MILLEA VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

生命力溢れるミニアルバム『Still Alive』で伝える温かいメッセージ。

MILLEAが3年ぶりにミニアルバム『Still Alive』をリリース。コロナ禍以前から制作に取り掛かっていたという本アルバムは、心身の健康が脅かされる中で命の存在を問い直した、生命力溢れる作品となっている。一方で“さよなら、わたし”、“恋してた”など、単なる失恋ソングに留まらない複雑な心象を描いたラブソングは、人生における思い出の一場面を描いたよう。強い思いとノスタルジーが彼女の歌声によって伸びやかに歌い上げられた開放感のある作品となった。
今回MILLEAによる温かい語り口で語られたのは、故郷や自身の経験について、そして最近彼女が掴んだという、心穏やかに過ごすためのコツなど、音楽面に留まらず多岐に渡る話題の詰まったインタビューとなった。

■まずは音楽を始めたきっかけについて教えてください。

MILLEA 家族みんな音楽が好きだったのでいつも家には音楽が流れていて、自然と音楽を好きになっていました。年の離れた姉たちが吹奏楽や合唱を厳しい環境ですごい頑張ってやっているのを見ていて、ずっと憧れていました。でも私だけがちょっとピアノを習ったりしたくらいで、どうしても「お姉ちゃんたちには音楽では敵わないな」っていう思いが幼心にずっとあって、中々自分から本格的に「歌手になりたい」っていう気持ちを口に出せなくて。歌っていても姉たちからは「音痴」って言われてましたし、歌手になりたいなんて言えなかったですね。(笑)それでも、密かに思いを秘めながら、ピアノを弾いたり、歌を練習したり、中学生くらいからダンスをやり始めたりして、常に音楽には触れていました。本格的にボイストレーニングをしたり歌手になるための行動は、上京してからです。

■実際に上京して歌手活動を開始するまでには、どのような流れがあったんですか?

MILLEA 私は美容のことも好きだったので、地元で美容の専門学校に行って、ネイリストとして3年くらい働いていたんです。でもある時、この仕事はもうちょっと自分が歳を重ねてからでもできるかもしれないし、「今しかできないことをやってみたい」っていう衝動があって。それで思い切ってネイリストを辞めて、東京に出てきたんです。今思ったら無謀すぎるんですけど。(笑) 自分の人生、なにか変えてみたかったんですよね。

■すごい行動力ですね。上京する決め手となった出来事などはあったんですか?

MILLEA いくつかあるんですけど、まずその時ネイリストとしてどうなりたいかっていうのが分からなくなってしまったっていうのがあって。サロンワークは充実していたんですけど、忙しさや、練習、時間が取れなかったりなどで、気持ちがいっぱいいっぱいになった時があったんですよね。その時に、「このまま一生やっていくのかな……」って思っちゃって。それで、その時なりに考えて「今じゃなくても30歳、40歳になってからまたできる時があるんじゃないかな」って思ったんですよね。あとは一回札幌でオーディションを受けたことがあって、それは2次選考で落ちちゃったんですけど、落ちたことが思ったよりも悔しかったんですよ。それもチャレンジしてみようかなって思ったきっかけではありました。でも今思ったら、なんのオーディションだったか怪しいんですけどね。(笑) 今の時代は札幌でもどこの地域にいても活動の仕方はいろいろありますけど、当時はまだそこまでじゃなくて。だから、とにかく東京に行かないと、まず土地を変えないと気持ちの切り替えもできないなっていう感じでしたね。

■ふくよかな歌唱が特徴的なMILLEAさんですが、歌唱の面で影響を受けている人やジャンルはあるんですか?

