80sシティポップが声優界を飛び越え拡散中!初シングルに隠されたメッセージを本人が解説
昨年9月にソロアーティストデビューを飾ってから1年、本格80sシティポップが声優界を飛び越え賛辞を浴びている降幡 愛が、初のシングル『ハネムーン』を完成させた。これまで同様に降幡自身が作詞を手掛け、本間昭光がプロデュース・作編曲を手掛けた本作は、これまでにないハッピーなサウンドが奏でられつつも、一筋縄ではいかない彼女らしい物語が描かれており、その意味を知れば知るほどハマること間違いナシ。一聴しただけでは不謹慎にも感じる「浮気なハネムーン」というフレーズに込められた真意とは?「かわいいよりおもしろいと言われたい」という彼女に、本作に収録された3曲を解説してもらった。
■アーティストデビューから1年が経ちましたが、ここまでを振り返っていかがですか?
降幡 コロナ禍でのデビューでしたけど、そういう状況を逆手に取って、もっといろんなことをできるんじゃないかという考え方になれた1年でした。声優アーティストという括りの中では、異質なコンセプトでやっていると思うんですけど、それを受け入れてくださる方が本当に多かったことも嬉しくて。声優ジャンルを知らない音楽畑の方や、海外の方からも反応をいただけて、最近はTikTokも始めたんですけど、もっといろんなやり方で、いろんな世代の方たちに向けて、いろんな発信をしていきたいなと思いました。
■そんな充実した1年を経て、今回シングルを出すにあたってはどんな話をされたんですか?
降幡 デビューから1年ということで、自分の中でも気合いが入っていて。本間さんとの制作の中では、デビュー作のリード曲だった“CITY”みたいな原点回帰というか、ザ80sのキラキラしたサウンドをもう一回やろうということで話が進んでいったんですけど、詞先で作っているので自分の詞があがらないと進めない。それで、なかなか自分の中でしっくり来るテーマが出てこなかったんですけど、スタッフさんとお話する中で、“ハネムーン”というタイトルがポンと出てきて、これはいいなと思ったんです。
■どこにピンと来たんですか?
降幡 私はアーティストデビューした時から、「自分は月みたいな存在」という話をしていたんですけど、「Honeymoon」には「月(moon)」が入っているし、めっちゃいいじゃんって。そこからは早かったですね。これまで私は悲恋歌みたいなものを歌ってきたから、“ハネムーン”というポジティブなタイトルに対して、周りの方は「どうなるんだろう?」と思うんじゃないかなというので、その裏をかこうと思ってサビを「浮気なハネムーン」という歌詞にしてみたり。そういう遊び心を入れつつも、ただヒネくれた歌詞というよりかは、いろんなアーティストさんがいる中で、「降幡 愛をかじってみたら面白いよ、ちょっと浮気してみなよ」っていう想いも込めて書きました。(笑)
■そういう意味の「浮気なハネムーン」だったんですね!
降幡 そうなんです。言葉だけだと「え?」って思うじゃないですか。ちょっとでもフックになればいいなと思って「浮気なハネムーン」にしました。一番手はいてもいいけど、二番目の女にして欲しいというか。
■ものすごい発言ですね。(笑)
降幡 はははは。(笑) まぁファンタジーなので。
■そういう想いとは別に、曲自体のストーリーもあるわけですよね?
降幡 そうですね。これはお互い好き同士の人が新婚旅行に行って、でも気になっている人はいて。女の人が男の人を引っ掛けているというか、男性は既婚者だけど、女性が「いいじゃん、いいじゃん、新婚旅行こっちで行きなよ」って誘っている。同僚か先輩か後輩かわからないですけど、女性が男性を弄んでいるみたいな歌です。(笑)
■てっきり新婚カップルを想像していたんですけど、そんなストーリーだったんですね!どういうきっかけで思いつくんですか?
降幡 うーん、なんでしょう……。私にはできないことなので、魅力に感じちゃうというか。男の人をそういうふうにしている女性ってすごいな、マメだなって。
■男を転がす女性に憧れが?
降幡 そうなんですよ。私はダメな男の人が好きというか。(笑)
■それは降幡さんが好きな80年代の作品とかの影響なんですか?
