『MADKID LIVE TOUR 2025 -MAZE MUSEUM-』ライブレポート@Veats Shibuya

結成11年目にして更なる飛躍を誓う決意のステージ「俺たちを信じてついてきてください」。

開演時間を過ぎて、黒塗りの闇に包まれる会場。スクリーンに白亜の美術館が映し出されると、荘厳な旋律が響く中、意識は幻想的な美術館へと誘い込まれていく。明転と共に現れたMADKIDは、彫刻作品の如く凛として佇んでいた。MADKIDが6月7日(土)、東京・Veats Shibuyaにて『MADKID LIVE TOUR 2025 -MAZE MUSEUM-』ファイナル公演を開催した。今回は「MAZE MUSEUM(迷宮の美術館)」をテーマに掲げ、自身の音楽を「アート」にたとえて各地を巡って来たMADKID。ステージでは公演日ごとに異なるメンバーがホストを務めてセットリストを考案し、一夜限りのパフォーマンスを届けてきている。ファイナルとなる東京公演のホストは「MADKID」。どこか美術館に似た雰囲気を持つVeats Shibuyaの気品ある白い壁にはメンバーの肖像が飾られ、入場時にはMADKIDからのメッセージが刻まれた栞が配布された。

ツアー全公演のオープニングを飾る“MAZE”からスタートしたライブ序盤は、猛烈な重低音の響きの中、“SIN”、“Unveil”、“Mirage”、“COME”とハイスピードなナンバーが続いていく。それぞれの歌声の個性を存分に輝かせながら表現するMADKID。アシッドなライティングが舞台を舐め、クラップの煽りを受けてアンニュイな高速ラップが繰り出されると、甘い歌声が旋律をさらう。会場の熱が高まるにつれて、5人の足さばきも軽くなっていく。「『MAZE MUSEUM』にお越しのみなさま、調子はどうですか?!」一気に5曲を叩きつけたMADKIDは、ここで小休止とともにひとりひとり丁寧な自己紹介を行った。見事なラップを披露したYUKIに無茶ぶりされたKAƵUKIはラップでの自己紹介に挑むも、韻を踏むことができないままなんとかしのぐ。YOU-TAはAXCEL(ファンの呼称)とのコール&レスポンスを楽しんだ。

そのままツアーを振り返り、「各地でホスって来たね」「ホスって来たって言い方はどうなんだ?」と笑う5人。KAƵUKIやYOU-TAが真面目な話をしているその時、突然思い立った様子のSHINがステージの奥に移動し、飛び跳ねながらスクリーンに映るツアーロゴの存在を主張しだしたので、会場は笑い声に包まれた。温かな雰囲気の中、照明が落ちると5人は“Interstella Luv”を披露。ライブハウスの中にはミラーボールが反射した星くずが散らばり、その中で踊る手脚は、優しく柔らかく言葉を噛み締めながら躍動する。相対性理論を越えた壮大なラブソングの後には、ささやかな日常への賛歌“ふたつのことば”へ。8曲目の“One Room Adventure”では、いたずらっぽい笑顔で観客と共にタオルを回す。ひとつのライブでたくさんの表情を見せるのも、MADKIDの大きな魅力だ。「始めての試みとして“One Room Adventure”をタオル回す曲にしてみたんですけど、思ったよりタオル回してる人がいませんでしたね……」盛り上がった後のKAƵUKIの一言には、笑い声が返される。確かにこの日は「初めて」ということもあって、タオルを回す観客の姿はあまり多くなかったが、きっとこれから定番になっていくのだろう。そう感じさせるパフォーマンスだった。

ここで5人は改めてツアーのコンセプトを語りつつ、東京公演ではこれまでとセットリストが全く異なっていることを明かす。MAZEツアー各会場では曲順が入れ替わりつつ、披露される楽曲自体はほとんど同じだったが、ファイナルはYOU-TAいわく「みんなが喜んでくれると思って変えてみました」そうだ。ただでさえ毎公演曲順が変わり、会場限定曲もあったツアーなだけに、メンバーの負担も大きかった模様だが、彼らの願い通り、観客からは喜びの声と拍手が上がった。SHINが故郷・宮崎でのライブの思い出を語るほっこりした場面では、その手の中のボトルを覗き込んだLINが「これ、ハイボールじゃん!」とジョークを飛ばして会場を笑いに包む。ちなみにSHINのボトルの中身は「お茶」とのことだ。そして、「このツアーを通してたくさんの発見があった」と語るMADKID。SHINの「もっとみんなで盛り上がって、高いところからの景色を見せたいと思います」という言葉に呼び込まれた“FLY”は、たくさんのステージを積み重ねて来た彼らだからこそ作り出される一体感が会場の最も遠い所までをひとつにする。

