佐藤ミキ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

佐藤ミキ『You & Me』

誰かを信じる=自分を信じる。『裏世界ピクニック』ED主題歌で描かれた人を信じることとは?

昨年末にアニメ『魔法科高校の劣等生 来訪者編』のエンディング曲『名もない花』でデビューした佐藤ミキが、2枚目のシングルとなる『You & Me』をリリース。アニメ『裏世界ピクニック』のエンディング主題歌として書き下ろされた本作は、「相手を信じるということは、その基準を決めた自分を信じるということ」と気づいたことで、自身が変わっていく過程が描かれており、主人公の空魚の気持ちともリンクした楽曲となっている。バラードだった前作からは一転、本人がダンスも披露し、ビジュアルも大きく変貌を遂げるなど、別人かと思うほど大胆に進化した表題曲について、いずれも「あなたと私」がテーマとなったカップリングの2曲について、個人的な人生観や恋愛観も交えながら語ってもらった。

■昨年末にデビューされましたけど、自分の歌が世の中に出て感じたことはありましたか?

佐藤 このようなご時世もあって、まだ人前でライブができていないんですけど、自分の曲がサブスクで聴けるようになったり、カラオケで歌えるようになったりして、それはCDを出さないとできないことだと思うので、これで本当にスタートラインに立てたんだなと実感できました。それとYouTubeの再生回数やコメントが増えたことも、「届いているんだな」と感じられて嬉しかったです。

■YouTubeでMVを見たら、海外からのコメントが多くてビックリしました。

佐藤 そうなんですよ。エンディングを歌わせていただいた『魔法科高校の劣等生 来訪者編』は、海外でも人気があると知っていたんですけど、ここまで反響があると思わずビックリしました。Twitterのフォロワーさんも海外の方が多くて、本当に日本のアニメが世界に浸透しているんだなと身をもって体感しました。

■デビューしてからご自身の生活や気持ちに変化はありましたか?

佐藤 音楽に対する気持ちとかはあんまり変わっていなくて。それよりもサブスクで聴けるようになったとか、YouTubeでコメントをいただけるようになったとか、環境の変化の方が大きいかなと思います。

■じゃあ、生活自体はそんなに変わらず?

佐藤 はい。今も札幌に住んでいるので、お仕事がある時に東京と行き来しています。ただ、それも緊急事態宣言が出て、できるだけ回数を減らすようになりました。

■確かにコロナ以降にデビューした人は、世間の情勢に振り回されることの方が多いかもしれないですね。本題の新作についてですけど、“You & Me”はアニメ『裏世界ピクニック』のエンディング主題歌で、坂詰美紗子さんと共作で作詞されて、アニメのストーリーを意識して書かれたんですか?

佐藤 そうですね。『裏世界ピクニック』は、黒髪の女の子(紙越空魚)と金髪の女の子(仁科鳥子)が主人公なんですけど、金髪の女の子は肝が座っているというか、もう白って言ったら白みたいな子なんです。そういう性格に黒髪の女の子は振り回されるんですけど、だんだん心を閉ざしていた自分が変わっていって、積極的になっていく。だから“You & Me”も、最初は傷つくのが怖くて心を閉ざしているんですけど、相手がきっかけになって、自分が相手を信じられるように変わっていく楽曲にしました。

■これは空魚目線で描いた歌詞なんですか?

佐藤 はい。あとは私がアニメを見て「人を信じるって、どういうことかな?」と考えたので、私が思う「信じるとは何か?」ということも表現された楽曲になっていると思います。

■最初は「いずれ無くなるものなどいらない」と歌っていたのが、最後は「君を信じていくよ そう決めたわ」と、人を信じるようになっていく過程が描かれていますよね。

佐藤 鳥子は「裏世界で行方不明になった冴月を探したいから、空魚一緒に来てよ」みたいな感じで、言動だけ見ると自分勝手なんですけど、そこに信じられる要素があるから、空魚はついていくんだと思うんです。その信じようと思った部分は何なのか、空魚が少しずつ気づいていくストーリーなのかなと個人的には思っているので、そういう気持ちの変化が楽曲にも表れていると思います。

■佐藤さん自身は人を信じることについて、もともとどういう考えをお持ちだったんですか?

