森七菜 VANITYMIX WEB LIMITED INTERVIEW

森七菜『カエルノウタ』

■僕は今回の3曲のなかで、“あなたに会えてよかった”がいちばん好きなんですよ。歌声の魅力がいちばん引き出されているなと思って。

森 ほんとですか!?うれしいです!

■ちなみに“ゲレンデがとけるほど恋したい”を歌うときは、声の感じも違うんですか?

森 多少元気にはなるかもしれないです。(笑) 息の配分がちょっと違うんだと思います。そうしないと声が出ないから、そうせざるをえないのかなと思います。いつか披露できたらいいですね。夢が膨らみます。

■実現する日が楽しみです。そして“返事はいらない”は、松任谷由実さんが18歳のときのデビュー曲で、いま18歳の森さんが歌っているんですよね。これも勝手に裕里と重なるなと思って聴いたんですけど、どういう気持ちで歌われたんですか?

森 “カエルノウタ”と“あなたに会えてよかった”は、大きな愛や感謝の意味が強い歌だと思うんですけど、“返事はいらない”は恋の歌というか、若い人でも大人でも共感しやすい歌だと思ったんです。この歌がいちばん歌手っぽいかもしれないですね。誰のためでもなく、自分のなかのことでもなく、本当に聴いてくれる人に向けた歌というか。これを聴いた誰かが、次に好きな人に会うのにワクワクしたり、手紙を書いてドキドキしたりしてくれたらいいなっていう気持ちで歌いました。そういう意味では、裕里にもつながるところがあるといいなというのはあるかもしれません。

■森さん自身は、手紙を書くことはあるんですか?

森 あります。クランクアップしたのときとかに、スタッフさんやキャストのみなさんに書きますね。

■じゃあ、そんなに手紙が遠い存在という感じではないんですね。

森 そうですね。手紙が珍しくなっているというのは、すごくよくわかるので、だからこそメールとかではなく、手紙で書くほうが「あなたにありがとうございますって伝えたいんです」っていう気持ちが伝わるかなっていう気がして。

■いまの若い子だと、一通も手紙を書いたことがないと言われても不思議ではないと思っていたので、ちょっと意外でした。

森 ギリギリの世代なのかもしれないです。私、小学校のときに、大阪から大分に引っ越したんですよ。そのときは携帯を持っていなかったので、大阪の友達と文通していて。それこそ颯香みたいに、ポストをパカパカ開けて手紙が届くのを楽しみにしていたので、気持ちはすごくよくわかります。でも私は、届いてなかったら「まだ来てないんだけど」って、固定電話で電話していました。(笑)

■結局電話しちゃうんですね。(笑)

森 そうなんです。最初から電話しなさいよみたいな。(笑)

■この3曲で歌手デビューするわけですけど、自分にとってどんな作品になりました?

森 私の声は、もともと低いし、語尾が消えかかったりするから、あまり好きではないなと思っていたんです。でも、こうして岩井さんや新海(誠)さんに抜擢していただいたり、ラジオやナレーションのお仕事もいただけるようになって、もっと磨いてもいい部分なのかなって。この作品を通して、新しい自分を発見できたような気がして、視野が広がりました。

■演技と歌で共通点を感じた部分はありましたか?

森 歌に自信があるわけではないので、テクニック的にうまく歌うというよりも、お芝居で経験してきた「言葉に乗せるもの」っていうのを歌にも込めたいな、それを(歌手としての)個性にしたいなと思っていたんです。だから共通点を感じたというよりも、わざと共通させたような感じかもしれません。でも、映画やドラマでは、そのシーンを一連で撮ることはほとんどなくて、その点で歌は一発勝負的なところがあるなと思いました。4分間、一回も集中力を切らせずに、そのことだけを考えるっていうのは、新しい挑戦でもありましたし、すごく楽しかったです。

■確かに4分間ぶっ通しで演技するシーンって、あんまりないですもんね。

森 ないですね。ただ、『ラストレター』はけっこう長回しが多くて。次の部屋に移ってもカメラが回りっぱなしとか。アドリブで演技しているシーンもたくさんあるんです。それもだんだん楽しくなってきちゃって、「次は何やろうかな?」みたいな感じでした。

■この先の歌手活動はどうなるんですか?

 私もいま、大人の顔色を窺っているところなんです。(笑) このまま終わるのは中途半端すぎるし、私としては需要がある限り歌いたいなと思っていて。実は歌いたい曲もありますし。

■それは内緒にしておいたほうがいいですか?

森 そうですね。恥ずかしいし、「お前に無理だろ」とかネットに書かれたら怖いので、まだやめておきます。(笑)

■曲名は置いといて、どういう曲を歌いたいと思っているんですか?

森 今回は大きな愛の歌だったので、いまどきの10代が感じるような小さな恋を歌ってみたいです。既読がつかないとか、返事が来ないとかで、少し悲しくなったり、もう病むって思ったり。そういう小さなことで一喜一憂してしまう気持ちも歌ってみたいなと思いますね。

■普段の森さんは、そういうことを思うタイプなんですか?

森 友達に「ご飯食べに行かない?」とか送って、返事が遅いとけっこう悲しいです。「いま絶対に悩んでいるんだろうな…」とか、「あの子いつもスマホ触ってるから見ているはずなのに!」とか、わりと考えすぎなタイプかもしれないです。(笑)

■そのへんはいまどきの若い子って感じなんですね。歌手としての目標は?

森 そんなこと言える立場ではないと思っているので、なんだろう…。音楽番組には出てみたいです。でも現実的には、まずは聴いてくださった方や、スタッフのみなさんに、次の作品を聴きたいと思ってもらえるようなお仕事をしたいです。

■3月で高校も卒業ですけど、卒業後の予定は?

森 東京に出てくるので、(いま住んでいる)大分から通う時間を他のことに費やせるようになると思うんです。去年は岩井さんや新海さんをはじめ、たくさんのスタッフさんとお仕事させていただいたんですけど、みなさん本当に知識が広くて深いんですよ。そういう方々みたいな物の見方ができれば、もっと楽しいだろうなと感じた年だったので、たくさん社会勉強をしたいですね。けっこう意気込んでいます。

Interview & Text:タナカヒロシ

PROFILE
2001年8月31日生まれ大分県出身(大阪府生まれ)。2019年7月に公開された映画『天気の子』のヒロイン 天野陽菜役に抜擢され注目を浴びる。他にも数多くの映画、ドラマに出演し話題を呼ぶ。2020年1月公開の岩井俊二監督作品映画『ラストレター』に岸辺野颯香/遠野裕里(高校時代)役にて出演。デビュー曲となる主題歌『カエルノウタ』を2020年1月15日にリリース。
https://www.morinanamusic.com/

RELEASE
『カエルノウタ』

森七菜『カエルノウタ』

SRCL-11339
¥1,650(tax in)

Sony Music Records
1月15日 ON SALE