w-inds. VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

w-inds.『20XX“THE BEST”』

プロデューサーと闘っていた時期もあった。進化を続けた20年と新体制の未来を語る

アジアを代表するダンス&ボーカルグループとして国内外で活躍を続けてきたw-inds.が、デビュー20周年を迎える3月14日にベストアルバム『20XX“THE BEST”』をリリース。本作にはデビュー曲“Forever Memories”から、2人体制での初作品となった最新曲“Beautiful Now”まで、これまでシングル表題曲となった全47曲を収録。さらに初回限定盤とPCSC盤にはSpecial DISCとして、シングル曲以外のストリーミング再生数上位18曲を収録したCD、メンバーが過去21回のツアーから1曲ずつセレクトしたDVDも付属。集大成という言葉がふさわしい本作について、「ご迷惑をおかけした時期だらけ」という20年について、そして新たな魅力が生まれ始めている未来について、橘慶太と千葉涼平の2人が絶妙なコンビネーションで語ってくれた。

■今作にはデビューからの全シングル曲が収録されて、10周年の時もベストを出されていましたけど、なぜ「この10年」ではなく「20年分」の楽曲を入れようと思ったんですか?

橘 まず、この20年の感謝の気持ちを伝えられる作品を出したいなというか、2021年をそういう年にしたいなと思っていて。その上で音楽は曲を聴いて当時を思い出せるような、そういう力を持っていると思うので、1年目からの思い出をみんなと共有できる作品にしたかったんです。あとは正直なところ、最初の方に出したベストアルバムは、自分たちの思ったタイミングじゃなくて。

千葉 ははははは。(笑)

橘 なんか乗せられて「まぁ出しますか」みたいなところがあったんですよ。(笑) でも今回は「このタイミングでベストを出したい」と自分たちから発信しましたし、今だからこそ自信を持って出せると思ったんです。

■10周年の時とは違う節目感があったんですか?

橘 僕たちは15歳(千葉は16歳)でデビューしたので、10周年の時は25歳だったんですけど、当時は若さもあって、まだ変わり続けたい、進化したいという想いが強かったんです。だから新しいものを作ることにフォーカスしていたし、過去の作品より「今だ」みたいな気持ちだったのかなと思います。

■アーティストはみんな最新作を聴いて欲しいものですしね。

橘 それが年齢を重ねて、受け入れられるようになってきて。あと、いちばん印象的だったのが、15周年ライブだったんです。ファンのみなさんの愛を感じたというか。それまでは「どれだけ自分たちががんばるか」という感じだったのが、「みんなのおかげでこんなに続いたんだな」「自分たちだけの15周年じゃなかったんだな」という気持ちになったんです。そこから徐々に変化してきて、この20周年は過去の作品だったり、みんなの想いだったりが、ひとつになるタイミングなんじゃないかと強く思うようになって、去年から2021年3月14日にベストアルバムを出したいという話をしていたんです。

千葉 今慶太が言った15周年は本当に大きくて。ファンのみなさんが自分たちのことのように15周年を喜んでくださって、すごくビックリしたんです。基本的な僕のマインドとしては、明日何があるかわからないから、未来のことは見すぎないようにしているんですけど、その時に「20周年もいきたいな」と思えて。今回のベストに全曲入れるというのは、それを考えると必然だったのかなと思います。それと今年は20周年と同時に、(2人組になった)新たな体制として気持ちが切り替わる年でもあるので、ここでもう一度デビュー曲から聴いて欲しいなという想いもありました。

■確かに全曲を振り返るなら、ここしかないというタイミングですよね。お2人とも収録曲は全部聴き直したんですか?

橘 聴きましたねぇ。いい曲いっぱいありました。

千葉 今聴くからいいなと思える曲もあって。当時とまた聴こえ方が違うんですよ。

■デビューした頃とは声もだいぶ変わっていますけど、ご自身ではどう感じていますか?

