■アレンジをしないアレンジとは？
塩﨑 例えば“炭酸水（さいだー）”とか、めっちゃ昭和歌謡なんですよ。
■びっくりするくらい、ですね。(笑)
塩﨑 昭和歌謡過ぎるだろ!?くらい昭和歌謡じゃないですか。
■古びた居酒屋で聴きたいですね。
塩﨑 そうそうそう。これは歌詞が乗る前からその方向、古臭い感じでいこうってあえてそういう方向にはめ込んだというか。あんまりやり過ぎちゃうとまた全然違ってきちゃうし、それで新しいものは出来るだろうけど、今回はそうじゃないよなって。音数自体も少ないし。
■たしかに。
松川 “炭酸水（さいだー）”は、このアルバムではポイントになる曲ですね。これ、「そーだ」じゃなくて「さいだー」にしているところが、僕的にはこだわりがあるんですけど。
■教えてください。
松川 サイダーって糖分が入っているんですよ。ソーダってそのままの炭酸水なんで。僕、自分の実体験を歌詞に書くことってほぼ無いんですけど、この曲は知り合いで、夜のお仕事をされている女性の方がいて、その方と話す機会があって、そのときに話していたことがヒントになって出来た曲なんですね。カラッカラに乾いたソーダの清々しさというのではなく、なんか手についた後にちょっとベタベタしちゃうような甘ったるさというか、彼女自身にもそういうものを感じたりしていたんで、「そーだ」じゃなくて「さいだー」にしたかったんです。自己満足の骨頂というか、それだけですよ、もう。(笑)
■おもしろいです。(笑)
松川 あのとき聴いていたLACCOのあの歌詞を思い出す、みたいなことをたまに言っていただくことがすごく嬉しくて、タイミングでハマる瞬間が絶対あると思うんですよ。気分が落ちているときに“炭酸水（さいだー）”って言っても、三ツ矢サイダーのCMとかあんまり思い浮かばないでしょ？
■はい（笑）。
松川 そのときのその人の感情によって、日本語って感じ方が全然違うと思うんですよ。だから、今回の歌詞も僕はずっと言っているんですけど、音楽はそういうふうに聴く人が使うものだと思っているんで。自分の心情に当てはまるときに最適なカタチになればいいなって。
■言葉ってそういうのあるし、だからラッコの歌詞はおもしろいんですよね。
松川 そうあってくれたら嬉しいですね。
■そういうところでこんな質問も何なんですが、“不機嫌ノ果実”は不倫のお歌ですか？
松川 ガッチガチですね。(笑)
■ガッチガチですね。
松川 昔、「不機嫌な果実」っていうドラマがあって、その語感がすごく好きだったんですよ。ものに形容詞をつけるのがすごく好きで、どっかで使えないかと思っていたんですけど、今まで僕らは果物曲というのがアルバムの中に入っていることが多いんですけど、今回は入っていないんで、ちょっと違うアプローチで入れてみようかなと、曲の中に死ぬほど果物を入れてみました。
■なるほど。(笑) では最後にお気に入りの1曲を教えてもらえますか？
塩﨑 俺は“若者”で。
■そうですよね。先ほど死ぬほど話していただきましたもんね。
塩﨑 俺の想いは頭のところでだいぶ詰め込んじゃったんで、これで違う曲言ったら「おい！」ってなるじゃないですか。
■でも、敢えてそれ以外で。だって“若者”はケイスケさんもきっとそうじゃないですか？
塩﨑 うーん、そしたら“必殺技”かな。
松川 あれ、結構難しいんでしょ？
塩﨑 細かいことを言うと、いろんな引き出しを出しています。全部手前にあるんですけど。波動拳と昇龍拳と……いろんなキャラの必殺技を使っているので、ぜひ聴いてください。
■はい。じゃあケイスケさん。
松川 僕は、発売している時期あたりに聴いてもらいたいなっていうのは“線香花火”ですね。結構季節感を丸出しにした曲なので、手に取ってもらった瞬間にリンクする部分がある可能性は大きいと思うので。それで、僕の自己満足で言うと、これは一番初めの一行目を書きたくて書いたような曲なので、ぜひ読んでいただきたい曲ですね。
Interview & Text：藤坂綾
PROFILE
2002年に結成された、叙情的なリリック、パワフルなドラミング、空を切り裂く轟音ギター、縦横無尽にグルーヴするベース、幻想と狂奏が入り交じるピアノライン、どこか懐かしい印象のメロディがフロアを大きく揺り動かす、叙情的な詩世界とは裏腹な激情その物のライブパフォーマンスで全国各地で暴れ回る狂想演奏家。
laccotower.com
RELEASE
『変現自在』
COCP-40914
￥3,240（tax in）
日本コロムビア / TRIAD
8月21日ON SALE
