TAEYO VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

■“Dive”も“Same Tat”と同じような書き方で進めていったんですか?

TAEYO そうですね。“Dive”はフックのメロディが最初に浮かんで。今まで海とか水とかに関するワードを入れたり、タイトルにしていることが多かったんですけど、Diveって今までになかったのでいいなと思って。「Dive」と「die」で韻を踏んだらちょうどいいかもとか、歌詞もそうですけど、この曲はヒップホップ的なところを狙っているので、今までの曲を聴いてくれていた人たちが絶対好きなラインかなと思います。歌詞にも葉山とか、立川とか、シーレとか、名詞を入れていて、印象に残るようなワードを入れるっていうのをめっちゃ意識しましたね。

■曲によっても歌詞のつけ方がかなり違うんですね。

TAEYO そうですね。その時のテンションでやっているっていう感じなので。“Dive”とか“Same Tat”は、いい意味で初期衝動の歌詞で、勢いとか熱さみたいなのがあるんですけど、starRoと作ったものは今年の1月頃から作っていたので、全部ちゃんとしっとり響くというか、時間をかけた分ボーカルの聴こえ方とかもすごい気にしながら作ったので。

■starRoさんと作っていく中でくらったことというか、印象に残ったことなどはありますか?

TAEYO なんだろうな……。一緒にいすぎてくらうとかあんまりないんですよね。(笑) でも本当に音楽でも人としても、尊敬以上の目で見てしまうことは多いですけどね。でも悟っているように見えてめっちゃ人間なんですよ。そこに逆に助けられた感じはすごくあります。自分で言うのもあれなんですけど、二人ともすごい似ていて。僕が経験したことは全部経験しているっていう感じだし、境遇とかも結構似ていたりして。ズバズバと核心を言われるので、それは毎回くらっているかもしれないですね。(笑) でも一緒にいて本当に楽だし、僕が落ち込んでいたり、不安定な時も分かるんですよね、逆に向こうが不安定な時も。今年は去年ほど一緒にはいなかったんですけど、その分一緒にいる時のパワーがめっちゃ強かったなと思います。逆に連絡を取っていなかったり、離れているとなんか上手くいかないんですよね。でも電話したり、会うとすごく良い感じになってくる。メンターというか不思議な存在ですよね。

■今作は全体的に音のアタックも強くないというか、広がりがある印象ですよね。この雰囲気も最初から意図していたものだったんですか?

TAEYO でも1月の石垣でデモ作っていた時点ではなんとなくな感じで、具体的にはそこまで決まっていませんでした。今回は全部同じスタジオでレコーディングをして、マスタリングも同じところでやったので、そのエンジニアさんと一緒に音楽的な方向性については作っていきました。今回はマイクも前とは変えていて、難しいんですけど、練習して掴めるようになってきていて。そうしたらボーカルの乗りもめっちゃ変わってきたので、結構壮大な感じになりました。でもなんとなくそういうのを目指していきたかったのかもしれないです。

■アルバム最後の曲“Pass Out”は、さっきおっしゃっていたように、まさに歌詞が気絶の曲というか。

TAEYO アルバムの制作がこの曲で始まったんです。“Sky Grey”が一番アルバムのテンションを表しているんですけど、“Pass Out”で完結しているというか。アルバムに込めているものというか……本当の心臓みたいなのがこの曲だなって。気絶した曲なんですけど、東京に帰ってきて、改めて歌詞を書き直して、最初にこれをシングルで出したかったくらい気に入っていたので。単純にこんな曲ってあまりないじゃないですか。

■確かにそうですね。

TAEYO 家の前で気を失うってなんかダサいっていうか、なにもない奴じゃないですか。(笑) 「僕はなにもない奴」っていうのを言いたかったし、本当にそう感じた瞬間が今年は何回かあったので。『Pale Blue Dot』もそうですけど、ヒップホップシーンに入って、ヒップホップ的な強い感じで行ってしまったから、その時はそのイメージだったかもしれないですけど、「今はこうなんだ」っていうのは分かって欲しいし、「マジで本当にみんなとなにも変わらない」って思うし。僕がたまたま音楽をやっているだけで、「みんなと全然変わらないよ」って思うんですよね。だから、“Pass Out”は、このアルバムの心臓っていうか、これで言いたいことは完結しているみたいな感じです。

■ここまで振り返ってみて、改めてどんなアルバムになったと感じていますか?