橘 それこそ10周年くらいの時は、昔の声が嫌いだったんですけど、今は「なんていい声してるんだ」と思うんです。(笑) “Forever Memories”(1stシングル)とか“Feel The Fate”(2ndシングル)とか初期の楽曲は、あの声だったからこその世界観が出せているんだろうなって、改めて思いました。

■10年前は何が嫌だったんですか?

橘 やっぱり男の人は「男らしくありたい」という部分があると思うんですけど、ちょっとかわいい感じでデビューしていたので、それを振り払いたい気持ちが強かったんだと思います。

■すごくピュアな歌声でしたよね。……今がピュアじゃないと言っているわけじゃないですけど。(笑)

橘 いや、今はまったくピュアじゃないです。(笑)

千葉 でも、ピュアというのは声質だけじゃなくて、テクニック的なところでも感じるんです。今は考えて構築されているテクニックで、昔はもうちょっとストレートな上手さだったのかなって。

橘 今はちょっとしたたかなテクニックになっているので。(笑)

■昔の音源を聴くと、今の声で歌ったらどうなるんだろう?っていう楽しみも増えますよね。

橘 そうですよね。15歳の頃の歌を35歳で表現するっていうのは、かなりハードルが高いんですけど、そこは20年やっているアーティストの宿命だと思うので。

■別に封印はしてないですよね?

橘 全然封印してないです。(3月14日に開催する)オンラインライブでもやろうと思っていますし、封印したらファンのみなさんにめちゃくちゃ怒られます。(笑) こうして20年も続けられるのは、本当にファンのみなさんのおかげなので、その気持ちに応えたいですし。

■20年の中でいろんな時期があったと思うんですけど、お2人の中でもナニナニ期とかあるんですか?

橘 ありますね。デビュー当初はキラキラしたJ-POPでヒップホップダンスをやっていて、途中から海外の作家が入ってきて、ちょっとサウンドがカッコよくなって。そこからまたJ-POPっぽいメロディーが入ってきて、またダンス重視になって……。このベストの収録曲を見ていると、音楽的な変化もあるんですけど、さっきも話したカッコいいことをやりたい気持ちが強かったので、プロデューサーの人と闘っていた時のことを思い出しますね。「俺たちがやりたいことはこうなんだ」「いや、そんなのダメだ」みたいな。

■いちばん闘っていた時期は、いつ頃だったんですか?

橘 “New World”(2009年12月発表)の前くらいですかね。あとは“Beautiful Life”(2007年11月発表)とかも。このあたりは「自分たちのやりたい音楽をやらせろ〜」という気持ちで、お話をいっぱいした時期でした。

■今作を頭から通して聴いた個人的な印象では、“CAN’T GET BACK”(2008年11月発表)くらいから挑戦的な曲が増えたのかなと感じました。

橘 まさにそうなんです。そこから挑戦的な曲を増やして、その後“New World”で初めて外部のプロデューサーと制作して。それまではずっと事務所内のプロデューサーとやっていたんですけど、外の環境も知りたいと交渉したんです。その結果、新しい世界が見えて、いろんなものが大きく変わったなと思います。

千葉 楽曲自体も変わりましたし、やりたいパフォーマンスやイメージするものも変わっていきましたし、やりやすくなりましたね。やっぱりやりたいものがあっても、楽曲とハマらないと、なかなか形にできなかったので。そういう意味で“New World”は、総合的に見ても大きく変化した楽曲でした。

■さらに2017年からは、プロデュース自体を橘さんが手掛けるようになって。

橘 それも外に出ていろんな経験をさせてもらううちに、自分で作りたい気持ちが高まった結果なのかなと思います。

■デビュー当時からいつかは自分で全部やりたいと思っていたんですか?