MILLEA 具体的にこの人っていう人はいなくて。東京に出てきて、ボイストレーニングに行っていた時はずっと洋楽ばっかりレッスンで歌っていたんです。最初はすごくソウルフルでカッコいいR&Bとかを歌いたくて、何度もチャレンジしたんですけど、色々歌って練習していくうちにそうじゃない曲の方が自分の声で伝えられるんだなっていうことに気付いたりもしました。メロディとか音楽のカッコよさよりも、歌詞を伝える大切さを学ぶ時間も大事でしたね。いろんな影響はあると思いますが、高音の声の出し方に関しては、元を辿ると中学校の時、合唱部が強かったのもあり学校全体が音楽に良い意味で厳しくて気合が入ってたんです。なので、合唱部ではなかったんですが、その時に習得したものなのかなと思ったりすることがあります。

■今作『Still Alive』は、「大丈夫と伝えたくてできた」と資料にもありますが、作り始めた当初からこのテーマのものを作りたいと考えていたんですか?

MILLEA タイミングとしては作りながらだったと思います。コロナ禍に入る前、2019年に前作のアルバムを出したんですけど、アルバムをリリースし終わって落ち着いたころに、「次の作品を作ろうか」っていう話になったんです。でもちょうどその間にコロナ禍に入っちゃったので、具体的にいつCDを出すっていう目途が立たなくなっちゃって。それもあって、私自身アーティストとしても、自分の人生としても、「これからどうしようかな」とか悩んでいたんですよね。コロナの間に自分の環境も少し変わったり、そういう変化の中で新たな出会いもたくさんあって仲間が増えました。でもそこで出会った人が自ら命を絶ってしまうという悲しいこともあったんです。一昨日まで一緒に話したりご飯を食べたりしていたのに…ってすごくショックでいろいろ考えちゃって……。生きると言うことの難しさを痛感したと言うか。生きていることが当たり前ではないし、誰にでもギリギリな時ってあるよなって。そんな中で、ボロボロでも泣きながらでもかっこよくなくっていいじゃん、それでも生きるその姿に本当の美しさが潜んでるって思えて。そんな中で出来た曲が“泣きながら生きたって”っていう歌だったんです。『Still Alive』っていうタイトルがついたのも、そういう流れもあったんですよね。

■“泣きながら生きたって”は、そういった背景を感じさせないくらい前向きな歌詞ですよね。

MILLEA ありがとうございます。どこかに光を灯しておきたいっていう。今までは星とか夢とか希望とかを多く歌ってきたんですけど、今作はもう少し地に足をつけているようなイメージで、命に注目しているんです。タイトルの『Still Alive』は、「それでも生きてきたし、それでも生きていく」っていうメッセージなんです。思い返せば生きるのに疲れてしまうようなことも今までたくさんあったけど、それでも生きてきたから今があるし、だからきっと、これからもきっといろんなことがあるだろうけど「大丈夫、生きていける」っていう。

■歌い方としてもすごく力強さがあるなと感じました。その歌声のニュアンスは意図的にですか?

MILLEA そうですね。プロデューサーの松岡モトキさんとは前作からご一緒させていただいていて、その時から自分の心の葛藤とか、好きな音楽を一生懸命に一緒に掘り下げてくれたんです。そういう信頼関係もあって、特にレコーディングに関してはたくさんアドバイスしてもらったりしたので、今まではやってこなかった歌い方も加わっていると思います。実際のレコーディングは泣きながらの時もありました。もうぼろぼろになるくらいの感じで一生懸命歌ったので、すごい思い出深いです。

■後半の男声コーラスにも迫力がありますね。

MILLEA クリスチャンミュージックのひとつに「ヒルソング」と言われるものがあるんですけど、私はそのサウンド感がすごく好きで。コーラスワークはそういうところからヒントをもらいました。私の声質を生かしながら、より力強く響くよう、コーラスワークで歌全体を支えてもらうっていうイメージでアレンジをしていただきました。

