AKB48 春コンサート2026『向井地美音 卒業コンサート 〜私の夢は、AKB48〜』ライブレポート@国立代々木競技場 第一体育館

向井地美音というAKB48好きの少女が、憧れだったAKB48のメンバーになり、やがて総監督としてAKB48という大きな船の舵を取りながら、次の世代へと”私の夢”を繋いでいった。

AKB48の3代目総監督として、AKB48を5年間牽引し続けていた日々が懐かしい。向井地美音は、13年間在籍したAKB48からの卒業を前に、4月3日に国立代々木競技場 第一体育館で『向井地美音卒業コンサート~私の夢は、AKB48~』公演を行った。満員の観客たちを前にしたこの日の模様を、ここにお伝えしたい。スクリーンに映し出されたのは、母親と一緒に過ごす、まだ幼かった頃の向井地美音の姿。彼女は母親に向かって、「パン屋さんになりたい」など、いろんな夢を語っていた。そんな向井地美音が見つけた夢。「私の夢は……AKB48です」。自らAKB48好きを名乗るに相応しい始まりだ。ステージの上に姿を現した向井地美音は、制服姿だった。そこには、彼女がAKB48に憧れていた学生時代の自分の姿を投影していた。向井地美音は、バラードの“青春と気づかないまま”を、自らの心に語りかけるように歌った。15歳で憧れていたAKB48のメンバーになり、気づいたら大人になり、今、13年間青春時代(人生)を過ごしたAKB48を卒業しようとしている。新たな道へと旅立つための、最後の大舞台の始まりを告げる歌に。しかも、たった一人で歌う曲として“青春と気づかないまま”を持ってきたことに、いろんな想像を巡らせていた。

その上で……。“AKB参上!”が流れ出すのに合わせて、向井地美音を筆頭にしたAKB48の現役メンバーがステージに集結した。彼女たちが自信に満ちた姿で、元気よくパワフルな声で「我らがAKB 情熱MAX」と歌う姿に触れていたら、同じように身体中から熱情した気持ちが沸き上がっていた。“大声ダイヤモンド”が流れたとたん、客席を埋めつくした満員の観客たちの間から「あ~、よっしゃいくぞー!!」の声が飛び交いだした。「好きって言葉は最高さ」と歌う彼女たちの歌声と思いを重ね合わせるように、大勢の人たちが「好き!」と大声で叫んでいた。素直に、しかも腹の底から思いきり声を張り上げて「好き!」と叫べる。それって、本当に最高だ。

“Everyday、カチューシャ”では、向井地美音を筆頭に、4人のメンバーが4台のトロッコに乗って客席を回り始めた。その姿を追いかけるように、ステージ上にいたメンバーたちが花道を駆け出し、センターステージに集合して歌っていた。続く“希望的リフレイン”は、向井地美音が初選抜入りした楽曲。この日のセットリストを考案し作りあげたのは、この日の主役の向井地美音。セットリストに並べた一つひとつの曲の背景から、AKB48の歩みと重ね合わせた彼女自身の歩みや成長、心模様が見えてきたのが嬉しかった。ここからは、さまざまなメンバーたちとコラボレートしていった。ポップなロックンロールナンバー“ハートの脱出ゲーム”からスタートしたこのブロックは、情熱的に歌った“アクシデント中”、爽やかな中に情熱的な青春模様も感じた“Position”。

愛らしさをキュンと振りまいた“天使のしっぽ”と続いていく。“残念少女”では、少し影を帯びた姿を見せ、7人組ユニット「でんでんむChu!」として歌った“カフカでいでんむChu!”を披露するという嬉しい面を見せてくれた。15期生メンバーであり、同期の福岡聖菜とデュエットをした“僕の桜”では、歌詞に綴られた、夢を追いかけていた学生時代の眩しい青春の姿と、AKB48の同期メンバーとして一緒に夢を追いかけていた頃を重ね合わせていた。さらにここで、15期生がまだ研究生時代だった時に初めていただいた“君の瞳はプラネタリウム”を披露。しかもそこには、今は卒業をした、同じ15期生メンバーが集結していた。あの時代からずっと彼女たちの姿を追いかけてきた人たちにとっては、本当に胸が熱くなる景色が目の前に広がっていた。

「ここからだ」の劇場公演内のユニット曲として歌った“振り向きざまのキッス”では、向井地美音、伊藤百花に加え、当時のメンバーであり、今は卒業した村山彩希が登場し、あの当時の姿を再現してくれた。その姿に興奮した人たちも多かったのか、場内中から熱い声が飛び交っていた。さらにAKB48が10周年記念のシングルとして制作し、向井地美音も選抜入りしていた“恋はメロディー”では、柏木由紀と横山由依が登場。豪華メンバーによる共演とあって、ここでも観客たちの興奮が止まることはなかった。3人の作り上げたハーモニーも胸に心地よかった。

