誰かの幸せだと思えた人生の背景に私の歌があれば嬉しいです。
9月に配信されたデジタルシングル“どうでもいい話がしたい”で同世代女性からの圧倒的な支持を得ているシンガーソングライターLeinaの初となるデジタルEP“tulip”がリリース。今作は一人一人が唯一無二の存在なのだと訴えるメッセージを込めた表題曲“tulip“と、ホワイトチューリップの花⾔葉を掲げて様々な恋愛ストーリーを表現したLeina渾⾝の5曲を収録。温かい言葉たちで紡がれたLeinaの音楽は、傷ついた心を優しく包んでくれるような不思議な魅力がある。
11月にはLeina初となる東阪ツアーを開催予定。音楽で人に寄り添いたいと願う気持ちがストレートに表現された歌詞と、類稀なる歌唱力で表現される楽曲は、音源とライブでまったく違う魅力がある。ぜひEPを購入した上で、11月のライブツアーにも参加して欲しい。
■まずは今作のタイトルの由来からお伺いしたいです。EPのタイトルに名付けられた“tulip”にはどんな意味が込められているのでしょうか?
Leina 実は“tulip”は、楽曲より先にワンマンライブのタイトルにつけたものなんです。タイトルに選んだのは、私の大切な友達の好きな花が「チューリップ」だったことがきっかけでした。チューリップには「待ち侘びる」という花言葉があるので、それにちなんで「ライブを待ち侘びる」気持ちを表現しています。実はチューリップの球根を植える時期と、花を咲かせる時期にも関連性を持たせていて、植える時期は10月から12月で、ワンマンライブを開催する11月にぴったりなんです。そして花を咲かせる時期は春先なので、その頃には私の誕生日があります。もしかしたら誕生日の近くでまたライブができるんじゃないかなと思って、「花が咲く頃にまた会いましょう」という思いも込めて、今回のライブタイトルと表題曲に“tulip”と名付けました。
■新曲“tulip”には、「誰もが咲く場所を持っている」というメッセージが込められているそうですが、歌詞の中には「自分は何者にもなれないんだ」と思い込んでしまっている様子が表現されていました。音楽の道を突き進むLeinaさんとは違う人物像が浮かび上がったのですが、誰かモデルになった人がいたのでしょうか?
Leina モデルになったのは、さっきもお話したチューリップが好きな私の友達です。“tulip”の歌詞を制作しようという時期に、友達が「自分は趣味もないし、何者でもない」とこぼす場面がありました。私はその友達が素敵な人だってことも、好きなことをたくさん持っていることも知っているから、「どうしてそんな風に思っちゃうんだろう?」って、少し寂しい気持ちを抱いたんです。その翌日に、たまたま映画の『バービー』を観て、「自分は自分なんだ」というメッセージを受け取って、このメッセージを伝えたいなという気持ちをそのまま“tulip”の歌詞に落とし込みました。その歌詞というのが「私には私の名前があるから」の部分です。職業とか、年代とか、いろんなカテゴリがあるけれど、そういうカテゴリに頼らずとも、「名前があるだけであなたを表せるんだよ」という気持ちを込めています。みんな毎日同じような日常を繰り返す中で、「私は何がしたかったんだろう」とか、「自分は何者でもない、大衆の一人でしかない」って、どこか自分を特別だと思えない虚無感を抱いているのかなと思います。でも「そんなことはない」ってことをみんなに伝えたいという気持ちが、“tulip”という曲になりました。
■“tulip“はメッセージ性が強い分、重たい楽曲かと思いきや、バックで聴こえる口笛や爽やかなメロディーラインが印象的で、とても明るい曲に仕上がっています。口笛を入れようと思った理由はあるんでしょうか?
Leina “tulip”は最初に丸サコードで作りたいと思って、メロディーから作った楽曲なんです。当時制作していた時は片想いの女の子をテーマにしていたので、ポップで明るい曲調になっています。口笛を入れたのは、サビのメロディーを作成して歌入れした段階で、アレンジャーの方が「これ、バックで口笛鳴っているよね」って言ってくれたことがきっかけです。
■“tulip”は当初の予定とまったく違う楽曲に仕上がったわけですが、完成してみていかがですか?
Leina かなりいいなと思いました!他の楽曲が壮大だったり、感情的だったりするので、 “tulip”がポップに仕上がり、今回のEPの中でもバランスがとれたなと思います。
■デビュー時、「人に寄り添える曲を作りたい」とおっしゃっていましたが、そういう気持ちになったきっかけはなんだったのでしょうか?
Leina 小学生の頃から中学生に至るまで、孤独を感じることが多かったんです。当時私は「優しくされたいなら優しくする、信じて欲しいなら信頼すること、自分がなんでも行動すべき」という言葉にひかれて、周りのみんなに寄り添っていたつもりだったけれど、私が泣いてる時はいつも一人きりで、「誰にも抱きしめてもらえない」って、そんな孤独な気持ちでいっぱいでした。そんな一人寂しい時に聴いた音楽に私は救われていたので、自分もそういう音楽が作れたらいいなと思っています。もしかしたら、私の曲に詰め込んだ言葉は、私が当時かけて欲しいと思っていた言葉なのかもしれないです。今は、誰かの幸せだと思えた人生の背景に私の歌があれば嬉しいです。
■辛い時に寄り添ってくれた音楽ってどんな曲でしたか?