橘 そこまでは思っていなかったんですけど、今振り返ってみたら、家にシンセサイザーを置いていたんですよ。それを使って曲と曲をつなげたり、ドラムを打ち込んだり、そういうのを遊びでやっていて。だから興味があったのかなとは思います。あと、15〜16歳の頃のインタビューを見たら、「将来の夢は自分で曲を作ることです」と言っていたんですよ。たぶん、そう言っておけばカッコいいだろうと思って言ったのかなと思うんですけど。(笑)

■でも、結果として17年目の有言実行になって。

橘 いやぁ、もうちょっと早くやっとけよって話ですけどね。(笑)

■僕は今作で全シングルを聴いて、最初は“Love is message”(2003年8月発表)や“Long Road”(2003年10月発表)あたりが好みだなと思ったんですけど、“Truth〜最後の真実〜”(2009年12月発表)とかのテイストも好きで、2015年くらいからのファンクっぽい感じもいいなと思って……結果、w-inds.は沼だなと思ったんです。

橘 ありがとうございます。(笑) 本当に同じアーティストとは思えないくらいの幅広さなので。最近w-inds.を好きになった人が今回のベストを聴いたら、ビックリするかもしれないですね。

■そうやって進化してきた中で、ご自身が考えるw-inds.の真骨頂とは?

橘 ずっと僕たちが言っているのは、チャレンジするというか、変わり続けること。そこがw-inds.のいいところかなと思っていて。周りからは「w-inds.は白が似合うね」って、デビュー当初から言われていたんですけど、今は何にでも塗れる白になってきた感覚なんです。だから、どの色にも染まれる自信があるというか、何をやってもw-inds.らしさを出せる気がしているので、そこはw-inds.の特別なところなんじゃないかなと、よく涼平君とも話していますね。

■実際に僕は46曲聴いても全然飽きなかったんです。飽きないどころか、この曲はこういう感じだから、この時期のアルバムはどういう感じなんだろう?ってアルバムを聴き始めて、やっぱり沼だなと。(笑)

千葉 そこまでつながっちゃうのは嬉しいですね!

■それで特にお気に入りだったのが“Celebration”(2018年7月発表アルバム『100』に収録)だったんですけど、この曲はシングル以外のストリーミング再生数上位曲を収録した「w-inds. BEST TRACKS CD」(初回限定盤およびPCSC盤に付属)にも入っていて。

橘 嬉しいです、最近の曲なので。ストリーミングの上位曲は、昔の曲ばかりになると思っていたんですけど、蓋を開けたら思っていた以上に最近の曲も入ってきて、それが何よりも嬉しかったですね。昔の曲が好きって言ってくれるのも本当にありがたいんですけど、やっぱり音楽をやっている人間としては、今の自分たちを認めてもらいたいという気持ちが、どうしてもどこかにあるので。

■ちなみに再生数1位は、1stアルバム(2001年12月発表『w-inds.〜1st message〜』)収録の“Endless Moment”でしたけど。

千葉 それは予想通りでした。

橘 ずっと人気の曲なので、いつかこれを抜ける曲が作れるようにがんばらなきゃいけないですね。

■上位になった曲は、ライブの定番曲が多いんですか?

橘 定番というか、イントロが鳴ったら悲鳴があがる曲です。(笑)

■そうなんですね。(笑) でも、バラードっぽい曲が多いなと思いました。

橘 確かにそうかもしれない。やっぱり歌モノは人気なのかな。

■音源として聴くものと、映像として見るものという違いも大きいのかなと。

橘 それはあるかもしれないですね。やっぱりパフォーマンスありきで作っている曲も多いので。

■そのパフォーマンスの部分は「BEST LIVE SELLECTION DVD」(初回限定盤およびPCSC盤に付属)で見られますけど、お2人が収録曲を選んだと聞きました。

橘 選びました。正月にDVDを渡されて、全部見てこいと言われて。(笑)

千葉 だから正月返上ですよ。(笑)

■過去の全ライブツアーから1曲ずつ、計21曲も収録されて。どんな基準で選んだんですか?

橘 2人別々で見て、お互いのいちばんを選んですり合わせました。

■2人で意見が一致した曲は?

千葉 “Nothing Is Impossible”は一致したよね。

橘 2010年の『Another World』ツアーのパフォーマンスなんですけど、21作見た中でいちばん好きでした。僕が「絶対これだ」と言ったら、涼平君もその年はそれがよかったと言ってくれて。これでもうあと5年は仲良くできそうだなって。(笑)

千葉 ははははは!(笑)