自ら3代目の総監督を担っていた頃の思いや、思い出などを振り返るインタビュー映像を受けて、次のブロックへ。向井地美音が総監督として活動をしていた5年間の中には、活動したくてもできなかったコロナ禍という時期があった。あの時代を乗り越えて、今は当たり前のようにコンサートを開催できる環境になっている。だが、コロナ禍になって間もない頃のAKB48は、AKB48劇場で向井地美音と岡田奈々の2名で無観客ライブを行うなど、自分たちなりにファンたちとの距離を保つ方法を模索していた。その当時のことを思い返すように、ゲストに岡田奈々を迎え、向井地美音と岡田奈々の2人で届けたのが、無観客ライブでも歌っていた“遠距離ポスター”だった。そこからAKB48は、ソーシャルディスタンスを心がけ、本数を抑えて劇場公演を再開。少しずつ観客の収容数を増やしながら、ときに劇場公演が中止になり、再び再開するなど、試行錯誤を繰り返し、今へと繋げてきた。その歩みを示すように、ときにゲストも加え、8人で歌った“僕の太陽”。16人で届けた“劇場へ ようこそ!”。そして、向井地美音が総監督当時の各チームのキャプテンだった岩⽴沙穂、岡部麟・込⼭榛⾹・村⼭彩希と3人のゲストを迎え、現在のAKB48のメンバー全員で“流れ星に何を願えばいいのだろう”を歌い、あの頃の歩みを短い中で伝えてきた。これも向井地美音が総監督として、前代未聞の困難に苦悩し、立ち向かい、そして現在へと繋がる道筋を先頭に立って築きあげてきたからこそ出てきた演出だ。

次のブロックでは、ゲストに茂木忍を迎え、向井地美音と2人で妖艶な香りをたっぷりと振りまくように、禁じられた姉妹愛を歌った“おしべとめしべと夜の蝶々”を届けてくれた。この曲中、場内の人たちが2人の妖艶なパフォーマンスに釘付けになり、2人もその期待に応えるよう、最後には禁断のキスまで交わしていった。この日のライブには、村山彩希・岡田奈々・茂木忍・向井地美音が揃っていた。そう「ゆうなぁもぎおん」のメンバーたちだ。ここからは、ゆうなぁもぎおんとして“涙の表面張力”と“涙は後回し”を届けてくれた。仲良し4人組の絆を、ライブ姿を通して再び味わえたことも素直に嬉しかった。この日のライブは、向井地美音の歩みを振り返るのと同時に、彼女が実現したかったいろんな夢も具現化していた。

次のブロックからは、大好きなノースリーブスの3人との共演コーナーへ。初代総監督の高橋みなみを迎えて歌ったのが、“RIVER”。高橋みなみの「AKB〜48!」と叫ぶ声を聴くと、気持ちが奮い立つ。しかもここでは、高橋みなみ・向井地美音・倉野尾成美と、歴代総監督の3人が揃って声を上げていた。その姿を見て、胸が熱く奮い立たずにはいられなかった。この曲で彼女たちは、無数の巨大な炎が上がる演出を通して、迫力満載のダイナミックでパワフルなパフォーマンスを見せてくれた。峯岸みなみを迎えて歌った“だらしない愛し方”は、かつてアンダーガールズとして向井地美音がセンターを担い歌った楽曲。峯岸チームKのもとで育った向井地美音にとって、峯岸みなみとの共演は、自分の原点を振り返る思いだったのではないかと想像する。

小嶋陽菜とは“背中から抱きしめて”で共演。小嶋陽菜が卒業コンサートを行った場所が、この日と同じく代々木競技場第一体育館だった。その日のライブで披露した“背中から抱きしめて”に、向井地美音もメンバーとして参加していた。その当時の映像も背景に映しながら、自らの卒業公演でこの曲を、しかもゲストに小嶋陽菜を迎えて歌ったことに、ドラマを感じずにはいられなかった。さらにここからは、 向井地美音が「私にはもう一つ大きな夢があります。それはノースリーブスに入ること」と告げ、ここでノースリーブスの3人を迎え入れ、この日が最初で最後となる「4人のノースリーブス」として“Answer”、“タネ”、“ペディキュアday”を歌ってくれた。ときにセンターステージで、ときにトロッコに4人が分かれて乗り込んで客席を回りながらと、短い中とはいえ、向井地美音自身が、大好きなノースリーブスの3人と同じグループのメンバーとして歌えることを、思いきり謳歌していた。

