LACCO TOWER VANITYMIX 2019 AUTUMN PICK UP INTERVIEW

LACCO TOWER『変現自在』

松川ケイスケ(Vo)、塩﨑啓示(Ba)

現(うつつ)を変えていくことで過去も変わる、未来も変わる

メジャー5枚目のアルバム『変現自在』をリリースしたLACCO TOWER。17周年を迎えた今が、バンドとして一番いい状態であるということは、ここ最近のライブからもこのアルバムからも十分過ぎるほど伝わってくる。表と裏、陰と陽、いいも悪いもすべてを抱きしめたからこその美しさ――カッコいいだけじゃ、綺麗なだけじゃ、こんな歌はうたえるはずがない。その「今が一番」というバンドの状態について、そしてこのアルバムについて、松川ケイスケと塩﨑啓示に話を訊いた。

■17周年を迎えられていかがですか?

松川 僕と啓示が出会って20年くらい?

塩﨑 18歳で出会ったから20年だね。

松川 トータルで言えるのは、いいときも悪いときももちろんあったんですけど、バンドとして今が一番いいと思いますね。

■啓示さんは?

塩﨑 17歳って思春期真っ只中なんですけど、バンドで言うと10年を越えて少し落ち着いてきていた感があったんですよ。「俺らってこうだよな」って自分たちを積み上げていく作業というか。そういった年の取り方をしていく中でこの17周年のこのタイミングでもう1回思春期に戻ったというか、逆に尖るところが尖ってきたって気がしていますね。

■なるほど。

塩﨑 だから昔は避けていたようなところも突っ込むことができるようになったり。それはメンバーとの関係や、やり取りなんかも含めて。

■それは例えば話し合ったりとかそういうことですか?

塩﨑 そうそう、そうです。17年間、メンバーだけでメシを食うとかもなかったんですけど、今年に入って、この17周年のツアー中に2回もメンバーだけでメシ食ったりして。その前に2回だけやってるから、17年間の間でたったの4回ではあるんですけど、3回目と4回目はこの1~2ヵ月の出来事なんで、自分たちでもちょっとびっくりですよね。(笑)

■それはどういう理由でなんですか?

塩﨑 俺が集まろうって声を掛けたんですけど、みんなこの先をどう見ているのかな?この先のLACCO TOWERをどうしていきたいのかな?って、そういうざっくばらんな話をしたいなと思って。それがI ROCKSの後、ツアー寸前だったんですけど、そこからツアー回ったら今までと全然違う感覚で。でもそれが話合いが出来たことで向き合えたからなのか、どうなのかはわからなくて、それをそのままなんとなく終わりにするのを辞めて、ファイナルの前、セミファイナルが終わった後にもう1回話をしたんです。

■なるほど。

塩﨑 それがすごく良かったんですよね。だから17周年のファイナル(7月15日恵比寿LIQUIDROOM)で、ああいうMCが出たんだろうし、まさかね「解散しねぇぞ」って言葉がうちのドラムから出るとは思わなかったし。あぁ、意識が固まったんだなっていうのはすごく感じましたね。だいたいケイスケとか俺が言う言葉なんですよ、そういう決意表明みたいなものは。それをまさかドラムから言うとはね。

■重田さんが言うことによって、これは生半可な気持ちではないし信頼できるなって、そう思ったファンの方も多いんじゃないかと思います。約束って怖いじゃないですか、しかもライブで言葉にするって。

松川 何かを終わらせることって勇気がいるじゃないですか。なんとなくそこに向かう場合もあるし、次の出口が見えているからこそ、清々しくそこに向かう場合もあるし。長く続けてきているバンドって、誰かが何かを言わなくとも裏側のところで、この先どうなるんだろうって不安は必ずあると思うんですよ、これはどのバンドも。

■はい。そうですよね。

松川 僕らもたくさんのバンドを見てきているし、年齢とか年数とか関係なしに順風満帆じゃないんだなって思うところはたくさんあるし、だからこそああいう約束を言葉にするって、真剣に考えれば考えるほどすごく怖いんですよ。約束だから、それが守れないと嘘をついたことになるから。だけどそれをちゃんと出せるような5人になったっていうことが、さっき言った今が一番いいっていうところなのかもしれないですね。

■約束をするとか、未来を決めるということに対して不安というのは?

