ数年思うような形でライブができなかったことへの葛藤や、大声での歓声とともに行われた本ツアーから始まる「新たな形のライブ」への意気込みを口にしていた赤飯。それを聞いたオーディエンスはその思いを受け止め、この公演を楽しむための気合を入れ直したようにも見えた。そんなオメでたが作り上げた本編はというと、持ち前のユニークな楽曲をふんだんに盛り込み、MCも自由に繰り広げつつも、モノマネや、大喜利は影をひそめ、楽曲に真摯に向き合ったライブとなった。

“きなしゃんせ。”によって幕を開けたライブ本編。“SHOW-GUTS”の始まりを告げる琴の音色が鳴り響けば、赤飯による「2023年も幕開けよ!」という宣言とともに会場は正月の雰囲気に。このライブが2023年の初ライブであったオーディエンスも多いだろうが、二礼二拍手一礼と、ヘッドバンキングを融合させた曲調や、和風な音色を組み込んだ楽曲で幸先の良い走り出しを作り出していく。その後も拳をジョッキに見立てながら大合唱した“乾杯トゥモロー”、タオルを振り回した“海老振り屋”と縁起のいい楽曲が続き、オメでた流の新年祝いのようなステージだ。そんな熱くなったフロアに “スーパー銭湯~オメの湯~”を投下すれば、324の細やかなギターフレーズや、ミト充による手数の多いドラミングがフロアを煽る。オーディエンスはそれに大合唱で応え、会場の温度はぐんぐんと上昇していく。

maoによるベースのスラップさばきが牽引したラウドかつエレクトロな “四畳半フォークリフト”に突入すると、オメでたの武器でもある演奏力とカオスな曲調が本領を発揮。“超クソデカマックスビッグ主語”では早口なボーカリゼーションでまくし立て、爆発力のある音色たちが正月で鈍った頭に響いていく。これまでよりシンプルなビートがラップを引き立てた “NO MUSIC NO LIFE”では、心のままに叫んだ「死ぬまで生きてやろうじゃないか」のリリックが、逆境に追い込まれようとライブを続けていくという決意のように響いた。「今回の公演はとにかく無駄なことをしないで楽曲に向き合っている」という言葉よりMCに入ると、 “推しごとメモリアル”の話題へ。この楽曲ではギターソロの部分で324がギター型のバルーンを持ってエアギターを披露することが恒例となっているが、本ツアーにおいてはその土地の名物を食べていたそうで、本ツアー中はギターソロを演奏することが叶っていないという。そんな324は「今日はさすがに弾きます!」と決意を固める。そんなやり取りから次の曲は“推しごとメモリアル”が聴けるのかと思いきや、赤飯の「これでソロ弾けなかったらこのMC、意味ないですからね~!」と意味深長な言い回しから“意味ない歌”へ。このMCは“推しごとメモリアル”のフリではなくて“意味ない歌”のフリだったのか!と清々しい肩透かしの後には“プレシューズ”が続き、正統派ポップスを聴かせていく。

満を持して“推しごとメモリアル”に続くとフロアにはサイリウムも光り、女性声の赤飯に導かれるようにオタ芸を打つ。サビになればメンバー全員が楽器を放り出し、お立ち台で可愛らしく踊り、324はというと同期の音をかき消すほどの気合の入った音量でギターソロを無事に弾きこなしていた。“推しごとメモリアル”や後半にて披露した“ダルマさんは転ばないっ”が象徴していたが、オメでたにとって「楽曲に向き合う」ことは、遊び心を失うという意味ではない。次々と楽曲を披露し、その演奏力や熱量でオーディエンスを圧倒しつつ、彼らの楽曲とオーディエンスがこれまで培ってきた遊び方で存分に楽しむというステージづくりこそ、彼らにとってライブに向き合うことであり、楽曲に向き合うということなのだろう。

赤飯とぽにきんぐだむのスイッチボーカルの映える“日出ズル場所”より再び熱狂を作ると、“HAKUNA MATATA”、“生霊の盆踊り”と続く。「だるまさんが転んだ」を曲中に盛り込む“ダルマさんは転ばないっ”では、振り返る度にショートMCをはさんでオーディエンスと交流をはかるなど、オメでたらしく自由奔放なライブを繰り広げていく。ライブも終盤に差し掛かり、“We Will Luck You”の後には赤飯が「本当にわしもそうなんやけど、人間って弱い生き物でね。ちょっと気を抜くだけでめちゃくちゃ落ち込んだり、自分で気付かんうちにダメージを負っていたり、そんなことが日常的にあるなと思っていて……」と心の内を語り始める。ツアーが始まる前にはどんな気持ちでツアーに臨めばいいかを考えていたこと、しかし始まってみれば状況は少しずつ改善し前進していると実感できたこと、ツアーが始まってみて初めて自分が苦しんでいたことに気付けたこと。それらを素直に語っていく。そして初日公演にて前進していることを体感したことで文字通り泣き崩れたという赤飯は、改めてツアーが無事に完走できたことへの感謝、集まったオーディエンスに向けての感謝を伝えた。

「俺らはそもそもフロアでバカやるのが大好きで、そのためにバンド作ったわけです。こんなに面白いものがあるって一人でも多くの人に知ってもらいたい。このバカな光景を1万人規模まで持っていったら、それが一番バカで笑えるなと思います。武道館に行きたい!」と、まっすぐな目で高らかに語った赤飯の言葉の端々からは、彼が持つライブへの熱量がこれでもかと伝わってきた。そんな熱量を反映させたような“ザ・レジスタンス”の後、“あれこれそれどれ”、“オメでたい頭でなにより”と、会場は大合唱の渦に包まれる。ダブルピースが掲げられた平和なフロアに「2023年も一緒にバカやってくれるか!」と叫んで“すばらしい時代”に続く流れは、オーディエンスとオメでたですばらしい時代を作り上げていくという決意と一体感に満ちていた。最後には、4月4日(火)に「大寿祭」を行うと告知したオメでた。再びライブハウスに変化が訪れている今、5人とフロアにいたオーディエンスが、新しいライブのあり方を共に構築していこうと誓い合ったような、熱く尊い日となった。

Text:村上麗奈
Photo:ゆうと。

https://www.omedeta.band/

全国ワンマンツアー『〜今 いくね くるね 3〜』@EX THEATER ROPPONGI セットリスト
オメコンボ
M&Mズ
前説
放課後ととのい倶楽部
01. 放課後ととのい倶楽部
お目出たズ
01. メジャーデビュー曲
02. すばらしい自治体

本編
01. きなしゃんせ。
02. SHOW-GUTS
03. 乾杯トゥモロー
04. 海老振り屋
05. スーパー銭湯〜オメの湯〜
06. 四畳半フォークリフト
07. 超クソデカマックスビッグ主語
08. NO MUSIC NO LIFE
09. 意味ない歌
10. プレシューズ
11. 推しごとメモリアル
12. 日出ズル場所
13. HAKUNA MATATA
14. 生霊の盆踊り
15. ダルマさんは転ばないっ
16. We Will Luck You
17. ザ・レジスタンス
18. あれこれそれどれ
19. オメでたい頭でなにより
20. すばらしい時代