ENVii GABRIELLA VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

自身のベーシックを詰め込んだファーストフルアルバムが完成。

ENVii GABRIELLAがメジャーファーストフルアルバム『ENGABASIC』をリリース。2017年より活動を始め、YouTuber、音楽活動の両軸でファンを獲得してきたENVii GABRIELLA。初のフルアルバムは、そんなENVii GABRIELLAがこれまで培ってきた土台や初期の衝動、そして精力的にリリースを続け進化してきた現在の姿を、「ベーシック」というキーワードの元に打ちだした、バラエティに富んだ作品となっている。
今回はENVii GABRIELLAのTakassy、HIDEKiSM、Kamusの3人にインタビューを決行。楽曲に込めた思いをたっぷりと訊いた。

■今作は初のフルアルバムですが、制作する上でのコンセプトやテーマはありましたか?

Takassy これまで何十曲もリリースさせていただいているんですけど、6年目でファーストアルバムになったのも何かの縁かなと思って、1回リセットしたいという気持ちがありました。なのでタイトルを『ENGABASIC』にさせてもらって、初心に戻るという気持ちを込めています。あとはインディーズの頃はクラブ系の曲とか、あまり売れ線を狙っていない曲をずっとやっていたんですけど、最近は大衆ウケするようにということを念頭に置いて作っていたので、今回はそれをとっぱらって、本当にやりたい曲を詰め込ませてもらおうと思いました。シングル曲も結構入っているので、その分アルバムでの新曲は好きなように作らせてもらって。そういう意味でも、コンセプトはベーシックという言葉に詰まっています。

■曲が出来上がる前から「ベーシック」というテーマは考えていたんですね?

Takassy タイトルを『ENGABASIC』にしたいというのは、アルバムリリースの話になった時からあったんです。ただ、その時は二人とも「うーん、どうだろうね……」みたいな感じで。でも3人でアルバムに向かっていく中で「確かにベーシックという言葉が合うかもね」となって、最終的にこのタイトルに落ち着きました。

■HIDEKiSMさんとKamusさんのお二人は、「ベーシック」というキーワードを聞いて、どんなアルバムになりそうだと感じましたか?

Kamus 6年前に結成した時は、割りともっとカッコいいユニットを目指していたというか、KAZAKYみたいにカッコよくてミステリアスな、ヒールを履いた男の集団という感じでやっていく予定だったんです。でも途中でいい意味で変化していって、当初の予定が薄れてきたところがあったので、『ENGABASIC』というタイトルを聞いた時は久しぶりに初期のカッコいい姿を見せられると思ってワクワクしました。

HIDEKiSM 私は最初タイトルのアイデアを聞いた時、「まだまだ知名度があるわけでもないし、ベーシックに戻るのは早いんじゃないか?」と思ったんです。ただ、「カッコいい音楽だったり、カッコいいパフォーマンス、シックでモードなスタイルを、いよいよメジャーシーンでできる」と思った時に、「初期の頃のことを忘れないようにしよう」と思ったんです。そう考えたら、このタイトルもすごくしっくりきたんです。初期からの成長であったり、原点に戻るという
メッセージも込められたアルバムになったのかなと思います。

Takassy 私たちにとってみれば、「ベーシック」という言葉は過去に戻る、原点に帰るという意味ですけど、今作はファーストアルバムとして世に出るので「これがENVii GABRIELLAです!」という名刺代わりになるじゃないですか。お客さんにとっては「この作品がENVii GABRIELLAの土台、ベーシックになる」という意味でも、このタイトルが合っているのかなと思います。

■今作を聴いた際、アルバム全体で起承転結のような流れをすごく感じました。そういった曲順の流れも意識されていたんですか?

