超学生 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

超学生

20歳の歌い手超学生、活動への思いと制作での工夫を語る。

小学生時代に歌い手として活動を開始し、20歳ながら10年近くのキャリアのある歌い手、超学生。8月17日に“アンノウン・マザーグース”、“きゅうくらりん”、“ド屑”の歌ってみた3曲を配信リリースした。今年6月にはオリジナル曲の“Untouchable”、7月には“Fake Parade”をリリースするなど、オリジナル曲のリリースも精力的に行うほか、現在は歌ってみたの投稿を週一という驚異的なペースで継続している。
そんな超学生の歌ってみたとの出会いやネットシーンで活動するきっかけ、週一というコンスタントな活動への思いに迫る本インタビュー。最近リリースした楽曲についての話題はもちろん、活動や制作の裏側に迫る質問を投げかけながら、普段あまり語られない超学生の音楽に対する思いを訊いた。

■音楽活動を始めたきっかけを教えてください。

超学生 小学校4年生くらいの時に、GoogleのCMに初音ミクが出ていた時期があって、そこでボーカロイドの存在を知ったんです。それでYouTubeでいろんなボーカロイド曲を聴いていたら、関連動画に「歌ってみたの作り方」みたいな講座動画が出てきて、そこで歌ってみたの存在を知りまして。それを含む講座動画を見て、動画通りの処理を始めたりしたのが歌ってみたを始めたきっかけです。

■歌ってみたそのものではなく、解説動画から歌ってみたの存在を知ったんですね。「作り方を見て作り始めようと思った」とおっしゃっていましたけど、ハードルはそんなに高く感じなかったですか?

超学生 そうですね。ありがたいことに父が協力的だったんです。インターネットに限らず、めちゃくちゃお金がかかることじゃなければ、僕が「やってみたいんだよね」って言ったことをなんでもやらせてくれるような親でした。「歌ってみたっていうのがあるらしいんだよね」って相談したら、パソコンを買った時についてくるピンマイクみたいなものを「これで音録れるから」って渡してくれて、最初はそれで録っていて。父のおかげでハードルは高くなかったです。なので、最初はボカロ曲を歌ってCD音源みたいなことができるらしいっていう面白さで始めた気がします。あと、ボカロを知る前から瀬戸弘司さんとかMEGWINさんといったYouTuberさんを先に知っていたので、元々一般人だった方がインターネットで活動していることは知っていて。自分の声くらいだったら、インターネットに載せることに抵抗はなかったっていうのはありますね。歌ってみたでいうと、今でこそ歌ってみたからメジャーデビューとか、主題歌担当とか、タイアップとかありますけど、当時は全然そんなのはなくて。あくまでも素人がカラオケみたいな感覚で出すような世界だったから、まさか仕事になるなんて一ミリも思っていなかったです。

■歌ってみたの選曲は、気に入ったものを歌うという形で決めていくんですか?

超学生 今でこそ、気に入った歌いたい曲や、やってみたい曲で選んでいますけど、当時は自分の音域で選んでいたと思います。あとリズムが取れるかとか。当時の方がニコニコの文化的には原曲キーで歌った方がいいというか、「キー変更はちょっとした逃げ」みたいな空気があったので、原キーで歌うのが前提だったんです。声変わり前の音域で、これなら歌えるっていうのを歌っていた気がしますね。もちろん好みもあったとは思うんですけど。

■影響を受けている歌い手やボカロPはいらっしゃいますか?

超学生 自分でミックスまでしている歌い手の方々には、いろんなインスピレーションをいただいた気がします。まふまふさん、赤ティンさん、そらるさんとか。当時からご自身でミックスやマスタリングまでしている方だったので、そこから入っていなかったらミックスは他人に任せてシンガーは録音だけするものって感覚があったかもしれません。そういう方々のおかげで、ミックスも自分でやってみようかなって思えたんじゃないかと思います。

■超学生さんも初期からご自身でミックスされていたんですか?

超学生 そうですね。今思うとミックスとも呼べないような粗末なものではあるんですけど、当時から一応自分でも混ぜていて。ミックス師さんにお願いすることにも興味があったので、ミックスを専門に活動されている方にお願いする期間を挟みつつ、最近はまた自分でやっていますね。

■自分でミックスするメリットってどんなものがあると思いますか?

超学生 僕みたいに投稿頻度が高い人は自分のペースで進められるからいいんじゃないかなと思います。あと毎回頼んでいるとお金もかかっちゃうので、金銭的にもいいですし。(笑) あと僕の場合、待てないんですよね。でも進捗を頻繁に聞くのもあれじゃないですか……。進むも滞るも自分次第みたいなのが、自分には合っている感じがします。

■なるほど。ところで、超学生の名前の由来ってなんですか?

超学生 実はこれ、僕にも分からなくて。(笑) というのも、当時のニコニコの文化のひとつとして、初投稿を出した時に視聴者がタグをつけて、それがもとになってボカロPのあだ名みたいになることがあって。例えば40mPさんだったら、街にめっちゃデカい初音ミクが佇んでいるイラストで初めての曲を出したんですけど、それを見た視聴者が40mPって名前を付けたみたいな。結構歌い手さんだと自分から名乗られているのが多かったんですけど、僕もそれやってみたいなって憧れがあったんです。初投稿はもう消しちゃったんですけど、kemuさんの“カミサマネジマキ”っていう曲で。その時に名前募集するので書いてくださいって言って、いろんなお名前をいただいた中から超学生を選びました。なので、名前の由来自体はよく分からないんですよ。あと名前について、「学生じゃなくなったらどうするの?」ってよく聞かれていたんですけど、本当に当時は学生じゃなくなるまで続けるとは思っていなくて。最近では名前の意味の矛盾を突かれたら、「小中高大を越えて超学生なんですよ」って言っています。(笑)

■そんなに長く続けると思っていなかったという言葉もありましたが、今では多くの登録者もいて、著名な作曲家やボカロPとのコラボも多いじゃないですか。その変化についてはどう感じていますか?