■Tiaraさん作詞の“さよなら、わたし”は、歌詞で描かれる状況としてはラブソングですが、ただの失恋ソングじゃない、自身と向き合う視点が面白いなと感じました。

MILLEA Tiaraさんとはレーベルメイトなんです。今回のことがきっかけでお会いした時に歌詞の意味合いをいろいろ聞きました。私が感じたのは「さよならあなた」っていうと、もう一緒に過ごしたり会ったりはしないっていうイメージがあると思うんですけど、自分にさよならするっていうのは、自分の中のその人を好きな気持ちを手放すっていうことなので、そこには強い意志や決意が必要なんですよね。なおさら切ないんです。この恋を成就させようとすることを諦めて静かに身を引くっていう。6曲目に収録されている“雨上がりのうた”にも「伝わらない報われない諦めも単純な幸せも一つとして無駄にしない」っていう歌詞があって、それとちょっと通じるところがあるんですけど、本来は「諦める」っていうとマイナスな言葉じゃないですか。でもそれまでずっと体当たりしたり、正面からいくことで解決したり乗り越えられることばかりじゃないっていうのを生きていく中で少しずつ覚えてきて、諦めるというのは、ある意味次への一歩を踏みために必要な気持ちなんですよね。なので、マイナスな歌ではないんです。優しくて切ないんだけど、その中には強さみたいなものを感じられる歌だと思って歌っています。

■“恋してた”も大人なラブソングですね。

MILLEA そうですね。20代の時とか、「今思ったらどうしてあの人のこと好きだったんだろう?」って思う人もいるけど(笑)、そうではなくて、あの人のこと本当に好きだったなとか、別れる時は泣くほど悲しくて寂しくて……っていう人ってそれぞれいると思うんです。そういう辛い恋がふといい思い出になってるって気づく時ってあるんですよね。例えば私が22歳の時にすごく好きだった人と別れてしまって、ただ歩いているだけでも泣けてきちゃうくらい寂しかったりして。でもその後、私は夢を持って東京に出て来て、全然違う人生を歩んでいて。今思うと本当にいい思い出で、「ああいう恋愛ができてよかったな」って思える。そのことを懐かしく思い出しながら、私も歩んできたんだな、進んで来たんだなっていうのをじっくり自分の中で感じているような歌ですね。これも失恋ソングとか未練とかではなく、その恋を懐かしめるところまできた時の感情。そういう意味でも少し大人の曲なんじゃないかなと思います。

■作詞をMILLEAさん以外の方が務める曲では、ご自身の経験も照らし合わせつつ歌詞を解釈していくことが多いんですか?

MILLEA そうですね。私はシンガーソングライターとは言われていたりもしますが、そこには強くこだわっていなくて。自分の人生も時には書いて自分で歌うし、書いて頂いた歌も歌う。これはデビューの時からずっと変わっていません。自分で書く時は自分の感じることに寄っちゃうんですけど、こうやって書き下ろしていただくと、私も一人の観客みたいな気持ちで、「私にもこういうことあったよな」とか共感することから入れたり、曲によっては自分が人生を教えてもらっているみたいな時もありますし、自分が励まされる時とかもよくあります。経験のないこともあるので、人生を教えてもらうような時もあります。

■そんな中でも“同じ星を見上げて”では、作詞にも参加されていますね。

MILLEA そうですね。これは佐藤舞花さんが詞を書いてくれました。私は星のイベントなどにたくさん歌ってきましたし、やっぱり好きなので星にまつわる歌も1曲は入れたいっていう思いがあってこの歌詞を書いていただきました。その上で私の感情を乗せやすいように、サビの1行とかを私が「こういう風な歌詞はどうでしょう」という感じで、佐藤さんに提案させてもらって作り上げていきました。

■人と人の距離感を表した歌詞は、今の時代にもぴったりだなと感じました。

MILLEA そうですね。ファンの方からも単身赴任をしていて家族と中々会えないとか、コロナだから都会から実家に帰ったりできないとかっていうのお話を聞いたりしました。「離れていても会えない日々も 心はそばにいる」って大事な人に伝えたい気持ちだなって思います。