■すごくストイックなんですね。
佐藤 一番ストイックです。結構ずっと考えてるんですよ!
伊藤 ちょっとしゃべり過ぎましたね…。
■いえいえ、ありがとうございます。佐藤さんはどうですか?
佐藤 僕も10年続くとはまったく思っていなかったし、目の前のことを必死にやるだけでしたね。僕は周りの人に恵まれた人生だと自分で勝手に思っているんですけど、いいタイミングで内澤くんとも出会ったし、このメンバーに出会えたのもいいタイミングだったし、この10年間もずっといいタイミングでいろんな人に出会って今があるので。
■人や出会いに恵まれるって大きいですよね。
佐藤 そうじゃなかったら絶対続いてないですからね。昔はいつクビになってもおかしくないなと思いながらやっていたんですけど。(笑) 今は10年前に比べると、先々のことも少しは考えられるようになったし、自分のやりたいことというか、自分のことも表現できるようになってきているのかなと思います。
■なるほど。前田さんはどうですか?
前田 本当に10年も続くと思っていなかったんですけど、バンドを通じていろんなことをやらせてもらって、経験が増えたなって。それは音楽的なこともそうだし、人間的なこともそうだし、そうやって今はものすごく、なんていうか…ナチュラルに生活できているなと思いますね。
内澤 ナチュラルに生活できている…って。(笑)
佐藤 ナチュラリストですか。(笑)
前田 そうですね。もともと僕は嫉妬や羨ましいという感情があまりなくて、自分と向き合うというか、自分ができないことができるようになるのが楽しいんですよ。自分が何かを弾けるようになるとか、理解できるようになるとか、何かを知るとか。そういう自分の経験がものすごく大事だと思っているので。それがこの10年間でいろいろ出来てよかったし、このメンバーでっていうのもラッキーだったなと思いますね。いろんなことを経験して、今自分が一番いいと思うことをして生きている、そんな感じですね。
佐藤 ナチュラルに。
前田 そう、ナチュラルに生きていますね。そんな感じで気がついたら10年経っていたんで、またそういう感じで10年経つんだろうなって感じです。でもそれが一番しあわせなことで、それで死ねればもう最高だなって。
佐藤 それ最高だね。(笑)
前田 最高ですね。俺じじいじゃんって思いながらも、常に自分を高めながら生きて、それでいてちゃんと生活が出来ていたらいいですよね。それぞれみんな大人なんで自分で生きていくべきだし、その一環として、バンドでどこまでやっていけるかはわからないけど、それをやりつつ、しあわせに音楽ができていれば、それに勝るしあわせはないと思いますね。
内澤 達観していますね。(笑)
佐藤 これはシングルについてのインタビューでいいですよね?(笑)
前田 大丈夫です。10年経っていろんな経験をしたことによって、僕らは大阪に新幹線で行かず、飛行機で行くんですよ!それはこの10年の活動で学んだことのひとつなんですよね。
佐藤 飛行機が好きなだけなんですけどね。
■なるほど。(笑)
前田 いやいや、そういう選択ができるっていうことが大事で、音楽もそうじゃないですか。今回“For you”でシンセベースが入っているんですけど、普通のベースで表現できないことを、シンセベースを選択することで表現できる。それを嫌がる人もいると思うんですよ。自分がベースを弾かないとうことは、バンドの在り方として認められないって。そういうバンドもいると思うんですけど、うちのバンドはそこはすごくフラットに、「今これがいいならこれでいいじゃん」って、ちゃんと選択できるというか。10年間経験してきた僕らの結果というか、僕がナチュラルに生きてきた結果、そういう選択もできるようになったんですよね。
内澤 やっぱり10年続けてくるとすごいね!いろんなことが。(笑)
佐藤 今の話は大阪に新幹線で行かない理由を音楽で例えて話したんですよね?
前田 そうそう。
佐藤 普通は逆だからね、これ音楽のシングルのインタビューだからね。(笑)
■あはははは。(笑) でもちゃんと“For you”に上手くつなげてくださいました。
内澤 上手かったのかどうかはわかりませんが…。(笑)
佐藤 でも昔はナチュラルじゃダメだと思っていたからね。
内澤 力んでいた部分はあるからね。
佐藤 背伸びをしていたりね。
内澤 ナチュラルでいるって、自分がわかっていないと出来ないことだし、周りもわかっていないとなれないことですからね。普通っていうのが一番難しいですから。だから今あらためてこういうメンバーがいたから続けられたんだなって思いましたね。僕ひとりだったら10年間も続けられていないし、こういう想いにもなれていないし、今すごく…今日を迎えられてよかったなって。(笑)
■はい、そうですね。(笑)
内澤 続けていないとわからないこともたくさんあるんだなって。昔は続けることが目的でもないし、続けることに意味があるとも思っていなかったけど、続けられたからこそ、こうやって続けたことの意味を感じることが出来ているので、継続は力なりじゃないですけど、すごく力になっている部分でもありますよね。なので、これからも続けていけるように頑張るというか、決してそれがメインではないんですけど、気づいたらまたっていうように、楽曲制作や曲を届けることをやっていきたいですね。まだまだやりたいこともたくさんあるし、出来ていないこともたくさんあるので、一生懸命向き合っていきたいと思います。
■はい。ではそろそろ“For you”のお話を。(笑) この曲はどのようなイメージで作られたんでしょうか?
内澤 この曲はこれからMVも撮るんですけど、MVもありきで、「ゆうパック」というものをどうやって広げていこうかと、そういう内容でお話をいただいて。何もないまったくゼロの段階から制作サイドの方たちと話し合って、形にしていくのって、今までやったことのない作り方なんですけど、そこからまた自分たちが出来ることを含め、話し合っていった感じですね。
■歌詞はシンプルですけど、音楽とリンクしていたりもしますよね。
内澤 人が物を届ける。そこには届け手と受け取り手がいるというところで、自分たちが音楽を届けるっていうことにも近いなと、重なる部分があるなと思ったので、音楽を届けるということと、「ゆうパック」の届けるという部分を重ねて歌詞に落とし込むといいのかなと。
■曲は結構意外な感じもしました。
内澤 アットホームな感じは誰でも出来るのかなと思って。せっかくandropにお話をいただいたっていうことを踏まえると、自分たちだからこその表現で届けるのがいいし、じゃあどうしたらいいんだろうって考えていくうちに、こういうアプローチになりましたね。初めはバンドの音が入っているデモだったんですけど、だんだん削ぎ落として打ちこみを多くしていって。
■なるほど。
内澤 でも、MVの話も含め、どうやって作っていくかをちゃんと話し合ってきたから出来たことで、話し合いをしないでこういう曲を作っていったら、ちょっと不安があったと思います。そこはバンド以外にも一緒に作り上げていく人たちが参加してくれているからこそ、自信を持って作ることが出来たんだと思います。
佐藤 スケール感があるので、映像も合わさって、より壮大なものになったらいいし、いろんな楽しみ方のできるものになっていけばいいですね。