愛内里菜 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

少しでも多くの人たちに『+INSPIRE』を知ってもらいたいし、聴いてもらいたい。

来年3月にデビュー25周年を迎える愛内里菜が、そのアニバーサリーのプロローグとして、約14年ぶりの全国流通作品となるニューシングル『+INSPIRE』を12月10日にリリース。表題曲の“+INSPIRE”は、バイオリンをフューチャーしたハードロックチューンとなっていて、これまでの自分に新しい閃き「インスパイア」が「+」された、そんな1年となったことを愛内自身が歌詞に綴った1曲となっている。カップリングには、往年の愛内里菜サウンドを彷彿とさせるような懐かしさも感じさせる“Brilliant Queen”を収録。
今回は久しぶりのCDリリースとなる今作の制作についてや、初めての海外公演の話、これまた久しぶりの撮影となった『+INSPIRE』のMV撮影の裏話など、いろいろと語ってもらった。

■まずは愛内里菜さんが最近注目しているものや、気になっているものがあったら教えてください。

愛内 う〜ん、タピオカかなぁ?

■えっ!?今ですか?(笑)

愛内 本当にみんなから「今さら?」とか、「今なの?」と言われるんですけどね。(笑) 今年から中国でのライブがすごく増えたんですけど、たまたまそこで飲んだタピオカがすごく美味しかったんです。今までミルクティーのタピオカドリンクはよく飲んでいたんですけど、向こうに行ったら、ストレートティーの中にフルーツが入っていたりして、その中にタピオカが入ったものがあって、ミルクティーじゃないやつにタピオカが入ったのがすごく気にいってハマってしまって。日本に帰ってきてからも、そればっかりをUber Eatsで探して頼んでいます。(笑)

■今年の夏はいろいろなイベントへの出演もあったと思います。6月の上海での24周年ライブ、先日の京都でのハロウィンライブと、ライブ活動も精力的にやられていますが、今年活動してきた中で一番印象に残っているライブを教えてください。

愛内 それは今も話したように、今年は中国でライブをする機会が多かったんですが、初めて演ったのが広州でのライブだったんです。それが3月だったんですけど、実は私、海外での公演自体が初めての経験だったんです。デビューから24年やってきたんですけど、初めての海外公演だったんですよ。(笑) しかもワンマンライブだったし、休んでいた期間もあったから、どれだけの人が知ってくれているのかもわからなくて、バンドのメンバーたちもみんなすごく緊張しながら行ったんです。でもいざライブが始まってみたら、すごくたくさんの人たちが集まってくれていて、しかも1曲目からみんな大合唱だったんです。それもAメロからですよ!(笑) 最初は私もびっくりしちゃったんですけど、間奏まで歌ったら、そこに入っているコーラスまでみんなで大合唱してくれていて。本当にそれくらい一緒に歌うことを楽しみにしてくれていたんだというのがわかって、すごく嬉しかったです。もしかしたら国とか文化の違いで、中国ではライブは聴くものじゃなくて一緒に歌うものなのかもしれないけど、そうやって1曲目からみんなで声を出して一緒に歌ってくれるなんて初めての経験だったから、すごく感激してしまいました。しかも不安な気持ちで行った初の海外公演だったのに、逆にそんなに熱烈な歓迎をしてくれたので、スタッフなんかは1曲目から泣いちゃっていましたからね。(笑) 1曲目からフィナーレみたいな盛り上がりだったから、「その後は大丈夫なのかな?」とも思ったんですけど、最後までずっと歌い続けてくれて、本当にずっと聴いてきてくれていたんだというのがすごく伝わって、すごく思い出にも残っています。

■それはまた中国でライブが演りたくなっちゃいますね。(笑)

愛内 そうなんですよ!めちゃくちゃ楽しかったので、バンドメンバーともそのライブの夜はずっと話が尽きなかったです。きっと死ぬ前に思い出すライブのひとつだと思います。(笑) でもそれがきっかけにもなって、それから中国でのお仕事がすごく増えたので良かったです。

■なるほど。すごく貴重な経験になったんですね。ちなみに今まで数々のヒット曲を歌ってきた愛内さんですが、最近注目しているアーティストや曲などはありますか?

