UNCHAIN VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

UNCHAIN『Animal Effect』

谷川正憲(Vo&Gt)、谷浩彰(Ba&Cho)、吉田昇吾(Dr)

アニマル的な感性で、バンドを始めた頃の気持ちでもう一度やろう!

UNCHAINの約2年ぶりとなるニューアルバム『Animal Effect』は、バンドにとって原点回帰的なニュアンスを秘めた作品に仕上がった。今年は結成25周年という節目を迎えたものの、昨年メンバーが一人抜けたことで結成当時の3ピースバンドに戻った彼ら。再出発の意味を込めた今作には、メンバー一人ひとりのポテンシャルをさらに引き出し、このメンバー3人だからこそできることを突き詰めた楽曲がずらりと並ぶ。形は変われど、昔も今もUNCHAINらしい魅惑のミクスチャーサウンドを生み出す彼らに久しぶりに話を聞いた。

■個人的にUNCHAINの取材は15年ぶりになります。

谷川 えっ、本当ですか?

吉田 インディーズの頃ですか?

■2ndミニアルバム『THE MUSIC HUMANIZED IS HERE』(2006年発表)のタイミングです。あの作品がすごく好きですと伝えたら、「暗い曲が好きなんですね」って苦笑いされました。(笑)

吉田 すげえ覚えてますね。(笑) 顔は何となく記憶にあるんですけど。

■それはさておき、UNCHAINは今年結成25周年を迎えますね。

谷川 だから、15年前も既に10年ぐらいやっていた計算ですね。

■バンドがここまで続いた原動力は何だと思いますか?

谷川 いやあ、運が良かったのかなと。デビューまではくすぶっていましたけど、まずエイベックスさんに拾ってもらい、その契約が切れた後、僕が弾き語りイベントに出て、そこに一緒に出ていた浜崎貴司さんが在籍していたレーベルの人に声をかけてもらったので、出会いに恵まれていたなと。

 ストイックにずっと25年間やっていたかと言うとそうでもなくて。レコーディングとツアー、その合間に息抜きもしたし、四六時中ずっとUNCHAINのことを考えていたわけでもないから。

谷川 考えてください、そこは。(笑)

 そういう環境があったから今まで続けてこられたのかなと。まあ、メンバーは一人減っちゃいましたけどね。

吉田 性格的にガツガツしている人がいないから、バチバチでぶつかることも少ないんですよ。

■そして、昨年に佐藤さんが脱退しました。少し後から加入したとはいえ、オリジナルメンバーと言ってもいい存在でした。改めて結成当時のメンバー3人になったこともあり、96年にやりたかった音楽をあらためて聞いてもいいですか?

谷川 当時はオリジナルをやるつもりもなく、本当にごちゃ混ぜでした。流行っていた曲、好きな曲をコピーして、公民館みたいなところでライブをやっていました。THE BLUE HEARTS、LUNA SEA、X JAPAN、L’Arc〜en〜Ciel、GLAYもやったかな。

 それで、高校の頃にHi-STANDARDに憧れて。僕的にはこういうバンドで食っていけたらいいなというビジョンはありましたね。

谷川 当時ハイスタのスコアは出ていなかったので、耳コピして、好き勝手にアレンジしていました。

吉田 結成の頃はオリジナルをやる気持ちもなかったし、みんなが盛り上がってくれる曲をやろうと。

 覚えているのは、カーペンターズの“Top OF The World”をメロコアみたいにアレンジして演奏していました。

■ははは、そうなんですね。

 がっつり曲作りを始めたのは3人で音楽の専門学校に進学して、往年のロックやR&B、ブラックミュージックを授業で聴くようになったことがきっかけですね。それが1999、2000年辺りかな。

■そこで現在の音楽に繋がる自分たちのスタイルが見えてきた?

吉田 音楽性が変わるきっかけはインディーズ時代に出した“You Over You”(1stミニアルバム『the space of the sense』収録/05年発表)ですね。

谷川 方向性を決めたのはその曲だね。

■“You Over You”ができた時は手応えがあったと?

谷川 う〜ん……。

吉田 あった気がします。(笑)

 あと、他のバンドマンによくthe band apartと比べられて。僕らは知らなかったんですけど、聴いてみたらめちゃくちゃ良くて。

■それから作品やライブを重ねて、音楽に対する向き合い方は変わりましたか?