TAEYO めっちゃいいアルバムだという自信はあるし、初めてここまで自分的にもみんなに聴いてもらえる可能性のある方向で、自分の正解を見つけたっていう感じなんです。なので、アルバムを出してからの反応を見て、もしかしたらヒットするかもしれないですけど、違ったらどうやってそのギャップを埋めていこうかっていう感じですかね。(笑) 僕は結構寄り添った気でいるというか、今までで一番分かりやすくて、聴きやすくしたつもりなので。それでどういう反応が返って来るのかっていうのは、不安とも違うんですけど、なんかモヤモヤしています。(笑) まだなんとなく「これ伝わらないかもな……」って思っているし、でも「伝わるところが増えるのかな」とも思うし、なんとも言えないですね。僕はめっちゃ気に入っているし、前回をある意味越えられたと思っていて。『Pale Blue Dot』は、『Pale Blue Dot』で最高の傑作だと思っていますけど、こっちは別の方向でTAEYOっていうアーティストとして始まったなっていう感じがするので、楽しみにして欲しいですけどね。

■多くの人に聴かれることは、TAEYOさんにとって大事な指標のひとつですか?

TAEYO そんなに……ですかね。まぁたくさんの人に聴いて欲しいですけど、ぶっちゃけ無理だと思います。僕がっていうか、みんながっていうか、時代的がっていうか。みんなが好きなものを僕は作れないから。なにかを演じることもできないし、嘘とかも嫌だし。聴いて欲しいし、何があるかわかんないけど、それよりも今は自分の曲を聴いてくれる人たちを大切にするっていう事を大切にしているので。別に楽曲だけじゃなくて、音楽は自分の表現方法のひとつで、思想とか、言葉とか、やっていること、生きてることに賛同してくれる人たちを大切にした方が、言い方は良くないですけどビジネス的にも正解だと思うし。僕とは考えが違う人たちにボールを投げるより、ついてきてくれる人たちを大事にして、ちょっとずつそれを増やしていく方が、本当のことをやっている感じがして、僕には合っているのかなと思います。

■音楽性やリリックに関して「次はこういう表現を突き詰めていきたい」というビジョンはありますか?

TAEYO 今回このアルバムでやっていることは、一個正解かなって思っていて。今までみたいにビートをいっぱいもらって、そこからフロウ作って、その場でレコーディングしちゃうみたいなのも、いい時はいいんですけど、それよりも“Sky Grey”とか、“Motivation”とか、そういうクオリティのものが作れる時はこだわって作っていこうと思いますね。ヒップホップとかラップだと、初期衝動的な感じが良しとされているし、それはそれでいい時もあるんですけど、そうじゃない方というか。作りながら自分を疑いつつ、完成させた時に全肯定できる曲を作りたいですね。それが新しいことをやるっていうことだと思うし。“Let Go”も最初は全然でしたけど、本当に好きな曲になったし、新しいことを試していきたいっていう感じです。

Interview & Text:村上麗奈

PROFILE
Taeyoung Boy(テヤンボーイ)として2015年、SoundCloudにラップ音源をアップしたところ、 予想以上の反響を受けたことから本格的に活動をスタート。HIPHOPの枠を超えたリリックとラッパーならぬメロディーセンスでネット上でファンを一気に獲得する。また音楽だけに留まらず、ファッション+カルチャー面で大きな支持を得ており、モデルやレセプションでの稼働、アパレルブランドとのコラボなど、 ファッション業界からの期待値も高まっている。2020年5月、TAEYOに名義変更しメジャーデビューすると同年にChaki Zulu、BACHLOGIC、CELSIOR COUPEをプロデューサーに迎えたEP『ORANGE』や、2021年9月にメジャー1stアルバムとなる『Pale Blue Dot』を発表した。2022年には若手R&Bシンガーとのコラボ作“OMW feat. 藤田織也”の他、11月にメジャー2ndアルバム『Sky Grey』をリリース。
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RELEASE
『Sky Grey』

配信限定アルバム
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