愛内 きっとみんなも好きだと思うんですけど、Mrs.GREEN APPLEさんの“僕のこと”という曲がすごく好きで、私もYouTubeでカバーさせていただいたんです。でも彼らはそれからどんどんと大きくなっていって、ヒット曲もたくさん作られているし、メロディの作り方もキャッチーですごいなと思いますし、新曲を聴く度に感心しちゃいますね。それに声質もいいし、踊りにもキレがあって、すごい才能だなと思います。

■最近、世間で流行っている音楽の傾向についてはどんな印象がありますか?

愛内 最近の曲はどんどん複雑で難しくなっていっていますよね。メロディとか譜割りとかもすごく難しいのに、でもそれを子供がサッと覚えるのでびっくりしちゃいますけどね。(笑) でも二極化しているなと感じます。すごく王道でわかりやすい曲も流行っているし、あいみょんさんとか優里くんみたいなね。それに韓国から入ってくるラップと歌が混ざっているような曲も多いし、昔では考えられないようなトリッキーな曲が目立つというイメージもあります。でも、みんながみんなそこに向くというような私たちが若い頃の感じとは違って、みんなそれぞれが自分の趣味を掘り下げて聴くという感じが多くなってきたのかなと感じています。

■それでは愛内さんが現在アーティストとして目指しているところは?

愛内 難しいですよね……。(笑) 時代のことを考えると「いろいろなスパイスも入れていった方がいいのかな?」とも思うけど、結果、「自分に似合う音楽をずっと演っていれば、何周かしてまた流行りが戻ってきてくれたりするんじゃないかな?」とか思ったりもして。(笑) 変わらずにこの歌声で歌っていられることも大切なのかなとも思います。だから、自分らしさを突き詰めていけたらいいのかなと思いますね。でも「愛内里菜が歌うと結局こうだよね」とか思われたら嫌やなぁ。(笑) そう思われたら負けやなと思う気持ちもあるんですよね。

■でも今回の新曲を初めて聴かせてもらった時、出だしから声にエフェクトがかかっていて、「お?!こういう感じでくるんだ」と意外に思いましたけど、次のメロディで「やっぱり愛内里菜さんはこうだよね」という、なんだか懐かしさも感じました。

愛内 懐かしさと意外性も感じてもらえたなら嬉しいです。

■では今作のニューシングル『+INSPIRE』について、いろいろとお話を聞ければと思います。全国流通盤となるCDのリリースは14年ぶりとのことですが、今作が出来上がった今の率直な感想はいかがですか?

愛内 この楽曲で14年越しのCDリリースが出来てすごく良かったなと思います。これまで「R」という名前でインディーズでしばらく活動していたので、その時の楽曲も聴き返したりもしたんですけど、この“+INSPIRE”という曲は、今までずっと一緒にやってきたバンドメンバーや、作曲をしていただいている石井健太郎さんも、変わらずにこのメンバーで作った楽曲なんです。「またあらためて愛内里菜を知ってもらうのがこの曲で本当に良かったね」と、みんなとも話をしていました。

■表題曲の“+INSPIRE”の歌詞は、愛内里菜さんが書かれていますが、この“+INSPIRE”は、歌詞先行ですか?それとも曲先行ですか?

愛内 こちらは曲先行でした。

■そうなんですね。ではこの曲を初めて聴いた時の感想はいかがでしたか?

愛内 この曲は今の愛内里菜の音楽プロデューサーでもある作曲家の石井健太郎さんと一緒に作っていった感じなんです。この曲のイメージが私の頭の中にあって、初めはバイオリニストの方と一緒にデュエットで歌おうかなと思っていたんですよ。なので、初めのAメロはその方に歌ってもらって、Bメロは私が歌って少し女性的でメロディアスなフレーズで、サビでは畳み掛けるように歌って盛り上げていくといったイメージのバイオリンロックな曲にしたくて。それにこの1曲の中で緩急をつけるような、押し引きがある曲にしたかったんです。それを石井さんに伝えて、石井さんが目の前でピアノを引きながらメロディを考えてくださって、後ろから私が「今のすごく良くない?」とか、手拍子しながら「ここはこれぐらいのテンポで刻むような感じで」とか、「そこはロングトーンにしてみたらどうなります?」とか、細かくいろいろと注文しながら一緒に制作していったんです。(笑)

