しゅーず VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

しゅーず『Night Wander』

しゅーず、都会の夜を映し出した初シングルとボカロカルチャーの変遷を語る

歌い手、しゅーずが初のシングル『Night Wander』を1月5日にリリースする。前作のアルバムに続き夜をモチーフにした今作は、作詞を担当した表題曲に加え、それぞれボカロPであるポリスピカデリー、八王子Pからの提供曲の計3曲という豪華な構成。今1stシングルに踏み切った理由や、様々な夜を映し出すために歌い手として考えていること、都会の夜に抱いている印象などから新曲の魅力を紐解く。また12年間歌い手として近くで見てきた歌い手・ボーカロイド界隈の変化についても話を聞いた。

■2009年から活動されていらっしゃるので、だいぶ前の話にはなってしまいますが、1stシングルのリリースということで、改めて活動を始めたきっかけから聞かせてください。

しゅーず すごい軽いノリだったんですよ。ニコニコ動画で活動を始めたんですけど、友達とカラオケ行って、「この曲良いな」と思った曲がたまたまボカロの曲で。「ボカロって何?」って思って調べて、やってみようみたいな感じでした。

■まだ「ボカロって何?」の頃ですもんね。それから12年後の今回のタイミングで1stシングルに踏み切ったのには何か考えがあったりしたんですか?

しゅーず 今まで何作かアルバムを出させていただくことはあったんですけど、「そういえばシングルって出していないね」みたいな話になって。3曲目の“モノクローム//ディストピア”っていう曲が、元々ahamoさんの配信ライブでやるために昨年の6月くらいに作っていただいたものなんですけど、リリースしていなかったので、「この曲好きなのに聴けない」っていう人がすごくいる状況になっちゃっていて。でもアルバムを出すにはちょっと早すぎるし、シングルがちょうどいいのかなと思って今回はシングルになりました。

■初めてのシングルはアルバムとの違いも感じたと思いますが、いかがですか?

しゅーず そうですね。アルバムは曲数が多いのですごく時間かかるんです。曲を録ったりするのは結構サクサクと終わるんですけど、まとめの作業に時間がかかったりとか。仕事がもう一個あるので、そっちと並行してやるとどうしても進行が滞るから、年単位で考えないといけなくて。でもシングルになると曲数が少ないのもあって終わりが見えている状態だったので、気持ちとしては楽な部分はありました。でもファンの方は「なんで今になってシングルなの?」って思うのかな?っていう不安もあったり、「どうなのかな……」とも思いましたね。

■早く世に出せるっていうのはシングルのいいところですよね。1曲目“Night Wander”では作詞もされています。前のアルバムでも作詞・作曲をされていますが、今回はその流れを踏まえての作詞だったんですか?

しゅーず そうですね。前回、作詞・作曲した“Velvet Night”の評判がよくて。でも制作する時にすごく根詰めちゃって結構しんどかったので、今回も実は「僕が作詞します!やりたいです!」みたいな感じの気持ちではなかったんです。(笑) それで今回はtokuさんに曲を書いてもらうと決まった時に、tokuさんのユニットのGARNiDELiAではボーカルのMARiAさんが歌詞を書いているっていうのもあって、歌詞を書く人がいない状態だから、「自分でやってみたら?」という話になって。それで書くことにしました。

■曲を先にもらってから歌詞を乗せるという形だったんですか?

しゅーず はい。曲に関してはライブでよくカバーさせてもらっているGARNiDELiAの“PiNK CAT”という曲があるんですけど、それがライブでも人気の曲っていうのもあったので、「tokuさんのサウンドで好きにやってください」とお願いしました。ZOOMで打ち合わせをさせてもらった時には「これくらいの音で気持ちよく歌って、たまにファルセットが入るくらいが色気が出ていいと思う」と言ってもらったので、メロもそういう感じにしてもらって。

■しゅーずさんの歌は色気があるとよく言われていますが、それはご自身でも意識しているんでしょうか?

