吉澤嘉代子 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

■好きな氷菓子はありますか?

吉澤 爽やかでシャリシャリしているやつが好きです。もともと甘いものがそんなに得意じゃなくて、牧場に行ってみんなでアイスクリーム食べるような時でも「私はいいや」みたいなタイプだったんですけど、“氷菓子”を作るにあたって、アイスを毎日食べました。そうしたらだんだんこう、「アイスを食べずにはいられない」みたいな感じになってきて……。(笑)

■ちょっとしたアイス中毒ですね。(笑)

吉澤 そう。朝イチのアイスが一番楽しくて、もう起きた瞬間に「アイス食べたい!」ってなる。(笑) 食べるとなんかこう、脳の奥が「ビリビリ」って痺れる感じがするんです。血糖値上昇みたいな。それがもうたまらなくて、曲を書き終わってからもしばらく抜けなかったんですけど、最近は控えています。

■それは聞いていて心配になりますね……。吉澤さんの中で「特別なモチーフ」ってありますか?

吉澤 よく使う言葉は「夢」です。私が見る夢には色もついているのですが、最近は匂いや味もするように進化してきて、夢が現実に迫ってきたようで怖いです。この間は夢の中でいちごヨーグルトを食べていて、ちゃんと味を感じたんですよ。それで起きてから確かめようと思ってコンビニでいちごヨーグルト買って食べたら、夢の中と全く同じ味わいがしてびっくりしました。夢と現実が混ざってきている気がします。

■将来の「夢」ではなくて、夜に見る「夢」の方なんですね。夢は近い所にありますか?

吉澤 ものすごく近くて、特に子どもの頃は夢と現実が同じ割合くらいの感じで生きていました。なので、夢は怖いです。繰り返し見る夢もあります。「いつもこの状態になるな」とか、「いつもここに来ているな」ということもよくあります。

■私も同じ場所の夢をよく見るのですが、吉澤さんがよく行く場所と同じだったらホラーですね。(笑) 新曲“氷菓子”の話題に戻りまして、この曲は映画の主題歌になるというオファーが先に来たのでしょうか?

吉澤 最初は口約束みたいな感じでした。千原徹也監督から「初めて映画を撮る時には主題歌を書いて欲しい」と言ってもらっていて、そこから5年くらい経って、ようやく作り上げられた曲です。

■予告編はストーリーがぼかされている感じがして、抽象的な印象でした。

吉澤 様々な仕掛けがあるので脚本を読んでいない頃に戻って、もう1回映画を観たいって思うくらいです。

■予告編を見た限りだと「狭い」人間関係の中の物語に感じたので、“氷菓子”の曲調が壮大なことに驚きました。この辺は意図的なものでしょうか?

吉澤 映画はすごく小さな世界の話ではあります。人が死ぬわけではないし、事件が起こるわけでもないし。人間同士の小さなやりとりが紡がれる作品です。“氷菓子”は劇中で流れる曲としてオーダーいただいたのですが、千原監督にとって初監督作品ということで、作風とかもまだわからなくて、どんな映画になるのかも全く想像がつかなかったので、メロディや言葉で劇中のシーンを邪魔したくない気持ちがすごくありました。なので、歌詞に使う言葉は身近にあるものを拾うのではなくあえて「大きな言葉」を選んでいます。

■大きな言葉?

吉澤 自分の気持ちを重ねられる「器」を大きくしておきたいなと思って。サウンドはリファレンスとしてウォン・カーウァイ監督の映画『恋する惑星』の中でフェイ・ウォンが歌う“夢中人”をイメージとしてお伝えいただいていたので、「疾走感と広がりがあるサウンドになったらいいな」とアレンジャーの野村陽一郎さんにお伝えして、その結果壮大な感じになったのかなと思います。

■ヴォーカルにもすごくこだわりを感じるのですが、いつも何テイクくらい録っていますか?

