■素敵です。今作はヴォーカルも魅力たっぷりでしたが、特に耳を澄まして聴いてほしいところはどこですか?
鷲尾 やっぱりサビの「歌って 歌って」という、同じフレーズを2回繰り返したところかなと思います。ちょっとキャッチーでもあるし、自分の想いをすごく込めた部分でもあるので。結構ロックなのですが、だから歌っていてもすごく楽しいと感じるし、聴きやすいと思います。難しいところはアウトロの早口な部分で、そこにも注目してほしいんですけど、気持ち的にはやっぱりサビがいいなと思います。
■歌っていて気持ちよさそうなサビでしたね。すごくアップダウンもあって。ちょっと難しそうな曲だなとも思いました。
鷲尾 単純な曲にはしたくなくて。Aメロ・Bメロ・サビ、またAメロ・Bメロ……という曲があんまり好きじゃないんですよね。(笑) だから2番には今まで来たことがないメロディを入れたりしました。自分は結構飽き性なのですが、歌っていて飽きないようにするということは、聴いていてもきっと飽きないということでしょうから。
■3分の曲でも詰め込むんですね。
鷲尾 そう。なんか、繰り返しだと飽きちゃうんですよね。(笑)
■でもその「繰り返しだと飽きちゃう」というのが、先ほどの「戻りたい地点は無い」という考えにも繋がっているような気がします。きっと性格が出ているんでしょうね。(笑) MVも撮影されたそうですが、大変だったことはありましたか?
鷲尾 結構久しぶりのMV撮影になったのですが、自分で歌詞を書いた曲のMVを撮るのは初めてだったんですよ。今まではアルバムの収録曲とかを制作したりしていたんですけど、シングルのメインになる曲の歌詞を書いて……となると、やっぱりちょっと感情の入れ方が違うなと感じながら撮りました。大変だった所はやっぱり歌唱シーンかな。衣装がドレッシーなので、裾が長くて、1回コケました。(笑) 歌唱シーンは廃校の中で撮ったのですが、イメージシーンでは街に出て夜景を映したり、背景に電車が走っていたりして、まさに「東京」という感じで、ギャップを作っています。
■仕上がりが楽しみですね。そして歌詞の中には「これが僕なんだ」とありますが、鷲尾さんが最も自分らしいと思える瞬間はいつですか?
鷲尾 家にいる自分が自分らしいと思います。私、オンオフが激しい人間なので、家での姿は人には見せられないくらいなんですよ。もちろん歌っている時やライブしてる時とかはカッコよくいたいけど、それは頑張って作り上げた自分でもあるので、素になれるかというと、素ではないし。意識を張っていて、巡らせているという意味でも、プライベートな姿では全くないんです。
■まぁ、ステージ上の姿=素の姿という人はなかなかいないと思いますけどね。(笑) 歌手を目指していた時と、歌手になった今、ギャップや「思い描いていたものとは違うな」と思うことはありますか?
鷲尾 もう、全部違います。(笑) 歌手を目指していたのは17歳くらいの頃なので、やっぱりどういう風に音楽制作して、みたいな細かいことを想像するような年齢でもなかったんですよ。そんな中で、ステージに立っていたり、テレビに出ていたりする自分の好きな歌手の活動を「憧れの世界」みたいな感じで普通に楽しんで見ていました。ですけど、いざ自分が歌手になってみると、番組を作るにしても、MVを作るにしても、曲を作るにしても、こんなに大変なのかとびっくりして。(笑) スタッフさんのただならぬ努力と、数と、お金と……そんな現実を知ると、1つ1つが素晴らしい作品に思えます。
■歌手を目指していた過去の自分に一言アドバイスできるとしたら、何を言いたいですか?
鷲尾 一言か……。迷いますね。う~ん……「周りの人を大切にしろ」ですかね。絶対に誰かが助けてくれるからね、って。
■過去の自分はその言葉を素直に聞いてくれますかね?
鷲尾 きっと自分の言うことは聞くと思います。他人から言われると聞かないかもしれませんが。(笑)
■「私は未来のおまえだ!」と言われるのもなかなか怖いかもしれませんけどね。(笑) 根本的な質問ですが、鷲尾さんにとって歌うことや音楽とはどんな存在ですか?
