Dizzy Sunfist VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

あやぺた(Vo&Gt)、moAi(Dr&Cho)、メイ子(Ba&Cho)

自分のテンションがアガる瞬間を大事にして、それをいろんな人に感じてもらいたい。

フロントガール2名を擁するメロディック・パンクを掲げたDizzy Sunfistが、6曲入りミニアルバム『PUNK ROCK PRINCESS』を完成させた。2022年4月にメイ子が正式加入し、新3ピース体制で挑んだ今作は、初の日本語詞を盛り込んだ“そばにいてよ”、TVアニメ『マイホームヒーロー』エンディング曲“Decided”と、多彩な曲調を用意。とはいえ、バンドの核にあるメロディックの血が体の奥底から沸き上がったような快作に仕上がっている。HEY-SMITHの猪狩秀平をプロデューサーに迎えた渾身の一枚について、あやぺた、moAi、メイ子のメンバー全員に話を訊いた。

■取材自体が今作のリリース後のタイミングですが、心境的には作品が世に出てホッとしている感じですか?

あやぺた ウチはホッとしていますね。やっとみんなの手に渡って、これからツアーが始まるので、それに向けてすべて気持ちを切り替えている感じです。今はリハはそれほど入れていないけど、個人練習をしています。

メイ子 ウチもホッとしています。みんなもSNSで反応してくれているので、好感触を得ていますね。お店にCDが並ぶのを見ると、実感が沸きます。(笑) 今回は最初から勢いのある曲(“Going Psycho”)で始まるし、日本語曲(“そばにいてよ”)もありますからね。

moAi 今はひと段落した感じですが、これからツアーに向かうのでうかうかしていられないなと。

■今作の話をする前に、前作の3rdアルバム『DIZZYLAND –To Infinity & Beyond–』を振り返って、バンドにとってどんな位置づけの作品だったと思いますか?

あやぺた 生きることに必死でした、あの時期は。何もかも上手くいかなくて、しんどかった思い出がいっぱい出てきます。ベースが抜けて、ツアーを回ったりして、余裕もなかったですからね。

moAi あやぺたの妊娠、コロナ禍、メンバーの脱退とか、この4年の間にいろいろあって。その中でメイちゃんが加入して以降も楽曲制作は続けていたんです。変わらないスタンスでいたつもりだったけど……今作は時間をかけてメンバー3人に加えて、プロデュー
サーの猪狩さんと一緒に作品を作る過程がちょっと久々な感覚だったなと。今までやっていたけど、これだなって。改めて再スタートを切るというか、原点回帰というイメージはありますね。

■ああ、個人的にも今作は原点回帰というか、作品全体から衝動が漲っているなと感じました。

moAi ミニアルバムを作る上で、メンバーがより一丸となって作る感覚はあったんですよ。そういう意味でDizzy Sunfistの再スタート作品という風に受け取る人もいるのかなと。

■メイ子さんはサポート期間を経て、バンドに正式加入しましたが、作品を一枚作るとよりバンドの結束力を感じられるようになりましたか?

メイ子 そうですね。イチから作って、メンバーがやることをゼロから近くで見ていたら、曲に対する思い入れも今までより強くなるし、一員になれた感じはありますね。

あやぺた どんどん3人の曲を増やしたいという気持ちは強くなりました。新しい曲をもっと作りたいですね。

■今作を聴いて、moAiくんが言ったように原点回帰のニュアンスも感じると同時に、弱さも強さも曝け出したタフさが表れている一枚に仕上がっているなと。

あやぺた アルバムは曲数が多いから、いろんなことをしたくなっちゃうけど、ミニ・アルバムの方が「これ!」というものを突き通せる感じはしますね。

■1曲1曲に太い芯があり、パワーがある楽曲が揃っていますよね。

あやぺた ウチもそんな気がします、1曲1曲に芯があるなと。

メイ子 1曲1曲が強いなって。内容が濃くて、それぞれに個性があるし、それがギュッと詰まった作品ですね。

moAi 日本語の曲があるにしても、奇を衒ったというか、変化球みたいな曲を作ろうとは思わなくて。はっきりテーマにしていたわけじゃないけど、メロディック・パンクを意識したら、そこに初期衝動というか、当時自分が好きだったメロディックがそのまま乗ったような感じなんですよ。

■今作でよりメロディック・パンクを意識しましたか?

moAi そうですね。「面白いことをしてやろう」というのはあまりなかったですね。ススッと出てきたものを形にしようと思ったから。それが初期衝動的なものに繋がっているんじゃないかと。

■小手先でどうこうという作品とは違いますよね。なぜこのタイミングで初期衝動的なものが出たんでしょうか?

