BiS VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

BiS「Brand-new idol Society」

■なるほど。ここでみなさん、それぞれアルバムの気に入っている曲を一曲ずつ教えてもらえますか?

イトー 私は“thousand crickets”が好きです。初めて聴いたときの、不気味さに惹かれました。私はちょっと不気味なものや、ちょっとイカれてるなと思える、変なところが好きなところがあるので、そういう部分はいいなと思いました。また歌詞も他の曲に比べてストレートな表現ではなく、意味が深く感じられるようでもあって、聴く人によってこの「1000のコオロギ」というものを、何かしらに例えることもできますし。

トギ― 私は“LET’S GO どうも”が好きです。内容的に「これからこんな僕らだけど、よろしくです!どうも!」みたいな感じで、今の私たちのことを言ってもらっている曲だと思うんです。あとWACKの楽曲って、結構サビを一人で歌うことが多いんですが、この曲はサビを二人で歌うんです。そういうのが新鮮で、一緒に歌うのがすごく楽しいんです。

ネオ 私は“STUPiD”がイチオシです!すごくカッコよくて、歌詞も一切濁っていなくて。全部歌詞の意味が完全にはっきりとわかるんです。表現もすごくストレートだし、今の自分たちのことや自分たちそのものを表現している内容も多いので、この曲がすごく好きです。

マナコ 私はちょっと前までは“strawberry girl”(マナコ・チー・マナコ自身も作詞に参加)がずっと好きと言っていたんですが、最近みんなで振りを付けて踊ってからは“SURRENDER”がすごく好きになりました。“STUPiD”とかはすごくストレートでわかりやすい歌詞なんですが、“SURRENDER”は、割りと今の自分たちの漠然とした不安を書いている印象があります。だから自分たち自身にすごくマッチしていると思うし、気づいたら曲が心にすっと入ってくれるような印象があります。またマイナスなことだけではなくプラスな勇気を持つという感じの歌詞もあったり。そういうのがすごく刺さると思っています。

チャント 私は“strawberry girl”を推したいです!ピアノのイントロから、ガラッと裏切られるようにハードな曲調になっていくのがすごくカッコよくて。歌詞もヤバい!「この人大丈夫か?」って思えるほど、なんか闇が深そうな感じが…。(笑) でもその中に「フリル」とか「イチゴマシュマロ」とか、逆に可愛いワードが入っているんですが、それが入っていることで、逆にロックに聴こえる感じもあって、そこがメチャメチャカッコいいと思いました。私にはそういうセンスがないし…

■これはマナコさん作詞の作品ですが、なぜこうした作風に?

マナコ まずこの曲はデモをもらったときに、そのサウンドプロデューサーの松隈さんが、ハナモゲラ語みたいな感じで仮歌を入れてあったんですが、それがその一行目の「血が流れている」と私には聴こえてきたので、その一行から発展させていきました。「ストロベリー」というのは、主人公を清純派アイドルとして見立てているんですが、彼女が「清純派なんてくそくらえだ!」みたいなことを開き直って言うという。それは結構自分自身を投影しているものなんです。それで、対照的に「イチゴマシュマロ」みたいなワードは、いい感じで韻を踏める言葉を探していて、これにたどり着きました。韻には結構こだわって作りました。

■今回はチャントさん以外は作詞に参加されていますが、チャントさんも作詞はされたのでしょうか?

チャント そうですね…。ちゃんと出したんですけど…。もともとアルバム収録曲候補が16曲ある中で、13曲を収録曲として選ぶことになって。一応私も選んだんですけど、落ちてしまいました…悔しい!(笑)

■でも自分が歌詞を書いた曲が好きだという人は一人もいなかったのも面白いですね。(笑)

イトー やっぱり自分では作れないもの、というところに憧れを感じることもありますし。

■ちなみにみなさんは、渡辺プロデューサーとお会いする機会が度々あると思いますが、どのような印象なのでしょうか?

トギ― BiSに対しての愛情の強さをすごく感じます。BiSにはとても力を入れて関わっていただいているのを感じています。

イトー すごく優しいです。

■逆に「こういうところは抜けているかも…?」と思えるのは?(笑)

マナコ いや、ほとんどないんですけど…抜けているというか、レコーディングのときに、私たちの楽曲として最初に解禁された“BiS3”のレコーディングが初日にあったんですけど、そのときに渡辺さんご自身が「ここ、文字ちょっと一文字増やそうか」と曲に修正を入れたものの、そこがどうしてもうまくできなくて…。かなり本気で悩まれていたんですが、渡辺さんが悩まれているそういう表情は、そのときに初めて見ました。レコーディング自体は馴れていらっしゃるイメージがあったんですが。

イトー 「理解ができない!」って、ずっと悩まれていたんです。(笑)

トギ― なんでもできると思っていたから、できないことがあることにびっくりしました。(笑)

■結構非の打ち所がない、スマートな感じなのでしょうか?

イトー というか、以前、自分自身で「不器用だ」「俺は人の心がわからない」と言っていたことがあったんですが、話しているとそんなことはないだろうと思いました。世間からはいろいろ言われることはあるというお話を聞きましたが、実際に関わると本当にそんなことは感じないです。すごく優しい方だと思いました。

トギ― 私たちを守るために、自分で悪役を背負っているというか。そういうところを感じます。

■非常に興味深いところであります。改めてお伺いしたいのですが、BiSって「新生アイドル研究会」という名の呼称ですよね。みなさんにとってアイドルってどんなものなんでしょう?