鷲尾 私にとって音楽は会話と同じです。人とのコミュニケーションなんです。ファンの方たちと直に伝え合う言葉は、友達とかと比べたら少ないじゃないですか。だからこそ、自分が伝えられる言葉を、直接会わなくても届けることができる唯一の手段が、音楽だと思うので。そこに自分の表現をどれだけ乗せられるかというのが大切だなと思います。
■YouTubeの動画でも、トーク動画より歌の方が多い印象がありますね。
鷲尾 トークはあんまり得意じゃないんです。MCもあんまりしたくないくらい。(笑)
■そんなことないと思いますよ。でも、そんな鷲尾さんの言葉だからこそみんな大事に聞いてくれるんでしょうね。ファンの方には今作“正解”をどのように聴いてほしいですか?
鷲尾 今作はもう本当に、自分の過去、そして今を全てさらけ出して、自分の中にある言葉を詰め込んだような楽曲になりました。だから、今まで応援してくれていた方々には「この歌詞ってあのことなのかな?」、「あの時の鷲尾ちゃんかな?」と想像しながら聴いてほしいですし、新たに聴いていただく方々には、みなさんが頑張ろうとしている時や、自分を見失いそうな時に、これが僕なんだ、これが私なんだ、良くも悪くもこれがかけがえのない自分なんだ……という気持ちを忘れないように、エールソングとして聴いてもらいたいです。
■深堀りする方には、どんな所を楽しんでほしいですか?
鷲尾 毎回サビの歌い方のニュアンスをちょっとだけ変えているんですよ。どんな感情で歌っているのか、そこに注目して聴いてほしいです。
■それにしても、Flowerの頃の鷲尾さんの歌声とはだいぶ変わったように感じます。あの頃はもう少し声が高くて、ウィスパーヴォイスだったイメージですが、今作の歌声はストレートで低めな感じでしたね。
鷲尾 そうですね。Flowerには平成時代の流行りみたいなものが詰め込まれていたような気がします。ちょっと高いピッチだったり、ちょっとシャリっとした音質だったり。そういうものがあの頃は流行っていたので、そういう所をレコーディングでも意識していました。でも今はやっぱり令和なので、今作のようにカッコつけないことに意味があると思います。
■令和ももう7年目ですからね。最後の質問になりますが、2025年ファンのみなさまに楽しみにしていてほしいことは何ですか?
鷲尾 去年はなかなか新曲をリリースできなかった分、今年はアウトプットの1年にしたいなと思っています。録り溜めているものや、新たに作るものなど、たくさん出せるように頑張るので、楽しみにしていてもらえたらと思います。
Interview & Text:安藤さやか
PROFILE
2011年に開催された「EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION 3 ~For Girls~」において選出され、Vocal&PerformerとしてFlowerに加入。同年『Still』にてデビュー。デビュー後、EXILEのD.N.Aを受け継ぐ、本格的なダンスパフォーマンスを展開するダンス&ボーカルグループ「E-girls」としても活動を開始。どこかせつなさを孕んだ歌声は聴く人の心を鷲掴みにし、これまでにm-floやDJDECKSTREAM等の作品にコラボレーションで参加。2017年10月~2019年3月まで、J-WAVE「AVALON」の週替わりナビゲーターも務めた。2020年10月、ソロプロジェクトを「伶」名義にて開始。2023年12月31日、LDHを退社。所属レーベルをLDH Recordへ移籍。2024年、地元佐賀で行われた国民スポーツ大会のイメージソング“Batons~キミの夢が叶う時~”の歌唱を担当。2024年秋には、鷲尾伶菜『Billboard Live 2024』を東京・横浜・大阪の3ヶ所で開催。現在、歌手としての活動に加え、自身のアパレルブランド“Luamoda”を立ち上げるなど多岐にわたって活動中。
https://rei-web.jp/
RELEASE
『正解』

デジタル配信リリース
https://lnk.to/reinawashio-seikai
LDH Records
3月3日 ON SALE