塩﨑 個人的には結構ありますよ。でも引っ張らなきゃいけないのは俺だと思っているし、だからやっぱり不安になるんですけど、例えば「カッコいい」って、バンドによっても人によっても違うじゃないですか。それがメンバーの間で違ったら、カッコいいものは絶対に作れない、だから確認はしなくちゃいけないし、どういうライブにするかってことも深いところまで話してようやくわかるってことに、今回の話し合いで気づくことが出来たし。それが今までみんなわかってるよなでやってきちゃって、それが逆に続けられた理由でもあるんですけど、もう1回見つめ直して、どういう方向に進んでいくかっていう話が出来たことはすごく良かったですよね。

■不安はあるけど、覚悟みたいなものが強くなってきている感じでしょうね。

塩﨑 そうなのかもしれないですね。そういうときに“若者”ができて、どんぴしゃで刺さるような歌詞で、もう「そういう状況をわかっていて作ったんじゃないか?」って思うくらいすげぇなと思っちゃって。

■そういうときに作ったんではないんですね?

塩﨑 全然。曲が先です。今回のメンバーだけで集まって、っていうのは曲が出来た後の話で。でもこの“若者”は、俺は本当にすごいなと思っていて、歌詞とかぴったり過ぎじゃないですか。

■はい。完全にその話合いを経てから出来た感じですよね。

塩﨑 そう。話合いを経て出来た曲、みたいな。

松川 作っている時点で、なんとなくみんなが感じていることの解決の糸口というか、それを回収したいなっていう想いがあって、それがたぶんタイトルや歌詞に出てきたのかなって。日本語なんで「これは水です」で終わりじゃないじゃないですか。いろんな捉え方ができるし、そういう奥深さもあるから、今メンバーにもそういうふうに伝わっているのかなって。もちろん僕の気持ちも作ったときとはまた変わっているし。でも啓示が言ったようなことは結構多いですよ、うちのバンドは。

■先に曲であったり、何かがあって、そうなっていく、みたいな?

松川 そうです、そうです。Twitterで僕がたまたま“若者”の歌詞をつぶやいていたことがあったんですよ。

塩﨑 うん、あったね。

松川 そのときの「夢ならば覚めないで」ってその一言がそのまま歌詞に入ってきたり、なんかそういうことがよくあるんですよね。

■今回のアルバムはこの曲が鍵になっているということですか?

松川 音楽的にはもちろんいろんなアプローチをしているんですけど、本質的な意味合いでは、この曲が鍵になっていると思います。

塩﨑 この曲をリードでってことで作ったわけではないし、でも7~8割の段階でこれがリードだって決まったよね。

松川 一番初めに出来たのは“夜明前”で、“若者”とか“必殺技”とか、最初のほうに入っている曲は後のほうだったかな。

塩﨑 “若者”が9番目にできて、10番目が“必殺技”。

松川 で、“若者”と“線香花火”で悩んだんですよ。まだいろいろ決まる前で、ある程度歌詞も乗っかってきているけど“若者”だけギターが入っていないラフの状態で。それで、レコーディングスタジオで「みんなでどっちにする?」って、そこで決めたんですよね。

■そうなんですね。

松川 だから、そこで“線香花火”になっていたら、今話したような話って出来なかったと思うんですよ。

塩﨑 うん、そう。本当にそう。

松川 だから、そういう意味でも、そのときの流れに決めさせられたというか。

■いろんなことがこの曲に導かれているというか。

塩﨑 それはあると思います。ちゃんとそうなっているというか。