降幡 そうだと思います。小さい頃から見ていたアニメやドラマは、男性が頼りないイメージがあって。「なんでそこでそっち行くの!?」みたいな、こっちがツッコミたくなるような恋愛像に触れてきたので、シンプルに好き同士の物語ではつまらないんです。
■なんだか話を聞いて曲の楽しみ方が全然変わりました。ちょっといけない楽しみ方な感じもしますけど。(笑)
降幡 よかったです。(笑) でも、解釈はみなさんに委ねたいなと思っているので、きれいな新婚サウンドと思ってもらっても全然問題ないです。
■サウンドの方も80sの香りを漂わせていますけど、本間さんとはどんな話をされたんですか?
降幡 今までは夜のイメージが強かったと思うんですけど、こっちはサマーバケーションというか、爽やかな80sのイメージでというのはお伝えしていたので、ザ・王道な感じになったと思います。曲ができあがった時から、本間さんは「いい曲だ、いい曲だ」って、永遠に聴いていて。(笑) そのくらい本気で作ってくださったということも嬉しかったです。
■つい口ずさみたくなるくらい軽快な仕上がりですよね。口ずさんじゃいけない言葉ですけど。(笑) カップリングの“真夜中のフライト〜約束の時刻〜”も、男性をたぶらかすような女性像が浮かび上がるんですけど、どんなイメージで作られたんですか?
降幡 これは10月から始まるツアーのために書き下ろした楽曲で、じゃじゃ馬な女の子の物語ではあるんですけど、それとは別軸で降幡 愛としてのメッセージも入っていて。もっと普通なことをしなきゃとは思いながらも、こういう80sなサウンドとかビジュアルとか、どうしても尖っちゃうというか、そういうわがままな私を許してくれてありがとう、着いてきてくれてありがとうっていうファンのみなさんに対する気持ちも込めているんです。
■曲の主人公と降幡さんが重なっていたんですね!
降幡 そうですね。この曲も“ハネムーン”も、今回はメッセージと物語を重ねています。
■今までの作品にもそういう要素はあったんですか?
降幡 基本はフィクションを歌っていたので、自分のメッセージ性というのは、そんなに入れていないです。セカンドミニアルバムのリード曲(『メイクアップ』収録の“パープルアイシャドウ”)で、自分が雨が嫌いだから、雨が嫌いな女の人の歌にしたっていうことはあったんですけど、自分の想いやメッセージを入れたのは初めてだと思います。私も今言われて気づきました。
■そういう意味では、進化した作品になっているということですよね。先ほど「じゃじゃ馬な女の子の物語」と言われていましたけど、曲自体のストーリーはどんなイメージだったんですか?
降幡 自分の付き合っている人じゃ物足りないけど、結局今の人に戻るっていう話なんです。遊んでみて気づいた元の人の良さというか……ちょっと言い方が悪いな。(笑)
■「しっかり捕まえておいて」とか、「しっかり抱きしめておいて」とか、トレンディドラマみたいですよね。降幡さん自身もファンの人に対して、そういうふうに思っているところはあるんですか?
降幡 あー、ありますね。でも、自分を応援してくださるみなさんって、本当に懐が広いというか、安心感があるというか。「好きなことやりなさいよ」「降幡さんは何やっても大丈夫ですよ」とか言ってくださるんです。だから、逆に私が転がされているような気もします。(笑)
■「捕まえておかないと、どっかに行っちゃうぞ」と降幡さんは言っているけど、ファンからすれば想定内で、実は手のひらで転がされている?
降幡 そうなんですよね。最近もオンラインでみなさんと会うことがあったんですけど、本当に優しい方ばかりで、「私の好きなことを受け入れてくれて嬉しいな、ありがたいな」という気持ちです。
■サウンド面に関しては、本間さんとどんな話をされたんですか?
降幡 フライト、空港みたいなのがイメージにあったので、最初と最後に飛行機の音を入れてもらいつつ、本間さんと話している中でブラスの音とか、今まで使ってない音も入れようとなって。あとは角松敏生さんの“AIRPORT LADY”(1984年発表アルバム『AFTER 5 CLASH』収録)とか、「私の中で今こういうのがキテます」みたいなお話もしました。
■そういう最近聴いているものは、本間さんと共有しているんですか?
降幡 しています。80sの曲だけじゃなくて、最近のアーティストさんの話もしますし。
■別に普段は80年代の作品しか聴かないというわけではない?
降幡 全然、最近の曲も聴いていますよ。藤井風さんとかJ-POPも好きだし、K-POPも聴いていますし。