実家に帰ったようなほっこりした気持ちになる。そういうインパクトを与えたかった
2020年に自主メジャーレーベル「TEPPAN MUSIC」を立ち上げたベリーグッドマン。2021年に入ると、“それ以外の人生なんてありえないや”、“散々”と配信リリースが続き、8月には4曲入りシングル“ナツノオモイデ”をリリース。表題曲はTOKYO MX『第103回 全国高等学校野球選手権大会 東・西 東京大会』テーマ曲となっており、これから先もずっと心の中に残り続けるようなハートフルな楽曲に仕上がっている。コロナ禍で音楽や活動スタンスにおいて変化を強いられる中、ベリーグッドマンらしさを貫いたシングル曲の魅力について、さらに今回リリースされるニューアルバム『必ず何かの天才』について、Rover、MOCAの2人に語ってもらった。
■新レーベル「TEPPAN MUSIC」第一弾アルバム『TEPPAN』発表以降、どんな風に過ごされていましたか?
Rover アルバム発売後はドライビングパーティーをやったり、リリースツアーをやらせていただいたので、2021年の年明けまではしっかりと動けていたんですけど。2月頃からはライブがないこともあり、配信リリースを基盤に「常にベリーグッドマンは動いているよ」ということをアピールしたくて。あと、結婚式場のツアーもあったので、それもメンバーにとっていい栄養分になりました。楽曲を作る上でもスイッチが入りましたからね。
MOCA コロナ禍であえて動きを止める方たちと、それでも動く人たちがいるけど、国のガイドラインに従えば大丈夫だろうと思い動くことにしました。まだコロナは明けないだろうから、どちらかと言えば一度諦めて、この状態が続いたとしても自分たちは世の中に必要とされるのか?それも改めて考えました。
■そこまで突き詰めて考えたんですね。
MOCA そうですね。僕らはライブアクトとして活動の輪を広げてきたところがあるから、音源を軸にどう広げていくのかを話し合い、それで“アイカタ”という曲が生まれたんです。サブスクでは一番いい反応をもらえて、それも自分たちの強味を楽曲に込められた結果かなと。アルバムもアッパーソングを軸にライブが見えやすい曲を作っていたけど、一人で聴いても完結するような曲を作ろうと。あまりライブを意識しなくなりましたね。
Rover お客さんも一緒に歌って、一体感を生む曲もあったけど、それ自体が難しくなったこともあり、より楽曲の研究に励む時間が増えました。どうすればスマホから思いが届くんだろう、と考え始めたのはコロナになってからなので、その意味でも進化したと思います。
■そうなると、歌詞の書き方も変わりますか?
Rover 僕は変わりますね。「大丈夫だよ」、「どうか負けないで」と寄り添うスタイルでしたけど、コロナになってからは逆に少し厳しく言うようになりました。なぜかと言うと、自分も負けてはいけないし、ケツを叩くというか、少しトゲのある言い方の方がコロナも吹き飛ばせる何かになるのかなと思って。ライブがピタッと止まったので、アッパーソングを作ろうという脳味噌がなくなり、バカなことを言う気も起きず、「タッタラもうエッフェル塔よ(“エキスパンダー”)」という歌詞もあったけど、今はそういう言葉が出てこないですからね。
■コロナ禍でライブができなくなり、音源によりライブ感を詰め込む人と、そうじゃないアプローチを試みる人がいますけど、ベリーグッドマンの場合は後者だと? “ナツノオモイデ”は既にリリース済みですが、制作自体はいつ頃から?
Rover 取り掛かったのは6月ですね。タイトル曲が先にあり、この曲も二転三転して時間がかかったんですよ。今、「夏の思い出は何?」と言われたら、もどかしさや無念な気持ちの方が強いのかなと思い、それを払拭する曲を書こうと。本当の爽やかさ、本当の健やかさは現状難しいかもしれないけど、この曲を聴いたり、MVを観て、実家に帰ったようなほっこりした気持ちになれる。そういうインパクトを与えたかったんですよ。
■それが“ナツノオモイデ”のMVでも表現したかったことなんですね。
Rover そうですね。「果たせない明日の思い出」という歌詞があるんですけど、「果たせないかもしれないけど、いつまた会おう、笑っていようね」って。すごくピースな曲だと思うんですよ。コロナにかかわらず、伝わる曲じゃないかと。
■MOCAさんはいかがですか?
