愛内里菜 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

25年間の積もり積もった気持ちや、ファンとお互いに受け取り合ってきた想いを詰め込んだニューシングル。

2025年3月にデビュー25周年を迎えた愛内里菜が、両A面シングル『手紙/Let me fly』を4月29日にリリース。今回のシングルには、25周年を迎え、ここまで歌ってこられた感謝の想いを綴ったバラード曲“手紙”と、ここからまたみんなと一緒に飛び立って行きたいという気持ちを歌った、もう1曲の表題曲“Let me fly”に、カップリングには既存曲の“KISS KISS KISS”と“PLAY HIGH”の2曲を加えた全4曲が収録される。
今回は歌手として活動してきた25年間を振り返ってもらいながら、今作の制作についてや、今後の活動について、いろいろと語ってもらった。

■前回の『+INSPIRE』の時以来の取材になりますが、前作は久しぶりのCDシングルリリースでしたが、反響はいかがでしたか?

愛内 オリコンデイリーチャートでは2位になって、ファンのみんなが頑張ってくれたので、ファンのみんなとの絆も深くなった気がします。リリースイベントもあんなに各地を回ったのも初めてだったんですけど、すごく良いイベントになったなと思いました。それにまたメジャーでリリースしたことで、自分自身の気も引き締まりましたし、心持ちが変わった気がします。ファンのみなさんとまたひとつ階段を一段上がれた気がしています。

■ちなみにリリースイベントで各地を回られて、新しいファンが増えている実感みたいなものは感じたりしていますか?

愛内 すごく「ただいま」を言ってくれる方が多かったんです。リリースイベントをやっているのを見て、復活していたのを知ったという方たちが多くて。(笑) 昔、私の初めてのツアーに参加してくれていた方だったり、初期の頃にCDを買ってくださっていた方たちだったりが、「なんでこんなところでイベントやってるのー?!」みたいな感じで観に来てくれて、「活動しているんだったら、ぜひまたライブに行きたい」と言ってくださる方もいたりして。それで「ただいま」と帰ってきてくださる方がすごくたくさんいたので、リリースイベントは本当にやって良かったなと思っています。

■なるほど。確かに引退されていた時期もあったから、昔ファンだった人とかは久しぶりにイベントで歌声とかを聴いたら、すごく懐かしい気持ちになりますもんね。

愛内 そうなんです。偶然店内のポスターを見てイベントに駆けつけてきてくれた方が、「一瞬で昔にワープしたような気がした」とおっしゃってくれていました。(笑)

■最近はいろいろと露出も増えてきて活躍の場も増えていますが、今は何をやっている時が一番楽しいですか?

愛内 やっぱりファンのみなさんに会えるのが一番嬉しいですね。それにファンのみなさんの笑顔を見ている時が一番ホッとします。やっぱり一度は引退してしまったというのがあるので、これから歌っていく中でもついて回ることだとは思うけど、あの時の引退ライブでみんなの涙を見てしまった分、今はそんなみんながまた会いに来てくれて、笑ってくれているのが本当に嬉しい瞬間なんです。

■今年も始まって早くも4ヶ月が過ぎてしまいますが、今年の目標や、やり遂げたいことはなんですか?

愛内 実は15年振りにファンクラブが立ち上がったんです。「愛内倶楽部」と言うんですけど。(笑) それもやりたいことのひとつだったんですけど、今年は25周年というのもあるので、今はアルバムリリースに向けて制作もしていて、無事にアルバムを発売できたらいいなと思っています。

■今もお話にありましたが、今年の3月でデビュー25周年ということで、この25年間を振り返ってみて、一番印象に残っている出来事はなんですか?

愛内 そうだなぁ……いろいろあるけど、やっぱりデビューできた瞬間が一番印象に残っていますね。それは何年経っても昨日の事のように思い出せるし。でも、年々不思議な感覚になっていくんですよ。あの時の自分は我武者羅に頑張っていて、毎日毎日いろんなことがあって、世界がどんどん広がって行く感じがしていたんですけど、今は子供を産んで、最近は子供の夢とかを一緒に語り合うようになってきて、「ママはどうやって夢を叶えたの?」と聞かれた時に、振り返ってみたら、私はただただ親に反抗して、我武者羅に歌を歌ってきただけなので、「自分が夢を叶えるために、自分自身ではどれだけのことをやってきたんだろう?」と、母親の立場で考えてしまうし、少女の頃の自分を振り返るのってすごく新鮮な気持ちにもなるんですよね。でも、そうやって違う視点でも振り返れるようになったのが成長ですかね。(笑) 振り返ってみれば、すごくいろいろな人たちに迷惑をかけて夢を叶えたんだなと思います。あの時は「私は夢を叶えたんだよ!すごいでしょ!」と、自分が主体で思っていたんですけど、今になって思うと、よくぞそれを母親が応援してくれて、父親も背中を押してくれたなと思うんです。家族や友達の支えがあってこそ実現できたことだったんだと、いろいろな人の気持ちを背負いながらこの道を歩んできたんだなと思うし、「夢を叶えた」と言えば聞こえはいいけど、自分の決めた道をただわがままに突き進んで来たんだなぁと感じます。周りのみんながそのわがままを形にしてくれたんだと思うと、あのデビューの瞬間というのは、また違った意味でも自分の中で大切に思うし、「あの時があるからこそ、今がある」と思えるので、何度も何度も思い出すシーンですね。