しゅーず 何枚目かのアルバムでそういう歌い方をする曲が人気になるなって、気付きましたね。それにがっつり寄せたのが前作のアルバム『Velvet Night』で、夜をテーマにしていて。今回のシングルのタイトルをつける時も、「Nightをつけた方がいいんじゃないか?」とか、少なからず自分でも方向性を寄せている気はしますね。

■歌詞を書く段階で歌詞の内容は先に決めていたんですか?

しゅーず 実はそうでもなくて。楽曲をいただいた時に「歌詞をどうしようかな……」ってなっちゃって。でも「僕のファンはこういう感じの歌が好きだよね」みたいな感じの世界観で考えて、形にしました。

■2曲目の“Little Rain”は、ポリスピカデリーさんの曲ですね。ポリスピカデリーさんとはどういう繋がりがあったんでしょうか?

しゅーず 『Velvet Night』の時にいただいた“EXPLORER”っていう曲があるんですけど、すごいシティポップな感じでお洒落でカッコいいんです。なので、「今回もお願いできませんか?」って言って書いていただきました。

■書いていただけるからには「こういう曲がいい」、みたいな希望は伝えたりしたんですか?

しゅーず いや、「もう好きにしてください!」って。僕のツボにハマる曲が多いので、「全然なんでも大丈夫です」とお伝えしました。でも、この曲のデモがあがってきた時は「もう最高です!」って思いました。

■トラックはシンプルで歌が目立ちやすいのかなと思ったんですが、歌い方で工夫された点はありますか?

しゅーず 収録する時は「みんなどんな時間帯で聴いているのかな?」ってイメージしながら歌うことが多いです。解釈の仕方は人それぞれ違うと思うんですけど、個人的にこの曲は明るめな夜の雰囲気がしていたので、重たい感じよりも疾走感があるような形で歌いました。聴き方によっては夜じゃなくて朝方でもいいかもと感じたので。

■聴く時間帯をイメージして歌うのは面白いですね。

しゅーず 全然想像できない歌詞ももちろんあるんですけど、ある程度ストーリーがある歌詞だと、そこを想定してニュアンスを出せればいいなと思って。「正解はこうです」っていうのを出しているわけではないので、聴いている方が好きにいろんな想像をしてくれたりするんですけど、そのコメントを見るのが楽しいですね。

■コメントでも曲の内容を想像する感想が多いんですか?

しゅーず そうですね。「こんなタイミングで聴いていたい」とか、「首都高走りながら聴きたい」とか。聴いてくださる方が曲の世界にハマって聴いてくださっているのが分かるコメントもあるので、そういうのは嬉しいですね。

■今回のシングルは特に、どの曲も都会のお洒落な夜という印象があります。時間帯だけでなく、景色のイメージを膨らませたりすることもあるんですか?

しゅーず そうですね。漠然と夜って言ってもいろんな夜があるんですけど、僕は多分都会に憧れているんだと思うんですよ。元々僕は出身がすごい田舎で、星が超綺麗なところで生まれ育ってきたんですけど、それを隠してシティボーイぶっているので。(笑) なので、ネオンが綺麗とか、夜景できらきら光っているとか、首都高でライトが走っていく感じとかに憧れがあって。そういうのも反映されていると思います。

■しゅーずさんに感じる都会感は、都会で育っていないからこそのものだったんですね。3曲目の“モノクローム//ディストピア”は、八王子Pさんから提供された曲ですね。

しゅーず これはahamoさんの企画の「つながる詩の日」で作ったいただいた曲なんです。ボカロPとボーカルがマッチングして曲を作って、配信ライブで披露して、優勝ペアを決めるっていうコンペみたいな企画だったんですけど。

■制作の段階から話し合ったりはされたんですか?

しゅーず 他のペアは「曲を作るところから一緒に話したいです」っていう人もいたみたいですけど、僕と八王子Pさんは、お互いがかなり人見知りなので、直接お話するのは収録の時だけでした。コンペのテーマが「新しい世界に踏み出す人への応援歌」だったんですけど、「できあがったものは全然違うな」と思ったんです。八王子Pさんご本人もそう言っていて。個人的にはテーマがどうこうっていうよりは、曲がめちゃくちゃカッコいいっていう印象が一番強かったです。