ЯeaL VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

ЯeaL『ライトアップアンビバレンツ』

■“Dead or Alive”なんてまさにそんな曲ですよね。今作は不特定多数というより、一人の人間の心奥深くにグサッと突き刺す作品にしたかったのかなと。

Ryoko したかったです!今まではすべての人に愛されたかったけど、一人をイメージして、その一人をずたぼろにしてやろうって。(笑) 抜けないくらい刺してやろうと。

■「涙殺して君殺さないで」(“Dead or Alive”)の歌詞にある通り、辛いことがあれば泣いてもいいんだよ、声を上げていいんだよ、と歌った内容で、この曲は負の感情を全肯定してくれる、生命賛歌みたいな曲ですね。

Ryoko めちゃくちゃわかってくださっているので、すごく嬉しいです。この曲を書いている時はエグいところまで切り取ろうと思って、歌詞を書くのもしんどかったんですよ。世の中の仕組みに対して、私自身が「なんでやねん?」と思うことも多いし、ヘイトを溜めている人間なので。今の時代は正しいことと、間違っていることが入り乱れているし、善意で人を叩く人もいるじゃないですか、SNSで。それで人が死んでしまったりして…それが許せなくて。目に見えるものだけが正解じゃないし、自分を生かすのも殺すのも決めたらいいと思うし、いい意味で突き放している曲なんですよ。

■「僕のことは僕で救わなきゃ生きていけないよ」と歌詞にもありますよね。

Ryoko 「誰も救ってくれない」と歌っていますからね。みんな救って欲しいと思っているだろうけど、現実は救ってくれないし、自分のことは自分で守らなきゃいけない。この曲は誰も救ってくれないけど、私たちがいるよって。

Aika “Dead or Alive”は刺さりますね。

■Aikaさんは特にどの辺が刺さりました?

Aika 歌詞です。他の曲もそうですけど、2020年に相応しい曲だなと。特に“Dead or Alive”の歌詞は全部好きですね。コロナ、SNSしかり、今年は特にSNSで誹謗中傷が多くて、そういう時代だからこそ、この曲を聴いて欲しいなと。

Fumiha 新曲5曲に関しては突き放している曲が多いなと思うけど、よく聴いたら、手を差し伸べている曲もあって。テーマを設けただけで、こんなに曲が変わるんだなと。

■やはり今作はRyokoさんが自分と徹底的に向き合って、その奥底から取り出した表現が核になっていますよね。誰かに届けるよりも前に、自分を掘り下げる作業が先にあったんだろうなと。

Ryoko “強がりLOSER”を書いた時に、自分のことを一旦救わなきゃいけないと思ったんです。それで、“Unchain My Heart”の時に…自分のことを好きじゃない自分も許してあげるというか、自分の弱さや、ダメなところを認めた上で書いたんですよ。その曲を経て、ちゃんと書けたのが“光になれない”ですね。今作の新曲も悩んでもがき苦しんで書いたものばかりなので、1曲、1曲いい意味で重いかもしれないけど、それが誰かの救いになったらいいなと。

Fumiha “Unchain My Heart”には助けられた感がある。

■それはFumihaさん自身が?

Fumiha 私がというより、ЯeaLというバンドが。一個めっちゃパワーワードがあるんですよ。「『また生まれ変わっても自分になりたい』と言える日々を生きていたい」という歌詞なんですけど、Ryokoがそんなことを言う日が来たかって。

■ちょっとお母さん目線入っていますが…。(笑)

Fumiha 8年も一緒にいるんで、凄いなと思いました。

Ryoko 今までだったら言えなかった言葉だから。自分のことを肯定できなかったけど、ЯeaLをやる中で、自分の選択肢は間違っていなかったと思うし、そう考えないと過去の自分も救われないから。自分を肯定したところからスタートですからね。

■“Unchain My Heart”は、後悔しない人生を送るためにという気持ちを歌った内容ですけど、それは“36.8”で歌っていることにも通じますね。

Ryoko その曲は一瞬の出来事を書きたくて。失恋の曲は「あの時にもう一度…」みたいな内容が多いけど。終わったことに対して、もう一度というのは違う気がして。私は後悔すらも愛おしくて、傷ついたことも宝物だと思うんです。一番怖いのは傷ついたことを忘れることだと思うから。恋愛もそうだけど、傷ついたからこそ今は上手くいっていたり、あの時はわからなかったことが、今はわかるからこそ、生きているわけじゃないですか。傷つくのは嫌だっていう人もいるじゃないですか。みんな嫌やと思うけど、それさえも愛おしく感じられたら、生きていて楽しいと思えるから。