Leina 森山直太朗さんの“生きてることが辛いなら”と、中島美嘉さんの“僕が死のうと思ったのは”です。他にも欅坂46さんの“黒い羊”もいつも聴いていました。お気に入りの楽曲を聴いて、いつもなんとか救われていました。
■EPに収録されている他の楽曲についても伺いたいです。“胡蝶の夢“は、ストーリーが気になる楽曲だと思いました。実体験だったりされるんでしょうか?
Leina 実体験を基に、中国の古典「胡蝶の夢」を織り交ぜて制作した楽曲なんです。ある日の帰り道で、前を歩いている人の後ろ姿を見て、「この人が私の好きな人だったらいいのにな……」と思った瞬間にインスピレーションが沸いて制作した楽曲です。これって私だけじゃなくて、みんなも実は考えていることなんじゃないかな?って思っています。
■Leinaさんの制作される楽曲は、日常の中でのひらめきから生まれることが多いんですか?
Leina そうですね。全部がインプットだと思っているので、ささいなことも見逃さないように過ごしています。その時々の感情を忘れないようにメモすることも多いです。作詞を始めた中学生の頃はノートにまとめていたんですが、今はいろんなところに書き出すようになりました。携帯のメモも使っています。例えば今なんかも、取材を受けながら、「記者の人ってたくさんの人と出会って、いろんな物事を知ることができるんだな」って、「それってすごいいいな」って思っていて、そういうふうに思ったことを全部覚えておこうって考えています。
■Leinaさんの制作される楽曲からも思いましたが、今のお話からも、相手の立場に立つとか、誰かに寄り添う共感力の高い人なんだなと感じます。ご自身の共感力が培われた背景はなんだと思いますか?
Leina 中学生の時の孤独を感じた時期とか、いろんな過去があった中で、欲しかった言葉があって、そういう言葉をかけられる人になりたいなと思っていたことが、今の自分を形作っているんだと思います。
■具体的にはどんな人になりたいですか?
Leina 他人も私自身も思いやれる人になりたいなと思っています。自分を思いやって、余裕を持って過ごし、その余裕を他人に分けて与えてあげられるような、そういう人になりたいです。他人に尽くして自分をないがしろにしていたら、多分ダメになってしまうから。
■収録曲の“うたたね”は他の楽曲とは違い、ロック調のメロディーが印象的ですね。
Leina この曲は2年前、私が15、6歳の時に、ギターのデモ音源を作っていた楽曲です。EPの収録曲を考えていた時に一番最後に決まった曲でもあります。アップテンポだし、“どうでもいい話がしたい”がたくさんの人に聴いてもらえたことを受けて、「“うたたね”もきっと気に入ってもらえるよね」という話になったことがきっかけです。
■“どうでもいい話がしたい”が大反響だったわけですが、反響をもらった以前と以後では活動や心境に変化はありましたか?
Leina 反響もすごかったですし、SNSの伸びもすごかったです。この曲から私を知ってくれた人も多くてすごく嬉しかったです。でもまだまだ反応もらえるんじゃないかなって思っています。(笑) TikTokで、知り合いのカップルに頼んでもらった動画に合わせた歌詞動画を自分でも制作しました。これからもたくさんの人にいろんな方法でこの曲と触れ合ってもらえたらなと思っています。
■“藍の意味を”は、恋愛について考えさせられる歌詞が印象的です。楽曲のテーマにちなんで、Leinaさんの恋愛観についても伺っていいですか?
Leina “藍の意味を”は、友達の恋愛相談を受けた時に制作したものです。この曲の女の子じゃなくても、相手のことをすごく好きでも、「好き」って言っちゃったら今の関係が終わっちゃうかもしれないから、気持ちを伝えられないっていう人が多いんじゃないかなって思います。そういう女の子たちに届いたらいいなって思います。
■“藍の意味を”は、気持ちに寄り添ってくれる優しさを歌詞から感じられます。
Leina こういう関係性が良くないこともわかっていて離れられないんだと思います。だから、その子の複雑な気持ちに寄り添いたいなと思って歌詞を書きました。でも最後は前向きになって欲しいから、「私決めたのこれ以上求めない自分の為」と綴っています。この曲を聴いて、誰かが新しい選択肢を選んでくれたらいいなとの願いを込めています。
■タイトルの「藍」には「藍色」と「愛」がかけられていて、素敵なタイトルだなと思いました。恋愛というと「赤色」のイメージがあるので、青色をイメージさせるタイトルになっているのも新鮮でした。
Leina そうなんです。ブルーな恋愛だから……。この関係の中では、たしかに彼女は彼を「あいしている」のかもしれないけど、それって本当の意味では愛とは言えない関係だと思っていて、だから「愛」という字を使わないで表現しました。