真空ホロウ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

真空ホロウ『たやすくハッピーエンドになんかするな』

このアルバムが突き刺さる方と音楽を通して一緒に歳を重ねていきたい。

真空ホロウが約2年ぶりとなるアルバム『たやすくハッピーエンドなんかにするな』を3月20日にリリースした。前作に引き続き“女性心”をテーマに据えつつも、強力なコラボ布陣や、より研ぎ澄まされた感性によってさらに深みを増した渾身の5曲が揃った。
今回は真空ホロウのボーカル/ギター松本明人、サウンドプロデューサーとして新たに迎え入れた高慶“CO-K”卓史、筆者および今作の作詞に携わる矢作綾加の3人で、本アルバムについて自由な切り口で語ってみた。

矢作 今日は座談会形式で、質問原稿も作っていないので、ざっくばらんに話せればと思います。いつも身内で話しているみたいな感じで。(笑) 高慶さんとは私、選曲会で初めてお会いしましたよね?

高慶 え、そうだっけ?選曲会かぁ……懐かしいね。夏に真空ホロウのライブを観てから、すごいスピード感でいろいろと進んでいった気がする。

矢作 高慶さんはずっと前から真空ホロウのことを知っているわけじゃないですか。それこそ今まで何度もライブを観ているのに、ここ数ヶ月でサウンドプロデュースをするに至るほど距離感が縮まったというのは、どういった経緯だったんですか?

高慶 あ、ちょっと恥ずかしい話しちゃっていいですか?(笑)

矢作 是非してください。(笑)

高慶 僕、ライブが終わった後に人と話をするのがあまり得意じゃなくて。職業柄ステージに上がってギターを弾いていると、ファンの方は喜んでいたとしても、人によって見方は違うし、お世辞を言う人も多いからね。反応をうかがうのが怖くて。僕自身がそうだから、真空ホロウともずっと会わないでいたんですよ。今までのライブも普通に良かったんだけど、ましのみさんとやった去年の夏のライブがもう震えるくらいに良くて。終わった後、真空ホロウのマネージャーに「僕は真空ホロウのこんな未来が見えました!」って勝手に熱く語っちゃって。(笑) その時はこの気持ちを会って直接伝えたいなって素直に思えたんだよね。その流れから、じゃあ一緒にやってみるかって。

矢作 その時のライブって、普段のライブと何がそこまで違ったんですかね?

高慶 僕のライブでの音楽の聴き方として、まずメロディーがあって、詞があって、っていうのがあるんだけど。そういうのを全部通り越して、発するエネルギーが尋常じゃなかったんですよね。もう完全に食われちゃった。よく圧倒的な自然とかを見た時に声が出なくなる感覚ってあるじゃないですか。ああいう感じに近かった気がするな。

矢作 明人くん、それは自覚ある?

松本 へ!?

高慶 なさそう。(笑)

松本 いつもと一緒のつもりだったけど……。たぶんいつも僕らが出ているライブとはちょっとジャンルが違う人たちが出ていたから、「負けてたまるか」ってオーラが出てたのかも。(笑)

高慶 なるほど。もしかしたら、そのヒリヒリした感じが伝わってきたのかもしれないな。

松本 このアルバムを出すことになって、最近ラジオに出させて頂いたり、インタビューして頂いたりしているじゃないですか。そのヒリヒリ感っていうのは、作品においても伝わっている気がしますよ。

高慶 ああ、それで言うと、僕の感覚的に、美と狂気が融合した瞬間にゾクッとくるんですよ。映画で言えば、たとえば戦争映画とかで周りは血の海なのに、映像がスローモーションで流れていて、バックに神々しい讃美歌的なのがかかっていたり。そういうのが真空ホロウにはある気がして。今回、女性心をテーマにした曲をやるにあたって、そういう僕の得意分野と上手くマッチしたのかなって思っていますね。

矢作 なるほど。今更だけど、私は真空ホロウに制作関係でガッツリ関わるようになったのって前作のアルバムからじゃないですか。そもそも、どうして女性心を歌の主軸として掲げるようになったの?そういえば、そこを知らなかったなと。(笑)

松本 自分の気持ちの内側を吐露したところでなかなか伝わらないっていうのが、どんどん分かっていって。普段から言葉足らずだし、それが歌にも出ていたんですよ。でも僕はマスに向かって音楽をやっていきたいっていう気持ちがもともと強かったから、伝わらないことをやっていても意味がない。そこからいろいろ話し合って、カバーもいっぱいするようになって。そういう中で、自分自身の気持ちよりも、違う人格の気持ちを歌ったほうがいいなって。作曲家、歌い手として世に出ていきたいという想いが強くなったので、振り切った感じですね。

矢作 性別が女性なのはどうしてなの?

松本 僕の好きな松任谷由実さんとか中島みゆきさんが、男性の気持ちを歌っていたりして、その逆をやってみたかったっていうのもある。あとは、僕がどういう歌手なのかというのを、よく玉置浩二さんを例に挙げられることが多かったので、それもあるかな。玉置さんは女性心を歌っていたりするんですよ。

高慶 憑依型なのかな。真空ホロウのサウンドとか歌って、「誰かに共感してもらえる音楽をやっています」なんていうレベルじゃないのよ。女の情念とか狂気みたいなのがもう明人くんの中にある気がする。(笑)

松本 小さい頃から女の子みたいに育てられたのもあるのかな?女の子が欲しかったみたいで。(笑) 昔から女友達のほうが多かったし。

矢作 ライブで泣きながら“おんなごころ”を歌っている時もあったもんね。

松本 そうそう。でもここ最近、それじゃだめだなって。やっぱり泣いてしまったら歌手として良くないんですよ。だから制御するようにしていますね。制御しないと泣いてしまう。