スピラ・スピカ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

スピラ・スピカ『サヨナラナミダ/ほしのかけら』

幹葉(Vo)、寺西裕二(Gt)、ますだ(Ba)

スピラ・スピカの新たな挑戦、新境地の1曲

スピラ・スピカが7thシングル『サヨナラナミダ/ほしのかけら』をリリース。ポップで明るく元気いっぱいというこれまでのイメージから一転、「悲しみ」をテーマに、バンドのエモーショナルな一面をみせた今作。シリアスな内容ながらも聴く人に寄り添う変わらぬ想いは、歌と音に余すことなく表れている。この曲とこのシングルに込めた想いを、3人にたっぷり話してもらった。

■“サヨナラナミダ”は、TVアニメ『戦翼のシグルドリーヴァ』のエンディングテーマですが、2020年の7月から10月に放送が延期になっていたんですよね?

幹葉 そうなんです。なので、アニメが始まるのを心待ちにしていました!

寺西 ようやくといった感じですね。

幹葉 いちファンとして、毎週楽しませていただいています。

■歌詞はどんな想いを込めて書かれたんですか?

幹葉 大切な人との別れ、もう会うことの叶わない人を想った歌なんですけど、今回はまず最初にシナリオをいただいて、それを読んでから書いていきました。いつもは自分と重なる部分や、スピラ・スピカと重なる気持ちやシーンを見つけ出して、そこを軸に書いていくことが多いんですけど、ここまでシリアスな物語を担当するのは、スピラ・スピカにとって初めてのことで悲しみの真っ只中にいて、光がない、動くことができないという状況に、まず書き始めからとても苦労しました。

■なるほど。

幹葉 それに私自身、この物語に出てくるようなお別れを経験をしたことがなかったので、「どう気持ちを重ねていけばいいんだろう…?」と悩みました。でも私は感情移入が得意なので、自分にそういう経験がないならば、その世界に入り込んで歌詞を書いていこうと。なので、レコーディングで歌う時も歌詞を書く時も、作品の中に入った気持ちで心を痛めながら制作しましたね。

■特にこの人物に感情移入したとかはあるんですか?

幹葉 基本的には主人公のクラウ(クラウディア・ブラフォード)なんですけど、先日ちょうど7話が放送されて、お園ちゃん(渡来園香)が、年上の大切な方を想うシーンがあったんです。私的には、そこを読んでいる時にかなり苦しくなって。でもそういうことがあっても、彼女たちは闘いに挑み続けなければならないという物語なので、表に出すことができない心の奥の悲しみや痛みを、私たちスピラ・スピカが音や歌で寄り添いながら代弁できたらいいなという想いで書いていきました。

■歌われてみてどうでしたか?

幹葉 今までとは全然違って、歌っていても胸が苦しくなるんですよ。もう心を削っていくような感覚。でも歌わなくちゃいけない、届けなくちゃいけない、という使命感の中で歌っているんですけど、それは楽器隊も一緒だと思います。

寺西 そうだね。僕は普段からミリタリーものが好きなんですけど、闘っているところや、戦死していく兵士たちの生き死にがこの物語にはちゃんと描かれているので、そういう部分にフォーカスした鎮魂歌のようなものになればいいなと思ったんです。なので、いつも以上に楽器よりも歌にフォーカスさせたいということを、作曲をお願いしたSakuさんにお話ししました。そうしたら狙い通りに仕上げることが出来て、歌を立てながらもそこに寄り添うサウンドで歌の気持ちを持っていってあげられているというか……中でも個人的にはストリングスが最高でしたね。

幹葉 自分のギターのことよりもストリングスを褒めまくるっていう。(笑)

寺西 個人的には、オチサビから大サビになった時のあそこね、あそこはもうグッときますね。あのエモーショナルさが、正直ギターより気持ちいいですから。(笑)

■エモーショナルですよね。でもやっぱりご自身のギターについても聞かせていただけますか?

寺西 鎮魂歌ということで、歌にフォーカスさせたかったので、ギターはあまり邪魔にならないよう、歌と並走していけるようなシンプルなフレーズを入れながら存在感を出していきました。そういうところで楽曲の流れに抑揚をつけられたかなと思います。

■ますださんはいかがですか?

