androp VANITYMIX 2019 SPRING PICK UP INTERVIEW

androp

内澤崇仁(Vo&Gt)、佐藤拓也(Gt&Key)、前田恭介(Ba)、伊藤彬彦(Dr)

想いを届け、つなげていく――それぞれの曲に落とし込んだバンドのらしさと変わらぬ想い

昨年12月にアルバム『daily』をリリースしたandropが早くもニューシングル『Koi』をリリースした。今作は映画「九月の恋と出会うまで」の主題歌となっており、物語に寄り添いながらもandropのらしさと想いを込めた、あたたかいバラードに仕上がっている。10周年のアニバーサリーイヤーを迎えたメンバー4人に、今作について、そして10周年についてたっぷり話してもらった。

■“Koi”はどのように作られていったんでしょうか?

内澤 「九月の恋と出会うまで」という小説の映画化ということで、ターゲット層やキャストの方など打ち合わせでお話いただいて、原作の小説を読んだり、映画もほぼ出来上がっている状態だったので観させていただいて、そこからインスピレーションを膨らませていった感じですね。

■作品の印象はいかがでしたか?

内澤 タイムリープのお話で、現実にはあまり起こり得ないシチュエーションではあるんですけど、それでも純粋な大人の恋愛というか、「人を愛することってなんだろう?」みたいなことを考えさせられる映画だなと思いましたね。人をまっすぐ愛することとか、恋する気持ちとか、そういうものをすごく感じました。

■そこからどういうイメージで書かれていったんですか?

内澤 9月の前半にお話をいただいていて、前作のアルバム(『daily』)も作らなければいけないし、ツアーも始まるときで、来週までにデモが欲しいということだったので、「作れるかな…?、大丈夫かな…?」っていう気持ちで映画を観たんですけど、観始めたらそういったことは全部忘れて、もう感情移入してしまって。最後のエンドロールが流れる辺りでは、もうこの楽曲が頭の中で流れていました。

■早いですね!

内澤 映画が後押ししてくれたというか、すっとできましたね。

■感情移入してしまったということは自身と重なる部分も多かったんでしょうか?

内澤 映画の主人公、高橋一生さん演じる平野は小説家志望なんですけど、もし小説家じゃなくてミュージシャンだったらどんなことを歌うだろうか?なんてことを考えつつも、実際に演奏して表現するのは僕らなので、説得力があるように自分たちだから言えることをちゃんと入れないと、伝えるときに薄っぺらくなるなと思って。映画だけに寄り添わず、映画と今の自分たちが重なる部分を歌詞に落とし込もうと作っていったら、結局は人を大切にする気持ち、やっぱり普遍的な愛みたいなものが落としどころなのかなって。そこから作り上げていった感じですね。

■なるほど。曲が上がってきたときの感想はいかがでしたか?

伊藤 僕は原作を読んだりしていたわけではないんですけど、きっと合っているんだろうなっていう感覚はありましたね。ストレートなメッセージのバラードなんですけど、内澤くんのデモのアレンジが面白そうなものだったし、クオリティが高かったので。純粋にいいなと思いました。

佐藤 メロディがきれいだし、andropの中でサビから始まる曲ってあまりなかったので、新しいなと思いましたね。映画を試写で観たとき、最後のシーンとこの曲がばっちりハマっていて、内澤くんのことをあらためてすごい作曲家だなと思いました。

前田 昔のポップスの普遍的な良さみたいなものがあって、それを今の僕らが鳴らしているような感じの音になっているなって感じました。その普遍的な良さみたいなものを、たぶん内澤くんは出したいと思いつつも、僕らが演奏するということもちゃんと想像して作られたデモだったので、そこにのっとって演奏しましたね。

■内澤さんはけっこう完璧なかたちでデモを持っていくんですか?

伊藤 けっこうフルでアレンジも入れてきてくれますね。

内澤 そこからみんなで話し合って、いろんなパターンを試してみたりして、トライ&エラーで進めていく感じです。

■全員が納得するかたちで着地させると?

