ЯeaL VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

ЯeaL『ライトアップアンビバレンツ』

Ryoko(Vo&Gt)、Fumiha(Ba&Cho)、Aika(Dr&Cho)

後悔すらも愛おしくて、傷ついたことも宝物だと思うんです。一番怖いのは傷ついたことを忘れることだと思う

この切迫感と緊張度はどこから来るのだろうか。聴いているだけで、手に汗を握り、呼吸が乱れて、心臓がバクバクと早鐘を打つ作品だ。ガールズロックバンド、ЯeaLの2ndアルバム『ライトアップアンビバレンツ』は彼女たちにとって一大転機作と断言できる内容に仕上がっている。前作『19.(ナインティーン ピリオド)』は10代最後の音源だったけれど、今作では20代に突入し、メンバーも4人から3人に固まったことで「何か」が吹っ切れた傑作と言っていい。ここに辿り着くまでには紆余曲折、艱難辛苦の道のりがあったようで、その過程の一つひとつが彼女たちのメッセージと演奏を頑強なものにしている。メンバー3人の赤裸々な発言が今作のすべてを物語っているので、じっくりと読んで欲しい。

■今作の後に前作を聴き返すと、別バンドかと思うほどの進化ぶりです。今回は歌詞やサウンドから放たれるオーラが段違いに変わりましたね。

Ryoko 前作『19.(ナインティーン ピリオド)』は10代の終止符で、今作は3人になって初のアルバムだし、いろいろ考え方も変わったんですよ。自分たちでもめちゃくちゃ進化したと思っているので、そう言ってもらえて嬉しいです。

■進化ぶりが半端じゃないですよ、これは。

Ryoko はははは、ありがとうございます!

■前作は10代、今作は20代の作品になりますが、年齢から来る変化も大きいですか?

Ryoko 10代は生き急いでいたし、クソ食らえ根性があったけど、それが落ち着いてきたというか、認められるようになってきた。昔は歳を取りたくなかったし、10代であることがすべてだったんですよ。それが前作にも出ていると思います。3人とも歳を取ることが怖くて、10代じゃなくなることは武器がなくなることだと思っていたけど、20代になって、自分の考え方も広くなったし、ちょっと大人になれました。その変化が今は楽しくて。「2、3年後の自分はどんな伝え方をしているんだろう?」と興味を持てるようになりました。

■落ち着くというのはプラスにもマイナスにも作用しますよね、その辺は?

Ryoko ひとつに対する熱量は変わらず、しっかり積み重ねていくイメージに変わったので。今回も“Dead or Alive”みたいに殴りかかるような曲もあるので、ちゃんと共存できるようになったのかなと。

■確かに攻撃力が増している一方、地に足がついたドッシリ感も出ています。

Ryoko ふふふ、嬉しいです。

Aika 前作のドラムは叩くのに必死で、勢いでごまかす感じだったけど、今回は叩けた上でサウンド面を意識しました。でも“Dead or Alive”はほとんど勢いですね。(笑) それは意識して勢いをガーッと出して、バラードではスネアをどうやって鳴らすのかを考えて…、プレイヤーとしてちゃんと向き合えるようになりました。今まではバンドに、Ryokoに必死でついていく感じでしたけど、いろいろと考えられるようになりました。

Fumiha 私はベースのことになるんですけど、前作はAikaと一緒で弾くのに精一杯やったんですよ。「こんなのできへんやろ…」ってデモが来るんですよ。それに対して、バレへんようにどれだけ簡略化してやるかを考えていました。だけど今回はデモが来て、どれだけバレずに自分の好きなフレーズに変えるのかを意識しました。だから、演奏面では余裕が出てきたので楽しかったです。今までは楽しくなかったです。(笑)

■フル・アルバムとしては3年ぶりですが、わりと期間が空いたイメージも受けます。

Ryoko ずっと出したかったんですけどね。作り溜めてはいたけど、このタイミングで良かったと思います。新しくメンバーを入れるか入れないかを含めて、この体制が整うまで時間もかかったので。去年はЯeaLのカラー、地盤を固めようとメンバーでも話して、それができた1年でしたからね。フワフワしたままだと、バンドは続けられへんと思うぐらいまで話し合いました。10代は無我夢中で走り抜けてきたけど、これからは自分たちで何を伝えたいのか、ЯeaLはこういう色だよねって、わかりにくいところもあったので。去年は一個一個に向き合ったし、それをアルバムにも落とし込めました。言ってくれたようにドッシリ感は一番出したかった部分なので、嬉しくて笑っちゃいました。

■2019年の活動の中で見えてきたものとは?

