きゃりーぱみゅぱみゅ VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

海外公演とコロナ禍で得た、失敗を恐れず挑戦する心

2021年8月をもって活動10周年を迎えたきゃりーぱみゅぱみゅ。10周年を境に自身のレーベルを立ち上げ、プロデュース業に取り組んだりと、音楽以外の活動にも積極的に参加し、きゃりーぱみゅぱみゅの名前をどこまでも轟かせ続けている。音楽活動では、全国ツアー30公演の完走、世界最大規模の音楽フェスティバル「コーチェラ・フェス 2022」への出演があったりと、徐々に活気を取り戻していくライブシーンに合わせてライブ活動も活発に行っている。今回はそんな彼女が『一心同体』をリリースするのにあわせてインタビューを決行。コーチェラ・フェスのエピソードやコロナ禍での挑戦、そしてその内にある危機感をはじめ、ここ数年での気持ちの動きについてたっぷりと語ってもらった。

■まずは“一心同体”の曲を受け取った時の印象を教えてください。

きゃりー 結構レトロなサウンドで、懐かしい感じがすごくするなと感じました。コロナ禍でみんなが助け合う時代になったし、この楽曲は世の中にもぴったりなのかなって思います。

■今回は歌詞の量が結構少なめですが、歌入れとかはどうでしたか?

きゃりー 歌入れはすごく早かったです。難しいメロディラインもなかったので、NGもあんまり出さずに「サクサク」っと録っていった感じでした。

■中田さんと歌詞についてやりとりすることもあるんですか?

きゃりー 今まではいくつかありましたね。“もんだいガール”っていう曲は、週刊誌に追われて嫌だった時に、中田さんにそのお話をしたら書いてくれた歌詞だったり。(笑) 

■“一心同体”というワードから、きゃりーさんはどんなことを感じましたか?

きゃりー 言葉で話さなくても分かり合える、親友だったり、家族の距離感は一心同体なのかなって思います。あとは私はソロとしてステージに立っていますけど、お客さんとみんなで音楽を楽しんでいる気持ちってまさに一心同体なのかなって思います。

■お客さんだけでなく、スタッフなどを含めたチーム全体で一心同体だなと感じた瞬間は最近ありましたか?

きゃりー 今年の春にコーチェラ・フェスに参加したんですけど、コーチェラ・フェスって2週間あって、2週目の時にダンサーさんが体調不良になってしまって、一緒にステージに上がるのが難しくなってしまったんです。なので、急遽1人でステージに立ちました。普段だったら「絶対できない!」と思っていたんですけど、照明さんとか映像を出すスタッフさんたちが、私が1人だからっていうことでスペシャルに仕上げてくれて、ライブを成功に繋げてくれました。その時は自分は1人じゃないんだなって強く思いましたね。チームで一心同体になって挑んだステージなのかなって思います。

■1人でステージに立つことが決定したのは結構直前だったんですか?

きゃりー そうですね。当日の夜中っていうんですか、深夜2時くらい。多分スタッフさんたちも、出演しないか1人でやるかっていうところだったと思うんですけど、私に「1人でやってください」って言いづらかったみたいで、みんなもじもじしていて。(笑) それで真夜中に電話がかかってきてそう言われたので、「全然1人で立ちますよ」みたいな。「本当にこんなことあるんだ……」って思いましたし、これが今までの自分だったら、1人でステージに立つのは「できません」ってなっていたかもしれなくて。でもいざステージに立ってみたら楽しくできたので、すごく貴重な経験をさせてもらいました。

■以前だったら立てなかったかもしれないものの、今回はその踏ん切りを付けられたのは、海外という特別な環境だったからなのか、10年以上活動してきたからなのか、それとも別の理由があったりするんですか?

きゃりー 両方あるかなって思いますね。海外でずっと出たかったフェスっていうのもありますし、「絶対に成功させたい!」っていう強い気持ちもあったので、「やります!」ってなりました。今までの自分だったら、完璧なフォーマットの中にいないと多分不安になっていたんですよ。それがなくなった時に、自分では絶対に無理だと思っていたけどすごい自信に繋がって、自分の気付かないところでレベルアップできていたんだなって。それもあって最近は「不可能だと思ってやらないことはもったいないんじゃないか」って思うようになりました。

■コーチェラ・フェスの2週目に1人で出ることが決まった時、内心に不安や焦りもありましたか?

きゃりー コーチェラに関しては1週目の時に、出演時間がビリー・アイリッシュの裏被りの時間だったんですよ……。それに本当に吐き気がしてきて、「無理じゃん……」って思ってしまって。(笑) だから1週目が一番緊張のピークでした。でも当日を迎えたら、本当にたくさんの人たちがライブを観に来てくれて、配信でもたくさんの方たちが観てくれていて。当初配信は1週目のみだったんですけど、2週目の配信が急遽決定した矢先、今度は1人でステージに立つってなって……。これは1週目と2週目の違いをしっかり見せたいなと思いました。2週目は「もうちょっとお客さんとコミュニケーションを取ってみよう」とか、いろいろと考えてみたり、不安っていうよりは1週目の成功を信じて「多分いけるでしょ」みたいな。1週目の方が本当に気持ち的に大変でした。

■そんな2週に渡るコーチェラ・フェスを経て、成長や進化はご自身でも感じていますか?

