703号室 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

703号室

岡谷柚奈、つばさ、JELL(ジェル)の3人からなるバンド、703号室。まだ結成して1年半というできたてほやほやのバンドだが、彼らの楽曲“偽物勇者”は楽曲配信サービス「Spotify」の日本バイラルトップ50で4位(11/5)を記録と、早くも要注目バンドとしての片りんを見せている。その注目を浴びたきっかけとなったのが、ボーカルの岡谷がおこなっているTikTokだ。透明感のある歌声を生かし、オリジナル楽曲のほか足立佳奈、backnumberなどのカバー曲を投稿。初回の投稿でヨルシカの“ただ君に晴れ”の弾き語りカバー動画を投稿。これまでに 17万3700件以上の「いいね」を獲得しており、その実力の程を大きく知らしめるきっかけとなったという。今回はバンドメンバー3人に、バンドの紹介とともにTikTokの実態や、これを自身の音楽のPRおこなったことで変わったこと、その魅力などを語ってもらった。

■まずみなさんのことを教えていただきたいと思うのですが、みなさんがミュージシャンを目指すようになったきっかけ、バックグラウンドみたいなところをお伺いできますでしょうか?

岡谷 私は中学校のときに三年間ソフトボールをやっていたんですが、そのときに結構辛い思いをしたというか…実は私には双子の妹がいて、その子がとても優秀で、勉強も運動も、さらに音楽とかも。私は妹に勝てるものみたいなものが一つもなかったんです。結構目に見えてそんな差が出ていたので、それを比べられたりすることも多かったんです。でもそんなときに音楽に励まされたことがありました。そして、自分もそういう歌が好きだったので、こんな風に誰かを元気にしたいと思ったんです。それがちょうど中学三年生のときに進路ですごく悩んでいた頃で、そのときに音楽をやりたいと思って、高校一年生のときに活動を始めました。高校は普通の高校でしたが、芸能活動がOKな県立の高校に行って、活動しました。

■特に703号室は歌という点で注目が集まっていますが、もともと歌は好きだったんですか?

岡谷 小学校のときに地元の劇団でミュージカルをやっていて、そのときに演技は先生にボロカスに言われてすごく苦手だったんですが、歌だけは唯一褒めてもらえていまして。(笑) それが自分の中ですごく嬉しくて、歌は趣味でもいいからずっとやりたいと思っていました。

つばさ 僕にとってキーボードはたくさん楽器ができる中の一つ。いろいろやってずっと続いているのがキーボード、ピアノなんです。好き勝手に鍵盤ハーモニカを吹いていたのが小学校の頃で、自分から何となく始めたのが中学一年生からでした。中学一年のときにピアノを習いたいと親に言って、ピアノ教室に通い始めました。そんな風にキーボード、ピアノは本当に自分がやりたいようにやってきました。周りから「練習しなさい」とか、「これを来週までにやってきなさい」とか、そんな風に強制されている感じではなく、自分が好き勝手に耳コピしてみたり、目コピしてみたりというのを中高6年間ずっと続けてきました。時期的にもちょうどボカロやYouTubeで「楽器を弾いてみた」「歌ってみた」なんてものもすごく流行っていた時代だったと思うんです。そのときに自分が思っていたピアニストって、「タキシードを着てコンサートでスラっと弾いて…」みたいなイメージだったんですが、流行っている曲を弾きたいままに弾いている人たちを見て、楽しそうだなと思ったし、そういったものにかなり影響されたところはあります。

■音楽の存在というのが、岡谷さんの「歌に助けられた」という接し方とは、ちょっと違うような感じのようですね。

つばさ 僕にとっては、横にいつもあったみたいな恰好ではなく本当に好きなとき、やりたいときにやるような。例えば部活では吹奏楽でトランペットを吹いていたんですが、それはどちらかというと強制的な感じだったなと思うんです。

JELL 私は岡谷とちょっと似ていると思います。もともと5、6歳までフィリピンに住んでいました。その頃は「外は危ないから」と家から出してもらえなかったり、すごく厳しく育っていました。それから日本に来てもずっと厳しくて。学校が終わってもすぐ帰らないといけなかったんですが、ただテレビだけは見させてもらえて、それで音楽番組を見ては音楽を聴いていました。友達とかにも会えなくて、家族の関係としてもいろいろあって、誰かに辛いことも言えるような状態ではなかったし。だから、私にとっては音楽を聴いてその感情を出す場面で、一人で音楽を聴いている時間というものがすごく大事だったんです。でもそういう人たちってほかにもいると思うんですよね。だから「ああ、こういう音楽をやって感情を出すことができるパワーがあるんだ」と、音楽の力にすごく感銘を受けて、そんな音楽に関わる人になりたいと思ったんです。それが音楽を始めるきっかけでした。

■そこでドラムという選択は面白いですね。普通はメロディーに惹かれるケースが多いかな、という気もしますが?

JELL 私としては「変わりたい」ということが一番大きな願いだったんです。実は音楽には「関わりたい」というあいまいな気持ちでずっとやっていただけなんですが、ピアノとか合唱、マーチングや吹奏楽とか、いろいろなパートを転々として、本当になんのきっかけもなかったんですが、その後にパッとドラムを見て一目惚れみたいな感じでした。自分に合っていたかどうかはわからないんですが「あ、この楽器だ!この楽器をどうしてもやりたい!」って。運命かなと思いました。だからこの楽器で音楽を続けていきたかったし、音楽を届けるのってやっぱりアーティストだから、それを支える人になりたいな、と思ったんです。

■なぜこの三人の構成として形となったのでしょうか?

岡谷 きっかけは自分たちが音楽の専門学校で一年生だったときのことなんですが、2018年の8月にアコースティック構成での大会で参加者を募集されていて、そこに参加したいと思い集まったメンバーなんです。だから最初はピアノとパーカッションとアコギ、ボーカルで始めました。募集を見て「いっしょにやらない?」って声を掛けて。そしてそこの大会で最優秀賞というのをもらい、本格的な活動を始めたんです。

■クラスのほかの人には声を掛けなかったんですか?

岡谷 もともと同じクラス内の人とバンドはやっていたんです、JELLもいっしょに。5人組のバンドをやっていたんですが、波長が合わなくて2~3か月で解散しちゃいました。その後でアコースティックの大会の募集が始まって、つばさに声を掛けて三人でやったら、その演奏がとても楽しくて続けたいと思ったんです。

■音楽への思いの掛け方という部分で違いがあるけど、波長が合う感じというのは面白いところですよね。

つばさ 合っているかは、未だに俺もわかってないですけど。(笑)

岡谷 でも、つばさはすごく音楽知識が豊富なんです。それに助けられているところはあると思います。

つばさ 引き出しをたくさん提供できるというところはあるかもしれないです。呼んでもらえて3人で演奏したときに、二人が楽しいと思ってくれたんです。それで、僕なりにもどうやったら楽しくなるかと考えながら最初はやっていて「これは知らないかな?」とか「これは新しく聞こえるかも?」みたいに引き出しをパッパと出していたら、その反応を楽しめるようになっていきました。

■なるほど。なにかお互いにないものを持っているような感じですよね。

つばさ そうですね。みんなそれぞれ知らない世界を持っているし。

■今イチオシなのは?

JELL それはMrs.Green Apple。三人とも同じなんですけどね。(笑)

岡谷 あと私は…ジャニーズが好き。(笑)