瀧川ありさ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

瀧川ありさ「わがまま」

あぁ君にだけわがままになっていく。瀧川ありさが解く、思春期ならではの「わがまま」とは?

瀧川ありさのニューシングルのタイトルは“わがまま”(テレビアニメ「ドメスティックな彼女」ED曲)。「わがまま」と聞き、パッと思い浮かぶのは、相手を振り回したり、何か強く我を通したりといった類いだろう。しかしこの歌で描かれる「わがまま」は、思春期に芽生え出す愛しい相手への希望や願いを、あの語彙の少なかった頃の視点に立ち戻り称したもの。大人になるに連れ、「実はあれはわがままではなかった」と気づく日が来るであろうが、あの思春期独特の心の機微が、いいことなのか?悪いことなのか?判断がつかないまま、愛しさだけをどんどん募らせていた、あの頃の私やあなたをオーバーラップさせる。やや内気な10代の女の子が恋をし、その気持ちをどうしたら良いか?それをあえて大人からの目線で歌われているのも興味深い同曲。あえてそれらとは対照的にメロディは力強くサウンドも開放的。どこかこの時期ぴったりな春っぽさも特徴的だ。果たしてこれは「わがまま」なのか?瀧川ありさが、いま想い、そして描いた、あの頃のわがままを、ここに紐解く。

■今回の“わがまま”とのタイトルから、個人的には相手を振り回すか、何か強く我を通す女性像を想像して聴きましたが、実際は同じ「わがまま」でも全く違うニュアンスでした。

瀧川 ズバリそこが狙いで。(笑) それこそ歌われていることは逆ですからね。聴いてビックリみたいな。(笑)

■そもそもこのわがままへの着眼は?

瀧川 「ドメスティックな彼女」のタイアップのお話をいただき、台本を読ませていただいたんです。主人公が思春期の10代の男女と大人の女性の三人で。作中には大人な恋愛観もある。その両者に共通するものを探してみたんです。内容も不倫等も出てきますが、それも含め本質にはすごくピュアな純愛を感じたので、そこから、「自分が大人になっても変わらなかった想いって何だったっけ?」と探し始めて。そこで見つかったものを歌に落とし込んだんです。今の10代の子にも聴いてもらいたいし、かつて10代だった女性の方々にも聴いてもらいたい。刺さるものを作りたかったですから。

■世間一般のイメージとは違うでしょうが、たしかにこれもある種のわがままの部類ですもんね。

瀧川 そうなんです。わがままってみなさん、「ダメなこと」「しちゃいけないこと」「我慢しなくてはならないもの」って想い描くじゃないですか。「わがままを言っちゃいけません」とか「わがままな子ね」みたいな。果たして、恋愛感情に於ける、「こっちをみないで」等の気持ちや想いもわがままなのだろうか?と。特にピュアな子は、このような感情を持つことって悪いことなのかな?と躊躇しちゃう。これもある種のわがままに映るかもしれませんが、それはただ自分の欲望に忠実なだけであって、決して悪いことではない。思春期の頃って、それがいいことなのか?悪いことなのか?自分で判断できないことも多いじゃないですか。かと言って誰かに相談も出来ず。そんな気持ちをどうしたらいいのかな?と歌で表わしてみたんです。

■確かにわがままの定義は曖昧です。受け手の感性や感じ方次第だったりするし。

瀧川 ホント、わがままって面白い言葉ですよね。一般的には悪い例えに使われることも多いですが、でも当然の権利でもあるわけで。(笑) なので、是非小さい頃に「わがままを言っちゃダメ」と抑圧されて育ってきた方々に聴いていただきたい。普段は普通に何でも受け入れて自分の欲もあまり出さないのに、ある日恋愛等をして、「あれ、何?この気持ち…」と初めて欲深くなる感じ。その辺りの心の機微を表したくて。

■では、今回は先にわがままというキーワードが浮かび、そこから曲を?

瀧川 先に曲のサビ頭の歌詞とメロディが同時に浮かんだんです。「君にだけわがままになっていく」ってフレーズが。その「君にだけ」に自分でも「これってどういった意味だろう?」と。そこからわがままについて調べたんです。そうしたらいろいろな捉え方が出てきて。そこから心の機微や葛藤、これっていいことなのか?いけないことなのか?そこに悶々とする。イメージとして浮かんできたその辺りを掘り下げて作り進めていったんです。

■確かにわがままって基本自分の欲求を満たすもので、自分に向けてのものですもんね。いわゆる相手にこちらに合わせてもらう類の。

瀧川 そうなんです。なので、今回“わがまま”というタイトルだけを聞いて、「どっちのわがままなんだろう?」と気になる方もいると思うんです。

■私のような?(笑)

瀧川 でもそんな方でも、いざ聴き始めるとサビ頭でバシッと結論を歌っているんで、「おお、そっちか!?」と。

■確かに先に結論が歌われていて、聴き進めていくうちに「なるほど、こういったことだからこうだったのか」と後々判明していく。なんか数学の証明みたいな歌ですもんね。(笑)

瀧川 今回はこれまでの瀧川ありさ像からは、思い浮かびにくい単語でしたが、あえて付けました。より興味を持って聞いてもらいたくて。“わがまま”というタイトルから、そうと決めつけちゃっている方にも、「それって偏見ですよ」と警告する意味合いも含め。(笑)

■「一般常識やモラルに捉われていませんか?」と。

瀧川 そうです。そうです。いわゆるわがままという言葉を通しいろいろな物事を分解していく。そんな曲でもあって。おかげさまでこれまでにはない一筋縄ではいかない表現が出来ました。

■でもこの曲って、視点は10代の思春期真っただ中の女の子ですよね?

瀧川 正直、大人からの目線で諭すこともできました。「大丈夫、今に分かるから」みたいな。でも、大人になっても結局その気持ちは分からず、答えも出ぬままだったので、あえて当時の目線のままで書きました。愛おしさもあるんですよね。なので、実はそれを肯定してあげている曲でもあるんです。いや、その悩み当然だよ。おかしくないよ、大丈夫だよって。

■あの頃の恋愛感情と今の恋愛感情では、経験値も含めてまた違いますよね?

瀧川 大人になるにつれ、段々と恋愛に対して臆病になったり、頭でっかちになるのかも。高校生の頃は、「ええい、行ってしまえ!」的な勇気があったものも、歳と共にどんどん臆病になっていく。でも、そんな中でもこのような葛藤する気持ちは大事にして欲しい。大人になってもけっして悩みは尽きず、上手くも生きられはしないんですが、あのように想える、ある種の美しさを擁しているのも、やはりあの年頃ならではでしょうから。