悩んでいる時って、なにかが変わるサインなんだなって思います。
2021年、ディズニープリンセスの祭典「アルティメット・プリンセス・セレブレーション」の日本版テーマソング“Starting Now 〜新しい私へ”の歌唱に抜擢され、注目を集めた清水美依紗。そんな彼女がメジャーデビューシングル『High Five』をデジタル配信リリース。本インタビューでは、その際の思いや、歌手を目指すきっかけとなった出来事についての話も訊きながら、新曲に込めた思いを語ってもらった。強さも弱さも受け入れたいという等身大の清水の言葉は、楽曲と同様に多くのリスナーの心を解きほぐすのではないだろうか。
■清水さんが歌手になろうと思ったきっかけをお聞きしてもいいですか?
清水 きっかけは中学の時に入った合唱部ですね。合唱コンクールで舞台に立って、みんなの前で歌うっていう経験をして、人前で歌うことってすごく楽しいんだと思いました。でもそれとは別に歌手になりたいっていう決め手があって。中学2年生の時に母がやってみないかと言ってくれたミュージカルのワークショップがあったんですけど、そこでソロを任されて。初めてマイクを握って1人で歌った時に、「ああ、これだ!」って気付きました。学校とはまた別のワークショップだったんですけど。
■それまでも大人数で歌ってはいたけど、ソロの方がしっくりきたということですか?
清水 そうですね。歌うことだったり、表現することが好きなんだなって。当時はちょっと内気だったんですけど、そこですごく自分を解放できた感じがして。そこで歌手になりたいと思いました。ヤングアメリカンズっていう、ボランティアで全世界にミュージカルや表現の楽しさを伝える活動をされている方々が海外から来ていたので、進行している人たちもアメリカ人だったり、いろんな国の人がいて。普段の学校っていう狭い空間では中々自分を出す機会ってないし、出すのにも勇気がいるじゃないですか。でも、そこではヤングアメリカンズの人たちが「自分をどんどん出していいんだよ」みたいな環境をすごく作ってくれて。たったの3日間だったんですけど、人が変わったみたいに表現するのがすっごい楽しくて。そこで自分を解放していた時に、ヤングアメリカンズの1人の方が「ソロで歌ってみない?」って言ってくれて、レ・ミゼラブルの“On my own”を歌ったんですけど、それが本当にきっかけですね。
■当時は内気だったという言葉もありましたが、その後の生活にワークショップでの経験が反映されたりもしましたか?
清水 その3日間がすごく夢のようで、また学校に行ったとたんに一気に現実に戻されました。(笑) 学校ではあまりさらけ出せなかったことを、音楽や歌で出していけたので、それが自分を繋ぎとめるようなものになっていきましたね。
■高校卒業後にNYの学校に進学したのも、ヤングアメリカンズで本場の空気に触れたからだったんですか?
清水 歌手になりたいっていう気持ちを持った時に、まずは基礎を学びたいと思ったので、高校は音楽科のある学校に通って。その時に世界で活躍したいっていう夢を持ったんです。それで世界に行くには何をすべきかと考えた時に、やっぱり海外に行くのが一番だと思って。なので、表現を学ぶためにミュージカル科のあるNYの学校に行きました。今はミュージカルでも歌手としても活躍したいと思っています。
■NYに行くのに不安な気持ちなどもありましたか?
清水 すごく不安でした。1人で飛行機に乗らなきゃいけないっていうのも不安で、飛行機の窓から見える景色を見ながら泣いたりとか。何が起こるか全く分からない状況だったので、行ってからも不安でしたし、学校が始まってからもずっと不安でしたね。最初は上手くやっていけるかなっていう不安もあったんですけど、授業受けていてもついていけているのかなっていう不安だったりとか、NYってすごく才能のある人がいっぱいいて、すごくクリエイティブでみんな個性がはっきりしているので、その中で自分はどうやったら自分でいられるんだろうとか、すごく考えましたね。
■影響を受けた音楽はミュージカル以外だと何がありますか?
清水 やっぱりディズニーの音楽ですね。ディズニーは作品ももちろん素敵なんですけど、音楽が美しくて。いろんなジャンルがあるじゃないですか。ちょっとジャズっぽい曲だったりとか、アリエルみたいにポップな曲だったり。それらにすごく影響されましたし、今もすごく影響されていますね。ずっと聴いています。
■それこそ「アルティメット・プリンセス・セレブレーション」の日本版テーマソングのお話がきた時は、すごく驚かれたと思います。
清水 そうですね。ずっと夢だったディズニーで、今度は自分がみんなに夢を与えるって、すごく不思議な感覚でしたし、この“Starting Now 〜新しい私へ”は訳詞もさせていただいたんですけど、自分が歌った歌や、自分が訳した詞がいろんな人に届いているって思うと不思議でしたね。中学生の頃に自分を解放していなかったら、きっとこの夢はなかったと思うし、きっかけを作ってくれたお母さんにも感謝しています。なんか、「本当に音楽が好きなんだなぁ」って感じました。
■訳詞をするっていうのは、普通に詞を書くのとはまた違った感覚でしたか?