佐藤 『裏世界ピクニック』を見る前は、あまり深く考えたことがなくて。だから、本当に空魚と鳥子がきっかけになって「信じるって何だろう?」と思ったんですけど、自分が相手を信じる基準を決めているのは自分だから、相手を信じるということは、その基準を決めた自分を信じるということだなと思ったんです。

■それが「誰かを信じる/それは自分を信じること」という歌詞に反映されて。ちなみに佐藤さんは、ライブハウスで声をかけられたことがきっかけでデビューしたそうですけど、その時に「怪しいな」とは思わなかったんですか?

佐藤 自分が声をかけられるなんて思っていないですから、名刺を渡されてすごい調べたりして。(笑) その時は10代だったので、音楽業界というのがどういうものなのかとかも知らなくて。

■最初は小さいところから声をかけられそうなものですけど、いきなりソニーだったのも幸運だったというか。

佐藤 私、本当に運がいいんですよ。出会う人とか、いただく楽曲とか。私のいちばんいいところって、運のよさなんじゃないかって思うくらい。(笑) やっぱり楽曲をいただいたり、その楽曲を探してくださる方がいたりしないと歌えないし、アニメのエンディングを歌えるということも、ひとりでできることじゃないし。自分ひとりでは何もできないんだなと思った時に、一個才能があるとしたら、めちゃくちゃ運がいいことだなと思って。

■その歌声が引き寄せている運だと思いますけどね。(笑)

佐藤 いやいや、本当にまわりに恵まれたなと思うんです。でも、私には歌うことしかできないから、そういう恩を返そうという気持ちが、がんばろうっていう原動力になるというか。それが私が歌う理由でもあるのかなと思うんです。

■素敵な理由ですね。

佐藤 最初は本当に歌が好きなだけで活動していたんですけど、だんだん関わってくださる人が増えるにつれて、自分の活動で返していきたい気持ちが強くなって、仕事として歌っていきたいと思うようになったのかなって。ただ歌いたいだけだったら、趣味とかで全然いい話なので。

■さっきデビューして気持ちに変化はありましたか?と質問して、変わっていないと答えていましたけど、めちゃくちゃ変化あるじゃないですか。

佐藤 ははははは!(笑) 気づいていなかった!いっぱいありました。

■話を戻しますけど、佐藤さんは人を信じられるタイプなんですか?

佐藤 仲良くなりたいと思ったら、距離を詰めるのは早いと思うんですけど、本当に信じられるようになるまでには、時間がかかるかもしれないです。でも、何か信じられないなと思う出来事がない限りは信じられるというか、基本的には人を信じられる自分でいたいなと思っています。たとえば自分が困った時に一緒にいてくれるのかとか、その状況にならないとわからないじゃないですか。

■簡単に判断できるものではないですよね。

佐藤 難しいです。今はこう言っていますけど、5年後、10年後には、全然違う考え方になっているかもしれないし、それは日々変わっていっていいものかなと思っていて。もしかしたら半年後に悲しいことがあって、誰も信じられなくなっているかもしれないですから。でも、人を信じられないって寂しいことだなと思うので、できるだけ信じられる自分でいたいなと思います。

■別に変わっちゃいけないわけでもないですしね。

佐藤 そういうものの見方とか考え方とか、変わらなかったとしても、新しい視点とかは日々生まれると思うんです。だから歌詞を書くのが楽しくて。3カ月前はこう書いていたけど、今だったらこう思うなとか、それでまた違う歌詞ができるし。だから最初にこう書いたから変えちゃいけないとかは、あまり思わないようにしています。嫌だなと思ったら、「違うなと思っちゃいました」と言えばいいのかなって。

■来年くらいになったら、人間不信について歌っているかもしれない。(笑)

佐藤 可能性はありますね。(笑) でも、裏切られたとかって、自分が思っていたものと違ったから裏切られたと思うだけで、相手は最初から何も変わっていなかったかもしれない。それは自分が見誤っていただけだから、人間不信とは違うのかなと思います。

■大人な考え方ですね。

佐藤 いやいや、全然全然。めちゃくちゃ子供です。(笑)