Klang Ruler VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

yonkey(Vo&トラックメイカー)、SimiSho(Dr)、かとたくみ(Ba)、やすだちひろ(Vo)、Gyoshi(Gt)

SNSで話題の「令和レトロ」なバンド、今のモードを探る。

Klang Rulerが6月3日に2nd EP『NEW AGE POP MIX』をリリース。Klang Rulerは、“オトナブルー”などを手掛けたyonkeyを中心とする男女混合5人組バンド。今作の収録曲“Teenage Blue”や“ZENZEN わかってない”は、SNSを中心に既に話題となっている。今回のインタビューでは曲作りの方法やバンドメンバーの個性がわかる質問で、Klang Rulerの“今のモード”を解き明かす。

■VANITYMIXでは初めての取材なので、まず自己紹介と一緒に、共演してみたいアーティストを教えてください。

yonkey ヴォーカルおよびプロデュースのyonkeyです。共演したいアーティストはThe Weekndで、自分の音作りに大きな影響を与えてくれた方です。いつか僕が制作側として彼の作品に携われたら嬉しいなと思っています。

かと ベースのかとたくみです。共演したいバンドはVulfpeckというバンドです。テオ・カッツマンの歌声も好きだし、メンバーそれぞれめちゃくちゃ大好きだし、いつか同じステージに立ちたいですね。

SimiSho ドラムのSimiShoです。共演したいのはThe Rootsというバンドで、ドラマーのクエストラブのドラムが大好きで、来日公演も観に行ったんですけど、雰囲気も良くて、ドラマーとしてもバンドとしても好きなので、ぜひ一緒にやってみたいです。

Gyoshi ギターのGyoshiです。もう絶対叶わないと思うんですけど、NewJeansとセッションしたかったですね……。サウンド感が平成感もあってめちゃくちゃ好きだったんです。Klang Rulerと同じで、新しいサウンドだけど、ちょっと懐かしさも感じるのがすごくいいなと思いました。

やすだ ボーカルのやすだちひろです。共演してみたいアーティストは、イギリスのシンガーソングライターのBeabadoobeeです。自己表現の仕方がすごく好きで、ファッションだったり、生き方だったりも含めて、すごくカッコいいなと思っているので、いつかやってみたいです。

■みなさんちょっと洋楽寄りというか、海外寄りなんですね。バンドにおける自分の立ち位置はどんな感じですか?

SimiSho 僕は映像まわりや、クリエイティブまわりを中心にやっています。連絡役もやってるかな。yonkeyが曲を作るので、その曲がどういう世界観かを聞いて、それに合わせてよく見えるようにSNS用の動画を考えたり、ジャケ写やミュージックビデオについて、「どういうものを作るべきか」みたいなことを話す役になっています。

やすだ 私は多分、私がいなかったらバンドが暗くなると思うので、明るい部分担当です。(笑) あと、やっぱりボーカルというポジションありきなんですけど、導入部分だと思います。バンドに興味を持ってくれる人たちを増やす一番キャッチーな部分の役割を担わせてもらっているのかなと思っています。

かと 僕は実務的な部分で言うと、竿物アレンジですね。yonkeyがギターやベースを弾けないので、そのアレンジの提案をしたり、あとはライブの繋ぎをやったり。気持ちの面で言うと、多分一番反骨的な思想を持っています。(笑)

Gyoshi 私は外交担当みたいな感じです。仲いいバンドの人とかをいっぱい作って、「Klang Rulerってこんなにいいバンドなんだよ!」というのを広めたりしています。(笑)

yonkey それで僕が楽曲担当です。最近いいなと思うのは、徐々にそうやってメンバーがお互いの役割を理解し始めて、各々それに向かってベストを尽くすという体制が整ってきたので、集中して曲を作れるいい環境にいることです。

■おお、それはいいですね。バンドはひとつの小さな会社みたいなものですから、役割がハッキリしているのはいいことだと思います。曲ごとにサウンドバランスがちょっと変わる気がするのですが、それはわざとでしょうか?

yonkey そうです。理論的なものというより、感覚的な、僕が培ってきた気持ちいいボリュームバランスのもとに動いているので、もしかしたらそういう聴こえ方もすると思うんですけど、意図的ではないというか、曲ごとに気持ちよさを追求していった結果がこれなんです。

■そこで衝突することはないんでしょうか?

yonkey しないですね。それこそ、かとちゃんがアレンジを考えてくれた時、最終的に僕が俯瞰して聴く側に回れるというか、ある種、ジャッジじゃないですけど、「このタメを響かせるためにはこれはない方がいいかもね」みたいな調整はしますが、そこで意見が衝突することはないです。

やすだ yonkeyのやっていることは、「なぜそうなっているか」がなんとなくわかるので、「まぁそれはそうなるよね」みたいな感じです。

yonkey みんなが結構アイデアを出してくれるから、僕も毎回パっと聴いた感じで「もしかしたらこれがいいのかもしれない」という考えになれるので、それが長年やって来た僕らの制作スタイルなのかなと思います。

■いい感じですね。バンド名はどういう意味なのでしょうか?

