ユン・ソクチョル・トリオ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

初来日公演も大盛況に終えた韓国屈指のジャズトリオが持つ日本との意外なつながり。

韓国のユン・ソクチョル・トリオが初の来日公演を10月に東京・BLUE NOTE PLACEと大阪・BLUE YARDで開催した。計3日間にわたって行われた公演では、スウィング感あふれるアッパーチューンからメロウで感傷的なナンバーまで、観る者を瞬く間に没入させる演奏で喝采を浴び、飾らない人柄でも魅了した彼ら。韓国では大型ジャズフェスティバルにも多数出演し、アメリカの公共放送NPRが世界にブームを巻き起こした「Tiny Desk Concerts」の韓国版「Tiny Desk Korea」にも出演するなど、幅広いシーンから注目を集めているが、クラシックなジャズからヒップホップやエレクトロなど現代的な要素を取り入れた独自のサウンドは、どのように生まれているのか。作曲家・プロデューサーなどとしても活躍するリーダーのユン・ソクチョルに、最初はあんまり好きではなかったというジャズを始めたきっかけや、日本との意外なつながり、そして8月にリリースされた最新アルバムについてまで語ってもらった。

■ソクチョルさんの経歴がとても興味深かったのですが、学生時代はLUNA SEAのコピーバンドをやっていたそうですね。何がきっかけだったんですか?

ユン・ソクチョル 中学2年生の時に、音楽好きな友達と一緒にバンドを作ったことがきっかけでした。その時はロックバンドがやりたくて、LUNA SEAの“TONIGHT”とGLAYの“RAIN”を練習したんです。“TONIGHT”は、もともとキーボードがない曲でしたが、自分でアルペジオを作りました。

■もともとピアノは習っていたんですか?

ユン・ソクチョル 小学校1年生からピアノの塾に通っていたのですが、本格的に始めたのは中学2年生の時に作曲家になりたいと思うようになってからですね。それで塾に作曲を学びに行ったのですが、作曲の先生ではなく、ジャズピアノの先生を紹介されたんです。

■当時からジャズも好きだったんですか?

ユン・ソクチョル 父親が音楽好きだったので、その影響で幼い頃からチャック・マンジョーネの『Feels So Good』と、ルイ・アームストロングのベストアルバムを聴いて育ちました。

■同時期にジャズとLUNA SEAを聴いていたんですか?

ユン・ソクチョル そうですね。韓国の歌もよく聴いていましたし、友達の影響もあってモーニング娘。とかJ-POPもよく聴いていました。ただ、ジャズは最初はあんまり好きじゃなかったです。作曲を学びたかったのにジャズピアノの先生を紹介されて、自分が望んでもないのに学ぶことになったので。でも、初めてのピアノのレッスンの時に、ピアノの先生が韓国の童謡をジャズ風に演奏しているのを見て、すごく驚いたんです。それからジャズを学んでもいいと思うようになりました。

■そうだったんですね。やっていくうちにどんどん好きになっていったんですか?

ユン・ソクチョル はい。最初にマイルス・デイヴィスの『Kind of Blue』を聴いた時は、すごく眠くて、全然わからなかったんです。でも、先生がレッスンでどんどん褒めてくれたこともあって、一生懸命練習するようになりました。

ユン・ソクチョル(2024/10/20@ BLUE NOTE PLACE)

■今は作曲家だけでなく、アレンジャー、プロデューサー、大学の先生もやられているそうですが、ユン・ソクチョル・トリオは自分のジャズバンドを作りたいと思って始めたものなんですか?

ユン・ソクチョル 私は20歳の頃からジャズクラブで公演をしていました。そこではスタンダードナンバーだけを演奏することが多かったのですが、自分のオリジナル曲を作りたいと思う気持ちがあったんです。なぜなら、過去の伝説的なアーティストたちも、スタンダードジャズをやりながらオリジナルナンバーを発表していたから。だから私も、ジャズをもっと豊かに作るには、クリエイティブな創造をしなきゃいけないと思いましたし、昔に作られた曲が時を経てスタンダードになったように、私が作った曲も100年後にスタンダードになるかもしれない。そんな期待を抱えてがんばっています。

■素晴らしい目標ですね!ユン・ソクチョル・トリオはジャズというだけでは片付けられないくらい幅広い音楽を取り込んだ作品を作られていると思いました。

ユン・ソクチョル ありがとうございます。海外でも日本でも、自分自身のスタイルの音楽を演奏するアーティストが多いと思いますが、私も彼らと同様に自分自身の音楽を演奏したいと思っています。

ユン・ソクチョル・トリオ(2024/10/23@ BLUE YARD)

■トリオのメンバーであるチョン・サンイさんとキム・ヨンジンさんについても紹介していただけますか?

ユン・ソクチョル 2人とは私がジャズクラブで演奏を始めた20歳くらいの頃に知り合ったんです。その頃から私の音楽についての価値観や考えをずっと信じてくれて、私が音楽的に悩んだ時でも、私を徹底的に信じてくれる。ヒップホップやハウス、シンセサウンドなど、いろんなジャンルを融合させた時も、一緒に悩んだり、勉強したり、3人で一緒に発展しながら音楽を作ってきました。