可愛くあることを恐れない彼女が作る「今の自分」を詰め込んだ甘い甘いミニアルバム。
アマイワナが10月18日(水)に配信ミニアルバム『SWEET SWEET SWEET』をリリース。渋谷系カルチャーや、昭和レトロなカワイイ文化を体現し、新たなサウンドを発信し続けているアマイワナ。今作にはジンジャー・ルートとの共作から、自らのアーティスト名が入った楽曲、敬愛するピチカート・ファイヴのカバーも収められており、彼女のルーツから現在地を窺い知れるものとなっている。インタビューではジンジャー・ルートが手がけたMVの制作エピソードや、楽曲に込められた想いなどを聞いた。
■アマイワナさんはこの1年、なかなか飛躍の年となったんじゃないでしょうか。特に思い出深かったイベントはなんですか?
アマイワナ やっぱりフジロックに出演したことですね。自分自身、フジロックにはいつか出たいなと思って音楽活動をしていたのですが、ジンジャー・ルートとコラボをする中でフジロックのステージにも呼んでいただけて、折角出るならと思って、衣装や曲を準備したりして、すごく楽しかったです。
■たくさんの出会いもあったと思いますが、インパクトがあった出会いは?
アマイワナ ジンジャー・ルートもそうなんですけど、ずっと大好きだった野宮真貴さんのラジオにゲストで呼んでいただいてお会いしました!憧れの方なんです。
■野宮さんのビルボードライブ公演にも行かれていましたよね?
アマイワナ はい。歌はもちろん、衣装も毎回素敵で、ビルボードの時も何回かお色直しがありました。ありがたみがあります。
■勉強にもなりますよね。さて、ニューミニアルバム『SWEET SWEET SWEET』ですが、ビジュアルもカワイイですね。
アマイワナ ビジュアルのコンセプトはもちろん「SWEET SWEET SWEET」です。スウィートでかわいらしい感じに、レトロさと多国籍感をプラスしています。アジアンテイストにも見えるし、ちょっとヨーロッパっぽさも、日本っぽさもあるし。
■ビジュアルで言うと、つい先日“チョコレートレモネード”のMVが公開されていましたよね。よくあんな昭和スポット見つけましたね!猫ちゃんも可愛かったです。
アマイワナ MVのロケ地は基本的には高円寺で、ちょっと京都や大阪も混ざっています。大体は私の行きつけのお店に「撮ってもいいですか?」と連絡をして、許可をもらいました。
■でも、ちょっと渋谷の風景と物価に令和が滲んでいましたよね。(笑) このMVと“恋泥棒”のMVは、ジンジャー・ルートさんと制作されたものでしたよね?
アマイワナ “恋泥棒”のMVの方は都内で撮影しています。私の中ではこの曲のMVをフランス映画みたいな感じにしたくて、なるべく日本でヨーロッパっぽく見える雰囲気のところを探して撮ってもらいました。昭和や日本のカルチャーが大好きで仲良くなったジンジャー・ルートに撮ってもらうのに、ヨーロッパっぽいとこを日本で探すのってちょっと酷だったかなと思います。(笑)
■ジンジャー・ルートさんはどんな方なんですか?
アマイワナ すごく面白い人です。アメリカ人なのに日本人より日本人っぽいというか。私は昭和のカルチャーが好きで、音楽の趣味も独特で、話せる同世代の人とかって全然いなくて……。学生時代も友達とか全然いなかったんですけど、まさかそんな話をできる人がアメリカにいたとは。(笑)
■今作の収録曲のうち、“チョコレートレモネード”だけはジンジャー・ルートさんが編曲していますよね?他の曲で編曲しているアツムワンダフルさんとの制作方法の違いはありましたか?
アマイワナ アツムくんと作る時は、私がデモを作って、それを清書してもらいつつ、アツムくんのカラーも入れてもらうという作り方が多いのですが、“チョコレートレモネード”は、ギターと歌だけの弾き語りを渡して、そこにトラックを乗せていく作り方をしました。最初はしっくりこなかったんですけど、実際にジンジャー・ルートと会って、何度か再構築していきました。時間の制限があったこともあるのですが、制作はめっちゃ早く進んで、1日でほぼ完成したんです。
■1日ですか!それはすごい……。ところでこの曲はなぜ「チョコレート」と「レモネード」なんですか?
アマイワナ この曲は渋谷系っぽい曲が作りたくて、渋谷系っぽいワードや言い回しを取り入れようと思って、「チョコレート」と「レモネード」をひらめいたって感じです。(笑)
■なるほど。言われてみると確かにそれっぽい感じがします。ところで今作は女の子が主体となって、「押せ押せ」の恋をしている曲が多かった気がするんですが、それはアマイワナさんがそういう女の子だからなのでしょうか?
アマイワナ そうかもしれないですね。全部実体験っていうワケじゃないけど、曲は基本的に自分に置き換えて作っています。
■自分が共感できない曲は作らない、という感じですね。アマイワナさんも押せ押せタイプなんですか?