SimiSho 「Klang」がドイツ語だっけ?ギリシャ語か…?

yonkey 僕らが高校生の時につけた名前だから、僕らもよく覚えてないんですよ。(笑) しかも命名者がもう脱退しているという……。(笑) だから、最近は「こういう意味です」と明言はあんまりしていないんです。

かと でも「Klang」が「音」で、「Ruler」が「定規」とか「支配者」とかって意味だから、「音の物差し」とか、「音の支配者」とか、「音を扱う人」みたいな感じかな。学生の時は「音の支配者」みたいなこと言っていました。

yonkey でもね、名前なんて関係ないんだよって話ですよ。中身が大事なんです。(笑)

■まぁそうですよね。その通りだと思います。結成からは干支一回りしていますが、今のバンドは学年でいうと、どんなモードの時期にあたると思っていますか?

やすだ 私の体感では中学生くらいですかね。私は初期にはいなかったんですけど、話を聞いている限り、バンドとしてのキャリアがしっかりと始まってから1~2年なわけじゃなくて、学校で仲がいい友達でやっていた時期から始まったわけでしょ?それが幼少期にあたるなら、メジャーデビューした辺りから中学生くらいになるんじゃないかな。

■それでもまだ学生感覚はあるという感じなんですね。

やすだ まだ「完成」という感覚ではないです。ライブをやりながらとか、作品を作りながら、「またこんなところがグッと変化したな」というのを毎回繰り返し感じているので、まだ「大人です」という感じじゃありません。まだまだ先がありそうな感覚があります。

■結成メンバー的にはいかがですか?

SimiSho どうだろうな。高校生くらいかな?地元の友達と始めたのが保育園ぐらいだったとしたら、かとちゃんたちが入った頃が小学生ぐらいで……コロナ禍あたりにふたり(やすだとGyoshi)が入ったのが中学生ぐらい。それで、今は音楽の方向性や表現の仕方がだんだん見えてきているけど、ライブでの見せ方はまだ練っている途中だし、ライブをやるごとにどんどん自分たちでも変えているので、高1くらいかな。みんなでコミュニケーションを取って、「どう良くしていくか」みたいなものが、また新しく見えてきた感じがしたから、高1くらいに感じます。

■まだまだ続きがある感じですね。作曲名義がバンド名になっているのはなぜですか?

yonkey メロディやコードは僕が作ることが多いんですが、アレンジは僕ひとりじゃないし、メンバーの協力があってこそなので、ここはバンド名義にしたいなって。そういう、なんとなくの感覚です。あと、下世話な話になっちゃうんですが、「売れたらみんなでハッピーになろうよ」みたいなところもあって。(笑) だからこそ、僕名義だけじゃなく、バンド名義にすることにより、各々このバンドをもっと大事にしていけたらなという想いがあります。

■そんな中で「このバンドらしいサウンド」は、どんなものだと考えていますか?

yonkey 僕が結構なんでもできるので、サウンドというところで、「これ」と言えるものはないんですけど、バンドとしてひとつ掲げているものは、「懐かしいけど新しい」というものがあります。常にノスタルジーを含ませたいという意図があり、それに向かうために用いるサウンドが毎回違うだけで、やっていることは実は一緒……という感じですかね。聴いた時に「どこかで聴いたことがあるような音が入っているな」とか、「なんだか懐かしいな」と、いろんな世代の人たちに思ってもらえる要素を入れたいというのがあるので、「懐かしいけど新しい」というのを追求して、曲ごとにサウンド選びをしています。

■それで言うと、ギターは結構機材にこだわりがちじゃないですか。自分らしい音を作ろうという意識はあるんですか?

Gyoshi そうですね。ひとりで弾く時と、バンドで弾く時の音色はめっちゃ分けています。ひとりの時は、どっちかというとこもった音や、温かい音が好きなんですが、このバンドは結構同期が入っているので、ちょっとそれに馴染む感じの音にするのを心がけています。

■反骨精神の強いベーシストとしてはいかがですか?