内澤 音楽って本当に正解がないので、実際にやってみて、みんなが納得してカッコいいと思えたら、たぶんそれが正解なんじゃないかと思うんです。今回のようにタイアップだと、他の人の意見とかもあるのでまた着地点も違ってくるんですけど、バンドだとたぶんみんながいいと思ったところが着地点なんだろうなって。そういう感じでいつも作っていますね。

前田 昔はわからないことが多かったんですよね。どういうふうにすればいいんだろう?って。

内澤 どういうふうにすればその音になるんだろう?とかね。

佐藤 想像の中ではこういう音を作りたいとか、こういう音を出したいとかあるんですけど、その出し方がわからなくて。音を重ねたらそうなるんじゃないかと思ったけど、実は削ぎ落とした方がその音に近かったりとか。

内澤 そういう意味では経験もあるよね。

佐藤 そうだね。それはもういろいろ迷いながらそこを目指すというか。ちょっとずつだけどそれが早く到着できるようになってきているので、その分いろんなトライもできるようになりましたね。かと言って、全然到達したとは思っていないんですけど…。そういうところにより近づいたとは思いますね。

伊藤 10年間やってきた形というか、それが今ちゃんとできているのかなって。

■あらためてその10年間を振り返っていかがですか?

伊藤 10年続くなんてまったく思っていなかったですね。(笑)

内澤 明日終わるんじゃないか、くらいの気持ちでやっていたからね。

伊藤 10年前は、ずーっと今日1日のことだけを考える日々だったというか、過去の映像とか観ると髪型とかもめっちゃ変わったし、とにかく自分が嫌だったんだろうなっていうのがすごくあるんですよ。

■自分が嫌だったというのは?

伊藤 どうしてこんなにできないんだろうとか、どうして理想としている人に近づけないんだろうとか、とにかく自分を嫌い続けた日々というか。未来のことを想像するどころか現状をどうすればいいんだろうって、ずっと悩んでいましたね。

■今のことでいっぱいいっぱいだったと?

伊藤 そうですね。今日1日何ができるんだろうとか、目の前の人たちにどう伝えたらいいんだろうとか、10年間ずっとそうだったから、10年続くか続かないかも全然考えていなかったし、気づいたら10年経っておっさんになってた…みたいな。(笑)

■どこかで何かが変わったタイミングとかはあまりないですか?

伊藤 ダメな自分を認めるというか、そこはだんだん良くなってきたかなって。自分が出来ることと出来ないことがだんだんわかってくるし、ある程度自分が出来ることをはっきりさせた上でちゃんと闘うというか。もちろんまだまだ全然で、基本的には明日違う自分になっていたらいいな…とか思いますけど。でも自分のやること、立ち位置みたいなものは結構はっきりしてきた感覚はありますね。音楽に限らず、どんなことに対しても自分の存在理由があまりわからないというか、そういうところがあって、だけどいつしかおっさんになり、そうも言っていられなくなって。(笑)

■はい。(笑)

伊藤 でも昔はナンバーワンになりたいとか、トップに立ちたいとか、そういう気持ちだけでしたけど、やればやるほどよくわからないし、オンリーワンになるのもすごく難しいけど、自分の中のオンリーな部分は大事にしなくちゃいけないなっていうのはだんだん感じるようになってきましたね。苦手なことを潰そうとばかりしていたけど、得意なことを伸ばすことが大事だなって、そういう変化はあるかもしれないです。それを気づかせてくれたのは、やっぱり周りの人たちだと思っているし、andropに関わっていて楽しいということはずっと変わらないので、そういうところがこの10年間、自分にとっては大きかったのかなと思いつつ、実はそんなに考えてないっす。(笑)

内澤 いや、けっこう考えてますよ。(笑)

佐藤 すごく考えてます!ずっと考えてますから。(笑)