SERRA VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

感情あふれる歌声で紡ぎ出す全10曲、1stアルバム『Dawn Light』。

SERRAが1stアルバム『Dawn Light』を8月27日にリリース。2022年のメジャーデビュー以来、タイアップやライブの他、「#SERRA拡散計画」と称してアカペラでの歌声を投稿するなど、活動を続けているSERRA。1stアルバムには、メジャーデビュー曲“EYERIS”の再ミックスや、タイアップ楽曲“Always and Forever(TVアニメ「彼女が公爵邸に行った理由」エンディングテーマ)”、ライブやSNSでも人気の“ブラックアウト”、そして新曲2曲を含めた全10曲が収録される。今回のインタビューでは待望のアルバムについて、1曲ずつ語ってもらった。

■アニソンのアカペラメドレーを聴いて、すごく幅広い世代の曲を歌っていることに驚きました。ご自身的にはどういった作品で育った世代になるのでしょうか?

SERRA 「しゅごキャラ!」というアニメが大好きで、すごくハマっていました。そのアニソンはカバーしていないんですけど。(笑)

■懐かしい!私も見ていました。SERRAさんの曲は、バンドサウンドがガンガン鳴っているタイプですが、なぜ「アカペラ」という表現方法に至ったんですか?

SERRA 私は楽器を演奏するのはあまり得意ではないので、選択肢として「アカペラ」しかなかったというのが本音です。そしてこのアカペラの経緯としては、「#SERRA拡散計画」という企画をやったことに由来します。なんというか、自分に足りないものは「数字」だということを再確認しまして、数字を得るために、武器である自分の声を使って何かを始めようと思って。それでアカペラでカバーを上げるようになりました。始めた時は「伴奏がなくてつまらなくないかな?」と少し不安に思いましたが、やってみたら意外と視聴者のみなさまの反応が良くて。声だけだからこそ聴こえる細かな表現に気づいてくれたり、好きになってもらえることがすごく嬉しかったです。また、たくさんの方に聴いてもらえるきっかけになりました。そこから今も少しずつ投稿していて、これからも引き続きやっていきたいなと思っております。

■「この曲は特に評判が良かった!」という印象の曲はありますか?

SERRA ボカロ曲だと、ナナホシ管弦楽団さんの“抜錨”がSNSで伸びて、唯一フルバージョンを上げています。この曲に関しては「フルのアカペラをください!」というお声をいただくくらい、たくさんの方に聴いてもらえるきっかけになりました。でも「フルのアカペラ」というのが自分でも想像つかなくて……。(笑) それでなかなか投稿できずにいたんですけど、ご要望にお応えして、自分の声だけのものをフルで作りました。でもそちらもすごく喜んでもらえたので、良かったなと思います。

■素敵です。今回VANITYMIIXではSERRAさんの取材は初めてということで、いろいろと聞いていきたいと思います。まず素朴な疑問なのですが……そちらのアイマスクはどれくらい見えていますか?

SERRA 微かに……。(笑) でもみなさんの表情はちゃんと見えているんですよ。

■こちらから目は見えないけど、見えているんですね。(笑) SERRAさんの音楽的なルーツはどこにあるのでしょうか?

SERRA 歌手を目指すきっかけになったアーティストさんは、水樹奈々さんです。水樹奈々さんの歌に心を打たれて、「私も歌手になりたい!」というきっかけになりました。そこから水樹奈々さんの曲をたくさん聴いて、真似するぐらいにのめり込んだのですが、他のルーツとしては、それこそボカロですね。“メルト”とか、“ブラック★ロックシューター”とか。有名どころを通りつつ、ボーカロイドの曲を歌っていました。王道のJ-POPより、YouTubeで探って聴くことが多かったです。

■歌を歌い始めた当初、「この歌手の声になりたい!」と思ったのは、まさに水樹奈々さんでしょうか?