谷川 昔も今も「このリズムとこのメロディを掛け合わせて、何か面白いことができないかな?」と考えています。一つのことを究極に突き詰められない気がして。R&Bやソウルをやろうとしても、ドンズバでそこにはなれないんですよ。でもやろうとはしているんです。やり切れずに崩れちゃったものが僕らのオリジナルなのかなと。

■そのやり切れない感じは何が原因なんですか?

谷川 「上手い、上手い」と言われてきたけど、自分たちではそんなに上手いとは思ったことがないですね。

吉田 思ったことないです。18歳ぐらいの時は思ってましたかもしれませんが。(笑) 世界の壁は厚いなと。

谷川 本当に世界が広がれば広がるほど、自分たちのちっぽけさを感じて。

■UNCHAINがデビューした2005、2006年辺りはalaやriddim saunterなど、ソウルやR&Bを取り込んだミクスチャーバンドのブームがありましたよね。あの時期を振り返ってどんな思いがありますか?

谷川 alaとかはめちゃくちゃすごい奴が出てきたなと思いましたね。

 でも気づいたら、いなくなっていました。(笑)

吉田 天才でしたよね。敵わないと思っていました。

谷川 そう、敵わないのは古川太一(元riddim saunter)くんもそうだし、才能に溢れている人は今もやっていますからね。

吉田 突出している人がいると、バンドは続きにくい気もしますね。そんな気がせぇへん?

谷川 まあね。周りを見るとバンドってなぜこんなに続けることが難しいのかなと。

■UNCHAINの話に戻りますが、昨年に佐藤さんの脱退がありましたが、これはやはりショックな出来事でしたか?

谷川 そうですね。2019年の夏に佐藤から言われたんですけど、いつか誰かがそんなことを言い出すんじゃないかと思っていたんですが、でももし実際にそう言われたら、「OKわかった!」って言おうと決めていました。この歳になると人生バンドだけじゃないし、他の道もありますからね。

■新たにギターを入れる選択肢もあったと思いますが、残ったメンバー3人で続けようと思った理由は?

谷川 いや、その辺はまだ定まっていないんですよ。

■えっ、そうなんですか?

 でも正規メンバーとして入れることは考えていないです。サポートメンバーとして入れる可能性はありますけど。

谷川 昨年はコロナ禍でメンバーに会う機会も全然なかったし、佐藤の最後のライブも延期になったし、とりあえずスタートを切らなきゃいけないなと。でもコロナ禍で制作意欲も失くなっちゃったんです。佐藤が抜けたことで、今までの曲が1曲もできなくなったし……それぐらい佐藤の存在は大きかったんですよ。

■あのギターがないと、成り立たない楽曲ばかり?

谷川 そのまま3人でやっても、ただメンバー一人がいなくなって、しょぼく聴こえちゃうだけで。このあいだ配信ライブをやったんですけど、全部3人用にリアレンジしたんですよ。だから、まだできる曲が10曲くらいしかないんです。バンドやり始めみたいな、それこそ96年に戻ったような感じです。

■「振り出しのイマジネーション,マイビジョン」(“Wait For The Sun”)の歌詞通りですね。

 よく気づいてくれましたね。(笑) それは僕らバンドのことを歌った歌詞なんですよ。ネガティブからポジティブへ、自分もそういう方向に向かいたいし、それをテーマに歌詞を書きました。

■この3人で初めて作った曲は“Choices”になるんですよね?

谷川 そうですね。その曲はリモートで作りました。実際に3人で集まらずにプレイしたらどうなるのか…実験でした。配信ライブで“Choices”をやった時に実感を得られましたね。それこそ展開の仕方とか、3人時代の雰囲気が出ていますね。ロックから飛び出せない感じというか、ロックだけどロックじゃない…そういう雰囲気が出ているんじゃないかなと。

■ロックだけどロックじゃない?

谷川 はい。(笑) でもロックなんですよ。2000年代のUNCHAINはそういう感じだったから。今回、ツインヴォーカルも復活させているんですよ。1996年~2000年の頃は、よく僕と谷くん2人で歌っていましたからね。Aメロは僕、Bメロは谷くん、サビは一緒に歌っている曲もあります。

■では、今作の最初のビジョンというと?

谷川 前作から2年半空いたので、楽曲はちょこちょこあったんですよ。そこからアルバム名を先に決めたんですよ、方向性がなかなか定まらなかったから。3人時代の気持ちを呼び起こして、「アニマル的な感性でバンドを始めた頃の気持ちでもう一度やろう!」というコンセプトはありました。