三澤紗千香 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

三澤紗千香『I AM ME』

■まぁ、それだけいい曲ができたということで。“my love”でも作詞されていますけど、作詞だけは初めてですよね?

三澤 アルバムに私が作詞・作曲した新曲が入ることは、みんな予想していたと思うんです。だから、プラスアルファで何か入れて驚かせたいなと思って。それで「作詞のみ」はやったことがなかったので、いつでもなんでも言えるnaotyu-さんに「作詞だけやってみたい」と言ったら、私がイメージしやすいように、ほぼほぼアレンジまで完成したデモを送ってくれたんです。

■そのデモから想像を膨らませて歌詞を書いたんですか?

三澤 そうですね。セピア色っぽい少女漫画みたいな学生の絵が浮かんできたので、その浮かんできた子たちが「どう動くかな?」っていうのを描いていきつつ、1番でこう動いたから、2番でどう変化させるのかとか考えて。でも、ここは過去の気持ちとか、時系列が難しいんですよ。そこは声優をやっているからか、どうしても気になってしまうところで。プロの作詞家さんが、どうやって作っているのかわからないですけど、だいぶ作為的なストーリーというか、心のままに書くのは難しかったです。

■青春の恋みたいなものを想像しながら作ったんですか?

三澤 そうです。もう少女漫画ですね。ただ、女性にも男性にもウケるような内容は目指しました。女性は上書き保存で、男性は別名保存っていうじゃないですか。私の感情のままに書くと、さっぱりした感じになっちゃうので、「忘れられない感じ」があった方が男性ファンにも「わかる!」と思ってもらえるかな?と思って。男性は別れた彼女にもう一回会いたいなとか、同窓会があったらワンチャンあるかもとか思うじゃないですか。私はFacebookをしていないですけど、Facebookで元カノから連絡が来るとドキッとしちゃうっていう話を5ちゃんねるとかまとめサイトとかで読むから。

■情報源が偏っていますね。(笑)

三澤 完全に偏見です。でも、どっちの方にも聴いてもらえる曲にしたくて。明らかに思い出でも、明らかに割り切っていても違うと思ったので、あえて中途半端にしたんです。それが大人なのかなと思いました。この曲のいちばん最後は「ハロー またどこかで」で終わるんですけど、「ま、会えないと思うけどね」みたいな振り切れたニュアンスなんですよ。そこは女性っぽい感じなんですけど、そこに至るまでは過去を思い出して悩み続けていて、男性寄りになっているんです。

■その話を踏まえて聴くと、また違った楽しみ方ができそうです。“あなただけ”は、三澤さんの作詞ではないですけど、これも誰に宛てたのか気になりました。

三澤 作家事務所さんからいただいた中の1曲ですけど、ガチのバラードを歌ったことがないなと思って選びました。最初にデモを聴いた時に、サスペンスドラマのエンディングに合いそうだなと思ったんですよ。崖のところで説得し終わって、犯人が頭下げながら連行されていくシーンで流れて欲しいなと思って。だいたい家族とか大事な人を思ったバラードが流れるじゃないですか。そういうタイアップ取ってくださいよって言いながら作りましたね。

■そうだったんですね。(笑) 「いつも駆けつけてくれたね」とか、てっきりファンのこと、もしくはお父さんのことを歌った曲なのかな?と思っていました。

三澤 いや、全然。ただ、プロデューサーが「三澤とファンの方に置き換えられる距離感の歌詞にしてください」と、直しをお願いしているのは見ました。私はどっちでもいいと思っていましたけど。(笑)

■あくまで私はサスペンスを意識したと。

三澤 そういうことです。でも、「あなた」という人を思い浮かべながら歌わなきゃいけなかったので、私の中でテーマはサスペンスでしたけど、やっぱりファンの方々を考えて歌うんだなという意識には勝手になっていました。だから、あんなに優しい声が出たんじゃないかなと思います。

■上手くまとめますね。

三澤 そうですよ。帳尻を合わせないと。(ドヤ顔)

■さすがです。(笑) あと新曲では、最初に話も出た“Wonder&Wander”もありますけど、おとぎ話みたいな異色の曲ですよね。

三澤 これはnaotyu-さんに「三澤に歌わせたい曲、あります?」と言ったら、このジャズっぽい、童話っぽい不思議な曲を書き下ろしてくれたんです。最初に聴いた時は「神秘的な感じだな」と思って。あと、湿度高めの森が思い浮かんだので、それっぽい感じの歌詞をよき方に頼んでくださいと言ったんです。

■その結果、だいぶ斬新な歌詞になって?