SERRA そうですね。もうまさに。あと、ナノさんにもすごく憧れていました。ナノさんの初めてのライブにも足を運んだほど好きです。

■めっちゃ素敵な思い出じゃないですか!作詞・作曲を始めたのはいつからですか?

SERRA 趣味程度で作曲していた時もあるにはあるんですけど、本格的にやり始めたのはSALTY DOGというバンドに加入した時です。制作にも少しずつ携わるようになっていって、自分で作詞・作曲した楽曲がバンドの曲にもなって……という形からが、本格的に作詞・作曲を始めるきっかけになったのかなと。

■やっぱりバンドって大きいですよね。ちなみに、アニメとか映画とかなんでも良いんですけど、人生で一番衝撃を受けた作品はなんですか?

SERRA アニメで言うと、大好きなアニメが「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」なんです。一周すると胸が打たれちゃうので、何回も見るのにはすごく覚悟がいるのですが、純粋な愛のストーリーに初めてくらい心が浄化されました。

■どちらもアニメとしての出来もすごく良かったですもんね。さて、今作のお話を伺っていきたいのですが、『Dawn Light』のタイトルの意味は、そのまま「夜明けの光」でいいのでしょうか?

SERRA そうですね。このタイトルにするまでにも結構いろいろと考えたんですけど、まず、このタイトルにしたきっかけが、自分に自信が無かったからなんです。自己嫌悪してしまう癖があったり、結果を出せなかったりする部分で、「生きる価値もない!」と思うくらいに自分を卑下してしまい、絶望して、孤独感に襲われるところがありました。でもそんな中でも、歌いたい気持ちだけはすごくあって。その歌いたい気持ちがあるからこそ、ここまでやってこられたというか、その諦めたくない気持ちが、「光」のような象徴となって歌い続けてこられたのかな……という意味で、「絶望の中にも希望がある」という意味合いで、「夜が明けるように」と願うタイトルになりました。あと、この(顔を半分隠した)スタイルにもかかっています。

■すごく素敵な由来だと思います。今作全体を一言でまとめると、どんな作品になりましたか?

SERRA 私の名刺代わり……ではありますね。自分自身の、本当の自分の中の部分というか、自分の裏側というか、自分の奥底に眠る感情みたいなものを書き写したような曲たちが揃っているので、本当に「名刺」です。自分と同じように、孤独だったり、寂しい思いをしている人たちに届いたら嬉しいなという気持ちはあります。

■届きまくっていますよ。ちなみに、その「裏側感」が一番よく出ている曲はどれになるのでしょうか?

SERRA ちょっとタイトルが読みにくいとされているんですが、“偽済世 (Re:Mix)”(ギサイセイ)です。この曲は闇の部分というか、ぬかるみにハマっているような曲ではあるんですけど、最終的にはちゃんと希望を歌いたくて、「自分を愛してほしい」という気持ちであの曲を書きました。

■この曲はリズムの面白さも注目だと思いました。ドラムのザクザクした感じとか。

SERRA あれはもう、アレンジャーさんのセンスですね。「こう来るか!」みたいな所がありました。(笑) 三連符が続くところがあるんですが、そこでドラムも刻むんだ……って。ラスサビも、デモの段階では割とシンプルだったのですが、すごく疾走感が生まれました。

■この曲には、悲しい方の「哀」という言葉と、Loveのほうの「愛」という言葉が入っているじゃないですか。耳で聴いたら同じだと思うんですが、どう歌い分けているのでしょうか?もしかして、歌詞カードを見た方へのサプライズですか?

SERRA そうですね。サプライズの方です。このふたつって、基本的には同じものなのかなと思っていて。悲しい方には、一時的に沼にハマって、それに救われる人もいると思うし、やっぱり本当の愛に救われる人もいると思うし……というところで、ふたつの「あい」を使っているんですけど、「最終的には純粋な本当の愛に救われるよね」という思いもあります。でも、最後の「あい」はひらがななんですよ。どちらにも取れるように。

■いいですね。そういう余地を残してくれる歌詞に救われます。歌っていて一番気持ちいい音域の曲はどれですか?