かと ライブでは、ですけど、僕はもうアンプから直オンリーみたいな感じです。エフェクターも挟みたくないです。Foderaというメーカーのベースを使っているんですが、それ以外は絶対に使わないと決めています。

■やっぱりこだわりがありますね。

かと ここはちょっと譲れないです。まぁ、いっぱい機材があるとめんどくさいからというのもあるんですけどね。(笑)

■そういうこだわりもカッコイイと思います。ところで「専門学校を卒業しているバンドは、複雑な音楽を作りがち」という勝手なイメージがあるのですが、Klang Rulerはスッキリしていて、直感的に聴きやすいなと感じたんです。それは意識的なものなのでしょうか?

yonkey それはめちゃくちゃ意識しています。僕も専門学校に行って、一通り勉強していましたし、音楽の理論とかも一通り頭に入っているんですけど、曲を作る時は、一旦全部それらを忘れて作っているんです。ぶっちゃけ、ここで転調してとか、ギターを速弾きしてとかは、どうでもよくて、それよりもパッと聴いた時に口ずさみやすいものや、音楽をやっていない人でも楽しめるものが大事だなと思っているので、理論から離れて作っています。理論はあくまで事象を説明するためのツールみたいなものなので、それを攻略法にして曲を作らないようにはしています。だから、僕が書く曲は難解に聴こえないんだと思います。

■だから聴きやすいんですね、とても納得しました。ところでKlang Rulerは、MVで「走りがち」「乗り物に乗りがち」「外で演奏しがち」じゃないですか?

SimiSho 去年ぐらいからかな?“Teenage Blue”では、SNSで自転車を使った動画を出したりして、疾走感を出しつつ、シンプルな映像を出したいというのがありました。“Teenage Blue”は、世界観をがっつり作った感じだったので、最近はナチュラルさというか、シンプルな感じを出したくて、外での撮影が増えた気がします。

■外ロケならではの苦労はありますか?

やすだ 天気ですね。晴れたのは“city rats”だけです。(笑) 一番晴れてほしかった“Teenage Blue”はもうドン曇りだったし。“ララバイ”も一瞬晴れている時に急いで撮りました。

■つまりメンバーの中に雨男か雨女がいるようで……。(笑) っと、みなさん一斉にyonkeyさんの方を見ましたね。(笑)

yonkey 僕の人生いつも雨振りです。(笑) ディズニーランドに行く時とか、修学旅行の時とか、決まって雨です。でも“city rats”の撮影は晴れたから、今年は調子いいのかなと思います。

■今後も続くといいですね。(笑) “city rats”のMVではみなさん走っていますが、一番走るのが速いのは誰ですか?

やすだ 意外とGyoshiちゃんがマジ速かった。(笑)

Gyoshi いや、男性の方が速いですよ!

SimiSho でもさ、全盛期のタイムだったら勝てる可能性あるよね?

かと 張り合うなよ。(笑)

■Gyoshiさんが速いんですね!何か陸上競技などをやっていらっしゃったんですか?

Gyoshi いや、なんにもやっていないんですけど、昔「かけっこで1位を取ったらカルパス10個貰える」というのをお父さんと毎回やっていたから、カルパスのためにめっちゃ走っていました。(笑)

yonkey バンドのインタビューで「カルパス」ってワードを聞いたことがないよ。(笑)

■私も初めて聞きました。(笑) この曲のヴォーカルがヒップホップ調で面白かったのですが、こだわったところはどんなところですか?

やすだ それこそ“Teenage Blue”からだと思うんですけど、yonkeyからラップパートも任せて貰えることが増えました。もともとyonkeyがラップ好きで、聴いたり作ったりするのが得意ということもあって、ボーカルディレクションをしっかりやってもらいながら、自分の中に馴染ませていった感覚があります。歌詞の中にライミングだったり、音の響きだったりがめちゃくちゃ含まれているので、私が最初にさらっと聴いた時には気付けなかった部分も、「ここをもっと強調して」などとディレクションしてもらいながら、このEPを通して自分でも少しずつ、言われる前に韻を踏んでいるところに気付けるようになり、「ラップはこういうふうに発音したらカッコイイんだ」とわかるようになりました。自分の中でもなじんできた感覚があります。

■yonkeyさんは韻を踏むのが好きですよね。

yonkey そうですね。語尾の感じの気持ちよさとかが好きです。僕は基本メロ先なので、何語でもない、鼻歌みたいな感じで曲を作るんですけど、メロを作った時には気持ちいい言葉の形があって、それって大体韻を踏んでいるんです。それに合わせると、ここで韻を踏めるよね、となって、クロスワードパズルみたいな感じで作詞している感覚があります。ラッパーの方々とビートメイクを勉強していた時期が長かったので、ヒップホップのリズムが自分の音楽のDNAに入っているから、「それをポップスとして落とし込むにはどうしたらいいか」みたいなことを考えた末に、最近はちひろさんにラップをやってもらっています。

