藤川千愛 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

藤川千愛『愛はヘッドフォンから』

■そのドキュメントと妹さんがきっかけでできた曲?

藤川 私の実体験も混じっていて。私が高校生のとき、進路相談で「歌手になりたいです」と言ったときに、先生に鼻で笑われて「諦めろ」って言われたんですよ。そのときに、こんな大人になりたくないなと思って。先生は歌手をやってきたわけじゃないから、成功の道を教えてあげられないし、想像もできないと思うんです。先生に将来の夢を相談する子って、結構いると思うんですけど、私みたいに「諦めろ」って言われて、先生が勧める道に進んで、やっぱりうまくいかなかったってなっちゃうと、すごくツラいなって。

■僕は“東京”の歌詞を見て、誰か見返したい人がいるのかなと思ったんですけど、そういう気持ちも入っているんですか?

藤川 そうですね。その先生に言われたことがすごく残っていて、言われたときに見返してやるって思ったんです。でも、そういうことってパワーになったりもするじゃないですか。私は負けず嫌いなので、悔しいとかツラいと思ったことが、結構パワーになっているんです。

■その気持ちは6曲目の“悔しさは種”にもつながるところがあるんですか?

藤川 私自身も“悔しさは種”だと思ってやってきたなと思っていて、この曲はタイトルからもう好きなんです。デジモン(TVアニメ『デジモンアドベンチャー:』)のエンディング曲でもあるんですけど、やっぱり子供たちがたくさん見ているので、夏休みの子供たちの秘密の冒険をテーマにしたんです。夏休みが終わると子供は変わるっていうじゃないですか。悔しさや悲しさから逃げるんじゃなくて、それを種にしてがんばってほしいなっていうメッセージがあります。

■他の曲に比べて前向きな歌詞だなと思ったんですけど、それはデジモンがあったから?

藤川 そうです。(笑)

■他の曲に関しては、自分の歌を聴いて前向きにさせようとか、そういう気持ちではないんですか?

藤川 私は前向きな曲を聴いても、前向きになれないことが多いんです。自分と同じだと思う曲を聴いたほうが前向きになれるから、みんなの言いたくても言えないことが歌詞になるのかなと思います。

■がんばれと言われてもがんばれないみたいな?

藤川 はい。そうです。

■“私にもそんな兄貴が”は少し毛色が違う曲ですけど、さっき妹がいると言っていましたよね?

藤川 これは「そうだったらいいな」っていう妄想です。よくインタビューとかで「兄の影響でビートルズを聴いていました」と言っているアーティストの方がいるじゃないですか。私は長女だし、J-POPばかり聴いて育ったので、そういう人が羨ましいんです。もし私がそういう環境で育っていたら、今頃どうなっているんだろう?どんな音楽をやっているんだろう?っていう疑問から作った曲です。

■ちなみに藤川さんのおじいさんは演歌歌手だったそうですけど、演歌は聴いていなかったんですか?

藤川 意識的には聴いてなかったです。でも、おじいちゃんがカラオケ喫茶をやっていて、よく行っていたんですよね。だから、どの曲が有名とかはわからないですけど、自然と耳にしていたとは思います。

■それも他の歌手とは違う個性だと思うので、いつか演歌も聴いてみたいですけどね。アルバム後半はラブソングが続きますけど、ラブソングも藤川さんが歌いたいテーマのひとつなんですか?

藤川 そうですね。幸せなラブソングではないですけど。(笑)

■失恋ソングのほうが自分の心に響く?

藤川 ラブラブな歌を聴いてもおもしろくないので。(笑) 失恋でツラい人とか、恋人とうまくいっていなくてツラい人とかに響いてほしいなって思います。そういう人たちを歌で支えたい、救いたいというか。

■7曲目の“おまじない”から12曲目の“彼氏が田中だったなら”がラブソングになっていますけど、それぞれのシチュエーションを教えていただけますか?

藤川 “おまじない”は片思いがテーマですね。

■「友達のひとりじゃなくて/特別な女性(ヒト)になりたいの」と歌っていますよね。

藤川 はい。なんか怖いほど好きみたいな、ちょっとメンヘラっぽい女の子です。

■そう言われると「あなたに恋している私に/はやく気付いて欲しいから」って、ちょっと怖く聴こえてきます。(笑)

藤川 ふふふふ。そうですね。(笑)

■8曲目の“あした朝食を食べる頃には”は、曖昧な関係の男女というか、これは付き合っている設定なんですか?

藤川 曖昧です。付き合っているはず……。だけどうまくいっていないし、今夜もう話つけようかみたいな歌です。

■9曲目の“あなたを嫌いになれました”は?

藤川 友達と同じ人を好きになっちゃったとか、好きになっちゃいけない人を好きになってしまったときに、その気持ちを隠すことを「優しい嘘」っていうことにした曲です。『人魚姫』も好きな人のために優しい嘘をつくじゃないですか。それとリンクさせて作りました。

■10曲目の“べつにいいけど”は、一人になりたがったり、二人のほうがいいこともあると言ったり、言い方は悪いですけど、ちょっとめんどくさい女だなって。(笑)

藤川 はははは。(笑) でも、一人だからこそわかることってあるじゃないですか。離れているからこそ、「あー、好きだったんだ」って感じるとか。この曲はそれがテーマですね。

■11曲目の“引き寄せられて夢を見る”は?

藤川 これも片思いなんですけど、叶わない恋なんです。だから忘れたいのに、頭のなかで、夢のなかで引き寄せられてしまうっていう歌です。

■あなたがいい男だからいけないんだよ、みたいな感じですよね。それとは真逆な気持ちが12曲目の“田中が彼氏だったなら”なのかなって。

藤川 そうですね。背伸びして、好きな人がいるんだけど、本当は身近にいる田中が、一緒にいていちばん安心するっていう。