チャラン・ポ・ランタン VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

チャラン・ポ・ランタン『いい過去どり』

メジャーに舞台を移して早5年。なんだかんだあっても「それでも地球は回る」

今年活動開始10周年を迎えたチャラン・ポ・ランタン。インディーズで5年、メジャーに移籍して早5年を数える。それを記念し昨年末にはインディーズ時代のベストアルバム『過去レクション』をリリース。一周回って逞しくなって還ってきた感溢れるオリジナル・アルバム『ドロン・ド・ロンド』を経て、この度、いよいよメジャーでのこの5年を総括するかのようなメジャーベストアルバム『いい過去どり』をリリースする。
同盤はまさにタイトル通り。お客さんが聴きたいであろう曲やライブで盛り上がる曲を加味し、自身で選曲。ライブに於ける代表曲たちと、このベスト盤を総括したかのような新曲“置行堀行進曲”までもが時系列的にガッチリと収録されている。
「常に聴き手の自分たちへのイメージと、自分たちの思う新しい自分たちとの合致のせめぎ合いだった」とこの5年を振り返る小春(アコーディオン)と、もも(ボーカル)。その辺りを中心にこの5年を2人に振り返ってもらった。今回のテーマは「それでも地球は回る」。

■今回のベスト盤『いい過去どり』は2014年にメジャーに舞台を移し、そこからのこの5年間からの選曲となっています。個人的には、この5年はチャラン・ポ・ランタンとしての音楽性に於けるアイデンティティの自覚と、そこを保持しつつ新しいことも取り入れなくてはいけない。そんな葛藤の5年間だったように映ります。

小春 まさにおっしゃってもらった通りで。メジャーデビューもしたし、少しでも多くの人に聴いてもらいたい。その為にはどうしたら良いのか?を試行錯誤してきた5年でした。

■そこからようやく自分たちとしても、「これだ!」というのが見えたのが、今年3月発売の最新アルバムの『ドロン・ド・ロンド』のように感じました。

小春 まさしく!なので、自分たち的にこの5年間は、「チャラン・ポ・ランタンの世界一周旅行」みたいな感覚なんです。都度都度いろいろな世界を見て回り、もう一度ここに戻ってきました!みたいな。なんか青い鳥を探していた感じ。鳥が逃げていろいろと探し回り、冒険を経て家に戻ってきたら既に鳥が還って来ていた的な。

もも 本当にそうだ。上手いことをいう。(笑)

■ぶっちゃけ、それらは言い換えると迷走していた期間でもあったと?

もも 迷走まではいかないけど、ずっと自分たちの感覚と各曲を発表した際の聴く方々の反応とのギャップとの闘いだった気がします。

小春 そうそう。曲作りに関しては壁にぶつかったり、難産だったことって実はそんなに無くて。それよりも、それを発表した後に、「あれ!?なんか自分たちが想像していたお客さんのリアクションと違う…?」そんなところでしたね。それが多々あって。

■その辺りをもう少し詳しく。

小春 「これならきっとみんなに楽しんでもらえるだろう」と出した際の反応の予想外さというか。自分たちとしては「これ、とびっきりの自信作が出来たから、お客さんも大満足だし、こんなのを待っていた!みたいなリアクション受け合い」的な想像をしながらのリリースだったりするんですが、けっこう、「あれ!?」って反応ばかりが続いた時期があって。

■あらら。

小春 毎度、「これ新しい!」的な反響を期待して、ワクワクしながら出すんですが、逆に「けっこう普通になっちゃったよね…」的な感想だったりで。そんな自分たちが期待している反応と違う答えが返ってくることに戸惑った時期が何年かはありました。

■では、常に「これでどうだ!」と、球を世間に投げ続けてきた5年でもあったと?

小春 ですね。というのも、やはりメジャーデビューをしたこともあり、「毎度作品毎に、これはひとひねりしないとお客さんも納得してくれないんじゃないか…」との謎の深読みが入ってしまって。

もも そうそう。「プロとは常に挑戦し、新しいことを取り入れ、発表していくものである」みたいな。

小春 まさに。「進化を止めない」的な。それこそNHKの「プロフェッショナルの流儀」の世界。なので、本当は最初の出来でも良かったであろうものも、そこから更に一度ひっくり返して、あーだこーだ加えていっちゃって。結果、ひっちゃかめっちゃかになり、あげく結局あまり歓迎されない、みたいな。(笑) それが続いた時期があって。

■考え過ぎたり、試行錯誤し過ぎの方向に行っちゃったと。

小春 そう。そのうち、もうどれが正解かも分からなくなっちゃって。締め切り時間が来ちゃって「では、あとは聴く方の判断に委ねるとしよう」となるパターンも多かったんです。

もも 自分たち的にはそれでも毎度、「新しいものが出来た!」との自負を持って発表しているんです。すると、「チャラン・ポ・ランタン色が薄まっちゃったね」とか、「チャラン・ポ・ランタンらしくない」、「チャラン・ポ・ランタンひよったな」的なことを囁かれて。もう、自分たちでは、「あれ…?!」ってなっちゃってた。

小春 自分たち的にはどれも新鮮で。新しい自分たちの新しい扉を開いた感があったんだけど、実は意外と世間は自分たちにそんなことを求めてはいなかったようで。

もも 「チャラン・ポ・ランタンらしさって、てっきり自分たちで作らなくちゃならないものだと思い込んでいたけど、意外とけっこう既にお客さんの中で確立されていたんだな…」と気づいたんです。いわゆる、「らしさって聴き手の中で育まれていくものだったんだ…」と改めて気づいて。それで「もうこうなったら小春ちゃんから出たものだけナチュラルに出そう!」と挑んだのが、前作アルバムの『ドロン・ド・ロンド』でもあったんです。