SPICY CHOCOLATE VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

SPICY CHOCOLATE『一度きりの feat. 寿君, APOLLO & RAY』

ほんの少しの一つの優しさでも生きた証を残せたことになる

多彩なアーティストをフィーチャリングするスタイルで話題を呼んできたSPICY CHOCOLATEが、配信シングル『一度きりの feat. 寿君, APOLLO & RAY』をリリース。さまざまな制約を受け誰もがもどかしさを感じている現在、それでも一度きりの人生を誇れるようそれぞれの生きた証を見つけようと歌われる今作には、自らの決意はもちろん、すべての人への願いが込められている。今年は無観客生配信というかたちで開催された自身主催の「REGGAE JAPAN FESTIVAL’20 presented by 渋谷レゲエ祭」の話からこの1曲に込めた想いまで、KATSUYUKIにたっぷり話してもらった。

■「渋谷レゲエ祭」今年は無観客での配信となりましたが、いかがでしたか?

KATSUYUKI 今年は11回目の開催で、最初はお客さんを入れてグッドバイブスの交換をしたいと思っていたんですけど、状況も日に日に変わり、先が見えなかったので、無観客にしようということになって。そこからどうしていこうかと考えた時、みんながみんな不安や恐怖やいろんなことを感じた数ヵ月じゃないですか、これからどうなっちゃうんだろう…?って。

■誰も経験したことないことですし、不安や恐怖しかなかったですよね。

KATSUYUKI その中で、僕らはエンターテイナーとして、アーティストとして、何ができるかと考えて、みんなに元気を与えたいという想いがまずいちばんに出てきたんです。そこでもちろんお金をとっての配信というのもできなくはなかったんですけど、今年はレゲエのアーティストみんなで一丸となって、レゲエで日本に元気を与えるというスローガンで無料でやらせてもらいました。結果、たくさんの人から「元気をもらいました!」って言葉をたくさんもらい、やって良かったなと思いましたね。

■クラウドファンディングもされていましたが、無料にこだわったのはやはり今の状況や待ってる人たちの気持ちを考えてのことですか?

KATSUYUKI 俺が無料でやりたいって言ったら、スタッフのみんなは「無料ですか!?」ってなるわけですよ。会場も借りて、今年は過去最高の出演者をブッキングさせてもらっているので、お金も掛かるし、制作費も掛かるし、運営していくにあたってはやっぱり「どうすんの?」ってなるんです。なので、クラウドファンディングもやらせてもらったんですけど、それで制作費が全部埋まるかといったらそんなことはなく、全然足りない。そこで今年は心意気かなって。こういう時だからこそ、僕らがやるべきことは支えてくれたファンの方たちへの恩返しじゃないかなと、そう僕は思って。

■なるほど。

KATSUYUKI レゲエという音楽に出会うことで人生が180度変わって、今もこうして音楽を発信させてもらえている。ただ自分が好きで立っているわけじゃなくて、みなさんに立たせてもらっているんですよね。だから、今回はレゲエに対する恩返しもそうだし、支えてくれている人たちへの恩返しという意味も込めて、無料でやろうって。

■その心意気は開催を待っていたファンの方をはじめ、不安で過ごしていた方たちにも伝わったんじゃないかと思います。

KATSUYUKI 2,000人くらいしか入れないところでやったんですけど、その配信を55,000人くらいの方が観てくれたってことは、きっとそういうことだったんでしょうね。台所事情的には大変だったかもしれないけど、損をして徳を取った感じです。

■そこへ至るまでの気持ちはどういうものでしたか?

KATSUYUKI まずは「え?できないの?」って思ったし、「続けられなくなっちゃうの…?」って思いましたよね。会場も押さえていてキャンセルできないし、そういう意味でも「どうするの?」って。でもそんな中で、どうすることがいちばんいいのかって考えた時、みんながやれないからこそ僕が前に出なくちゃと思ったし、みんなが引くからこそ僕らが前に押さないといけないなって。それこそ逆をいかなくちゃいけないと思ったんです。レゲエのフェスって、全国各地で季節毎に毎年開催されているんですけど、どのフェスも今年は中止になっちゃったから、これはもう全滅させるわけにはいかないだろうってことで、僕らが全部引き受けてやろうぜって、そういう気持ちでやらせてもらいました。