ライブも終盤へ。ここからは、再び現在のAKB48のメンバーでのパフォーマンスへ。届けたのは最新シングルの“名残り桜”。AKB48にとってこの曲は、シングルの表題曲としては久し振りの桜ソングになった。それを、向井地美音の卒業の時期に届けてくれたのにも、いろんな思いを巡らせてしまう。心が色づくような華やかな面も見せながら、ライブは“言い訳 Maybe”、向井地美音がチームAキャプテンへと就任し行った“重力シンパシー”公演でも歌った“重力シンパシー”、そして、ゲストメンバーも加えて届けた“久しぶりのリップグロス”へと続いていった。本編最後を飾ったのは、“ヘビーローテーション”。この曲をセンターで歌っていた大島優子から、彼女の卒業公演の場を通して次期センターのバトンを受けとったのが、向井地美音だった。向井地美音もまた、卒業公演の場で、この曲の次期センターのバトンを渡そうと、20期研究生の近藤沙樹を指名。Wセンターという形で届けてくれた。最後に“ヘビーローテーション”を近藤沙樹が歌って締めてくれた姿を見て、この曲のバトンがしっかり受け継がれたと感じたのはもちろん、これからの近藤沙樹の活動も気になりだしていた。

アンコールは向井地美音の卒業ソングとして作られた“向かい風”から始まった。後の卒業メッセージで、彼女は「私が生きてきたこのAKB48の時代は「向かい風」と呼ばれました。同じように、きっと生きていく限り、私も、みなさんも、そしてAKB48にも、乗り越えなければいけない試練が訪れる時は、きっと必ず幾度となくやってくると思います。だけど、諦めずに頑張り続ければ、いつかそんな辛い経験も自分の糧となって、「追い風」に変わる日が来ることを、私は13年間で学びました」と語っていた。向井地美音が総監督を担っていたAKB48は、本編にも描き出していたが、コロナ禍という未曾有の事態を経験し、大人数グループだからこそ、ソーシャルディスタンスを声高に叫ばれていたあの時代、きつい向かい風の中で試行錯誤を繰り返し、戦い続けてきた。そんな、一番きつい向かい風に必死に立ち向かっていたのが、当時の総監督だった向井地美音だ。だからこそ、皮肉かもしれないが、この曲のタイトルが向井地美音にはとても似合う。最初にソロで歌いだし、そこにメンバーが寄り添ってくる姿にも、いろんな思いを重ねずにはいられなかった。再び現役メンバーでのライブへ。

「AKB48グループ センター試験」で1位に輝いた時にいただいたセンター曲の“君は僕の風”、向井地美音が初めてセンター曲として歌った“翼はいらない”と、思い出の曲が続いていく。そして、向井地美音が卒業コンサートの最後に選んだのは、向井地美音自身が総監督時代に行っていた全国ツアー『AKB48全国ツアー2019~楽しいばかりがAKB!~』のチームA公演の最後の曲として歌唱。彼女自身が、最後はこの曲で終えることに喜びと幸せを覚えていた“君と虹と太陽と”を届けてくれた。メンバーらと笑顔で挨拶を交わしながら歌う姿も印象的だった。彼女自身も、メンバーらの顔を見ながら、一人ひとりに笑顔で、これからもAKB48を繋いでいくためのバトンを手渡していった。その姿が、今も瞼に焼きついたまま消えない。向井地美音というAKB48好きの少女が、憧れだったAKB48のメンバーになり、やがて総監督としてAKB48という大きな船の舵を取りながら、次の世代へと”私の夢”を繋いだライブだった。向井地美音の本当の卒業公演は、4月30日にAKB48劇場で開催を予定している。限られた人しか目にすることができないとはいえ、最後のライブを劇場で締め括るのもAKB48の伝統らしくもあり、向井地美音に似合う卒業の形だ。