三澤 いや、ビックリしました。歌詞を書いてくれたhotaruさんは、もともとnaotyu-さんが別のお仕事で一緒になった方なんですけど、私が森としか思わなかった曲が、「ちゃんとストーリーになってる!」と思って。

■しかも歌的には、少女と森の精で1人2役やっていますよね。

三澤 そこが悩んだところで。声優だから男の声も女の声も出せるんですけど、そうやって歌い分けちゃうとアルバムの流れとしておかしいし、三澤っぽくないなと思って。だから、ナレーションというか、読み聞かせのお姉さんの気持ちで歌ったんです。その結論に行きつくまでが大変でしたね。ただ、いちばん最後で「友達になろう」って、少女と森の精が友達になるんですけど、森の精っぽい歌い方と、少女っぽい歌い方で、2つの声を重ねたんです。それはhotaruさんも想定していない録り方だったらしいんですけど、とても褒めていただいて。歌唱力も試されるし、リズムも難しい曲ですけど、一人芝居をしているような感じで、大好きな音楽と芝居が一緒にできたので、すごい満足しました。

■歌手としても声優としても試されるような曲ですね。

三澤 最初は正直、「森?ジャズ?これが三澤?」と思ったんですけど、こういうことをさせたかったのかな?と思って、最後には「さすがnaotyu-さん!」と思いました。まぁ、naotyu-さんも途中一緒に迷っていたので、狙い通りだったのかはわからないですけど。(笑)

■いろんな音楽性が楽しめつつ、ほとんどの曲が孤独で始まって、仲間を得て、希望を見出すみたいな共通点があるかなと思ったんですけど、三澤さん的にはどういうアルバムになったと感じていますか?

三澤 おっしゃっていただいた通り、やっぱり三澤は突き詰めるとそうなんだなと思いました。絶望から始まるかもしれないけど、まったく光がないわけじゃないし、手を差し伸べてくれる人もいる。その手を拒絶していたのは自分だったなと気づいて、その手に自分の手を伸ばしていく。それが三澤の生き方だったし、たぶんこれからも変えられない部分だと思うんです。それが音楽にも出たし、それを理解してくれる作家さんたちに作ってもらえたから、どの曲も自分らしい曲になったんじゃないかなと。

■タイトルも『I AM ME』ですし。

三澤 はい。なんか楽しそうに声優さんやっていて、ツイッターに自撮りとか「イエ〜イ」って上げて、メディアでも楽しいお姉さんを演じているけど、このアルバムを聴いてもらえば「あ、普通の人なんだな」みたいな。私は誰かの希望になる歌が届けられたらなと思っているんですけど、「私以外にも、こういう人いるんだ」とか、「私もツラかったけど、この人ほどじゃないわ」とか、そういう曲の集まりになったんじゃないかなと思います。

■アルバムを出すことで一区切りつくと思うんですけど、今後はどうなりそうですか?

三澤 まずはこれを聴いてもらって、みんなからの反応次第で、次が変わるかなと思っていて。シングルの時は2曲しかなかったけど、今回は曲もたくさんあるし、曲順も自分で決めたし、ビジュアルとかも含めて、いろんな反応が来ると思うと楽しみですね。いい感想も悪い感想もエゴサしているので、なんかしらつぶやいてもらえたり、ラジオにメールもらえたりすると嬉しいです。反応されないのがいちばんキツいので。「みんなの提出物を待っています!」という気持ちです。

Interview & Text:タナカヒロシ

PROFILE
1993年1月13日 生まれ、山梨県出身。2009年、アニメ「シャングリ・ラ」蒲郡由里役で声優デビュー。主な出演作品は「BanG Dream!」シリーズ(青葉モカ)、アニメ「俺を好きなのはお前だけかよ」(秋野桜)、アニメ「魔法少女 俺」(御翔桜世)など。また「三澤紗千香のラジオを聴くじゃんね!」をはじめ、多数のラジオ番組でMCを務めトーク力にも定評がある。2017年11月23日、やまなし大使に就任。2020年4月、ユニバーサルミュージックから1stシングル『この手は』をリリース。9月、両A面2ndシングル『I’m here / With You』をリリース。12月23日には待望の初フルアルバム『I AM ME』をリリース。
https://www.universal-music.co.jp/misawa-sachika/

RELEASE
『I AM ME』

初回生産限定盤(CD+DVD)
UICZ-9173
¥5,500(tax in)

通常盤(CD)
UICZ-4488
¥3,300(tax in)

ユニバーサルミュージック
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