Takassy 今まで何作か作品集を出してきたんですけど、今回が一番曲順に迷ったんです。3人でも曲順の案を出し合いましたし、レコード会社のスタッフの人たちにも出してもらって。でも、みんな順番が違うから「聞かなきゃよかった」みたいな。(笑) ただ、社長は“APHRODITE”が一番最初がいいと言っていて、私たちは“Symphony”は最後がいいのと「“APHRODITE”の後には“オワッテンネ”が絶対に来るよね」という話はしていたので、その3曲の並びだけはすぐに決まっていたんです。そこからみんなの意見を聞きながら、つなげたい曲を入れていくという作業をして。あまり起承転結にこだわったつもりはないんですけど、気付いたらこうなっていました。

■アルバムの中でも、“オワッテンネ”と“PAY ME”の歌詞のストレートさが印象に残りました。この歌詞をファーストフルアルバムのタイミングで書こうと思った理由はなにかあるんですか?

Takassy 私たちはプライベートでもよく時事情報だったり、ニュースについて話したりするんですけど、最近LGBTQのトイレ問題が話題になったり、LGBTQに関して発言した人が炎上するみたいな問題が多いじゃないですか。“オワッテンネ”に関しては、LGBTQを認めない人に対して歌っているというわけではないんです。別に認めなくても好きじゃなくてもいいけど、そもそも人が傷つくって分かるような言葉を電波に乗せて言うことが、「大人としてどうなの?」っていう、人間の根本的な優しさについて歌いたかったんです。あとは、悪気がなく言った間違ったことに対して、悪意があるのかないのかを判断せず、当事者側が「間違っている」と頭ごなしに攻撃する風潮もあまり好きじゃないという話をしていて。それは優しく教えてあげればいい問題だし、そうやって浸透していく問題だと思うから。頭ごなしに言うことによって、LGBTQという言葉自体がけむたがられちゃうと逆効果だなと思っているので、曲の1番では外側に対して、2番ではLGBTQ当事者の人に対して、私たちはニュートラルな立場で「人としてどうなの?」っていうメッセージを歌いたかったんです。YouTubeを始めた時からずっと私たちはニュートラルを貫いていたし、それが私たちのベーシックになっているので、その信念をここで入れておきたかったという感じですね。

Kamus “オワッテンネ”は、初めて歌詞を見た時は「すごく攻めた曲だな」と思いました。ただ、すごく耳に入りやすい音の使い方だったり、「終ワッテンネ」のリズムも1回聴いたらおそらく夢に出てくるくらいの強烈さじゃないですか。(笑) なので、ぜひみなさんも口ずさんでいただけたらいいのかなと思います。あまり「終ワッテンネ」って言っていたら嫌われちゃうと思いますけど。(笑) 話のネタみたいな感じで広まってくれるんじゃないかなという期待はあります。

HIDEKiSM 歌詞にパンチがあることはもちろんなんですけど、やっぱりビートがすごく軽快なノリだったので、そんなに重さを感じないというコントラストがすごくいいなと思いました。
あとDメロで歌っているメッセージが全てなのかなと思っていて。「老若男女問わず、どんな人たちも同じ人間ではあるから仲良くやりましょうよ」みたいな、そういうメッセージを感じてもらえたらいいなと思います。

Takassy 日本で一番有名な音楽って、子供の時に口ずさんでいる童謡とかだと思うんですけど、童謡ってすごく軽快だったり口ずさみやすかったりするのに、言っていることが教訓めいたものだったり残酷だったりするじゃないですか。曲を作る時にそういうものを意識することがあるんです。重苦しい歌詞には底抜けに明るい曲を乗せて口ずさみやすくするっていう。それによって私たちのメッセージが口ずさまれて伝染していくっていうのが、音楽としても正しい流れなのかなというのを意識しました。