SERRA “Always and Forever”ですね。ライブでももう何度も歌わせていただいているんですけど、結構リラックスしながら、どこまでも届きそうな、まだまだ届くような気持ちで歌っています。

■この曲はTVアニメ「彼女が公爵邸に行った理由」のエンディングテーマでしたね。アニメの内容とは何%くらいリンクしているのでしょうか?

SERRA ん~、60~70%ぐらいかな。残りの3割には自分の想いも入れつつです。私は「彼女が公爵邸に行った理由」の原作を全部最後まで読み切った上で歌詞を書いたんです。その上で、主人公の気持ちに寄り添いつつ、ちょっとリンクするようなワードというか、心情を描けているのかなと思います。

■この曲はストリングスがカッコいいですよね。これは注文されたものですか?

SERRA そうです。「オーケストラっぽいもので」とお願いしたら、想像の100倍以上ゴージャスなものが来たのでびっくりしたのを覚えています。(笑)

■一方で歌詞には身近な愛を歌っている印象がありました。

SERRA 主人公のレリアナが「生きる」という部分に覚悟しているのを感じまして、「ただ自分は生き続ける」という想いを描きつつ、物語の中の自分は本当の自分ではないという食い違いの切なさも描きたくて。そういった部分も入れています。

■描けていると思います。歌詞の中には「占い」や、「魔法」といった言葉がありましたが、SERRAさんはそういうのは信じる方ですか?

SERRA 結構信じちゃう方です。でも、ふとした時に「なんでこんなこと信じているんだろう……?」と、ネガティブモードに入っちゃうんです。現実モードと、夢見るモードがありますね。(笑)

■それが「アーティスト」だと思いますよ。(笑) この曲はあまりテイクを重ねた印象がなかったのですが、いかがですか?

SERRA いえ、この曲もレコーディングの時の緊張がすごくて……。というのも、このアルバムの中で初めてレコーディングしたのがこの曲だったんです。しかもタイアップで、たくさんの関係者の方たちに囲まれて、その中で歌ったのでガチガチに緊張していたのを覚えています。

■それでは逆にリラックスして歌えた曲は?

SERRA 最後の曲の“Mira”です。一番温かさみたいなところを意識して、光で包み込むようなイメージで歌いました。

■ちょっと意地悪な話になっちゃうんですけど、「ミラ」は二重星だから、ふたつで一組の星なんです。だから、「この曲は“Mira”ってタイトルでいいんだ?」と思っちゃったんですよ。(笑) そのへんはいかがですか?

SERRA そうなんですね。(笑) この曲については、「ミラ」が変光星(等級が変わる星)という部分をもとに名前をつけました。輝きとしてはまだ足りない部分があったりもするけど、聴いてくれる方の寂しい時に寄り添える存在として在りたい。「ミラ」は変光星で、いつでも見えるような星ではないのですが、見えなくてもそこにはあるんです。そこに私の歌を重ねて、「もし見えなくても、そこに私の歌があるし、側にいるよ」という想いが込められています。本当は一番強い光になりたい。でも「弱い光でもあなたの側にいるからね」って。ある意味私とファンの方で1つの大きな光になれたらいいなって思います。

■いや、素敵です。「水」のイメージは「ミラ」がくじら座の星だからでしょうか?

SERRA 「星のない海に 取り残されても」の部分ですかね。そこは無意識に言葉を選んでいました。個人的に「空」と「海」ってどこまでも続くような広大さが似ているなって。それに、星って明るい都会ではあんまり見えないじゃないですか。その喧噪に呑まれたような孤独や寂しさを、空というか、海に例えてイメージしたんです。

■やっぱりこの曲は最後に持ってくることに意味がありそうですね。

SERRA そうですね。このアルバムを象徴するような曲でありつつ、ちょっと控えめな曲です。「目に見えない温もり」という形で、「“Mira”を最後に持っていけたらな」という思いはありました。