TAL WILKENFELD VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

タル・ウィルケンフェルド『ラヴ・リメインズ』

■それにしても驚くのは、タルさんのその音楽的な多彩な素養です。

TAL でもオーストラリアに居た頃は、親が「勉強に集中しろ!!」と、ジミ・ヘンドリクス、ハービー・ハンコック、レイジ・アゲインスト・ザ・マシンの3枚のアルバム以外、一切家にCDが無かったんです。なので、オーストラリアに居た頃は、全くといっていいほどそれ以外の音楽を聴く機会がなくて。

■すごく意外です。これまで数々のレジェンドの方々と一緒にプレイしてこられて、音楽的素養や対応力もかなりあるので、てっきり幼い頃より様々な幅広い音楽を聴いてきたのだと思っていました。

TAL それどころかテレビやラジオも禁止でしたから。(笑) なので、アメリカに留学に来てからですよ。そこからは逆にこれまでの抑制が解けたかのように色々な音楽を聴き、吸収しました。でも、その抑制されていた分、変な影響力もなく、自分で何かを作り出してやる、そんな気概も芽生えた気がします。

■他にも何かその抑制されていたことで良かったと感じたことはありましたか?

TAL 19歳の時に、オールマン・ブラザーズ・バンドと初めて一緒にプレイさせてもらった時からキャリアが始まったのですが、その後もジェフ・ベックやプリンス等、かなり有名な方々と一緒にやらせてもらってきました。でも、私はこのように抑制されていたので、彼らのすごさを一切知らなくて。友達からも「緊張しなかったの?」と聞かれたりしたんですが、彼らのキャリアやすごさを知らなかった分、フラットに一緒にプレイすることが出来たんです。10年前にジェフ・ベックと一緒にマディソン・スクエア・ガーデンで演奏した際に、そのアフターパーティで友達と一緒に居たところに、後ろからおじさんが追いかけてきて「すごくファンです。演奏、素晴らしかった!!」と声をかけてもらったんです。その際は何も思わず普通に「ありがとうございます」と返したんですが、名前を聞いたところ「ミック」と返ってきて。その時は誰だか分からなかったのですが、彼が去った後に、友達が「さっきの人、ミック・ジャガーだったけど、気づいてた?」と。(笑) 「あの人が有名なミック・ジャガーだったんだ!?」って。(笑) おかげさまで、それからはミック・ジャガーとも交流が始まって、もちろん今では彼の大ファンです。(笑)

■それほど音楽に詳しくないのに、そんなレジェンドの方々とキチンと渡り合える、そのフレキシブルさと柔軟性や対応力がすごいですね。

TAL 先程のオーストラリアの頃に繰り返し聴いていた3枚のCDだけでも、十分に対応性があるので、この3つの音楽性と自分のイマジネーションで今まで乗り切ってきました。(笑) 所詮は同じ12個の音符なので何とかなるでしょうって。(笑)

■今作の聴きどころを教えて下さい。

TAL やはりこの作品に詰め込んだストーリーですね。これまでの自分の人生の浮き沈み等の経験を、今作ではこの12編のストーリーにまとめていて。自分自身も女性ですし、そういった意味では、浮き沈みは誰にでもあると思うんですが、同じ女性の観点から書いた歌詞なので、恐らく読者の方たちにもリンクして共感していただけるんじゃないかな。

■すごく気持ちを重ねて共感する方も多く現れると思います。

TAL (日本語で)ありがとうございます!

■タルさんの今後のビジョンをお聞かせ下さい。

TAL 自分が真に生きているって実感するのは、やはり抑制されていないからだろうし。これからもあくまでも直感に従う形で進んでいくだけです。作詞も歌も今ところ楽しんでやらせてもらっているので、今後も同じような形で進んでいけば、その過程で他にもいろいろと新しいアプローチや実験がしたくなることも出てくるでしょう。それらに従って進んでいけば、おのずと道が出来るのかなって。これまでもその通り生きてきましたが、その辺りはこれからも変わらずで。

■これからも自分の直感に従って進んでいくだけだと。

TAL そうです。将来については深く考えない。過去も執拗に振り返らない。私も初めてギターを弾いた際には、すごくいろいろな可能性を感じました。そこに特に当時は具体的なものは一切なかったんですが、いろいろと大きな可能性を感じ、そこに向かって進んできただけですから。結果、ベースにはなりましたが、様々な著名な方と一緒にプレイが出来て、自分の作品が出せて、自分の歌いたいこと、伝えたいことが作品やライブで表現できて、こうして日本にまで来ることが出来ましたから。振り返ると可能性だけ信じて、前を向いて進んでいければ、結果いろいろな未来に繋がっていたんだな…と、今となっては思います。

Interview & Text:池田スカオ和宏

PROFILE
1986年生まれ、オーストラリア出身。14歳でギターを弾き始め、16歳を迎えた2002年に渡米し音楽学校に入学。その半年後には楽器をベースに持ち替え、ベーシストとしてのキャリアを開始。影響を受けたベーシストとして、ジャコ・パストリアスやアンソニー・ジャクソンを挙げている。2006年にオールマン・ブラザーズ・バンドのレコーディングに参加、チック・コリアやヴィニー・カリウタのオーストラリアツアーに参加。2007年にジェフ・ベックのバンドのベーシストに抜擢され一躍有名となる。日本では、2009年1月にファーストアルバム『トランスフォーメーション』をリリース。その翌月にジェフ・ベックの日本ツアーに帯同して初来日が実現し話題を呼んだ。2019年8月、ソロ作品としては約10年ぶりとなるニューアルバム『ラヴ・リメインズ』をリリース。本作はベースだけでなく、アコースティック・ギター、ヴォーカルまで自らが担当し、ソロ・アーティストとして高い表現力で魅了する作品に仕上がっている。
https://www.kingrecords.co.jp/cs/artist/artist.aspx?artist=43451

RELEASE
『ラヴ・リメインズ』

タル・ウィルケンフェルド『ラヴ・リメインズ』

来日記念盤(Blu-spec CD)
KICJ-827
¥2,700(tax in)

KING RECORDS
8月21日 ON SALE