■でもお子さんにとっては、自分のママが愛内里菜だというのはすごく誇らしいことだと思うし、きっとママの背中を見ていろいろな夢を叶えていくんでしょうね。

愛内 子供も今年10歳になったので、私が十代の頃に歌手になるという夢を見て、それを十代のうちに叶えて形にしたので、子供も今十代になって、そんな夢の話をするようになったんだなと思います。あらためて長い事ずーっとこの活動をさせてもらえているのが、今になって思えばすごくありがたいことだなと感じますね。

■いい話ですね。愛内さんと言えば、昔はよく忘れ物をするのが悩みだとおっしゃっていたイメージがあるんですけど、最近は大丈夫ですか?

愛内 よく覚えていてくださるんですね!(笑) そうなんですよ。でも25年経っても全然変わらないんです……。私は本名が垣内里佳子なんですけど、ファンの人たちから付けられたあだ名は「うっかりかこ」ですからね。(笑) うっかりしすぎていて、何かある度にファンの人たちが「うっかりかこだから仕方ないよね……」とつぶやくのが日常です。(笑) だいたいライブの現場にも何か忘れていくし、衣装やアクセサリーもなくすし、衣装の端が開いていてヒラヒラ何かが出ていたりとかするし、SNSの告知も日にちが間違っていたり、曜日が違っていたり……そんなことは日常茶飯事ですし。人間なかなか変わらないですし、むしろ年々ボケていくので、少しひどくなってきている気さえしますね。(笑)

■そこは相変わらずなんですね。(笑) ちなみに30周年の頃にはどのような未来になっているのが理想ですか?

愛内 その頃はどうなっているのが良いかなぁ……?でも今のバンドメンバーや制作チームで音楽をやっているのがすごく心地がいいので、このままみんなで一緒に歳を取っていって、みんなで楽しい音楽を作り続けていけるのが理想ですね。そこに今のファンの人たちも着いてきてくれていたらいいですね。それに尽きますね。それに子供も小さい時から、いつも私がプロデューサーと曲を制作している現場に連れて行っていたから、レコーディングの様子を見ていたりしていて、「ママの曲を作ってみたい」と言ってくれていたりするので、もしかしたらそんな親子共演も出来たりしたら嬉しいですよね。(笑)

■トラックメイキングに興味を持っているんですね。そんな親子共演が出来たら素晴らしいですね。(笑)

愛内 ラッパーやDJもやってみたいと言っていたりもしますけどね。(笑)

■では今回のニューシングル『手紙/Let me fly』についてもいろいろとお話を聞ければと思います。今作は両A面シングルとのことで、まず“手紙”の方はバラード楽曲でしたが、こちらの曲はどのような想いを込めて制作されたのでしょうか?

愛内 “手紙”は、音楽プロデューサーの石井健太郎さんの方から、「今の愛内さんに歌ってほしい曲ができたんだ。僕からの手紙のような形で送るよ」と言われて、送られてきたのがこの曲でした。これまではだいたいスタジオで「あーでもない、こーでもない」とやりながら一緒に作ることが多かったんですけど、この曲はめずらしく完全に出来上がった状態で送られてきて、「この曲を聴いて、愛内さんが手紙を書きたい人に向けて歌詞を書いてほしい」と言われたんです。今まではタイトルも私が自由につけさせてもらっていたんですけど、「初めて僕の方で決めさせてもらいたいんだけど、どうか“手紙”というタイトルで歌詞を書いてほしい」とも言われて。それで曲を聴いてみたら、なんとなく伝えたいこととか、情景がバーッと浮かんできて、ファンの人たちの顔が思い浮かんできたので、やっぱり25周年を迎えて、ファンのみんなへの感謝の気持ちを歌詞にしたいと思ったら、スラスラと書けました。すごくシンプルなバラードだけど、「ひとつひとつの言葉がみんなに手紙のように届いてくれたらいいな」と思いながら、なるべく難しい言葉は使わず、スッと心の中にも入ってくるような感覚を大事にして歌詞を書きました。