きゃりー めちゃくちゃありますね。いろいろやってみたいなって思えるようになったのもコーチェラのおかげですし、あとはもっと海外にも進出していきたいなって思いました。途中、ロサンゼルスでワンマンライブを開催したんですけど、そこでも本当にコロナ禍前のような盛り上がりでした。向こうって本当にもう声を出したり踊ったりしていて、「やっぱりこれがライブだよな」っていうのを思い出させてくれたので、海外でもどんどんライブをしたいなって思いましたね。

■今作の“一心同体”の話題に戻りますが、今回のアーティスト写真はきゃりーさんも考案に携わったんですか?

きゃりー アートディレクターさんが考えてくれていました。鏡をイメージしているんですけど、撮影で「右手上げてください」とか、いろいろ指示されながら進んでいって、「最終的にどうなるんだろう……?」って思っていたら、すごく可愛くて新しい仕上がりになりました。

■最近はメイクや衣装もナチュラルなアーティスト写真であったり、デビュー当初の原宿系とは違う一面も見せていますが、今回もインパクトがありつつ上品で、これまでとまた違った雰囲気ですね。

きゃりー 今回はヘアメイクを初めての方にお願いしました。それまでヘアメイクさんとかもおなじみの方が多かったりしたんですけど、それこそコーチェラ・フェスでもっと新しいいろんなことやってみたいなっていう気持ちになったので、今回は新しい方にお願いしました。頭につけた銀の玉を持ってきてくれたり、目の周りにペイントしてくれたりとか、これまでと違う雰囲気に見えているのって、そういうヘアメイクの違いもあるのかなって思います。

■ヘアメイクの雰囲気だったりスタッフが変わると、心境も変わったりしますか?

きゃりー 変わりますね。いつもは割りと自分の好きな感じというか、自分の表現したいものをヘアメイクで表現しているんですけど、今回のヘアメイクさんの提案は、普段あんまり付けない下まつげを付けてくれたり、今までやったことないことをどんどんやってくれて、新しい自分を見せてくれて、すごく嬉しかったですね。今回のアー写を作ってくれた方も初めてだったんですけど、新しい方たちと仕事するのはすごい楽しいなって思いました。最近はポジティブにチャレンジするっていうことをすごく楽しんでいますね。チャレンジして失敗しちゃうことももちろんあると思うんですけど、コーチェラを経験した自分のメンタルだったら、それさえも乗り越えていけるんじゃないかなと思います。

■今回の曲のMV撮影についてはいかがですか?

きゃりー “一心同体”のMVは今までにない内容になっているんです。監督が志村けんさんからインスパイアされた、鏡を真ん中に挟んで飛んでいるように見えるのをやってみたりとか、おじさんとハンガーに吊るされて踊ってみたりとか。へんてこりんっていうのは大切にしているけど、シュールでイケてるっていうのを意識しました。

■シュールでイケてるといえば、きゃりーさんのライブではファンの方たちがとっても自由な服装で楽しんでいるのがすごくいいですよね。

きゃりー そうですね。私は高校生の時に原宿系のファッションにハマって、街を歩いていると通りすがりの人に「変な奴じゃん」って言われたりとか、学校でもやっぱり馴染めない自分がいたんですよ。普通にしている方が無難なのかなとかって考えたこともありました。それがきゃりーぱみゅぱみゅという名前で活動を始めて、好きなことを表現した時に、「きゃりーちゃんを見ていると自由に好きに生きていいんだなって思う」って言われたりするので、みんなの背中をちょっとでも押せる存在になれたら嬉しいなっていうのはすごく思います。最近は私の衣装のコスプレをしてライブに来てくれるファンの方たちもすごく多いですね。

■今年の8月で11周年を迎えたきゃりーさんですが、10周年以降の気持ちの変化って見え始めたりしていますか?

きゃりー 全国ツアーの時に、コロナ禍で何年もみんなに会っていないから「みんな会いにきてくれるのかな?」とか、「みんな私のことまだ好きでいてくれるのかな?」って思っていたんですけど、本当にたくさんの人たちが待っていてくれて、ファンの愛をすごく感じて、私もすごくエネルギーをもらえたので、今度はしっかり返していきたいなと思っています。

■ご自身のレーベル「KRK LAB」も発足して、1年半くらい経ちますね。

きゃりー デビュー当初は、アーティスト活動に集中したいって思っていたので、プロデュース業を今までやったことがなかったし、あえてやらないようにしていたんです。何でも屋さんみたいになりたくないなって。でもこの10年間しっかり音楽の地盤を作れたかなと思ったので、「金木犀ってめっちゃいい香りだな、あの匂いの香水作ってみたいな」と思い、「Nostalgia Syndrome」という香りのブランドと、自分自身も悩まされていたダメージヘアに特化した「Curuput」というヘアケアブランドを開発しました。あと声優業とかもちょっと挑戦してみたり。前向きにいろいろやっていきたいです。