THE BEAT GARDEN VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

THE BEAT GARDEN『Start Over』

「六本木クラス」挿入歌にリンクした結成10年を振り返る。

日本でも大ヒットとなった韓国ドラマ「梨泰院クラス」のジャパンオリジナル版TVドラマ「六本木クラス」が話題となっている。THE BEAT GARDENが歌う挿入歌“Start Over”は、Gahoの歌う“START”の日本語カバー曲。THE BEAT GARDENによる本カバーは、「六本木クラス」のファンからも人気を得ているだけでなく、苦難を乗り超え活動してきた彼らのこれまでの道のりにもマッチした歌詞の内容や、訳詞にも関わらず彼ららしい優しさのある日本語詞が10周年を迎えたTHE BEAT GARDENにぴったりな楽曲だ。大人気曲をカバーするにあたっての気持ちや、初のカバー曲リリースについて、そして結成10周年の今だからこそ思うことを、U、REI、MASATO、メンバー3人に訊いた。

■まずは「in your tour 2022」の完走、お疲れ様でした。手ごたえはいかがでしたか?

 ツアー前、自分たちの曲がBeemer(ファンの総称)だったり、テレビを介して少しずつ浸透してくれている感じがあったんです。“マリッジソング”とか“遠距離恋愛”とかで知ってくれた、僕らがまだ会ったことのない人たちも来てくれるんだろうなとか。なので、セットリストも絶対に歌って欲しいだろうなっていう曲は絶対入れようって言っていて。初めての人は、ライブが終わった後にビートのこと調べてくれたりとか、もう一歩先の動きをしてくれている様子も見られたツアーだったので、次にもう一回会えるんだろうなっていう確信もありました。チーム全体の熱量も、音楽を届けたいっていう感じで、とにかく「音楽をちゃんと渡していけるツアーにしたい」っていうのがあって、それがちゃんと伝わった感覚がありました。今回のツアーからPAさんが変わったんですけど、同世代の人で普段はバンドをやられている方なんですけど、ロックの要素もすごい分かってくれているし、EDMも好きって言っていて、すごくいいパートナーみたいな存在なんです。サポートDJのkowta2も一緒に回って、今回のツアー中に3回も音を止めたので僕も怒りましたけど、弟みたいな存在で。(笑) 絆が深まったと思います。

REI 今チームの空気感として、今持っている力の120%、150%で本気で挑もうっていう空気が流れているのが、言葉にしなくても伝わっている感じがあって。ライブも「毎回ファイナル公演の気持ちでいこう」ってみんなで話し合って。本当に一公演一公演、音が止まろうがそのライブが良かろうが悪かろうが、そういうことは関係なく自分たちができることを全力で届けることができたツアーだったし、その次の可能性が見えたライブだった気がします。

MASATO 今、冷静に振り返ってみて、自分たちはすごくTHE BEAT GARDENを見せたくてうずうずしていたなって思うんですよね。前回のツアーが終わって新体制になってから、いつでもいける準備を常にしてきたというか、ようやく表現できる場所があって、時期がきたなっていう感じがすごいあったなって思っていて。だから、すごい自信があったんだなって、今振り返ってみて思いますね。

■自信があったというのは、他のお2人も同じ気持ちでしたか?

U 今の実力に自信があるというよりは、やってきたことへの自信というか。この10年間もそうですし、ちゃんと向き合えなかった時期も含めて、自分たちで認めてやるしかないっていうことを、みんなが覚悟できている自信っていうか。このコロナ禍で何をしたらいいのか分からないっていう時期も、自分たちができる精一杯のことを、SNSでも曲作りでもライブの準備でもしっかりできたというか。「自分たちのできることはやったよね、だからあとはそれを渡そう、それしかなくない?」みたいな、そういう気持ちだったかなって。「あれを準備しておけばよかったな」とか、「もっとできたのにな」っていう気持ちが誰にもなかったから、前だけ見られたっていう感じでしたね。

MASATO それです!同じですね。

U もちろんライブも歌ももっとよくなるんですよ。もっとよくならないといけないし、それはこの先できるようにならないといけないけど、今できることはやりきったっていう感じです。

REI 本当に悔いなく毎日やりきってチームで走り続けていたので。その結果、ありのままの自分たちを今まで通り全力でぶつけるっていうことが正解だった気がするし、多分そこで変にいつも以上の自分たちを見せようとか思ってしまっていると、それではきっと上手くいっていなかっただろうし。あとは、その場に来てくれたみんなと楽しむだけっていうような感覚がありました。

■ツアーファイナルの恵比寿LIQUIDROOM公演では、新曲”Start Over”も初披露されました。既に「六本木クラス」でも流れて愛されていますが、ライブでの反応も違いましたか?