ますだ 最初にこの曲を聴いた時に、胸がしめ付けられる感じになったので、その気持ちを大事に音を作っていきました。ゆったり流れるフレーズから、和音の響きでちょっと切ない感じを表現したり、サビの頭で、普通だったら8分で弾くフレーズをちょっと食い気味に弾いたりして、この曲のエモーショナルな部分を表現できたらいいなと思いながら弾きました。

■シナリオを読まれた時の印象はどうでしたか?

ますだ これは絶対重くなるな、と。(笑)

幹葉 今までのものとは違ったよね。

ますだ そう。「自分たちがやったらどうなるんだろう?」っていう期待感みたいなものもあったし、新しい挑戦みたいな気持ちもあったし。

寺西 サウンド面もそうだし、曲の立ち位置的にも新たな挑戦ではあったからね。

幹葉 私たちの楽曲は、聴く人を後押ししたり、歌詞の最後に希望が見えたり、未来が見えたりするように作っているんですけど、今回は歌詞の面でも新たな挑戦をしてみたいと思って。終わりを決めてしまうのではなく、聴いた人に委ねてみようと思いました。もう会うことが叶わない人を想い続けることは幸せなのか、悲しいことなのかっていうことを、聴いた人に判断して欲しいなと。

寺西 後押ししてもらうよりも、ただ寄り添ってもらうことで救われる時もあると思うんですよね。なので、今回はそういう人へ向けた曲なのかなと思います。

■でも最後の「サヨナラナミダ 会いに行くよ」っていうところには、やっぱり希望のようなものが見えるかなと。

幹葉 ほんの少しでも希望を見せたいと思いつつも、でももう会うことが叶わない中で、この「会いに行くよ」はどういうことを意味するのかという。

■そうですよね。

幹葉 結末を聴き手に委ねるということは、今までしたことがなかったので、そこをどう受け取ってくれるかは楽しみな部分ではありますね。

■今までと違うという面でもそうだし、委ねるという部分で不安はなかったですか?

幹葉 めちゃくちゃありました!(笑)

寺西 インディーズ時代には僕も歌詞を書いていて、僕の場合は抽象的に書き過ぎて、委ねてしまうことの方が多かったので、委ねることに慣れているはずなんですけど、今までのスピラ・スピカの楽曲のように希望を明示してきた中でのこういう委ね方というのは、「果たしてどう受け取られるのだろうか…?」と。そういう意味では、不安を感じつつも楽しみでもあるという感じですね。物語的にもまだまだこれからなので、これから回を重ねていく毎に、幹葉の声やメロディの刺さり具合も変わっていくだろうし。

■アニメとともに感じ方もどんどん変わっていきそうですよね。

幹葉 物語とどんどんリンクしていく部分にも注目して欲しいです。あと、私たちはライブがとにかく大好きで、お客さんと一緒に曲を育てていくというところがあるので、早くライブで聴いて欲しいなって。そこでやっとこの“サヨナラナミダ”が完成すると思うので、ライブでやるのも楽しみな曲ですね。

■新たな挑戦を経て、さらに可能性も広がったんじゃないですか?

幹葉 本当にそうで、それは“ほしのかけら”につながっている部分もあるんです。この曲はコロナ禍の自粛期間中に完成させた曲なんですけど、“サヨナラナミダ”が完成した時、自分たちの新たな可能性に気づけた気がしたんです。ここまで悲しみにフューチャーして楽曲を作ることが今までなかったので、あらためて悲しみという気持ちを深く考えた時、悲しみひとつにしてもいろんな悲しみがあるんだなって。

■なるほど。

幹葉 ライブができなかったり、聴いてくれるみんなに会えなかったりで落ち込んでしまい、前も向けない静かな悲しみになってしまった時もあれば、あの時にもっとできていたら未来は変わっていたかもしれないという後悔や、変えられない運命に強くあたりたくなったり。そういう静と動のふたつの側面に今回の期間中に気づくことができて、だったら“サヨナラナミダ”は静だから、その対になるような動となる悲しみを表現した楽曲を作りたいと思い、この“ほしのかけら”の制作に入っていきました。