LACCO TOWER VANITYMIX 2019 AUTUMN PICK UP INTERVIEW

LACCO TOWER『変現自在』

■“線香花火”を選んでいたら、未来というか、今は変わっていたってことですもんね。

松川 そういうことですよね。不思議でしたね、今回は、こうやって改めて考えると。

塩﨑 そういう不思議な力もあるし、この「ああ 美しく生きたいな」ってところ、俺は正直泣いちゃいましたからね。

■いいですよね、すごく。

塩﨑 俺、この一言がすげぇリンクしたんですよ。I ROCKSの頃、ちょうど出来たばっかで、この曲めちゃめちゃ聴いていたんですけど、6月9日のI ROCKSで、渡井(翔汰(Vo&Gt/Halo at 四畳半)が、いきなり最後の曲の前に、「綺麗と美しいは違うんだ」ってMCをしたんですよ。それはLACCO TOWERの動きとかI ROCKSの人たちを見ていると、決して綺麗ではなくて、むしろ泥臭い。でもそれは美しいんだ、美しく生きているんだっていうようなことを言ってくれて、「こいつ俺らのこと見てんのか?」って思っちゃって。(笑) でもすげぇ感動して。(SUPER)BEAVERもZepp DiverCityで、「なんて美しい日なんだ」っていうようなことを渋谷龍太が言っていて、「美しい」って言葉が俺の中でいろいろリンクしていた時期なんですよ。

■そうだったんですね。

塩﨑 「美しい」って、「素晴らしい」とか「最高」とか「カッコいい」って言葉とは違って、生き方とかもっと大きなテーマで考えちゃったんですよ。「きれい」と「美しい」は似ているけど、「美しい」はそれよりもっと深いところに意味があるんじゃないかって考えまくっちゃって。だからこれ(歌詞)きたときは……もう俺は崩れましたね。(笑)

■はいはい、わかります。

塩﨑 なんかいろいろ重なったんですよ、奇跡が。本当に。だからこの曲は、本当にすげぇなって思いました。

■美しいって、啓示さんがおっしゃるように、もっと深いところにあるとわたしも思っていて、そういう意味で言うと、LIQUIDROOMのLACCO TOWERは本当に美しかったなって。カッコいいとか、綺麗なだけじゃあんな歌はうたえないなって。

松川 年齢重ねないとわからないところでもありますよね。綺麗とかカッコいいとか、可愛いってほうにやっぱり導かれることもあるし、若いときは全然それでいいと思うし。でもバンドがこれだけ世に溢れていて、音楽がこれだけ世に溢れているのであれば、その中で僕らにしか表現できないところを表現することに、存在価値というかアイデンティティがあると思うし。僕ら全然綺麗じゃないんですよ。泥臭く活動してきたし、メジャーデビューしたのだって30歳越えてからだし、すげぇ変なバンドなんですよ。でも僕以外の人間性で愛されているバンドだと思っていて。

■……そんなことないです。(笑)

松川 僕は本当に人間としてクソみたいなヤツなんで。(笑) だからそういうバンドの一員でいれらることも嬉しいし、だからこそマイクを握っている人間として、話す人間として、みんなの気持ちを回収して、代弁できる作品やライブをしていかなくちゃっていうことは常に思っているんで。そういう意味では自分があるようでない感覚にいつもとらわれているのかもしれないですね。だから「美しく生きたいな」っていうのも、もしかしたら若い人が聴いてもよくわかんないかもしれないですよね。

塩﨑 本音だよね、俺らの。

■素敵だと思います、こんな言葉が言えるのって。アルバム全体としてはどのようなイメージだったんですか?

松川 今回、メジャー1枚目のジャケットのセルフオマージュなんですね。顔の角度とか髪型とか、俺は本当に髪型変わってねぇなって思うんですけど。(笑) ほぼ一緒なんですよ。というか撮るときもほぼ一緒に撮ったんです。それで、タイトルもそうなんですけど、メジャーで5枚出させてもらうことに対しての自分たちのけじめというか、前(過去)から見る今があって、同じように今から見る未来があって、5枚を経てきたことで感じる今と、それをやる前の今って絶対に感情も違うんですよ。なので、ここ(今)を変えていくことで未来が変わるっていうことが身に染みてわかったし、自分たちが好きなことに没頭したり好きなものだけを磨き続けていくとか、そういう純粋な想いを突き詰めることで未来って変わるんだなって、最近すごく思うんです。それはやっぱり昔を経てきたからこそだから、あのときの気持ちも忘れずに今出来ること、現実を、現(うつつ)を変えていくことで過去だって変わるし、未来だって変わるっていう、そういう意味も込めてこのタイトルをつけたんです。

■『変現自在』って、一文字変わるだけでこんなに印象が変わるんだって思いました。

松川 僕は元からこの漢字だったような気がしちゃうというか、意味合い的にはそういうことだったりするのかなって。

■たしかに。「現」になることでよりはっきりするというか。

松川 「幻」より意思が強い感じですよね。

■そうそう、そうです。タイトルにしても、今のケイスケさんのお話にしても、“若者”や啓示さんのお話、すべてが「未来」というところにつながっている印象なのですが。

松川 思い起こせば、ずっとそこに対してフラストレーションというか、そういうのがあったのかなって。

■というのは?

松川 若い頃って、何とも言えないムカつきとか、何かに対しての反骨心とか、反抗心とかがあるじゃないですか。それが初期衝動と言われるものなのかもしれないんですけど、やっぱそういうのってどんどん無くなっていくんですよね、歳をとるごとに。なくなっていくというよりは、カタチを変えていくというか。

■はい。

松川 だんだんと選択肢がなくなっていく人生の中で、あきらめて見つけた落ち着く場所と、いろんなことにチャレンジした結果、見つけた落ち着く場所って、似ているようで全然違っていて。僕らは前者じゃダメだろう、かといって後者でもダメだろうっていう気持ちがあって。バンドを始めたときに感じた初期衝動や悔しさ、そういうものってカタチは変えていくけど、温度はそのままに自分の胸の中から出していくものなんだっていう決意があって、どこかでそうしなきゃいけないっていう想いがあるんですよ。こういうゼロイチのものを作っている集団というのは、そうでなきゃいる意味がないし、そこにはもっと正直でいいんじゃない?っていう想いがずっとあったんですよね。それが確信になったのが、やっぱり今回のアルバムのタイミングだったのかなって。それはすごくあるかもしれないです。メンバーで話せたことも、全部そうなのかなって。

■なるほど。今回は今までにはないアプローチの曲も多いなと思いました。特に中盤戦、“泥棒猫”からのドロドロした感じの曲とか。(笑)

松川 人の波というか、バイオリズムみたいなものは、アルバムの中でも出したいなって話はしていたので、真ん中はずぶずぶずぶずぶと。(笑) “泥棒猫”とか“炭酸水(さいだー)”は今まであったようでなかったアプローチをしているというか、アレンジをなるべくしないっていうアレンジを楽器隊は意識してやっていてくれたみたいですよ。