「みんな踊るぞ!」威勢良い煽りと共に、MADKIDは自身の魅力を凝縮した“来・来・来”、“Get Started”、“No border”を立て続けにドロップ。軽やかに空気をまとうSHIN、重心の移動に筋力がみなぎるYUKI、パワフルにステージを踏みしめるYOU-TA、指先の細やかな仕草に意思が通ったKAƵUKI、さりげない静と動の切り替えで魅せるLINのダンスは、同じ振付になるとその個性が際立ち華やぐ。声を上げ、前後に揺れ、跳ねて音楽の一部と化す観客に、煽り立てるメンバー。楽曲はセットリストの中で流れつつも「それぞれの芸術作品」として独立する。“No border”では肩を組み合い、他のメンバーに自分のマイクを当てて戯れたMADKID。逃げるYUKIを追いかけまわしたり、走り回るLINをKAƵUKIが捕まえたりと自由だが、これは事前に打ち合わせしたものではないそうで、「逆に打ち合わせしてこんなことしてたら気持ち悪いよね」との言葉にはAXCELも笑って同意した。

ライブも終盤となり、5人は再びツアーを振り返りながら自身の成長を実感しつつ、AXCELへ感謝を伝える。YUKIは本ツアーのコンセプトについて語り、これを定めることによってMADKIDの可能性がさらに広がったと明かした。SHINはツアーを通して、もっと大きなステージに立ちたいという向上心を強くしたそうだ。いよいよこの夜もラストスパート。重いギターリフと激しいラップ、一転した華やかなヴォーカルにゴシックな展開と幾つものジャンルを横断する“REBOOT”は、「5年前に自分たちで事務所を立ち上げた時、再起動を誓って作った曲」であり、MADKIDのあらゆる魅力を見せつける楽曲でもある。“Last Climber”と続けて、YOU-TAのアカペラで歌い出されたのは彼らの原点のひとつでもある“RISE”。AXCELの歌声を全身に浴びて、5人は感謝の言葉と共にステージを去った。

少し長めのアンコールを経て、ツアーTシャツに着替えたラフなスタイルでステージへ駆け戻るMADKID。観客を煽りながらの“Play”は自己紹介ラップ曲ながら、このコンセプトの中、この位置に歌われることで、ひとつの作品としての俯瞰的な立場と意味合いを得る。歌い終え、アンコールで再登場するまでの間が長くなったことをお詫びしたメンバーは、改めて今の想いを語った。YOU-TAはこのツアーを経て、観客とメンバーとで良い意味での「ぶつかり合い」ができていることを感慨深く話す。「5年前に独立した時とは何もかもが違っていますが、みなさんの応援のおかげでMADKIDはMADKIDらしく活動できていると思います。これからも俺たちについてきてください。よろしくお願いします」その語りに拍手する間も無く、「お前ら騒げるか~?!」の声と共にライブは“DROPOUT HEROES”へ。観客がきらめきの中で歌声を張り上げる中、SHINはステージ中央に集まって膝をつき歌うメンバーを抱き寄せる。会場をいっぱいに満たすAXCELの歓喜の声と、それを抱き止め応える5人との間には、グループの歴史が詰まっていた。

再びメンバーがステージを去ると、中央のスクリーンにはニューシングル『Resolution』の詳細とニュービジュアルが映し出される。さらに、映像のラストでは年末12月30日(火)の東京・Zepp Shinjukuでのワンマンライブが発表され、歓喜の悲鳴が上がった。少し間が空いてニューシングルのシックな衣装で舞台に戻ったMADKID。「11年間やってきて、できることを続けて来たつもりです。Zepp Shinjukuでのワンマンの開催は、5人で決めました。チケットがソールドするかわからないし、大きな挑戦になると思っています」初めてのZepp Shinjukuでのワンマンライブに向かう5人の言葉は重く、表情にも強さが宿る。ここでMADKIDは初めて「日本武道館のステージに立つ」という目標を語った。「ここまで来られたのも、メンバーやいつも支えてくださるスタッフさん、そしてAXCELのみなさんのおかげです。MADKIDはもっと大きくなると信じています。だからみなさんも、俺たちを信じてついてきてください」未来を見据えた誓いの言葉と共に、ラストナンバーに選ばれたのは新曲“Resolution”だ。ステージを擦る滑らかなフォーメーション移動に、振り絞られる激しい歌声は、11年間の時の流れが作るもの。原点に立ち返ってエネルギーを蓄えたMADKIDは、さらなる夢の舞台へと助走をつける。その第一歩はまさに今、この夜に踏み出されたところだ。

Text:安藤さやか

https://columbia.jp/madkid/

『MADKID LIVE TOUR 2025 -MAZE MUSEUM-』@Veats Shibuya セットリスト
01.MAZE
02.SIN
03.Unveil
04.Mirage
05.COME
06.Interstella Luv
07.ふたつのことば
08.One Room Adventure
09.FLY
10.来・来・来
11.Get Started
12.No border
13.REBOOT
14.Last Climber
15.RISE

ENCORE
01.Play
02.DROPOUT HEROES

W ENCORE
01.Resolution