■一方で“PAY ME”はヒップホップ調で、“オワッテンネ”よりもストレートですよね。

Takassy “PAY ME”に関しては、私たちにとってみれば「ザ・ベーシック」って感じなんです。インディーズの時に出した曲で“My Business”という曲があるんですけど、それも結構攻撃的な曲で。YouTubeをやっていて、ファンの人が増えていくことによって、言い方は悪いですけど無意識にお客さんに媚を売るというか、どうしても大衆受けを気にするようになったり、「どの人にも優しく」というマインドが身に付いちゃっていた部分もあったんです。でも元をたどってみると、こういう攻撃的なものが気持ち良かったりしたので、今回は原点に戻ってこういう感じの曲を1曲は入れようと思っていました。歌詞については、ヒップホップやラップは自分のマインドを包み隠さず言う文化なので、そのセオリーは貫かないといけないなと思って、この方向性になったんです。2番の歌詞で女の人に対して物申しているんですけど、女友達が多いHIDEKiSMがそれを歌っているのがポイントで。(笑) 「HIDEKiSMさん、こう思っていたんだ」って思われかねないけど、でもゲイの本音というか。HIDEKiSMさんには一応確認を取りましたけどね、「こういうの大丈夫?」って。

■HIDEKiSMさんは実際にその歌詞を歌ってみていかがでしたか?

HIDEKiSM 「大丈夫かな……?」みたいな。(笑) ファンの方も女性が多いので、「嫌われちゃうかな?」とか、「離れていく方もいるのかな?」とか、いろいろ考えはしたんです。でも私たちもいつだって女性の味方でいるつもりはないし、オカマの味方になって欲しいわけでもないし、セクシャルの部分で不平等をするつもりがないから、「女性のこういうところはよくないよね」みたいな歌詞を私が歌ってもいいのかなって。それよりも今回の楽曲に関しては、「ヒップホップに敬意を払いたい」という部分に重点を置いた方がいいと思ったので、受け入れざるを得なかったですね。(笑)

■“Toxygen”はささやくような歌い方が印象的な楽曲でしたが、どんなきっかけでできた楽曲なんですか?

Takassy 私たちはキネマ倶楽部で「Cabaret ENGAB」というコンセプトイベントを不定期で開催しているんですけど、それに似合う曲を作りたいと思って作った曲です。自分のパートは夜中に録ったりもしましたし、HIDEKiSMのレコーディングの時もマイクの音量を上げて、ボソボソと歌ってもらいました。

HIDEKiSM Dメロの部分とかがちょっと魔女っぽいんですよね。私、「リトル・マーメイド」のアースラがすごく好きで。アースラが歌っている“哀れな人々”という曲があるんですけど、そういう感じのザ・魔女みたいなイメージで歌いました。

■確かにディズニーの悪役のような雰囲気も感じます。

Takassy うちらよくヴィランズって言われているし。(笑)

HIDEKiSM 自分的にはプリンセスだと思っているにも関わらず、ヴィランズって思われるので、みなさんの目は節穴だなと思いますけどね。(笑) でもこの曲は個人的にはアルバムの中でも一番エンガブっぽいし、souljuiceっぽいと思います。

Takassy あら、そう?

HIDEKiSM 得意分野のサウンドなのかなと。歌詞の世界観もちょっと中二っぽいというか、エンターテインメントぽいというか。そういう異次元な浮世離れしているエンタメ性でいうと、意外とこの楽曲が一番そうなのかなと思います。

Takassy 今回はCarlos K.さんとOgiくんの2人にアレンジ協力をしてもらっているんですけど、“Toxygen”をアレンジしてくれたOgiくんは、楽典を学んできた人なので、今の流行りのアレンジとは全く違うところからアイデアを持ってきたりするんです。使う楽器もクラシックっぽいですし。“Toxygen”と“あなたが私を綺麗にする訳じゃないの”に関しては、トラック先行で作ったんですけど、特に“あなたが私を~”はオケが完成された状態で来て、それがインストゥルメンタルとして成り立っているものだったんです。なので、そのインストを壊さないようにしつつ、どうやってボーカルのメロディーを作るかを考えながら制作していて。この2曲に関してはボーカルは楽器の一部なので、ボーカルが出てきた次の瞬間には違う楽器がメインを張っていることもあるという。まるでクラシックを作るかのような作り方で作ったのが特徴かもしれないです。