Text:長澤智典
Photo:©AKB48

AKB48 春コンサート2026『向井地美音 卒業コンサート 〜私の夢は、AKB48〜』@国立代々木競技場 第一体育館 セットリスト
オープニング映像〜旧overture
01. ⻘春と気づかないまま 向井地
02. AKB 参上︕ 現役ALL
03. ⼤声ダイヤモンド 現役ALL – 21期研究⽣
04.  Everyday、カチューシャ ALL
05. 希望的リフレイン ALL
06. ハートの脱出ゲーム 向井地・奥本・川村・⽩⿃・⼤賀・丸⼭・髙橋(舞)・⽥中・牧⼾・森川・渡邉
07. アクシデント中 向井地・太⽥・佐藤・橋本(恵)・畠⼭・平⽥・布袋・正鋳・⽔島・⼭﨑
08. Position 向井地・秋⼭・新井・⼯藤・久保・迫・成⽥・⼋⽊・⼭⼝
09. 天使のしっぽ 向井地・花⽥・近藤
10. 残念少⼥ 向井地・倉野尾・⽥⼝
11. カフカとでんでんむChu ! 向井地・⼤盛・坂川・鈴⽊・千葉・徳永・武藤
12. 僕の桜 向井地・福岡
13. 君の瞳はプラネタリウム 向井地・福岡 +市川・⼤和⽥・込⼭・佐藤(妃)・⼟保・湯本・⼤川・達家・飯野・⾕⼝
14. 振り向きざまのキッス 向井地・伊藤 +村⼭
15. 君はメロディー 向井地 +柏⽊・横⼭
向井地美⾳インタビュー映像
16. 遠距離ポスター 向井地 +岡⽥
17. 僕の太陽 向井地・下尾・鈴⽊・髙橋(彩)・⻑友・永野・橋本(陽) +下⼝
18. 劇場へ ようこそ︕ 向井地・秋⼭・伊藤・奥本・⼯藤・坂川・迫・佐藤・橋本(恵)・畠⼭・花⽥・正鋳・⽔島・⼋⽊・⼭⼝・⼭﨑
19. 流れ星に何を願えばいいのだろう 現役ALL+岡部・込⼭・村⼭
20. おしべとめしべと夜の蝶々 向井地 +茂⽊
21. 涙の表⾯張⼒ 向井地 +村⼭・茂⽊・岡⽥
22. 涙は後回し 向井地 +村⼭・茂⽊・岡⽥
23. RIVER 向井地・岩⽴・⼤盛・倉野尾・下尾・鈴⽊・髙橋(彩)・⽥⼝・千葉・⻑友・永野・橋本(陽)・福岡・武藤 +⾼橋
24. だらしない愛し⽅ 向井地・岩⽴・⼤盛・倉野尾・下尾・鈴⽊・髙橋(彩)・⽥⼝・千葉・⻑友・永野・橋本(陽)・福岡・武藤 +峯岸
25. 背中から抱きしめて 向井地・伊藤・⼩栗・佐藤・⼋⽊・⼭内 +⼩嶋
26. Answer  向井地 +⾼橋・⼩嶋・峯岸
27. タネ 向井地 +⾼橋・⼩嶋・峯岸
28. ペディキュアday  向井地 +⾼橋・⼩嶋・峯岸
29. 名残り桜  現役ALL
30. ⾔い訳 Maybe 現役ALL
31. 重⼒シンパシー  現役ALL
32. 久しぶりのリップグロス 現役ALL +柏⽊・村⼭・茂⽊・岡⽥・岡部
33. ヘビーローテーション 現役ALL

ENCORE
01. 向かい⾵ 向井地・岩⽴・⼤盛・倉野尾・鈴⽊・⽥⼝・千葉・花⽥・福岡・武藤・⼭内
02. 君は僕の⾵  現役ALL
03. 翼はいらない  現役ALL
04. 君と虹と太陽と 現役ALL

出演
【AKB48 現役メンバー 48名】
正規メンバー(40名)
向井地美⾳・秋⼭由奈・新井彩永・伊藤百花・岩⽴沙穂・太⽥有紀・⼤盛真歩・奥本カイリ・⼩栗有以・川村結⾐・⼯藤華純・久保姫菜乃・倉野尾成美・坂川陽⾹・迫 由芽実・佐藤綺星・下尾みう・⽩⿃沙怜・鈴⽊くるみ・髙橋彩⾳・⽥⼝愛佳・千葉恵⾥・徳永羚海・⻑友彩海・成⽥⾹姫奈・永野芹佳・橋本恵理⼦・橋本陽菜・畠⼭希美・花⽥藍⾐・平⽥侑希・福岡聖菜・布袋百椛・正鋳真優・⽔島美結・武藤⼩麟・⼋⽊愛⽉・⼭内瑞葵・⼭⼝結愛・⼭﨑 空

20期研究⽣(3名)
⼤賀彩姫・近藤沙樹・丸⼭ひなた

21期研究⽣(5名)
髙橋舞桜・⽥中沙友利・牧⼾愛茉・森川優・渡邉葵⼼

【ゲスト 20名】
⾼橋みなみ・⼩嶋陽菜・峯岸みなみ・柏⽊由紀・横⼭由依・市川愛美・⼤和⽥南那・込⼭榛⾹・佐藤妃星・⼟保瑞希・湯本亜美・⼤川莉央・達家真姫宝・飯野 雅・⾕⼝めぐ・村⼭彩希・茂⽊ 忍・岡⽥奈々・下⼝ひなな・岡部 麟