あやぺた それはこのメンバー3人で初の作品だからじゃないですかね。moAiも言っていましたけど、新たなスタート地点やなって。

■それで自分の体に染み込んだルーツ音楽が自然と出てきたと?メイ子さんはあまりメロディックは通ってきていないそうですが、その辺の難しさはありましたか?

メイ子 今回、猪狩さんが目指すど真ん中のメロディックというか、そういうフレーズを目指していたから。自分はその本質まではわからないので、自分の中にあるものからフレーズを作って、それをいい感じで噛み合わせてもらいました。Dizzy Sunfistが目指すメロディックがあり、そこに自分の要素を入れられるところは入れようと。それは勉強になりましたね。

■特に勉強になった点というと?

メイ子 基本メロディックはビートがあり、そこにルートで乗る感じで、あまり余計なことをしないストレートさが良さだと思うんです。自分は動きたい派なので、そこにどうやって自分の色を入れようかなと。

■なるほど。今作でもベースはかなり動き回っていて、それがまた良かったです。

メイ子 そうですね。それでも削られて、最終的にああいう形になりました。(笑) でも動ける感じの曲は動いていますからね。

■ええ。オープニングを飾る“Going Psycho”からベース始まりで、新生Dizzy Sunfistを強烈に印象付けています。

メイ子 最終的にあの並びになったんですけど、挨拶代わりのような曲になっているし、アルバムのド頭からベースが鳴らせるのは嬉しいですね。

■話は前後しますが、今作を作る上で改めて意識したメロディック系バンドはいましたか?

あやぺた 改めてハイスタ(Hi-STANDARD)を意識したところはありましたね。

■そうなんですね!ちなみにどの作品を聴き返しましたか?

あやぺた 曲作りに困ったり、メロディを付ける時に困ったら、ハイスタの『MAKING THE ROAD』を聴いていました。テンションが上がるメロディの付け方だったり、こう来たらテンション上がるよなって。

■そのテンションの高さみたいなものが今作に入っていますよね。moAiくんは?

moAi 満遍なく聴いたけど……ハイスタ、dustbox、blink-182とか、自分が高校生の頃に出会った3ピースバンドで、なおかつ3人で演奏しているイメージが強いバンドですからね。メロディックのシンプルな部分の美味しさを感じるバンドというか、僕とあやぺたは同世代なので、その辺りの楽曲に改めて刺激されましたね。制作段階で小難しいドラムのフレーズもあるかもしれないけど、基本的には楽曲が求めるものに対してアプローチしたので、楽曲はより洗練されたんじゃないかと。

■わかりやすいところだと、“Yesterday”は2000年代前半のポップ・パンクを彷彿させる曲調ですね。これまでありそうでなかったタイプの曲じゃないですか?

moAi それっぽい曲はあったけど、ギターフレーズを含めて、1曲通して西海岸を彷彿させるポップ・パンクはなかったかなと。あと、“Carry On”は2ビート全開で、ちょっと切なカッコいい系になっているし、ギターフレーズはハードコアの要素もねじ込むことができました。

■メロディック・ハードコア感は出ていますよね。個人的には“Carry On”が今作の中で一番好きです。

moAi あっ、ほんとですか?ありがとうございます。(笑)

あやぺた そういう人が多くて、“Carry On”はめっちゃ人気あるなと。(笑)

■ははは、そうですか。バンド的には少し意外な感じ?

あやぺた いや、みんな明るいよりも、ちょっと切ない方が好きなんかなって。