Ryoko 固定概念がなくなったというか、去年は広がりや深みも出てきて。こうじゃなきゃいけないというところから離れて、自分たちが表現したい音楽を突き詰められたことも大きいですね。

Fumiha 去年は毛色の違うキャラの立ったアーティストと対バンすることも多くて。そこで学べたことも大きいです。

Ryoko 私がどういう曲でも書けてしまうから、ポップな曲、ダークな曲、激しい曲、ダンスロックな曲、アニソンみたいな曲、何でもできちゃうので、とっちらかっていたけど、それが自分たちの武器だし…。アニソンが強いアーティスト、シンガーソングライター、めっちゃエッジーなライブをやっているバンドだったり、どんな人たちとも対バンできるのは個性やし、すべての間口でやれるのが私たちらしさやなって。やりたいことをやりたいようにやれば、それがЯeaLなんじゃないかって。そこでみんな柔軟になったんですよ。

■自分たちでは器用貧乏だと思っていたけど、器用であることは大きな武器になるんだと考え方を切り替えられたんですね。

Ryoko そうですね。コンプレックスに思っていたけど、いろいろできることもカラーなんじゃないかって。何色にもなれるのはプラスだよねって。

Fumiha メンバーが抜けた時に、みんなめちゃくちゃテンション下がっていたから、吹っ切ることができて、これが正解やったねって。

Ryoko 私は一番打撃を食らいました。バンドに必要な存在やったし、最後までその子を信じていたから。辞めたメンバーに「もっと周りのことを考えて」、「Ryokoちゃんはサイコパスや」と言われて。私は今までめちゃくちゃしてきたんですよ。メンバーの気持ちも考えずに「やるか、やらないか」って。でも私は私でたくさんの人に聴いてもらえるバンドになりたかったから、できないのは許せなくて。それを貫いた結果、メンバーが離れちゃって。

■ああ、なるほど。

Aika (Ryokoは)めちゃくちゃシュンとなってた。

Ryoko 一時期、周りの大人やメンバーの意見を全部取り入れたら、それはそれで壊れちゃって。自分が正解やと思っていたことが、メンバーが抜けたことで本当は正解じゃなかったかもしれない。でも考えた結果、その子はその子やし、ЯeaLはこの3人で音楽を作ることで成り立つから。そこに辿り着くまでに2年半かかったかな。

Fumiha 時間がかかりましたねぇ。(笑)

Ryoko 結構ナイーブなんです。時間をかけた分、自信を持ってアルバムを出せました。この3人でЯeaLやし、自分たちがやってきたことを信じてやろうと。ただ、“未来コネクション”、“強がりLOSER”の頃は、ずっと悩んでいました。その時はピークで、メンバー全員自暴自棄でした。お酒を3人で飲みながら、朝まで泣きながら話して覚えていないという。でもそこでバンドの指針が固まったから。

■その固まった指針というと?

Ryoko 変わらずに好きなことをやっていくという、3人が信じた音楽に対して不安になる必要はないし、胸を張って届けようと。

■今作は前作以上にバラエティに富んだ曲調が揃っていますけど、1曲、1曲の楽曲に図太い芯が通っていますよね。

Ryoko 実は前作を出した時に、次のアルバムはこういうものにしたいと考えていたんですよ。テーマとしては一本芯の通った作品にしようと。前作は今までやってきたことの集大成だっただから、グチャグチャでも良かったけど。次は芯がありつつ、バラエティの幅は広げたいとメンバーにずっと言っていました。

■今作のテーマ性をもう少し具体的に言うと?

Ryoko 光と影というか、相反する感情を一つにしたくて。最初はいろんな人に聴いてもらいたくて、自分の感情を切り出して歌うことが正しいとは思えなかったんです。だって、自分の感情なんてみんなと関係ないやんって。キレイな部分だけを切り取って、キラキラしたものばかりを作っていたけど、本質はキラキラとグチャグチャのどちらもあって、その両方があるからこそ人間やと思うから。Ryokoという人間の芯を食った作品を作りたかったんです。今回のジャケもそうですけど、曖昧な揺らぎのあるものを作りたくて。キレイとグチャグチャは表裏一体やし、ひとつのことが正解だとは思えなくて。見る人からしたら、一つの正しいことも間違っているかもしれないし。だからこそ、両方の揺らぎやグラデーションだったり、光と影は切り離せない存在なので、そういう感情を表わしたくて。