吉澤 レコーディングはめちゃめちゃ録ります。1発録りテイクはライブで聴いていただけるので、「レコーディング音源は作り込んだものにしたい」という気持ちがあり、ライブとは別物として音源を楽しんでもらえたらいいなと思います。

■歌詞の中では「光を編む」という言葉がすごく好きだったのですが、元になったイメージはあるのでしょうか?

吉澤 千原徹也監督が『これはデザインではない 「勝てない」僕の人生〈徹〉学』という本を書かれていて、その中に「人生はやさしく繋がっている」という一文があるんです。そんな映画を作りたいというお話があったので、自分もそういう歌を書きたいなと思い、じゃあそれってどういうことなのかな?と考えた時、作業場でひたすらデザインを組んだり映像を編集したりしてる監督の姿が浮かびました。それが自分にも置き換えられるなと思って。作ったものが届けたい人に届かないこともあるし、報われないことっていっぱいあるんですけど、でも編み続けることが大事なんです。その一方通行の気持ちが少しだけ重なった時に、人と関われるのだと思います。

■「光」はイメージの根源や繋がりのようなものなんですね。「左様ならさえも届かない場所で~」という所からは特に幻想的な印象でした。

吉澤 監督から出てくる言葉や、映画の中に出てくる言葉を引用しながら書いているものの、やっぱり私が書いているので、「自分の気持ち」も滲んでくると思うんですけど、「左様ならさえも~」からの2行は特に自分の気持ちなのかもしれないです。そういうものって確かな言葉では書きづらいですよね。でも、ぼかすことで「重なった」ような気がしてくれる人もいると思うので、確かにその2行はそんな塩梅で書きました。

■映画と歌詞の合致率は何割くらいですか?

吉澤 全体的に映画に合うように作っていて、限りなく9割に近い状態で作ろうと思っています。

■どうなっているかは映画を観てのお楽しみですね。ところで吉澤さんは今回の映画にご出演もされたんですよね?

吉澤 ちょびっとだけ。(笑) モトーラ世理奈ちゃんの隣に住んでいる人の役です。

■予告に少し映っていた吉澤さん、めちゃくちゃ可愛くて「ハッ」としました。(笑) 出演してみていかがでしたか?楽しかったですか?

吉澤 いや、あっという間に終わりましたね。「これでいいのかな?」って思いながら……撮ってもらったカット全部使われているんじゃないかな?ってくらいにすぐ終わりました。でも、出演者のみなさんの中には吉岡里帆さんやモトーラ世理奈さんなど、久しぶりにお会いできた方たちもいて楽しかったです。あと、松本まりかさんには初めてお会いしたんですけど、すごく美しくてびっくりしました。

■松本さんも最近注目の女優さんですよね。2023年には“氷菓子”に続く新曲も出てきますか?

吉澤 今アルバムを作っているので、お披露目したいなと思っています。

■アルバムですか!楽しみに待っています。

Interview & Text:安藤さやか

PROFILE
1990年6月4日生まれ。埼玉県川口鋳物工場街育ち。2014年デビュー。2017年にドラマ「架空OL日記」の主題歌「月曜日戦争」を書き下ろす。2ndシングル『残ってる』がロングヒット。2020年11月25日にビクターエンタテインメントよりシングル『サービスエリア』をリリース。2021年1月20日にテレビ東京ほかドラマParavi「おじさまと猫」オープニングテーマ『刺繍』を配信リリースし、3月17日に5thアルバム『赤星青星』をリリース。同年6月20日には日比谷野外音楽堂での単独公演を開催。9月29日に初のライブブルーレイ『吉澤嘉代子の日比谷野外音楽堂』をリリース。2023年5月9日にはEX THEATER ROPPONGIにて単独公演『アイクリームの日』を開催。7月12日には映画「アイスクリームフィーバー」主題歌として書き下ろしたニューシングル『氷菓子』をリリース。
https://yoshizawakayoko.com/

RELEASE
『氷菓子』

VICTOR ONLINE STORE 限定パッケージ(CD+DVD)
NZS-926
¥4,400(tax in)

配信デジタルリリース

ビクターエンタテインメント
7月12日 ON SALE