動画総再生回数8000万回超えのユニットが語る初のCDと“真刀勝負”の美学
動画サイトを中心に活動してきたLowFatとOnyuによる男女ユニットのFantasticYouthが、初のCDとなる『BlueGuns』をリリースした。コンポーザーとしてのみならず、ボーカルやラップでもマルチな才能を発揮するLowFat。初めて投稿した歌ってみた動画が100万再生を超えるなど、非凡な歌声を聴かせるOnyu。それぞれソロでも人気だった2人だが、お互いの魅力を引き出しあったFantasticYouthでは、これまで8000万回を超える動画再生数を記録。昨年12月に配信シングル“真刀勝負”でメジャーデビューを果たし、活躍の舞台を広げている2人に、本作について、活動の裏側について語ってもらった。
■4月28日に『BlueGuns』をリリースされて、少し時間が経ちましたけど、初のCDを出してみていかがですか?
LowFat 先日、渋谷のCDショップに行ったんですけど、実際に並んでいるのを見たら、感慨深い気持ちがありました。
Onyu 以前にも手焼きでCDを出したことはあったんですけど、今回の完成されたCDを手に取ってみて、嬉しさはありました。
■これまではネットでの活動が中心でしたけど、お二人にとってCDを出すということはどんな意味を持つものですか?
LowFat 初めての全国流通ということなので、自分たちの知名度を上げていくためのワンステップかなと捉えていて。これをきっかけに窓口を広げられたらなという気持ちはありました。
■『BlueGuns』の収録曲は、そういう気持ちも踏まえて選んだんですか?
Onyu そうですね。いろんな方に聴いていただくチャンスだと思っていたので、自分たちらしさが散りばめられた作品になるといいなと思って制作しました。
LowFat だから挨拶代わりになるような、ちょっと強めの曲を中心に選びました。
■その中で“莫迦芝居”をリード曲に選んだのは、どういう部分が決め手になったんですか?
LowFat 基本的にはいろんなジャンルの曲を作りたいなと思っているんですけど、その強めの曲というコンセプトの中でも、特に勢いがあって、僕たちらしさも強かったのが“莫迦芝居”かなと思ったんです。実際に制作するにあたっても、リード曲として「強い曲を作るぞ」というテーマがありました。
■お二人の間では、どんな会話をして制作したんですか?
LowFat BPMが速めの曲を作ろうということは共有していましたけど、それくらいでしたね。
Onyu そうですね。ざっくりテーマを話したくらいで。
LowFat あとは各々、曲と詞を書き進めて、できたものを合わせて作りました。
■いつも制作する時は、二人で意見を出し合うんですか?
LowFat 意見は出し合っているんですけど、あんまり揉めることもないというか。割りと共通の認識を持てているので、「こうしない?」「いいね!」みたいな感じで、ささっと決まります。それでOnyuに作詞を進めてもらって、僕は曲作りを進めて、詞が届いたらメロディーをつけていく形で制作しています。
■今日もリモートインタビューで、お二人別々の場所からつないでもらっていますけど、制作も直接会わずに進めることが多いんですか?
Onyu そうですね。お互い自宅で黙々と制作を進めています。
■実際に顔を合わせることは、どのくらいの頻度であるんですか?
LowFat 今はこういうご時世なので、年に1〜2回とか。
■そんなに少ないんですか!?
LowFat コロナ禍以前は、たまにライブもあったので、年5〜6回は会っていましたよ。
■それでも5〜6回。(笑)
LowFat でも、会う時は一回一回が長いですし、プライベートでも仲はよくて、友人たちと年越し旅行をしたこともありました。
■そうなんですね。ちょっとビックリしています……。話を戻しますけど、“莫迦芝居”は自分と向き合うような姿が描かれていて、どんなことを考えながら作ったんですか?
Onyu 私は夜、ひとりで部屋にいて何もすることがない時に、そういう瞬間が訪れることが多くて。どうということもない内容が堂々巡りすると言いますか、考えてしまうんです。その瞬間の混沌としている頭の中を解いたら、こういう言葉になるのかなというのをつらつら書き連ねていきました。
■Onyuさんは普段、ネガティブになってしまうことが多いんですか?
Onyu いつもではないですけど、やっぱりありますね。(笑) そういう瞬間は普段言葉にはできないところだと思うので、聴いてくださる方にも共感してもらえたらいいなと思っています。
■そこはLowFatさんも共感を覚えた部分だったんですか?