■初めてこのタイトルを見た時に、横文字の「Letter」とか、「Mail」ではなく、漢字で“手紙”というタイトルだったので、なんかすごく手書き感があるというか、紙にペンで書いてあるようなニュアンスを感じたんですよ。

愛内 今までの私の曲でも、“Sincerely Yours”とか、初期の頃の“Dear…。From…。”とか、手紙をモチーフにした曲はあったんですけど、今回はいろいろな形で“手紙”をどう言い換えて伝えようかと考えていたんですけど、今おっしゃっていただいたみたいに、今の時代なかなか書くことがなくなってしまった“手紙”って、SNSやLINEなんかでデジタルで届くメッセージ的なものではなくて、もっとダイレクトに伝わるものがあるなと思ったんです。昔はそうやって手書きで“手紙”を書くことで、その字の雰囲気だったり形で伝わるものもあったし、そうやって書くことに時間を割いてくれたことにも意味があったりもしたし、そういった重みも感じますし、その人のその文字だからこそ残るものがあったりするので、そういった人間っぽいところをこの曲には乗せたいなと思いました。だからこそ、25年間の積もり積もった気持ちの大きさや、ファンの人とお互いに受け取り合ってきた想いを、この漢字の“手紙”というタイトルにすることによって、伝えたいことがより伝わってくれるような気がしています。

■なるほど。そういった想いもあったんですね。

愛内 もうリリースイベントでも歌っているんですけど、私はリリイベってあんまりバラードを歌うという概念がなくて、数曲しか歌えないから、やっぱりみんなが盛り上がるような曲をチョイスしないと立ち止まってくれる人もいないかな?と思っていたんですけど、この“手紙”を歌ってみたら、すごくたくさんの人たちが立ち止まって聴いてくれて、ファンのみんなもポロポロと涙を流しながら聴いてくれたりしていて。しかも通りすがりのお母さんが「あなたいい歌うたうわね」と、買ってきたお菓子や歯磨き粉をくれたりもして。(笑) こういったリリイベでバラードを歌うのもありなんだなと、自分自身もこの“手紙”の持つパワーを肌で感じられたりしたので、すごく嬉しいなと思います。

■そしてもうひとつの“Let me fly”ですが、こちらは“手紙”とは対照的にすごく疾走感のある曲でしたが、こちらの曲はどのような思いを込めて歌詞を書かれたのでしょうか?

愛内 “Let me fly”は、それこそリリイベで盛り上がることを意識して石井さんにオーダーした曲で、ギターのシャリシャリした感じとか、明るいロックをイメージした曲なんです。前作の“+INSPIRE”みたいな尖ったロックや、今までになかったような感じではなく、今までの私の曲にもあった、“I can’t stop my love for you♥”や、“FULL JUMP”みたいな爽やかなロックを最近作っていないなと思ったので、リリイベでみんなが手拍子してくれたりして、一緒に盛り上がれる曲がいいなと思って作った曲なんです。「今の想いを届けたい」という“手紙”から、「またみんなで一緒に一歩一歩進んで行こう!もっともっと高く舞い上がって行こう!」という、疾走感のあるイメージで歌詞も書きました。あとは過去のシングル曲を匂わせる言葉を散りばめたりもしているので、気づいてくれるファンの方もいたらいいなと思います。この曲はいつものように、石井さんと電話で話しながらとか、オンラインでピアノを弾いてもらいながら、「そうそうそういう感じ」とやりながら制作していったんですが、それでまた私の気分で途中で「やっぱりそうじゃない」となってしまって。(笑) 「やっと出来た!」となって、1日経ってから聴いてみたら「なんか違うかも……」となってしまって。一番嫌がられるタイプですよね。(笑) それで「もう一回作り直そう!」と言ったら、「嘘やーん!ホンマに?!」となって。(笑)

■えーっ!(笑) それでは最初に出来上がった曲とは全く違う曲になったんですか?

愛内 はい。Aメロから全部変えちゃって、全く違う曲になりましたね。(笑) なので、全く違う曲をまた作って、それが自分の中でグッときて採用したのがこの“Let me fly”です。

■なるほど。まぁでもその時に作った曲がもしかしたら今度のアルバムの1曲としてあらためて採用されることもあるかもしれませんから、いつかはその曲もお披露目になるのを楽しみにしていますね。(笑)

愛内 あはは!(笑) その時はきっと全く違う歌詞が乗ると思いますけど。