「歌がつながる場所」を提供してもらえたTikTok。ここから私は「寄り添って安心してもらえる」存在になれれば
マルチクリエイター・うじたまいの、TikTokによる活動が大きく注目を集めている。2019年9月に彼女が自身のTikTokチャンネルで自身の曲『September調子はどうだい』をアカペラソングにて発表したところ、数か月後には関連動画再生回数が1億回を突破。さらに様々なアーティストがTikTok内でリップシンク(口パク動画)やカバーなどをおこなったことをきっかけに大ヒットし、33万を超える「いいね」と2000を超えるコメントを集め、話題を呼んでいる。
楽曲は2月28日からフルバージョンで曲をリリース、4月5日に公開されたMVではキュートな彼女のルックスと体にしみ込むようなリズム、そして彼女自身の経験をもとに等身大の思いを込めた詞が同世代層の気持ちをつかみ、再生回数を延ばしつつある。今回は彼女にクリエイターを志したきっかけやその活動への思いとともに、TikTokに携わった動機やコンテンツを作り上げていく中で感じた魅力などを語ってもらった。
■最初にTikTokを知ったときの印象は、どんな感じでしたか?
うじた どちらかというと若い世代が使っているというイメージが強くて「パリピ」のものという偏見がありました。(笑) それと私はもともと歌がやりたかったんですけど、TikTokはリップシンクという先入観が強かったので、うまく自分に組み込めなかったというか、壁を感じていました。でもとりあえず自分でも撮ってみようと興味本位で始めると、また印象が変わっていきました。最初は被写体の活動をしていたときに、その関係で周りの人たちがやり始めていたのを見て私も好奇心を持ったのがきっかけで、一昨年の夏頃に登録してこれを始めたんです。そのころはリップシンク、ファッション系の動画を低い頻度でアップしていたくらいでした。でもそこから数字が上がり始めたのをきっかけに、新しいコンテンツとして面白さを自分でも感じて、ドンドン歌っていこうと思いました。単純にハマっちゃいましたね。すごく楽しかったし。
■どのように印象が変わりましたか?
うじた 「歌がつながる場所」を提供してもらえたと思っています。
■「歌がつながる場所」?
うじた 歌うということを、孤立しておこなっていたんですが、実はこれってほかのこととつなげて作っていけるものなんだという、いろんな可能性を感じました。だからTikTokを通じて、たとえば全く同世代だけど私のことを知らない人や、インスタ重視のおしゃれ感度の高い子なんかにも、私のことが広がっていけばいいな、と思っています。
■それはもともと向いていた要素があったんですね。ドンドン投稿されてみていかがでしょう?なにか新しい発見はありましたか?
うじた たとえば日常的に音楽が身近にない人も「知らず知らずのうちにもっと音と身近になれる」いい機会ができるんじゃないかと思いました。日本人って「音を聴いていると、ついリズムに乗って踊ってしまう」みたいな意識って、多分他の国の人に比べると低い方なんじゃないかと思うんです。それはもちろんそれぞれの人にもよるけど…そんな意味で「身近に」という言葉は優先して発信したいポイントでもあるので、今の私にとってはなくてはならない存在になっていると思います。それとTikTokは完成品というより、気軽にシェアできるところが特徴で、そんなポイントが広がりをもたらしてくれる要因だと思うので、そういった面を活かしていきたいですね。私はYouTubeチャンネルも持っていて、こちらではファッション系やメイク系の自分がやりたいこと、TikTokでは基本的に歌中心でコンテンツを作っているんですが、今後はTikTokでも、もっと幅を広げていろんなことをやりたいと思っています。
■実際に自分でやってみて、TikTokの投稿自体がご自身の活動に触発されたことはありますか?
うじた これまで音楽活動自体は長く続けていたんですが、実は直接自分で作曲したことがなかったんです。だからちょっと考えて最初はアニ文字でやってみたんですけど、思ったことをメロディにのせて作ってみたら、それを多くの人に見てもらえたんです。もうそれが嬉しくて。それがきっかけで、自分で作曲することを始めたんです。その意味では自分の方向性を180°変えられたといっても過言ではありません。(笑) またTikTokさんから話をいただき、音楽をつけてもらって曲が配信できたということも単純に嬉しかったです。自分のファン層を知るきっかけにもなったし、自分の知らないことを知ることができたという感じもして、ありがたく思っています。そしてこの拡散力というか、TikTokにのった歌のパワーってすごいなと思いました。また経済的変化というか…二倍以上の効果にもなりましたし。(笑)
■ではTikTokとの出会いは、大きな人生の分岐点だったんですね。詞を作られるときに意識していることなどはありますか?
うじた 歌詞にはできるだけ誰にでもわかる単語を選ぶようにしています。それもなるべく具体的な名詞で始めることが多いです。当然その文面の意味もかなり思いを込めて作ることが多いんですが、そもそも表面的にわかりにくものを作ってしまうと、考察してもらう以前に聴いてもらえないし。つまりは「子供が聴いたら楽しい、大人が聴いたらグッとくる」そんな歌をシンボル、目標にしています。インスピレーションとしてはアニソンから受けるものが大きいですね。また最初の歌詞に重きを置いてトリッキーなもの、「おっ、これは!?」と思えるものを作ることを考えています。その中でワード選びとしては「最初の3、4秒で目に留まるようなフレーズや内容」よりも「誰が見てもわかる単語」を意識しています。
■また動画はまいさんの振り付けやパフォーマンスも特徴的ですね。合わせてアカペラで披露されていることが多いのが印象的です。
うじた もともと動きについては変顔や奇行をしてふざけては笑ってもらうことも好きなので、クスッとしてしまうようなポイントを動きなどで入れるようにしています。というか、つい自分で体が動いてしまうということが多いんですけど。(笑) アカペラで見せているのは、第一には単純に楽器が弾けないことが理由なんですが、「音楽だ」と身構えて聴いてもらうよりも、もっと気軽に私の独りごと、その歌バージョンとして作った「独りうた」を覗き見してもらえる、そんなイメージにできるなと思ったところもあります。
■ご自身として、これまでで一番自分として印象に残っている投稿はどれでしょう?
うじた アカペラではなく音源として発表した二作目の『何センチ』の投稿ですね。これは特に女の子たちがたくさん見てくれました。女の子って自分を可愛く見せるものに敏感なんですよね。だからそんな女の子たちが、より自分を可愛く見せる音源として、リップシンク(口パク)でこの曲を使って動画を撮ってくれたのが本当に嬉しかったんです。自分の声が「可愛いもの」と評価されたことも本当に嬉しかったし。「可愛くなれますか?」って画面上に語りかける子たちを見て、私は「なれるよ~」と思ってあげていました…端から見たらだいぶキモい光景ですよね。(笑)