LowFat 僕たちの楽曲は基本的にティーンに向けている部分もあって、青春期の葛藤とかを描ければいいなと思っているんです。だから「そういうこともあったな」と、昔に思いを馳せるような感じでしたね。
■“莫迦芝居”には「鏡の中の自分とは目も合わさずに」という歌詞がありますけど、Onyuさんは鏡を見るのが嫌いなんですか?
Onyu いや、鏡を見ること自体はありますけど、その歌詞は深層を比喩的に表現したものというか。自分の見たくない部分には、あまり目を向けたくない気持ちはあるかもしれないです。
■自分に胸を張れないというか?
Onyu そういう感情を拡大した感じです。やっぱり自分自身の中身は、自分がいちばんわかると思うので。それを鏡という表現にしたところはあります。
■そこから歌詞は「頑張ってるよ 誰か見てよ 認めてよって」と続いていますけど、周りの声も気になるものですか?
Onyu そんなに意識はしていないと思います。もしかしたら無意識下ではあるかもしれないですけど。でも、先ほどの話に戻るんですけど、若い世代の方たちの気持ちにリンクするという意味で、そういう言い回しを要所要所に書くことはあります。
■Onyuさん自身は、周りの声に左右されるよりも、歌詞にもある「自問自答」をすることが多いタイプなんですか?
Onyu そうですね。
■逆に言うと、周りからいくら褒められても自問自答しちゃうみたいなところも?
Onyu うーん…褒められることは素直に嬉しく受け取れるんですけど、自分の中の葛藤は別物な気がしていて。それで解決することはないかなと思います。でも、四六時中葛藤しているわけではないですよ。(笑)
■歌詞は自分の人格の一部分ですもんね。僕は“莫迦芝居”だけじゃなくて、このアルバムを聴いていると、「もっとしっかりしなきゃ、強くならなきゃ」と、お尻を叩かれているような感じがするんです。
LowFat 確かにOnyuが書く詞は、自戒というか、そういう感情を誘発するところがあるかもしれないなと思います。
Onyu 自戒の意味もありますし、鼓舞するというか、言い聞かせているところもあるので、「お尻を叩かれている」と感じていただけたのであれば、それは意図した通りに伝わったんだなと。
■それは自分もちょっと弱気になることも多いから、こういう歌詞ができる面もあるんですか?
Onyu それもすごくありますね。それこそ(メジャーデビューで)最初に発表した“真刀勝負”も、弱気になってしまう時に、自分の背中も、聴いてくださった方の背中も押すような曲になればと思って作ったので。弱気になる時があるからこそ、こういう歌詞を書いているのかなと思います。
■きっと自分に厳しい人なのかなと僕は思いました。一方でOnyuさんの歌詞は、文字量の多さも特徴だと思うんですけど、LowFatさんは作曲する上で苦労はないですか?
LowFat 苦労という感じはあんまりなくて。僕自身が言葉数が詰まったボーカルが好きなので、文字量は多い方がいいなと思っているんです。むしろ僕がOnyuに対して「もうちょっと増やしてください」とか、「ここの部分ちょっと埋めてください」とか、そういう要求をすることもあります。
■じゃあ、文字数は気にせずガンガン書いてくださいみたいな?
LowFat 基本的にはそうですね。
■それは詞を書く側は、助かりそうですね。
Onyu 助かる時もありますけど、「足りない」と言われて困る時もあります。(笑) でも、書きたいことをのびのびと書けるという面ではすごくいいですね。
■ラップ部分はLowFatさんが作っていると思うんですけど、それはOnyuさんの歌詞に対するアンサーなんですか?
LowFat お互いの世界観を融合させるというよりは、いかに前後の文脈と矛盾点が生じないかということを気にしながら書いている部分もありまして……。
■もうちょっと夢のある回答が欲しかったです。(笑)
LowFat そうなんですよね。恐縮です。(笑)
■悪い言い方をすると矛盾が生じないようにということかもしれないですけど、たとえば“莫迦芝居”ではOnyuさんの「馬鹿だ」というフレーズに対して、「馬鹿馬鹿しい」というラップで返していたり、相乗効果的なものがありますよね。
LowFat 同じ言葉で拾うっていうのは、個人的に好きな表現でよくやっていますね。
■Onyuさんからラップに対して意見することもあるんですか?
Onyu 基本的にはないですね。お互いが作るものに信頼感があると言いますか。きっといいものになるだろうなと思っているので、意見をバシバシ言うようなことはなかったと思います。
LowFat そうですね。自由にやらせてもらっています。