JUVENILEと向井太一に聞く、注目映画主題歌への挑戦と海の向こうへのアプローチ
JUVENILEが11月12日にリリースする”GIMME THAT feat.向井太一”は、中国の大ヒット映画「唐人街探偵 NEW YORK MISSION」の日本版主題歌。壮大でユーモラスな映画の日本版主題歌のボーカルとしてJUVENILEがキャスティングしたのはR&Bやファンクの要素を取り入れるボーカリスト、向井太一だ。スケールの大きい映画に対し提示した彼ら流の回答とは一体なんだったのか。海外でも精力的に活動する二人に、今後のアプローチや展望なども含め話を聞いた。

■お二人は初のコラボということですが、初めてお会いした時のお互いの印象はどんな感じだったんでしょうか?
JUVENILE 向井さんは見た目通り、スタイリッシュでカッコよくて、クールでシティボーイ。ただ、最初はまだ話してないから、柔軟性はどうなのかなと思いました。そこは探りましたね。今回みたいにタイアップで完成された作品の中に組み込む時に、「100%自分しか出せない人だったらどうしよう」っていうのはありました。「そこの柔軟性みたいなのはあるのかな?」って探りましたね。
向井 僕は「どういうスタンスで曲を作る人なのかな?」って思っていました。
JUVENILE 自分がゼロかもしれないっていう。
向井 そうそう。ご自身の作品以外でもいろんな作品に関わっていらっしゃって、すごく幅広い印象があったので。最初に映画を観て本国の主題歌を聴いた時に、自分とのギャップがありすぎて一瞬不安になったんですよ。JUVENILEさんの元々のアーティストとしての顔は知っていたので、「わくわく」と、「どうなるんだろう?」っていう不安もありつつ、でも会ってみると本当に一音楽家としてすごく熱量があるし、僕と方向性が一緒だったので、作り始めてからは全く不安もなく楽しめました。
■映画のタイアップが決まってからボーカルを探したという流れだったんでしょうか?
JUVENILE そうですね。
■今回、向井さんを選んだ決め手はなんだったんでしょうか?
JUVENILE 僕が思いつく中で向井さんしかいなかったんですよね。声がめちゃくちゃ格好いいので、その力をお借りしたいなって。
■向井さんはJUVENILEさんからお話をいただいていかがでしたか?
向井 すごく嬉しかったです。単純にJUVENILEさんからお声がかかったっていうのが嬉しくて。やっとお会いできるのと、作品の規模も含めてすごい大きなことが起こったなっていう感じでした。
■映画のタイアップということで、楽曲を作る上でどこまで映画に寄せるかなどのバランスも考えたと思いますが?
JUVENILE 映画を表面的に言うと、笑いというか、コメディというかそういう作品ですよね。でも僕らにコメディ要素って別にないんですよ。もちろんひとつの正解として、完全に映画に寄せて僕らがピエロになってコメディをやるっていう選択肢もあったと思うんですけど、それだとあまり素晴らしいゴールがイメージできなかったんですね。そもそも僕が向井さんに声をかけている時点でそういう方向性じゃないなっていう。僕らが作品に新しくなにかを投げかけられないかなって模索しました。配給会社の方が「こういうの格好いいですね」って言ってくれたのはすごい救いでした。
■スケールの大きい映画だけど、曲単体で聴くとむしろタイトめな音だったりして、その印象の違いも面白いなと思いました。
JUVENILE そこが一番の僕らの提案であり、わがままですね。
■一方で、歌詞のアプローチとしては映画を観てから聴くと、すごく内容と繋がっているなと思うものですね。
向井 映画を観てからでも納得するような要素はありつつ、曲単体としてもしっかり楽しめるものを作りたかったので、そこのバランスをすごく意識して作りました。
■JUVENILEさんはコラボでの楽曲制作が多いですが、相手のために作り上げるという制作ではなく、タイアップがあることによってコラボ相手と同じ向きを向いて制作していくっていうのは、普段とは違う感覚でもあったんじゃないでしょうか?
JUVENILE そうですね。二人でタイアップ作品に向かっていくっていう作業は初めてだったんですよ。いつもは僕がアーティストに向かって作業して、そのアーティストがタイアップ作品に向けてっていう図式ですけど、今回は僕のアーティスト活動なので、いい意味で僕の色が出せました。
■向井さんはコラボ作品でタイアップがつく制作ならではでの難しさなどを感じたりしましたか?
向井 僕もいろんなプロデューサーの方やトラックメイカーの方とご一緒することが多いので、今回も普段の作り方とそんなに違いはなくて。今回もJUVENILEさんとご一緒したからこそできた曲だと思っていますし、自分のやりたいことは結構詰め込めたと思います。今回だからこそっていうのは歌詞の部分くらいですかね。好きにやらせていただけたのですごく助かりました。
■実際に映画で流れているのを聴いてみてどうですか?
JUVENILE まだ聴けていないので、合っていればいいなと思いますけどね。ですが配給会社の方たちが「合ってますね」って言ってくださったので、すごく安心はしています。カッコいいものを作った自信はあるし、歌詞がばっちり合っているのはすごくわかるんですけど、でも本当に映画に合っているのかなっていうのは気になります。
向井 僕は目指していたことはできたなって思っています。本国の主題歌と違ったアプローチで、でもしっかり映画に寄り添った歌詞にできたなって思うので。結構狙ったところは自分たちではできていると思います。
JUVENILE 映画自体がバブリーなんだよね。「お金あるからこんなことできちゃいます」みたいな感じですけど。(笑) でも、僕らはあんまりそういうお金持ってますみたいな感じじゃないから……。
向井 お金持ってる時代に生まれてないですもんね。(笑)
JUVENILE 確かに。生まれてからずっとお金ないから。(笑) そこを無理したくなかったんですよ。
■映画はすごく景気がいい感じがあるけど、それを今の見方に引き戻してくれる感じがありますね。向井さんはレコーディングの時には「どういう風に歌おう」とかって意識したことはありましたか?
向井 本国の主題歌に比べてテンポ感が遅かったり、音数も少なかったりするので、ボーカルでそういうビート感というか、勢いをつけるようには意識しました。でも勢いで歌っちゃうことが得意なので、自分らしく歌えたと思います。その場所にしかないバイブスみたいなものってあるじゃないですか。僕は結構プリプロの段階で本レコーディングを終わらせちゃうこともあって。レコーディングしたけど、デモの段階の方がよかったなと思ったらそっちを出すこともあるんです。今回はその場で生まれる勢いとかバイブスの良さみたいなものがしっかりと出せた気がします。
■裏拍のノリの感じがすごく良いなと思って。JUVENILEさんの音に向井さんの歌が乗ることの良さが出ているなと思います。
JUVENILE それはもう歌の力だと思いますよ。インストで聴いたら、また聴き方が変わると思いますね。