■あと、突然の空白も面白いです。

yonkey 僕はそういった空白がめっちゃ好きで、音が消える瞬間が一番インパクトが大きいと思っているんです。そういう思いがあるので、楽曲として「ハッ」とさせたい部分に使うようにしています。この曲では意図的にバックミュージックを全部止めて、しかもただボリュームをゼロにするだけじゃなく、PCや機材のノイズも全部消しました。ちっちゃいこだわりなんですけど、完全な無音を追求しています。

■確かに本当にクリアな空白だったと思います。そういえば、「都会のネズミ」というのは2025年によく聞いたワードでしたが、意識されていましたか?

yonkey ありました。やっぱりすごく印象的なフレーズだったので、「田舎のネズミと都会のネズミ」は、浮かんだワードでした。でも、この“city rats”の主人公が選んだのは都会のネズミだった、と。「rats」と複数形にしているのも、「自分は固有名詞がつかない、都会にはびこっている多数のネズミのひとりだ」という意味が込められています。

■歌詞の爽快感の割にスローテンポなのが皮肉っぽく聴こえたのですが、そのあたりはどうなのでしょうか?

yonkey 別に意識はしていないんですけど、最初のフレーズは鼻歌で完成していて。都会の喧騒にちょっとぐったりしている主人公の画も浮かんできたので、ここはあえて疾走感に身を任せず、ゆったりとしたビートでやってみようと思いました。

■歌ってみてどうですか?歌詞の内容とテンポに少々ギャップがありますが。

やすだ そうですね。レコーディングの時にテンポ感のギャップに苦戦したことがなくて。それはデモを聴いた時点でメッセージ性や、テンション感がそのまま自分のイメージとマッチしているからだと思います。ライブでは、どこにどの曲を置いて、その流れの中でどうやってテンションの流れを作るかを考えることはありますが、曲を歌うという点では、あんまり何も考えなかったかもしれないです。

■それって素敵ですね。技術も高いし、感性も高いって最高じゃないですか。カッコイイです。続けてMVの話をしたいのは“Teenage Blue”なのですが、このめちゃくちゃ綺麗なロケーションは、どこで撮影されたのでしょうか?

SimiSho 土手です。

■土手なのはわかります。(笑)

SimiSho ですよね。(笑)

■映像はドローン撮影ですよね?ドローン撮影って音が怖いと聞いたことがあるのですが、どうでしたか?

かと ちひろさんは自転車に乗る時、ドローンに追われたでしょ?

やすだ そう!ずっと追われていて、耳元でずっとドローンの羽音が鳴っているんですよ。「まさかぶつかんないよね?!」と思いながら、必死に自転車をこぎました。(笑)

■それは怖い。(笑) 歌詞の面で言うと「Teenage」というワードに「ヘッドライトがつかない」という歌詞が入って、運転しているイメージが湧いて、「結構田舎の子の歌なのかな?」と思ったんです。

yonkey そうですね。ここは車のヘッドライトもそうなんですが、真っ暗闇の中で、自転車のライトさえもつかない夜の中で不安な主人公のイメージで書きました。僕は東京生まれ、東京育ちなんですけど、都会的でスタイリッシュなものより、ジャパニーズカントリーソングじゃないですけど、そういう楽曲や、アーティストのスタイルにノスタルジーを感じるんです。なので、都会を夢見て上京した若者の視点で書いているんですけど、そういう視点の方が結構ノスタルジーを表現しやすいなと思ったので、“Teenage Blue”もそのイメージと一致しています。

■なるほど。この歌詞は振り返っているんですか?それとも進行形なんですか?

yonkey 僕視点で言うと、振り返っています。「今現在に悩んでいて、何に怒っているのか、何にイライラしているのかもわからないあの時期」みたいなものって、みんなもあったと思うんです。そんな時の心情を表現したいなと思って書いた曲です。

やすだ 私は進行形だと感じていました。“Teenage Blue”というタイトルではあるけど、今ティーンじゃない人たちにも刺さるし、自分事だととらえられる楽曲だなと思っていて。今の自分のことくらいの気持ちで歌っています。

■そこに違いがあるから面白いところでもあるんですね。MVは不穏な雰囲気でしたが……。

SimiSho 10代の時の悩みみたいなもので、少しバカっぽいけど、素直な悩みなんです。青春はキラキラしたとこだけじゃない、裏面みたいな、そういうのをイメージしていて。多分青空の下でアホっぽく演奏していてもそれっぽいんですけど、歌詞的にもそうじゃないし、キャストのふたりにも演技してもらって、歌詞にあるいろんな表現を映像化できたのかなと感じています。