清水 そうですね。訳詞自体が初めてだったので、どうやればいいか初めは全くわからなかったんですけど、元の英語の歌詞をしっかり読んで、同じニュアンスで違う言葉を日本語にはめてみたりとか。そのまま訳してしまうと譜割りが合わないので、それも考えつつ、でも元の詞をリスペクトしながら、どうやって訳すのかをチームですごく考えながら意見を出し合って作り上げました。大切な歌詞です。
■訳詞の経験で得たことで、今、他の曲の作詞をする際に活きている部分などはありますか?
清水 新しく歌詞を書くってなると、訳詞のようなベースがなくて、自分の感性で作らなきゃいけないので、まったく別物ですね。やっぱり訳す前の歌詞があると、そこに頼れたものもあったので、「一から歌詞を作るってこんなに大変だったんだ……」って感じました。(笑) でも、コンセプトをしっかり細かく決めれば、歌詞って浮かんでくるんだなって。“Starting Now 〜新しい私へ”ではコンセプトがすごくはっきりしていたので、その時と同じように、違う曲でもしっかりとコンセプトを決めるのは意識しています。
■そして今回いよいよメジャーデビューということですが、今の気持ちはいかがですか?
清水 情報を解禁するまではまったく実感が湧かなかったんですよ。でも「メジャーデビューします」っていう発表をしてからは、いろんな人の反応を見たり聞いたりして。TikTokに“High Five”のサビの部分だけ先行納品したんですけど、その反応を見ると、「早く聴きたい!」って言ってくれている人がいたり、「おめでとう!」って言ってくれる人もいたり、今は早く届けたいなって思います。
■“High Five”は応援ソングですが、デビュー曲ということも踏まえての曲作りだったんですか?
清水 デビュー曲だから応援ソングというのは私は全く意識しなかったですね。今の自分自身を、等身大の自分を表現できたらいいなとは思っていましたが、デビュー曲だからっていうのはあまり考えてはいなくて。でも、自然といい方向の曲ができあがったので、「デビュー曲にぴったりだね」とかはすごい言ってもらえます。新しい環境で頑張る人にもいいかなと思いますし。あとは自分のSNSにも、DMで「自分に自信がないんですけど、どうしたら美依紗ちゃんみたいに自信が持てますか?」っていうコメントがいっぱい来るんです。それを「なんで私に言ってくるんだろう?」ってずっと考えていたんですけど……。自分もそのDMをくれる子たちと同じように、自信がない部分があって。“Starting Now”も一歩踏み出すのを後押しする曲だったので、それの影響かもしれないんですけど、自分も普段、すごく自信があるかと言われたら、自信がない方なんですよ。「どうしたら自信を持てますか?」って聞かれても、「私が知りたいです!」って返したくなるくらい。(笑) でも“Starting Now”を歌っている時はすっごく楽しくて、歌っている自分が大好きですし、そういう意味では自信を持てる曲なので、デビュー曲もみんなが自分を肯定できるような曲がいいなって思って。自分も自分を肯定したいですし、やっぱりいきなり自信を持とうって思っても持てないじゃないですか。今の自分自身を認めてあげて、受け入れることが自信に繋がるんじゃないかなと思って。なので、これはいつも応援してくれる人たちへのメッセージでもありますし、「自分自身を認めてあげていいんだよ、ありのままでいいんだよ」っていう思いを込めて作りました。
■DMが来ることで知ったファンの思いも反映されているんですね。
清水 そうですね。歌詞の中にもあるように、手を取り合って、自分を受け入れて繋がっていこうっていう曲です。人ってなにか辛いことがあったりすると、辛くないふりをするじゃないですか。でもネガティブな自分も、ポジティブな自分も、どっちも同じ自分でありのままの姿だし、それを認めればもっと受け入れられるんじゃないかなと思って。MVではそういう自分の弱さも出していったりとかして、すごくこだわりました。人間、弱くてなんぼだと思うんですよ。本当に強い人っていないので、弱さって美しいじゃないですか。なので、そういう部分を自分も認めたいなと思います。一緒に一歩踏み出す感じです。