■出演された方はもちろん、それ以外の方の気持ちもここに全部乗ってたんでしょうね。

KATSUYUKI 一致団結したときのパワー、ひとつの目標に向かって力を合わせた時のパワーというのはもう本当にすごいんですよ。ひとりが「がんばるぞ!」っていうのも、もちろん強いんですけど、今回は39組のアーティストに参加してもらって、その全員ひとりひとりがそういう同じ気持ちになっていたので、想像を越えるようなパワーが生まれるんです。そのパワーを持って、全国にバイブスを送ることができたから、みんなに元気を送ることができたかなって。

■配信だからこそ、観れた方というのもきっと多いのではないでしょうか?

KATSUYUKI 10何年前はお客さんとして来てくれいてたけど、結婚して子供もできて、なかなかライブには行けなくなっちゃったって方も多いんですよね。でも、「無料で配信でやってくれたから、ひさびさに楽しめました」って声もたくさんあって。ああ、やって良かったなって、それはこっちも感動しました。

■今回の“一度きりの”は、その「渋谷レゲエ祭」で初披露されたんですよね?

KATSUYUKI そうですね。こういう状況下だったので、最後のレコーディング以外は全部リモートで制作するという初めてのプロセスを歩ませてもらって、曲のテーマを打ち合わせするのも、仮歌録りも全部リモートで、最後のレコーディングだけ3人で集まってレコーディングしました。レゲエというのはバイブスだし、お互いの目を見たり、肌感を感じながら「こういう歌詞の方がいいんじゃねぇの?」「こういうメロディのほ方がカッコよくねぇ?」って意見交換をしていくのが、SPICY CHOCOLATEのやり方なんです。でも今回はリモートで6月~8月までやりとりをして、9月にレコーディングをして、レゲエ祭で初披露に至ったと。

■どういう想いで作られていったんですか?

KATSUYUKI SPICY CHOCOLATEとしてこれまで100曲以上の曲を作っているんですけど、いつもアーティストのみなさんがスキルフルに歌ってくれるので、上手すぎて、真似しようと思っても難しいんですよ。カラオケで歌おうと思っても声が高すぎたりして、歌うのが難しい。なので、今回はカラオケで歌いやすい曲を作りたい、それがまず1つ目のテーマでした。次は、常日頃から生きた証を残したいということを言っているので、自分たちの歩んできた道を誇れるような、生きた証を残せるもの、これが2つ目のテーマです。そして、ひとりでも多くの人たちの耳と心に響いてくれるような音楽を今回も作りたいよね、というのが3つ目のテーマ。この3つをテーマにして作っていきました。

■この時期だからこそのテーマでもありますか?

KATSUYUKI もちろんそうです。「一度きりの人生、悔いのないようにお互いがんばろうぜ!」って。

■寿君さん、APOLLOさん、RAYさんとやられたのは?

KATSUYUKI この3人は、過去にも僕の作品に参加してくれていて、気心知れた連中なんですけど、一緒に1曲を作るというのは初めてのことなんですよね。それぞれの良さもわかっているから、それぞれいい役割分担をしてもらえるだろうなというところから、結果それぞれが上手く映えるように登場してくれて、この曲を盛り上げてくれています。

■気心知れた方たちという点で、リモートでのやりとりも上手くできたのでは?

KATSUYUKI 結構違和感はありましたけどね。誰かの顔が急に大きくなったりして、「どういうこと?」みたいな。(笑) まずはZoomの使い方から始まり、そこから「こういうふうに歌詞を書いてみて」とか、「こういうふうに歌ってみて」とか、ディレクションもしていくことができていって。なので、こういうやり方でもできなくはないんだなっていうのはちょっと思いました。

■あくまでも、こういうやり方でもできるのか、という感じで。

KATSUYUKI これはこれで今しかできない作り方ではあるんですけどね。言葉の交換や、耳で聞いたり、目で見たりはできるけど、実際に触れることができないじゃないですか。どっちがいいかと言ったら一長一短だけど、これが落ち着いたら、僕はやっぱりスキンシップを取りながらの方がいいかな、と。