オメでたい頭でなにより『オメでたカバー劇場〜東京座〜』ライブレポート@東京キネマ倶楽部 5月15日(日)

オメでたい頭でなにより『オメでたカバー劇場〜東京座〜』

カバー曲ライブで見せたライブバンドとしての頼もしさ

オメでたい頭でなにより『オメでたカバー劇場〜東京座〜』の公演が5月15日(日)、東京キネマ倶楽部で開催された。先日リリースされたカバーアルバム『オメでたカバー横丁〜一番街〜』の楽曲と、ファンから募ったリクエストからカバー曲を披露し、予告通り自身の楽曲を一切演奏しなかったこの日。カバー曲への愛のあるアレンジと、ライブバンドとしてのオメでたのポテンシャルの高さを感じさせた日となった。

開演数分前、影アナにて挨拶をしたのは赤飯(Vo)。「この曲を聴いてお待ちください!」と“Pretender”が流れ、アウトロに差し掛かるころ、オメでたの5人がステージに登場。BGMが終わると同時に“Pretender”のカバーで開幕した。324(Gt)のギターが聴き馴染みのあるフレーズを奏で、ミト充(Dr)によるキレのあるドラムがラウドバンドの熱を感じさせる。大きなアレンジは加えず、レンジの広い赤飯の歌声をじっくりと聴かせるオープニングとなった。「どうも、official髭男dismです!嘘でーす、オメでたです!」との挨拶の後、mao(Ba)のベーススラップが率いるダンサブルな導入で“金太の大冒険”へ。穏やかな曲調からラウドに展開し、オーディエンスもヘドバンで応える。ベースソロから繋がるラップとシャウトを掛け合わせたような赤飯のテクニックが光る展開や、赤飯の少女のような歌声への変化など、1曲の中で様々な展開を詰め込み楽しませた。

後のMCにて赤飯は、それまでライブを見据えて楽曲を作っていたが、コロナ禍によって今までのようなライブができなくなり、楽曲制作も止まってしまったと語った。今回のカバーアルバムはそんな時に初心にかえるための制作だったという。序盤から炸裂する、オーディエンスを置いていかんばかりの盛り上げ方は、ライブバンドとして、声が出せない中でのライブでの盛り上げ方を突き詰めた集大成でもあると感じた。ステージ演出の派手さではなく、確かな演奏力とアレンジ力でラウドバンドとしての魅力と幸福感あるステージ作りを成し遂げているという点も、彼らのライブに向き合う姿勢が感じ取れる。

「僕が推してるアイドルの曲やります」と、「週の真ん中、水曜日。真ん中もっこり、夕やけニャンニャン!」の掛け声で、“うしろゆびさされ組”へ。ロックアレンジがほどこされ、後半の324の高速ギターフレーズのアレンジもスタイリッシュだ。「足踏みしながら、僕が向いた方向と同じ方を向いて」とオーディエンスを足踏みで巻き込むと、“三百六十五歩のマーチ”へ。曲中に繰り出される「後ろ向いて!」との赤飯の指示に、オーディエンス全員が演奏中のステージに背を向けるという景色が広がるなど、前代未聞の盛り上げ方でオーディエンスを楽しませた。“マル・マル・モリ・モリ!”では、ときにラウドアレンジで、ときに穏やかな原曲風のアレンジでギャップを見せる。印象的な頭サビでオーディエンスが盛り上がった“さくらんぼ”では、可愛らしい歌声を披露。前半を得意の少女声で、2番に入るとふんだんにロックアレンジを施すという、原曲風のアレンジとオメでた色に染めたアレンジをどちらも存分に聴かせた。

モーニング娘。との出会いから、彼女たちがメジャーデビューする時のこと、一旦モーヲタを辞めたことなどを「僕にとってモー娘。は小さな巨人ですよ!」と熱弁した赤飯。「そんな僕が公式でカバーをする許可を頂けたんです」と感慨深そうに語ると、“恋愛レボリューション21”を披露。メロディラインを生かすしっとりとした序盤のアレンジから疾走感のあるサビまで、そして「超超超いい感じ」のパートでは迫力のあるアレンジを施し、様々な表情を見せた。赤飯の自由自在な歌声が、幅広いカバー曲で更に魅力を増したこの日だが、彼の歌声を活かしたものまねカバーの披露もあった。“2億4千万の瞳”を一節ずつ様々なシンガーやタレントの声色に変えながら歌い上げる。見事に歌の特徴を掴んだ自在な声色でオーディエンスを感激と感動に包み込んだ。

さらにこの日は、アコースティック編成での演奏という新たな試みも。ぽにきんぐだむ(Gt&Vo)と赤飯による“夏色”では、軽やかなアコースティックギターと伸び伸びとした歌声が爽やかだ。ステージ下手の階段を登った小さいサブステージに集まると、5人のアコースティック編成で“君がいるだけで”を披露。ふくよかな歌声とアコースティック編成ながら密度のある演奏で落ち着いた雰囲気を作った。

彼らのライブのオープニングアクトとして登場することもあった、オメでたの後輩にあたる お目出たズの楽曲“メジャーデビュー曲”と、“ぶっ生き返す”を演奏し、一旦落ち着いた雰囲気を再び熱く染め上げると、「オリジナル曲をやってなくてもみんなが汗かいて楽しんでくれて嬉しい」と赤飯。そして、カバーアルバムを制作するに至った経緯を話し、アルバムについて「次に進むために必要な一枚でした」と振り返る。“WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~”でライブは終盤へ。「さんざんむなしい夜も 笑って話せる今夜はよくない?」と噛みしめるように歌い、オーディエンスに笑いかける。“明日があるさ”でWピースに満ちたフロアは、新たなライブの形を提示したオメでたをねぎらうような、温かく感動的な景色であった。

ステージから去る際、「オリジナルを引っさげてまた帰ってくるからよ!」と口にした赤飯。ここまでカバー曲を自分のものにし、リスペクトを溢れさせ、そして持ち前のライブ力をいかんなく発揮することができるバンドは多くないのではないだろうか。ライブでの接触や歓声が叶わなくなったことにより窮地に陥ったライブバンドが、音源だけでなくライブでも新境地に辿り着き、その頼もしさを見せた公演となった。

Text:村上麗奈
Photo:ゆうと。

https://www.omedeta.band/

『オメでたカバー劇場〜東京座〜』@東京キネマ倶楽部 セットリスト
01 Pretender
02 金太の大冒険
03 ガラガラヘビがやってくる
04 うしろゆびさされ組
05 三百六十五歩のマーチ
06 マル・マル・モリ・モリ!
07 さくらんぼ
08 恋愛レボリューション21
09 2億4000万のものまねメドレー
10 夏色
11 君がいるだけで
12 メジャーデビュー曲
13 ぶっ生き返す
14 WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント〜
15 明日があるさ
「オメでたカバー横丁 〜一番街〜」配信中
https://lnk.to/omedeta_coveryokocho