U はい。そこだけ空気も場面もやっぱりちょっと特別だったっていうか。僕ら自身からでている何かもきっと違っていると思うし……明らかに違うと感じましたね。

■「梨泰院クラス」の人気もあって、「六本木クラス」も放送前から注目度の高いドラマでしたが、挿入歌を歌うと聞いた時はどんな気持ちでしたか?

U 元々僕は「梨泰院クラス」を観ていて、MASATOとREIとマネージャーに、「自分たちみたいな話だから見た方がいいよ」っていう話をしたんです。そうしたらみんな本当にファンになって。本当にいち視聴者として「これ俺らっすね!」みたいな会話を本当にしていたんです。六本木って僕らの事務所が決まった場所だし、初めてライブをした場所でもあるんですよ。路上ライブをしてTHE BEAT GARDENを育ててもらった街でもあったので、「六本木クラス」の挿入歌を歌えるって聞いた時は、そういう意味でも「すごくない?」みたいな。「運命ってあるんだね」って。しかも「あの歌を歌えるなんて、大丈夫かな?」みたいな。最初は自分たちのことじゃないみたいな感覚でした。嬉しくてびっくりしたけど、大きすぎて分からないっていうか。

MASATO それプラス、使命感みたいなのも感じましたね。自分たちは今までカバー曲はリリースしてこなかったので、まさかリリースまでするということは本当に夢にも思っていなかったんです。だから、原曲を聴いたこの高揚感をそのまま日本バージョンで届けられたなって。「梨泰院クラス」を観ていなくて、「六本木クラス」から観る方たちもいると思うので、日本語版の挿入歌も含めて総合芸術として言われるくらいの作品にしたいなって思いましたね。

REI やっぱり「梨泰院クラス」といえばあの曲っていうような、本当に象徴するような曲でもあると思いますし、その曲をカバーさせてもらえるということで、嬉しい気持ちとどこか責任感も感じて。原作のファンにも、「六本木クラス」から観てくださるみなさんにも、期待してもらえるような作品にしたいなっていう気持ちでした。いい作品をつくりたいっていう一心でしたね。

■カバー曲にもかかわらず、聴いていてすごくTHE BEAT GARDENらしいなと感じました。歌詞がグループの歴史に合っているというのもそうですし、歌詞のニュアンスからもUさんらしさを感じるというか。

 嬉しいです。最初、韓国語の歌詞の意味はなんとなく分かっていたんですけど、どの韓国語の言葉がどの日本語かっていうところまでは分かっていなくて。韓国人の友達2人に「これをそのまま直訳して欲しい」って言って、その訳を読んで。その後に自分なりに直訳バージョンの歌詞と、比喩とかを入れたバージョンの2パターンの歌詞を作ったんです。直訳はもちろんすぐにできたんですけど、比喩を入れた歌詞を韓国人の友達に見てもらったら、これは韓国語に訳した時に全然伝わらないって言われちゃって、どうしよう……と。だからと言って直訳バージョンで歌っても、「自分が書いた意味あるのかな……」って思って、ちょっと書けなくなった時期があったんですよ。それで一旦、Gahoさんの韓国語バージョンを歌詞も見ないでフルで歌えるようになろうと思って、半月くらいずっとGahoさんの歌を韓国語で練習して、歌詞を見ないでも勝手に口ずさんでしまうくらい身体に染みつかせるっていうことをやったんです。そうしたら、もちろん直訳も知っている状況なんですけど、ニュアンスで歌詞の意味って伝わるし、日本語バージョンを原作の韓国のファンが聴いたとしても伝わるものってあるよなって思えるようになったんです。なので、直訳というよりも日本語らしい響きをちゃんと大事にして、自分らしく書けたと思います。

■歌詞を書くにあたって韓国語版を歌い込んだんですね。他にはカバーだからこそやったことなどはありますか?