■もう愛内さんがプロデューサーみたいな感じですね。(笑)

愛内 でも石井さんは私がイメージを伝えたら、その通りに「バーッ」とメロディを弾いてしまうのがすごいんです。私は「あれはどう?これはどう?」と後ろから言っているだけなので。しかも私は擬音語とかばっかりで伝えているのに、ちゃんとそのイメージやニュアンスもわかってくれたりして、すごく相性がいいんですよ。(笑)

■それはすごいですね。(笑)

愛内 今回の“+INSPIRE”に関しては、すごく明確なイメージがあったので、それを伝えながら完成させていったんです。それですごくいい感じに曲が仕上がったから、歌詞を書くハードルがすごく上がってしまって。(笑) 「絶対にいい歌詞を書いてよ!」と言われてしまったので、歌詞を書くプレッシャーが半端なかったです。

■なるほど。(笑) 歌詞はどんなことをイメージして作られたのでしょうか?

愛内 実は曲は去年の秋には出来上がっていたんですよ。どんなメッセージを詰め込もうかと考えていたんですけど、今年に入ったら初めての海外公演とかも決まってしまって、どんどん予定が埋まってスケジュールがてんやわんやになってしまって、落ち着いて歌詞を書く時間もなくて……。そんな中、中国でのライブを初体験をさせてもらったりしていった時に、おのずと出てきたフレーズが、サビの「1秒先が煌めいた 目と目合って光りだす」という歌詞で、いつもライブをする時はステージで何が起こるかわからないけど、そこに来てくれた人と目と目が合った時に、「これからどうなる?」というドキドキ感が生まれたりするんです。そんな光景を言葉に変えていくといった感じで歌詞を書いていったんです。初めはちょこっとずつそうやってフレーズが出来上がっていったんですけど、なかなかそれを全体的に歌詞に落とし込む時間がとれなくて。何回目かの中国へ向かう飛行機の中で最後は書き上げた気がします。飛行機の中ってメールも来ないし、何時間かまとまった時間がとれるので、そういう時は助かるんですよね。(笑) 日々の活動の中や、ファンのみなさんとのやり取りとかからインスパイアされて、フレーズが出てきた感じなんです。なので、すごくリアルな今の自分というか、この1年の活動の中で生まれてきた感情を歌詞にしています。私のひらめきやインスピレーションにみなさんの中で眠っていた何かを受け取って、それがプラスされて出来上がった曲なので、「+」を付けさせてもらいました。

■そうだったんですね。“+INSPIRE”のMVも拝見させていただきましたが、注目してほしいポイントはどこですか?

愛内 曲の中に緩急があるという話もさせてもらいましたけど、そいうったところを白と黒の世界観で表現していて、衣装だったり背景だったりもそれを意識していて、ドキドキ感だったり、スピード感をサウンドと共に映像でも感じてもらえたらなと思います。あとは「14年ぶりのMVだよ、ただいま!」という感じですかね。(笑)

■ちなみにMV撮影でのハプニングや裏話などはありますか?

愛内 今回のMVは、リリースイベントが終わった後、その日の夜に撮ったんです。(笑) なので、イベント終わりでファンのみんなに「この後は撮影だから、もう行くねー!」と言って、撮影現場に向かって、すごいスピードで撮ったんですよ。確か4時間くらいだったかな?

■あれはCG用のグリーンバックの前とかで撮ったんですか?

愛内 いや、違うんです。あれは液晶パネルでリアル映像の前で撮っているんですよ。

■撮影はスムーズにいきましたか?

愛内 私、MV撮影をするのも14年ぶりで、カメラを向けられて撮影しながら歌うのが久々だったので、どこまで上手く動いたり出来るか心配だったんですけど、ああいう感覚ってすぐに舞い戻ってくるんだなと。もうなんだか身体が覚えていて、「お願いしまーす」ってカメラの前に立って、曲が流れ始めたら、ちゃんと「スッ」と顔を作っている自分がいて。(笑) それを客観的に見て「すごいおもしろいな」と思いました。「こんなにすぐに入り込めるんや」と、自分のスイッチの早さにびっくりしましたね。(笑)