■“36.8”では、過去の綺麗事ではない恋愛を曝け出しています。それが聴いている人にとっては転ばぬ先の杖になるだろうし、この曲一つとっても精神的にめちゃくちゃ強くなりましたね。もはや無敵感が漂っているというか、ЯeaLというバンド名通りの作品ですね。

Ryoko そうですね。自分がなりたかった人物像に近づいている気がします。

■そして、今作は“光になれない”を最後に配置していますが、そのインパクトも半端じゃなくて。歌詞のテイストも他の曲とは違いますよね?

Ryoko 初めて自分がキラキラできないことを認められたというか。メンバーが抜けた時も完璧でいられなかったし、この曲が書けたから、他の曲を書けたも同然なので。この物語のピリオドに相応しい曲かなと。

■この曲では素直に感謝の気持ちを述べているのが印象的でした。

Ryoko メンバー抜けた時に、全員いなくなると思ったんですよ。他のメンバー2人、周りのスタッフとか、みんながいなくなると思ったけど、私を信じてくれて、ついてきてくれることがわかったからこそ、「自分でいいや」と思えたので。だからこそ、みんなに感謝の気持ちを持とうと。

Fumiha この曲を大切にできへんかったら、ЯeaLは終わりやなと思います。感謝の歌も初やし、タイミング的にはメンバーが抜けた次の日くらいに歌詞だけ来たんですよ。初披露がライブだったこともあるけど、ほんまに人間として、バンドとして、感謝の気持ちは大事やなと。

Aika この曲を聴いた時に本当のRyokoが見えて、自分も悩んでいたけど、私がやりたいことはRyokoがやりたいことやな、ついていこうと心から思えました。私はバンドを始めたきっかけが…。

Fumiha 太鼓の達人が上手いから、バンドやろうって。(笑)

■そうだったんですね。(笑)

Ryoko 受験だからって一度断られたのに、私が強引に誘ったから。

Aika 以前はフワフワしていたけど、この曲をきっかけにバンドのことを考えるようになりました。“光になれない”はライブで披露するたびに、感情が出ちゃいますね。

Ryoko メンバーが抜けた時も泣かなかったのに、この曲をやった時には泣いたんですよ。「えっ、今!?」って。(笑) そこでAikaの感情も見えました。Fumihaも普段は楽しそうじゃないけど、ライブの時は凄く楽しそうなんですよ。音楽をやっている瞬間が自分たちの生き甲斐なんやなって。コロナもあって、それをさらに痛感しています。いろんな意味で大人になったし、30代になったら、どこまで広がるのかが楽しみですね。

Fumiha 人間じゃなくなってるんちゃうん?

Ryoko はははは。自分に期待できるようになったのもここ数年というか、最近ですからね。これからワクワクしています。どんな歌詞を書くのか考えると、それも楽しみですね。

Interview & Text:荒金良介

PROFILE
作詞・作曲を手掛けるRyokoを中心に2012年に結成。ポップメイカーとしてのポテンシャルの高さと圧倒的なライブパフォーマンス、その演奏力の高さが話題となりメジャーデビュー前にして「SUMMER SONIC 2015」に出演。シーンの内外から熱い注目を集める。2016年3月に『秒速エモーション』でメジャーデビュー。2017年3月、3rdシングル『カゲロウ』が、TVアニメ「銀魂.」のオープニングテーマに大抜擢され、スマッシュヒットを記録。2017年5月、1st album『19.(ナインティーン ピリオド)』は、iTunesロックチャートでTOP10入りを果たす。2018年5月、4thシングル『未来コネクション』はTVアニメ「ポケットモンスター サン&ムーン」のオープニングテーマに。2019年2月、5thシングル『強がりLOSER』は、TVアニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」のエンディングテーマになるなど、3年連続で大型アニメの主題歌を担当する。
http://www.realgirlsband.com/

RELEASE
『ライトアップアンビバレンツ』

ЯeaL『ライトアップアンビバレンツ』

SECL-2479
¥3,300(tax in)

SME Records
9月16日 ON SALE