REI 僕は日本語をハキハキ歌う癖があって。ディレクションでUさんが、「ちょっともごもごするくらいでもいいんじゃない?」って言ってくれたんです。その方が韓国語っぽい日本語っていうか、音の鳴りだったり雰囲気がより韓国語っぽくなるんじゃないかと。なので、練習の時からそこは意識しながら歌いました。

MASATO 今回は原曲のイメージをすごく大事にしたいなっていうのがチームとしてもあったので、日本詞の母音の長さとかは意識して譜割りも調整したり、レコーディングも3回くらいやり直して。そういうのは細かくできたかなって思います。

■歌にこもったパワーにも驚かされました。

U パワーを出すという意識はそこまであったわけじゃないんです。でもきっと原曲にあるんじゃないですかね。アップテンポっていうほどアップテンポではないですけど、すごい元気が出るし、高揚感もあって。レコーディングで歌っていても、日本語の歌詞が自分たちにすごく当てはまってくれてることもあって、あえて熱量を出そうとしなくても出ている部分はすごくあって、不思議な感覚でしたね。4つ打ちの曲を自分たちで作る時とか歌う時に付けているメリハリをそんなに意識しないでもこんなに高揚感があるのは、原曲が持っている魅力がすごいからなんだろうなって。カバーさせてもらった甲斐があったというか、勉強になりました。

■曲が持っている力に引っ張り上げられたみたいな?

 本当にそうですね。連れていってもらっている感じしかしないです。仮に僕らがしっとりと歌ったとしても、高みに連れていってくれるくらい、牽引力がとてつもない曲だと思います。

MASATO 世界一力のあるバスドラですよね。そんなに音色が突拍子もないものでもないじゃないですか。でもあのバス4つ打つだけで「あの曲だ!」って認知されるのは、やっぱりすごいなって。僕たちもLIQUIDROOMで初めて歌った時に感じました。

■そういった発見はこれからの曲作りにも生きてきそうですね。

U そうですね。LIQUIDROOMの時も曲が流れた瞬間に流れが変わったっていうか、「ああいう場面を自分たちの曲でも作れないといけないね」っていうのをライブ後に話していました。“Start Over”はもちろんこれからも大事にずっと歌っていきたいし、もっとたくさんの人に知ってほしいんですけど、自分たちの曲でもあの瞬間をいつか迎えられないとダメだねっていう。そういう気づきをプレゼントしてくれた曲なので、本当にありがたいですね。

■「梨泰院クラス」を見ていて「自分たちに重なった」という話もありましたが、歌詞を書く時にはそれも踏まえて書いていったんですか?

U そうですね。歌詞の直訳を読んだ時も、苦しい状況から絆を選んでいって、おいしい話とか成功している人への嫉妬とかよりも、絆に目を向けたまま立ち上がっていくっていう内容が本当に僕らだなって思って。事務所決める時も、今の事務所以外にも12、3社の人たちが一緒にやろうって言ってくれたんですけど、「絶対に今の事務所がいい」ってブレなかったし、「REIが可愛い」って言って、他の事務所にREI1人だけが引き抜かれそうになったり、そういう瞬間がいくつもあったんですけど。(笑) 今の事務所に入ってからもそれぞれに苦しい時があったし、それでも逃げずにやってきたっていうのもあって、「叶うかわからない夢を追い続ける」っていう直訳を読んだ時はもう、本当にプレゼントだなというか。僕たちにぴったりって言い切っていいくらいで、自分の中で湧き上がる感情がありましたね。

■そういう意味でも、歌っている時に気持ちも入りますよね。

MASATO この記事が出る頃にはもう10周年を迎えていると思うんですけど、路上ライブからずっとやってきて、売れているアーティストさんとか先輩も見てきて、どこか反骨精神を持ってやってきたので。これがもし10年目じゃなかったら、また違う風に捉えていたかなって思うくらい重なる部分がある曲だと思うので、今だから歌える歌なのかなっていうのもあります。自信を持って歌っています。

REI 結成から10年、今日までのことをこれだけ重ねて歌えるカバー曲って中々ないと思うんです。なので、本当にライブで歌っている時も、レコーディングしている時も気持ちを込めて自分自身にも歌えているし、聴いてもらえる人たちにとって、「また明日からもう一度頑張ろう」っていう気持ちになってもらえたらいいなとも思います。このタイミングでこのカバーを歌わせてもらっているのは、本当にありがたいことだなって思います。