■田中は実在するんですか?
藤川 架空の人物です。田中って、母音が全部「あ」だから歌いやすいんですよ。だから田中にしました。(笑) でも、こういう状況の人って、いっぱいいそうじゃないですか?
■どうなんでしょうね。むしろ『田中が彼氏だったなら』っていうタイトルのままアニメを作ってほしいなと思いました。(笑)
藤川 おもしろそう!
■シチュエーションも具体的ですし、この歌詞のストーリーで作れそうですよね。ちなみに藤川さんは、自分が幸せなときでも、失恋の曲のほうが聴きたくなるんですか?
藤川 そうですね、私は。幸せだとしても、何か思うところがあるけど、みたいな曲のほうが好きです。ただ幸せなだけよりも、こういうところも含めて好きとか、こんな私たちだけどとか。幸せボケしたくないんです。恋愛だけじゃないんですけど、何に対しても危機感みたいなものを持っちゃうんですよ。いつも安心できないというか。あれが起こったらどうしよう、これが起こったらどうしようって思っちゃうタイプなので、歌もそういうふうになっているのかもしれないです。
■話が戻っちゃいますけど、やっぱり生きづらいですね。(笑)
藤川 はい。生きづらいです。(笑)
■そして13曲目の“愛はヘッドフォンから”が、最初に話されていた前向きな曲というか。
藤川 はい。少しだけですけど。
■これは藤川さん自身が、何かあるたびに音楽を聴いて救われてきたということを歌った曲ということでいいんですか?
藤川 はい。音楽がないと生きていけないし、いま振り返ってみても、本当に音楽に救われてきたなと思うんです。ツラくて立ち直れないときも、泣き止まないときも、音楽を聴くこと、歌うこと、音楽に身を委ねることで救われてきたなと思っていて。人それぞれ、自分が救われるものは違うと思うんですよ。スポーツであったり、おいしいものであったり、本であったり。それが私にとっては歌で。音楽に本当に感謝しているっていうことを歌いました。
■実際にこれに救われたっていう曲はありますか?
藤川 うーん、ありすぎて選べないです。
■逆に言うと、毎回違う曲に救われていたり?
藤川 そうですね。毎日、毎回違います。
■ちなみに最近聴いて救われた曲は?
藤川 最近はGLIM SPANKYさんを聴いたら、めっちゃがんばろう!ってなります。“大人になったら”がすごく好きです。
■このアルバムも、誰かにとってそういう1枚になってほしい気持ちが?
藤川 本当にそうなんです。私が救われてきたように、みんなも私の音楽が救いになってくれたら、がんばれるって思ってくれたらいいなって。
■僕はこのアルバムを聴いて、幸せな曲を歌うときが楽しみになったんですけど、次はこういう曲を歌いたいっていうビジョンは見えているんですか?
藤川 いまのところ幸せな曲を歌う予定はないですね。(笑) でも外国に行きたいんですよ。ブラックミュージックを勉強したくて。
■今作でいうと“東京”とかはブラックミュージックっぽさがありますけど、そういう影響ですか?
藤川 そういう影響です。実際に歌ってみて、まだまだいろんなことができるなと思ったし、グルーヴ感って、人それぞれ言うことが違うじゃないですか。それをもっともっと勉強したいし、体に染み付けていきたいんです。私はアドリブで歌ったり、フェイクをいっぱい入れたりするのがまだ苦手なので、そういうこともできるようになったら、音楽の幅も広げられるのかなって。自信を持ってお届けできるアルバムはできたんですけど、まだ満足はしていないので、これからもがんばります!
Interview & Text:タナカヒロシ
PROFILE
1995年6月6日生まれ岡山県井原市出身。日常の鬱憤や葛藤から恋心までを独自のユニークな視点で歌う岡山県出身のシンガーソングライター。2018年11月に開催されたアコースティックライブにてデビュー、2019年5月に1stアルバム『ライカ』をリリース。MV『きみの名前』は500万再生、MV『あたしが隣にいるうちに』も350万再生を突破するなど、令和デビュー注目のシンガー。2019年11月より4ヶ月連続でシングルを配信。2020年には、BUCK-TICKトリビュートアルバムへの参加が発表されるなど、エンタメから国内音楽シーンの重鎮まで、さまざまな交わりの中で自身の「歌」を高めている。4月8日には待望の2ndアルバム『愛はヘッドフォンから』をリリース。6月5日には、LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でワンマンライブが決定。
https://fujikawachiai.com/
RELEASE
『愛はヘッドフォンから』
初回限定盤(CD+DVD)
COZP-1647-8
¥3,500(tax in)
通常盤(CD)
COCP-41115
¥2,200(tax in)
日本コロムビア
4月8日 ON SALE