超学生 そういうありがたい機会をいただくたびに思うのは、当時の小4の僕に教えてあげたいなって。小学生の僕に言っても信じないだろうなっていうことが、特に今年立て続けに起こっているので、本当にありがたいなって思います。動画を出しても未だに1000回再生とか10000回再生越える度にすごいなって思いますしね。素敵な方とのコラボのお話をいただけると、「夢かな?」って思っちゃいますし。

■小学生から活動を始めて、活動に対する考え方の変化や成長も大きいと思います。特に大きな変化というと何がありますか?

超学生 昔は結構数字が1個の目標になっていたんです。ニコニコ動画だったら、「フォロワーを今年中に5000人にしたい」みたいな活動の仕方をしていたんですけど、ここ数年は、僕の場合は数字のために活動すると、結果的に作品の質が落ちるなって気付いて。数字を目標にするのも素敵だと思うんですけど、最近は自分の好きなものとか今挑戦した方がいいなっていうことに取り組んで、その上でひとつの区切りの数字をいただけた時にそれに感謝するっていう方がいいなっていうのが最近の考えかもしれないです。

■そうなんですね。

超学生 数字を目標にしちゃうと、その数字にいかなかったらどうしても「失敗」になっちゃうじゃないですか。そうじゃなくて、「この動画でこういうミックスの処理をしてみよう」とか、「こういう歌い方をしてみよう」っていう、作品が目標の主軸になっていると、それが仮に達成できなくても次に繋がると思うんですよね。おかげで最近はVlogじゃないですけど、日記みたいな感覚になってきていて。「今回はこんなことをしてみました」みたいな感覚で上げられるので、この感覚でやっている今が一番楽しいなって思います。特に僕は頻度が高いので、一回嫌になっちゃうとキツイと思うので。自分にはこれが正解な気がしています。

■週一であげられていますもんね。すごいスピード感ですよね。

超学生 金曜日に録音を始めて、ミックスして、動画を作って、木曜日に投稿して、また金曜日に、みたいな感じでストック無しの状態でずっとやっているんです。

■そのモチベーションの根源はどういうところにあるんでしょうか?

超学生 良い音を作ることに興味があります。どう頑張ってもプロのエンジニアさんみたいな音は作れないですけど、挑戦することに興味があるんです。いろいろ良さそうな機材を買ってみたり、記事とか本を読みながら、「今回はここをこうしてみよう」みたいな、それだけでやっていると思います。分野で言うと無限だし、時代が回っていく分、流行りの音も変わっていっちゃうので。逆に、「この曲はレトロな感じの音を作ろう」みたいな感じで、80年代のような音が合うよねってなったときに、お世話になっているエンジニアさんに当時の手法を伺ったりしながら作るのも楽しいですね。本当に趣味みたいな感覚です。

■歌いたい曲は溜めてあるんですか?

超学生 あります。やってみたい曲が結構沢山あるので、自分のプレイリストに保存したりしてます。あと好きなボカロPさんが新作をあげた際も、やりたいと思ったらその週に歌ったりもします。金曜日になって、「今日は何歌おうかな?」みたいな感じで決めていますね。歌うときに曲の主人公になれないと歌いづらいタイプなので、その週のものをミックスしながら、いろんな曲の解釈とか歌詞を読んだりはずっと続けていて。いざ金曜日になった時に「この曲なら解釈が進んでいるから歌えるな」みたいな絞り込みはある程度しています。

■歌ってみたを投稿する時の、シルエットになっている実写の動画も特徴的だなと思いました。

超学生 プロのMVでもあるじゃないですか、レコーディングの風景がMVになっているっていう。それに憧れてやってみたのが始まりで、徐々に後ろから光が当たって自分の顔が逆光になってっていうのを経て、カーテンの前に立ったら完全に影になるなっていう形で、今の形に辿り着きました。あと当時、映像で影響を受けていたのが須田景凪さんで。須田景凪として活動され始めた時のMVが、青っぽい背景でシルエットになっている感じで。それにも結構影響を受けているんじゃないかと思います。MVよりも「僕の歌っている口元が見えた方が聴こえ方が生き生きするんじゃないか」みたいな考えもあったと思います。

■最近リリースの歌ってみたで言うと“きゅうくらりん”は声の重ね方がユニークだなと思いました。そういう工夫も考えながら作っていくんですか?

超学生 歌ってみたはどっちかというと再現芸術じゃないですけど、本家の世界とか、キャラクターを踏襲してやりたいなっていうのがあって。本家の歌詞を見たり、サウンドを聴いて、「作曲者さんがこうしたいんだろうな」とか、「ここの意味を大事にしてるんだろうな」っていうのを、僕なりに汲み取って咀嚼して、音にどう落とし込むかっていうのがまず基盤にあるんです。“きゅうくらりん”の例だと、「ふわっとしていて、病んでいて、夢か現かみたいな主人公が恋を交えて悲しい展開になっていく」っていう歌詞じゃないかなって僕は思ったので、はっきりした音じゃない方がいいかなと思ったんですよ。聴いていてふわふわ脳が溶けてくような音がいいなと思ったので、この曲はコーラスが3重奏になっているんですけど、ただ重ねるだけじゃなくて、ちょっと気持ち悪い音になるような重ね方をしていて。でもそれは僕がゼロから浮かばせたアイデアなわけじゃなくて、あくまで“きゅうくらりん”っていう曲の世界があってこそのものなので、曲からアイデアをもらっているっていう感覚に近いと思います。