イトー 「この子たちがいないと生きていけない」みたいな存在ですかね。たとえば元気をもらえる、という要素は持っていて、それに対して「バンドとかはそうじゃないのか?」と聞かれると、そうではないとも思いますが。以前は私もアイドルを神とか天使みたいな存在だと思っていたこともありましたし。

■そういうことは、いつも自分で自問自答されたりしているのでしょうか?

イトー よく考えます。特に私はアイドルに励まされてきたし、今回は自分もそういう立場になりたいと思って今ここにいますし。

マナコ 私は典型的な形というか、ある程度のコンセプトがあって、そのコンセプトの枠組みで活動をするものという印象ですね。そうやって思い描く女の子の理想像みたいなものを投影したのが、アイドルではないかと思います。女の子の理想像、いつも元気で笑顔で可愛くて、汗をかいてもいい匂いがして、みたいなのが多分、私の思い描く一般的なアイドルです。それを考えると、BiSはかなり違うというか…包括しているイメージがあると思います。

■なるほど。みなさん突き詰めておられますね。これまでのBiSは「世界を変える」という発言を度々されていましたが、みなさん的には具体的にどのような変化を起こしたいと思いますか?

トギ― その言葉通りの大きな意味ではなく、たとえばBiSの音楽を聴いた人が、「明日もまた頑張ろう」と思ったり、そんな一人一人の人生、その人の世界を、BiSが支える、救うという…そういう意味においてのものだと思います。だからBiSの曲を聴いた人とか、ライブを観に来てくれた人たちの人生を少しでも楽しくできたらいいなと。

ネオ あの…私たちはまだ「世界を変えたい」って言っていないような気がするんですよね。(笑) でも確かにトギ―の話を聞いて、そういうことなんだなと思うところはありました。実はその質問は、自分の中でもこれまで「どういうことなんだろう?」とずっと思っていたことだったんです。だから「人の人生を変える」という部分はすごく納得できる。確かにそういう世界もあるんだなと。私自身も何にも興味がなかったけど、WACKを知ってからは、いろんなことに興味を持ったし。その意味では、自分がこの時代に生きていなかったら、また違った人生だったかもしれません。だから自分みたいに、いい方向に人生を変えられる人がこれからも増えてくれればいいな、と思っています。

マナコ 世界ってそれぞれにあると思うんです。自分たちのそれぞれの世界がある。でも、人の世界を変えるのってすごく難しいと思うし、私はそれを変えようとは思っていなくて、自分自身の世界を変えるというのが、まずは一番大事なんじゃないかなと思っています。自分自身の世界が変えられるのなら、それが波及的に広がって、もしかしたら近くにいる人の世界も少し変わるかもしれない。それが結果的に人の世界を変えられるということに、ひょっとしたらなるのかもしれない。だからまずは自分自身の世界を変えたいと思います。

チャント たとえばBiSを聴いてもらって、ライブに出たときにアイドルファンの方たちが、私たちの曲を聴いて「ロックでカッコいい!」と思ってもらえれば、もしかしたらバンドものとか、その人がこれまで聴いたことが無いものを聴き始めたりということが、もしかしたらあるんじゃないかと思っていて。音楽の世界を広げ合えるという意味で。逆もあると思うんです、バンドものばっかり聴く人が、BiSを聴いて「アイドルっていいじゃん!?」ってなったり。その意味で人の世界を広げる、世界を変えるということもできるんじゃないかと思っています。

イトー 自分なりの世界、その人が見ている人の世界を変えるというのは本当にそうだと思います。ただ変わるって本当にいろいろあるわけで、私たちがなにか行動を起こしたり、なにかアクションを起こしたことだけでも絶対違いや変化が現れる、その意味でも、自分たちが活動を起こすこと自体が、世界を変えるということになるととらえてもいいのではないかと思います。

■爪痕を残す、みたいな?

イトー そうですね、まさしく。

Interview & Text:桂 伸也

PROFILE
英語で「Brand-new idol Society」の略。日本語で「新生アイドル研究会」。2010年にグループを結成し、全裸PVを始めとする破天荒なプロモーションで世間を賑やかす。目標としていた「日本武道館」ワンマンを諸事情により断念し、2014年に横浜アリーナで解散ライブを開催。その2年後、プロデューサー:渡辺淳之介が「もう一度BiSをやる」とBiS再始動を発表。第2期BiSも、他グループへのメンバートレード、移籍、ファン投票により、グループを2つに分けるBiS.LEAGUE開催と破天荒かつ斬新なプロモーション等で活躍するも、2019年5月11日にマイナビBLITZ赤坂でのライブにて2度目の解散。そして夢の続きは、第3期となる新生BiS、トギ―、イトー・ムセンシティ部、チャントモンキー、ネオ・トゥリーズの4人へ託される。
https://www.brandnewidolsociety.tokyo/

RELEASE
『Brand – new idol Society』

BiS「Brand-new idol Society」

CRCP-40585
¥3,000(tax in)

Revolver records / CROWN RECORDS
8月14日 ON SALE