アマイワナ ですね。(笑) ただ、押せ押せというより、我が道を進ませて欲しいみたいな気持ちですかね。特に恋愛していると、「好きな人に気に入られたい、合わせたい」って気持ちもわかるんですけど、自分らしくいたいなという気持ちが大きいです。
■“恋泥棒”には「待ち合わせにあえて遅く着いて困らせたい」みたいな歌詞もありましたよね。(笑) “恋泥棒”の二人は今はどんな関係なんですか?「君の身長は一層伸びたみたいよ」って一節を見て、高校生くらいなのかな?とも思いました。
アマイワナ まだお付き合いはしていない状態だと思います。「君の身長は一層伸びたみたいよ」は、「その人のことが好きすぎて大きく見える」というイメージで書きました。好きな人のライブとか観ていると、すごくおっきく見えるじゃないですか。でも実際にはそんなに大きくなかったりしますよね。そういう歌詞なんです。
■確かに好きなアーティストはステージの上で大きく見えますよね……。ところで“恋泥棒”と“チョコレートレモネード”のMVでは、たくさんの衣装が登場していましたが、ご自身で選ばれているのですか?
アマイワナ はい、ほとんど私物です。“チョコレートレモネード”のMVの最後にある、渋谷で走っているシーンの衣装は香港の「MICROWAVE」というブランドの衣装ですが、あとは全部私物です。前に「MICROWAVE」のモデルをやっていたこともあり、衣装協力してくださいました。
■衣装のコンセプトはありますか?
アマイワナ “恋泥棒”については、映像をフランス映画っぽくしたかったので、それを意識して撮影しました。恋をして、でもどうしたらいいかわかんらなくて暴走しちゃったけど、見ている人には可愛く見えるし、応援したくなるように。「変なことしてるけど、徹底的に可愛くしたい」というのがあったので、衣装含め、ハートのクッションとか小物も全部カワイイものにしました。
■3曲目の“Jane”では、「甘い罠」という歌詞が出てきますが、今作には「甘い罠/Sweet trap」という詞が出てくる曲が“Jane”、“Sweet Trap”と2曲あるじゃないですか。なぜ今、このタイミングでご自身の名前をキーワードとしてミニアルバムの収録曲に入れたのでしょうか?
アマイワナ 今作のコンセプト「SWEET SWEET SWEET」から取っているのもあるし、渋谷系インスパイアでスウィートな感じにしたかったというのもあるんですけど、「甘い罠って意外と歌詞に入れたことないな」とも思ったりして。今回はコンセプトにも馴染むし、渋谷系っぽさにも「甘い罠」ってバッチリですし、キャッチーにしたかったのもあって、入れてみました。
■“Jane”はタイトルが人名となっていますが、なぜ「ジェーン」に?
アマイワナ この曲のタイトルはジェーン・バーキンから来ています。私はジェーン・バーキンが大好きで、歌詞の「ロンドン娘」はジェーンのことなんです。ジェーン・バーキンの曲を作ろうと思って、ジェーンに憧れている女の子の曲を作っていたんですけど、そうしたら、ちょうど「ジェーンが亡くなった」というお報せが入ってきて。「これは何かのメッセージなのかな?」と感じたので、絶対にジェーンの曲を作ってミニアルバムに入れようと思いました。
■曲を聴いている感じでは、「歌詞を読む」より、「耳で聴く」方を重視されているのかな?とも思ったんです。
アマイワナ この曲だけは先にアツムくんからほぼ完成したトラックが届きました。普段は私が歌詞や曲を全部作ってからアツムくんに送るんですけど、この曲ではトラックがある中に私がメロディと歌詞をつけて、後からちょっとだけ直すみたいな作り方だったのもあって、トラックが利いているダンスミュージックになりました。
■とにかく可愛い曲でした。その次の“シャイニーガール”は、個人的には今回のアルバムの中ではちょっと異質に思ったんです。すごくストレートで、他の曲と比べてカバー曲っぽいというか。こういうストレートな曲ほど、「どういう時に書こうと思った曲ですか?」って聞きたくなります。
アマイワナ このアルバムの中では“恋泥棒”が一番最初にできて、その次に“シャイニーガール”ができたんです。この曲を作りながらコンセプトができていったんですけど、甘すぎたので、スウィートだけじゃなくて、スウィートスウィートスウィート、「甘すぎて危険」みたいな、可愛い甘さだけじゃなく、ちょっと中毒性のある行き過ぎたものを作ろうということになりました。発想としては“恋泥棒”の延長線上にあります。
■なるほど、アルバムの中心曲のひとつと言っても良い曲のようですね。“シャイニーガール”もそうなのですが、今作で描かれている恋愛模様って、「押せ押せ」な空気が強い一方で、まだキスにも至っていない関係にも感じるんです。あえてそうしているのでしょうか?
アマイワナ それは偶然だと思います。自分の中で渋谷系インスパイアが大きすぎて、大人な恋みたいなものより、ピュアで爽やかな恋愛みたいなものの方がしっくりくるというか……。自分自身、そんなに大人な恋をしてきたわけじゃないし、経験値的にもポップで爽やかなものの方がしっくり来るなって所はあります。
■“シャイニーガール”はわがままな感じも可愛くて好きです。「次会うまで良いことなければいいのにねえ!」とか。(笑)
アマイワナ 私もそこ結構好きです。実際にそう思いますし。(笑) 私と会うことで楽しかった気持ちを、他の楽しい出来事で上書きされたくない。(笑) その人にとって自分と会うことよりもっと楽しいトピックがあったら悔しい、みたいな気持ちがあります。
■でもそれってアーティストとしては良い方向性の感情でもありますよね。「地図のない旅をしてるみたいよ サンダルだけ」の「サンダルだけ」って少し不思議な言い回しですが、どういったイメージなのでしょうか?
アマイワナ 地図の無い旅だから迷走しているというか、全てが上手くいくわけじゃないというか。この曲だったら、恋愛においてのことですが「難航しているけど、旅する時はいっぱい荷物を持っていくんじゃなくて、サンダルだけ持って身軽でいこう」という感じです。