Wienners VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

意味のある言葉を噛み砕いて「楽しいじゃん!」に昇華したい。

Wiennersのデジタルシングル『TOP SPEED』は、TVアニメ「逃走中 グレートミッション」のエンディング主題歌に決定した。曲自体は約1分半のショートチューンで、トップギアで飛ばしまくった爽快な1曲だ。これまでになくアレンジを削ぎ落とし、飾り気ない歌詞を含めて、聴き手の懐に「スッ」と入ってくるサウンドが痛快。バンドとしては8年間在籍したKOZO(Dr)脱退のニュースに驚いた人も多いだろう。これからはサポートドラムを入れて、活動を続けるそうだ。今回、玉屋2060%(Vo&Gt)に話を聞いたが、現在のWiennersに不安要素は皆無、こらからの展開がさらに楽しみなテキストになったので是非読んでもらいたい。

■今年、Wiennersは様々なアーティストと対バンしましたね。THE BAWDIES、KANA-BOON、水曜日のカンパネラ、ラッパーの呂布カルマさんなど、実際にやってみていかがでしたか?

玉屋 いろんなバンドとコミュニーションを取った結果ですね。去年からオーバーグラウンドに対して、どんな活動をするべきなのかを考えて、今までやってこなかった人たちと対バンしようと。それこそKANA-BOONなんて、どうなるのかわからなかったですからね。でもやってみたら、めちゃくちゃ仲良くなって、お互いにこんな奴らだったんだって。(笑)

■そこで新たな気付きはありましたか?

玉屋 圧倒的な視野の広さですかね、音楽シーンに対しての。ただ、曲作りに関してはやりたいこと、伝えたいことをやっていますから。バンド同士のコミュニケーションが自分たちの中で変わったから、それで活動の幅も広がったのかなと。「Wiennersってこんなオープンなバンドなんだ!」って、よく言われます。

■今までは面倒臭いバンドだと思われていたとか?(笑)

玉屋 どうなんですかね。(笑) オーバーグラウンドにいるバンドからはそう思われていたかもしれないですね。

■Wiennersはパンクを含めて、どんなジャンルも血肉化してしまうミクスチャーバンドなので、どんな音楽性のバントと対バンしても成立しそうですけどね。

玉屋 そこが強さだから。ライブハウスとダンスフロアを繋げられたら一番いいですね。クラブ音楽を知らない子たちにそういう音楽と出会える場を提供できたらいいし。いろんなバンドと対バンして、自分たちのお客さんに対しても、「Wiennersが呼んだバンドなら間違いない」と思わせられたらいいですね。ずっと音楽をやっていて思うのは、友達の家に集まって、ディスクユニオンで買ってきたCDをお互いに聴かせ合う、そんな感じでバンドを紹介できたらいいなと思っています。(笑)

■それは最高ですね!そして今回のデジタルシングル“TOP SPEED”の話に移りたいんですが、これはTVアニメ「逃走中 グレートミッション」のエンディング曲ですね。

玉屋 実はこの曲の原形はずっとあったんですよ。8ビートでめっちゃ速いものをやりたくて。アニメのオファーをいただいて、「逃走中」=「逃げている感じ」と照らし合わせて、この原形を膨らませてみようと。結局、実現しなかったんですけど、本当は59秒で終わる曲を作りたかったんです。

■1分を切ったショート・チューンにしようと?

玉屋 最終的には97秒になったんですけど、生き急いでいるような曲を作ろうと。

■なぜ生き急いでいる曲を作ろうと思ったんですか?

玉屋 曲作りの時にメンバーにも「走馬灯」というキーワードをよく使うんですよ。人生の最後に「あっ、終わっちゃう!」という感覚をバンドで表現したくて。今回はそれが顕著に曲に出ていると思います。終わる寸前の美しさというか、死ぬ直前に出てくる走馬灯みたいなものを自分が見てみたいんでしょうね。それを必死に想像して、「こうだったらいいな」と考えてやっているのかもしれないです。

■そういう考えは10代の頃からあったんですか?

玉屋 多分ありましたね。見ようとしても絶対見ることができない景色への憧れはあります。それに対して、「こうあってほしい」という想像力は昔からありました。

■“TOP SPEED”は、内容的にはお別れソングですよね?

玉屋 そうですねぇ……なんだろ、本当にこの曲を作っている時に、個人的にお別れがすごく多くて。お別れはいくら経験しても後悔しか残らない。「なぜもっとあいつと話さなかったのかな」とか。でもそうした後悔はなくそうと思ってもなくならないものだと思うから。「後悔するなよ」みたいな歌詞は、誰でも言うことだと思うんですよ。人間は喉元を過ぎれば忘れちゃうし、また同じことをやっちゃうよな、というバカっぽさも人生だと思うから。

■人間の業を素直に肯定しようと?

玉屋 こんなもんだよって。それをコメディタッチで表現したいんです。悲劇ではなく、喜劇として表現するのがWiennersっぽいよなと。このテーマならいくらでもシリアスにできるけど、この曲を映画に例えるなら、2時間の号泣ものではなく、「クレヨンしんちゃん」みたいな。でもすごく泣けるという。(笑)

■笑えるんだけど、ほんのり泣けるみたいな、そのさじ加減はWiennersらしいですね。曲自体はスムーズにできましたか?

玉屋 めっちゃスムーズでした。アイデア一発勝負で無駄な味付けはやめようと。アレンジもいつもなら、いっぱい乗せていたけど、手癖だけで作った感じです。でもサビはテンションコードですごく考えられていて、ストレートに伝えたいからこそ、複雑さはあまりわからないようにしています。シンプルなことをやっているけど、そのシンプルさに深みを出すために、ハーモニーを積み重ねたりして、隠し味で勝負しようと。いつもは料理にわかりやすいバジルみたいな味付けをしていたけど、今回は下味にすごくこだわりました。

■ド頭の「これっきり〜」の歌詞の連呼から心を掴まれますが、これは誰の声ですか?

玉屋 最初の歌い出しは∴560∵(Ba&Cho)なんですよ。それも今までやったことがなかったから。

■これは山口百恵の“横須賀ストーリー”のオマージュ?

玉屋 そうです!(笑) 「これっきり」という言葉が浮かんだ時に、百恵ちゃんが出てきたから、その意味でも今回は直感で出てきた言葉を大事にしました。いつもは「バーッ」と書き殴って、そこから辻褄を合わせるけど、今回は書き殴ったものをそのまま使おうと。

■歌詞の中に話し言葉的なクダけた表現も今回は多いなと感じました。

玉屋 上手いことを言うんじゃなく、「一発目に出てきた言葉でいいんじゃない?」って。それは自分の中で言葉がちゃんと溢れ出てきたことが大きいかもしれない。「さよならはまた会う時までの遠い約束だってよ」という歌詞があるんですが……。

■これも薬師丸ひろ子の“セーラー服と機関銃”を少しモジッた歌詞ですね。(笑)

玉屋 はははは、そうです!10代の頃に友達のバンドとふざけて帰り際にそういうことを言い合っていたんですよ。そういうノリを曲にすることが一番伝わるのかなって。自分の言葉ではないけど、自然に出てくる言葉の方が飾っていないし、一番伝わるのかなと。あと、アレンジする中でライブでパッとできる曲にしたいなと思って。Wiennersの曲は、サンプラーや同期を入れていて、瞬発的にできる曲が少ないから、それでアレンジも削ぎ落として、歌詞も自分から素直に出てきた言葉にしようと。