MOCA 今年はオリンピックイヤーでしたし、甲子園も開幕できたということで、爽やかな感じで届けようと。自分たちとしてもサビで転調したり、それも挑戦として入れたんですよ。「ナツノオモイデ」は夏が終わった後により聴かれるような、あの時はみんなで楽しんだよな、という場面で流れたらいいなと。
■爽やかさと郷愁を刺激する切なさも同時に感じました。
MOCA 特にサビ前の「何とかここに立って」、「それでもここに立って」の歌詞が僕的には好きですね。これはベリーグッドマンにしかできへん感じやなと。ライブで歌っていても、気持ちが乗ってくるんですよね。MVでも少年が骨折しているんですけど、オリンピックと掛け合わせて、できるかできないかわからないけど、周りにはサポートしてくれる人がいるという。いい形でリンクさせたかったんですよ。
■MOCAさんもいろんな役を演じていますよね。
MOCA カリスマ・バレエダンサー役もやらせてもらいました。(笑)
■この曲はTOKYO MX『第103回 全国高等学校野球選手権大会 東・西 東京大会』テーマ曲に抜擢されていますよね。
Rover 曲が完成してから、逆に選んでもらった感じなんですよ。本望ですね。高校球児の気持ちも表現できていると思うから。
MOCA ジャイアンツの大江くんという中継ぎの選手がいるんですが、当時の東京大会で僕たちの“ライオン”という曲がテーマソングで、彼はプロに行ってからもその曲を登場曲として使ってくれているんですよ。だからこれからプロ野球に行く子たちも、今年の夏に聴いた“ナツノオモイデ”を登場曲にしてくれたら嬉しいなと。(笑)
■それはアーティスト冥利に尽きますね。そして“baby you”は、エレクトロ色が強く出た曲調ですね。
Rover もともと僕とHiDEXの2人で10年前にやっていた楽曲なんですよ。ちょうどその頃ダンスシーンというか、EDMと言われるものが日本でも流行っていたんですよ。
■スクリレックスとか、あの辺ですか?
Rover そうですね、あとブラック・アイド・ピーズとか。ダンス、4つ打ちに対する興味や憧れで作った曲ですね。あれから10年過ぎて、ベリーグッドマンとしてリメイクしたら面白いんじゃないかと。“ナツノオモイデ”というシングルなので、ラヴソングも入れちゃおうと。ちょっと黒い影も見えるサウンド感で、いいスパイスになる1曲だと思います。
■なぜこのタイミングで10年前の楽曲に光を当てようと?
Rover そこは直感ですね。僕は20歳ぐらいに作った時の曲なので嫌だったんですけど、MOCAが数年前から「あの曲いいやん!」と言ってくれていたので、背中を押された感じですね。
MOCA 逆に今では作れない曲じゃないかと思って。NulbarichのJQさんとインディーズ時代によく共演していて、当時から「お前らエグいなぁ」と言われていたんですよ。自分たちの曲で“ミクロコスモス”、“ファンファーレ”という曲があるんですけど、「今、ああいう曲は書けないだろ?」と言われて。だから、曲は書ける時に書くべきやし、まだまだストックはあるから、そういう曲を出すのは今一度原点に返る気もして、出す価値はあるんじゃないかと。いい曲ですよね。
■当時を思い返して、改めて気づくことも?
MOCA そうですね。かわいらしさも入っているし、当時から応援してくれていたファンも喜んでくれたらいいなと。20歳当時の曲ですけど、サウンドは夜の大人な感じを加えて作りました。
Rover Aメロは原形なんですが、Bメロの部分は新たに作って、女性っぽいメロディを意識しました。Kポップな感じというか、それは昔の自分にはできないことですからね。昔と今の自分を抱き合わせて、今までにない曲を作れたかなと。この間、配信ライブでもやったんですけど、カッコいいなぁと思いました。早くみんなと騒ぎながらライブで披露したい曲ですね。